独立行政法人農畜産業振興機構(以下「機構」という。)は、牛肉から放射性セシウムが検出されたことにより肉用牛の販売の停止等を求められた肥育農家の当面の資金繰りなどを支援するために、肉用牛肥育経営緊急支援事業として、事業主体である都道府県の畜産関係団体を経由して肥育農家に対して緊急支援金等(以下「支援金等」という。)を交付している。そして、支援金等の交付を受けた肥育農家は、肉用牛を販売、死亡、繁殖用に転用等(以下「販売等」という。)した場合に支援金等の相当額(以下「支援金相当額」という。)を事業主体に返還することとなっているが、返還の時期については、東京電力株式会社からの賠償金の確定時期等に配慮することとなっている。しかし、肉用牛の販売等の後に賠償金が確定して肥育農家が既にこれを受領していて支援金相当額を返還すべき時期を過ぎているのに、事業主体が肥育農家に返還させていない事態が見受けられた。
したがって、機構において、事業主体に肥育農家における賠償金の受領状況が記入された返還計画や賠償に関する情報を受領するなどして、賠償金の受領状況を正確に確認させるとともに、返還されていないなどの支援金相当額の返還期限を明確に定めて、賠償金を受領した肥育農家に対して周知を徹底するなどして早期の返還を促進する方策を講じ、また、真に困窮している肥育農家について返還の猶予等を行う必要がある場合は、事業主体に支援金相当額の管理を適切に行わせるとともに、必要に応じて経営診断、営農指導等も行わせて、支援金相当額について早期の返還が図られるよう、独立行政法人農畜産業振興機構理事長に対して平成25年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。
本院は、機構本部等において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、26年1月までに事業主体から肥育農家等に対して通知を発出させるなどして、次のような処置を講じていた。