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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(3)離島ガソリン流通コスト支援事業について、本土からのガソリンの輸送費を調査するなどして、補助単価を実態に即して見直すことにより、事業が効率的に執行されるよう意見を表示したもの


会計名及び科目
エネルギー対策特別会計(エネルギー需給勘定)
(項)燃料安定供給対策費
部局等
資源エネルギー庁
補助の根拠
予算補助
補助事業者
全国石油商業組合連合会
補助事業
離島ガソリン流通コスト支援事業
補助事業の概要
離島の消費者に対して本土に比べて高額なガソリン小売価格の値引きを行う事業を実施する揮発油販売業者等に当該経費を助成する事業
離島ガソリン流通コスト支援事業が実施された離島数及び助成に係る補助金相当額
157離島 50億6803万余円(平成23年度~25年度)
上記のうち離島価格が本土価格を下回っている離島数及び助成に係る補助金相当額
55離島 1億0110万円

「離島ガソリン流通コスト支援事業の補助対象事業費に、補助の対象とならない経費を含めるなどしていたもの」参照

【意見を表示したものの全文】

石油製品販売業構造改善対策事業費補助金(離島ガソリン流通コスト支援事業に係るもの)における補助単価の設定について

(平成26年10月30日付け 資源エネルギー庁長官宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 事業の概要等

(1)離島ガソリン流通コスト支援事業の概要

貴庁は、石油製品販売業構造改善対策事業費補助金(離島ガソリン流通コスト支援事業に係るもの)交付要綱(平成23・03・31財資第228号。以下「要綱」という。)に基づき、ガソリンの安定的かつ低廉な供給の確保を図ることを目的として、平成23年度から25年度までの間に、石油製品販売業構造改善対策事業費補助金(離島ガソリン流通コスト支援事業に係るもの)(以下「支援補助金」という。)計57億6296万余円を全国石油商業組合連合会(以下「連合会」という。)に交付している。支援補助金は、離島の消費者に対して本土に比べて高額なガソリン小売価格の値引きを行う事業を実施する揮発油販売業者等(以下「販売業者」という。)に当該経費を助成する事業(以下「支援事業」という。)等を行う連合会に対して、これに要する経費を補助するものである。

貴庁は、離島のガソリン小売価格が本土に比べて高額となっている要因の一つとして本土からの輸送費があるとして、支援事業において連合会が販売業者に助成する額については、販売業者が値引きしたガソリンの販売数量に、貴庁が輸送形態等に応じて離島ごとに設定した補助金額の単価(以下「補助単価」という。)を乗じて算定することとしている。

(2)補助単価の設定の概要

ア 23年度における補助単価の設定

貴庁は、支援事業の実施に当たり、20年度から22年度までの間に支援事業とは別の補助事業を行った際に取りまとめた各離島地域における石油製品の流通合理化の検討に関する報告書(以下「報告書」という。)等に基づいて、23年度に176離島について補助単価を設定している。そして、離島ごとの補助単価については、離島にガソリン油槽所(以下「油槽所」という。)がある場合には、輸送費としてタンカー運賃平均3.2円(ガソリン1L当たり。以下同じ。)、油槽所の費用平均2.7円、島内の給油所への配送費平均2.5円、計8.4円を要するとして、本土における平均的な輸送費1.5円との差額6.9円とほぼ等しい7円と設定し、離島に油槽所がなく、タンクローリーをフェリーに積載し離島にガソリンを輸送する場合には10円、それ以外の場合には15円等と設定した(表1参照)。

表1 平成23年度の補助単価

対象となる離島 離島までのガソリン輸送の形態 補助単価
八丈島等16離島 タンカーによる輸送(油槽所有) 7円
大崎上島等38離島 タンクローリーをフェリーに積載し輸送 10円
三宅島等110離島 ドラム缶を貨物船に積込み輸送 15円
母島等12離島 ドラム缶を貨物船に積込み輸送等(遠距離等) 20円から30円

イ 価格調査の概要

貴庁は、石油流通業界における公正な競争環境を整備することなどを目的として、全国2,000か所程度の給油所等のガソリンの小売価格(以下「全国給油所価格」という。)を毎週調査しており、また、23年度からは離島住民等に対するガソリンの小売価格(以下「離島給油所価格」という。)等を調査している(以下、これらの調査を合わせて「価格調査」という。)。

そして、貴庁は、離島給油所価格から算出する各離島の平均価格(以下「離島価格」という。)と、全国給油所価格の調査結果から抽出した距離や航路等により離島に経済的に影響のあると考えられる本土地域(以下「本土生活圏」という。)の価格(以下「本土価格」という。)とを比較することで、支援事業の効果を把握することにしている。

ウ 24年度における補助単価の増額

貴庁は、23年度に行った価格調査の結果、支援事業の開始後も離島価格が本土価格を依然として大きく上回っていて、かつ、本土生活圏からの航路時間が1時間以上である73離島の補助単価について、24年6月に、23年度の補助単価別に見直し条件を設定して、一律3円若しくは5円又は5円から40円増額していた(表2参照)。

表2 平成24年度における補助単価の増額

23年度の補助単価 対象となる離島 見直し条件 見直しの内容
7円 八丈島等15離島 離島価格が本土価格を3円以上上回る場合 一律3円増額
10円 礼文島等17離島 離島価格が本土価格を5円以上上回る場合 一律5円増額
15円以上 母島等41離島 離島価格が本土価格を5円以上上回る場合 5円から40円増額
(航路時間に応じて)
(注)
見直し条件を満たしていない小豆島等103離島については増額していない。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、効率性、有効性等の観点から、補助単価が適切に設定され、支援事業が効率的に執行されているかなどに着眼して、補助単価が設定されていた前記176離島のうち23年度から25年度までの間に支援事業が実施された157離島に係る支援補助金相当額計50億6803万余円を対象に、貴庁及び連合会において、実績報告書等の関係書類を確認するとともに、価格調査等による離島価格と本土価格の実態を分析するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)離島価格と本土価格との価格差等

価格調査の結果によると、本土価格はほぼ毎週変動していたのに対して、離島価格は離島に所在する販売業者におけるガソリンの仕入れ頻度が本土と比較して少ないことなどから、変動は月1回程度となっていた。そこで、価格変動の頻度による影響を受けないよう、支援事業開始後の各年度について、離島価格と本土価格の年間平均値を算出して比較したところ、表3のとおり、各年度とも離島価格が本土価格を上回る離島が多数見受けられる一方で、23年度については48離島、24年度については46離島、25年度については43離島において、離島価格が本土価格を下回っており、中には10円以上下回っている離島も見受けられた。また、補助単価が10円以上の離島における価格差は各年度とも幅広い分布を示している状況となっていた。

表3 離島価格と本土価格との価格差等

年度 補助単価(24年度以降は増額後補助単価) 離島価格と本土価格との価格差
離島価格が本土価格を下回っていた離島数 離島価格が本土価格と同額又は上回っていた離島数
10円未満 10円以上
平成
23年度
7円 15 15
10円 8 1 29 38
15円 29 4 60 93
20円以上 1 5 4 10
48 108 156
24年度 7円 1 1
10円 9 1 25 25
15円 26 5 42 73
20円以上 5 41 46
46 109 155
25年度 7円 1 1
10円 8 27 35
15円 24 2 47 73
20円以上 9 36 45
43 111 154
(注)
離島数の計は、各年度で支援事業が実施された離島が異なっているため、検査の対象とした157離島とは一致しない。

(2)輸送費、補助単価の設定及び価格差の関係

貴庁は、23年度の補助単価の設定について、前記のとおり、報告書等に基づき、ガソリンの輸送形態に応じて、7円、10円、15円等としていた。しかし、タンクローリーをフェリーに積載してガソリンを輸送していることから補助単価を10円と設定された38離島についてガソリンの輸送条件をみたところ、一般的なタンクローリーが該当する全長10m以上11m未満の車両に係るフェリー航送運賃は、要綱制定時点で2,600円から59,750円と相当程度の開差が見受けられ、23年度の補助単価の設定時において、ガソリンの輸送形態は同一でも実際の輸送条件が同一であったとは認められない状況となっていた。

上記について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

異なる県に所在するA島とB島は、いずれもタンクローリーをフェリーに積載してガソリンを輸送していることから、補助単価が10円と設定されていた。しかし、要綱制定時点における本土との間のフェリー航送運賃は、A島が59,750円(航路時間2時間30分)であるのに対して、B島が8,850円(同30分)となっていた。そして、平成23年度の離島価格は、A島は本土価格を23.4円上回っていたが、B島は本土価格を3.0円下回っていた。

また、貴庁は、前記のとおり、支援事業の開始後も離島価格が本土価格を大きく上回っていた73離島の補助単価を増額していた一方、前記の48離島において価格調査により離島価格が本土価格を下回っていたのに、これらの離島について補助単価を減額するなどの見直しを行っていなかった。さらに、補助単価の増額に当たり、輸送距離を考慮するために本土生活圏からの航路時間を把握していたのに、輸送費の実態についての調査等を行っていなかった。

そして、48離島のうち12離島については24年度又は25年度にこの状況が解消されていた一方で、24年度又は25年度以降に新たに7離島について離島価格が本土価格を下回ることになっており、25年度において依然として43離島で離島価格が本土価格を下回っていた。

離島価格が本土価格を下回っている場合の当該価格差に、当該離島の当該年度におけるガソリンの販売数量を乗じた支援補助金相当額は、55離島に係る計1億0110万余円となっていた。

(改善を必要とする事態)

支援事業の実施後も離島価格が本土価格を大きく上回っている離島がある中で、実際には輸送条件が同一でないのに同一の補助単価が設定されていたり、離島価格が本土価格を下回っているのに補助単価の見直しを行っていなかったりなどしていて、離島価格が本土価格を下回っている離島が依然として多数見受けられる事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴庁において、支援事業が本土からの輸送費について補助する事業であるのに、各離島への運賃等にかかわらず輸送形態により補助単価を同額と設定して、その後も輸送費について実態に即した調査を行うことなく補助単価を設定していることなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

我が国の離島は人口の減少が長期にわたるなどの厳しい環境の下にあり、定住の促進等を図ることが大きな課題となっている。そして、離島における安全で安心な島民の生活の確保の一環として、貴庁は今後も支援事業を実施していくことが見込まれている。

ついては、貴庁において、価格調査を行った結果、離島価格が本土価格を継続的に下回っている離島が多数見受けられるなどの場合には、ガソリンの輸送費を調査するなどして、補助単価の見直しの要否を検討し、実態に即した補助単価の見直しを行うことにより、支援事業が効率的に執行されるよう意見を表示する。