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  • 平成25年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第1節 国会及び内閣に対する報告

<参考:報告書はこちら>

第5 再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等について


検査対象
内閣府、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、44都道府県
検査の対象とした再生可能エネルギーの概要
非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもので、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱等
検査の対象とした再生可能エネルギー設備の数
(1) 国が自ら又は委託者として導入した再生可能エネルギー設備
  発電設備    47設備
  熱利用設備   39設備
(2) 地方公共団体等が国庫補助金等を活用して導入した再生可能エネルギー設備
  発電設備     1設備(平成11年度)
         6,628設備(平成21年度~25年度)
  熱利用設備  1,122設備
(3) 経済産業省所管の国庫補助金を活用した太陽光発電設備(住宅用)
       1,091,724設備
検査の対象とした再生可能エネルギー設備の導入に係る事業費
(1) 発電設備  191億6199万円(平成21年度~25年度)
  熱利用設備  39億2351万円(平成21年度~25年度)
検査の対象とした再生可能エネルギー設備の導入に係る国庫補助金等交付額
(2) 発電設備    2億8496万円(平成10、11、13各年度)
        1808億8557万円(平成21年度~25年度)
  熱利用設備 509億0257万円(平成21年度~25年度)
(3) 太陽光発電設備(住宅用)
        2214億2663万円(平成20年度~25年度)

1 検査の背景

(1) 再生可能エネルギーの概要

再生可能エネルギーとは、資源に限りがある石油、石炭、天然ガス等の化石エネルギーや原子力とは異なり、エネルギー源として永続的に利用することができるエネルギーであり、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱等の地球上で自然に起こる現象を利用して繰り返し使えるエネルギーであるとされている。そして、再生可能エネルギーの主な利用形態としては、発電と熱利用がある。

また、平成9年に制定された「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」(平成9年法律第37号。以下「新エネ法」という。)において、「新エネルギー利用等」とは、非化石エネルギーを製造することなどのうち、経済性の面における制約から普及が十分でないものであって、その促進を図ることが非化石エネルギーの導入を図るため特に必要なものとして政令で定めるものをいうとされている。そして、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令」(平成9年政令第208号)において、太陽電池を利用して電気を発生させること、風力を発電に利用することなどが定められており、太陽光、風力、水力(出力1,000kW以下(中小水力)の発電設備を利用)、地熱(バイナリー方式)、太陽熱、水を熱源とする熱、雪氷熱、バイオマス(燃料製造・発電・熱利用)が新エネルギー源とされている。また、21年に制定された「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」(平成21年法律第72号。以下「エネルギー供給構造高度化法」という。)において、「「再生可能エネルギー源」とは、太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるものをいう。」とされ、「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律施行令」(平成21年政令第222号)において、「再生可能エネルギー源」として、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、自然界に存する熱及びバイオマスが定められている。したがって、上記の新エネルギー源は、いずれも再生可能エネルギー源に含まれることになる。このほか、近年では、波力、潮流等の海洋エネルギーも再生可能エネルギーとして注目されている。

これらの再生可能エネルギーを関係法令等に基づき整理すると、図表1のとおりとなる。

図表1 再生可能エネルギーの概念図

再生可能エネルギーの概念図

25年度における我が国の年間発電電力量(9379億kWh)のうち、再生可能エネルギー源による発電電力量(1004億kWh)の占める割合は、水力発電が約8.5%、水力発電を除く再生可能エネルギー源によるものが約2.2%、合わせて約10.7%となっている。

(2) エネルギー政策の変遷

ア 石油代替エネルギーの開発及び導入

国は、昭和48年及び54年の二度の石油危機を教訓として、過度な石油依存から脱却し、エネルギーの供給を安定化させるため、石油代替エネルギーの開発及び導入の重要性を認識することになった。そして、石油代替エネルギーの開発の促進等のため、55年に「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」(昭和55年法律第71号。平成23年7月7日以降は「非化石エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」)を制定し、石油代替エネルギーに関する技術でその企業化の促進を図ることが特に必要なものの開発等の業務を総合的に行わせるために新エネルギー総合開発機構(15年10月1日以降は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構。以下「NEDO」という。)を設立するなどしている。そして、NEDO等において、「サンシャイン計画」等の国家プロジェクトを実施させることにより、石油代替エネルギーに関する技術開発を推進するなどしてきた。

また、14年には、エネルギーの安定供給の確保、環境への適合及び市場原理の活用をエネルギーの需給に関する施策についての基本方針とする「エネルギー政策基本法」(平成14年法律第71号。以下「エネルギー基本法」という。)を制定し、15年10月に、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るためにエネルギーの需給に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定(閣議決定)している。基本計画は、少なくとも3年ごとに検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならないこととなっており、国は、19年3月、22年6月及び26年4月にそれぞれ新しい基本計画を策定(閣議決定)している(以下、26年4月に策定された基本計画を「第四次計画」という。)。

イ 第四次計画における再生可能エネルギーの位置付け及び導入

第四次計画は、東日本大震災(23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による災害及びこれに伴う原子力発電所事故による災害をいう。以下同じ。)の発生等により、エネルギーをめぐる環境が大きく変化していたことなどを踏まえて策定されたものであり、中長期(今後20年程度)のエネルギー需給構造を視野に入れて、今後取り組むべき課題と長期的、総合的かつ計画的なエネルギー政策の方針がまとめられている。

そして、再生可能エネルギーについては、現時点では安定供給面、コスト面で様々な課題が存在するが、温室効果ガス(二酸化炭素、メタン等)を排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも寄与できる有望かつ多様で、重要な低炭素の国産エネルギー源であると位置付けられている。そして、政策の方向性として、「2013年(平成25年)から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく。」とされ、そのため、系統強化、規制の合理化、低コスト化等の研究開発等を着実に進めるとされている。このため、再生可能エネルギー等関係閣僚会議を創設し、政府の司令塔機能を強化するとともに、関係省庁間の連携を促進するとされている。さらに、「具体的な取組として、固定価格買取制度の適正な運用を基礎としつつ、環境アセスメントの期間短縮化等の規制緩和等を今後とも推進するとともに、高い発電コスト、出力の不安定性、立地制約といった課題に対応すべく、低コスト化・高効率化のための技術開発、大型蓄電池の開発・実証や送配電網の整備などの取組を積極的に進めていく。」とされている。第四次計画においては具体的な数値目標は設定されていない。

ウ 環境保全及び地球温暖化への対応

(ア) 環境保全への対応

国は、5年に環境基本法(平成5年法律第91号)を制定し、環境の保全について、基本理念を定め、同法に基づき、環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱等を定めた環境基本計画を6年12月に策定(閣議決定)しており、その後、12年12月、18年4月及び24年4月にそれぞれ新しい環境基本計画を策定(閣議決定)している(以下、24年4月策定の環境基本計画を「第四次環境基本計画」という。)。そして、第四次環境基本計画においては、地球温暖化に関する取組等の優先的に取り組む重点分野が定められており、このうち地球温暖化に関する取組においては、施策の基本的方向性として、中長期的な国内対策として再生可能エネルギーの導入拡大等を実施すること、また、地方公共団体に期待される役割として、地域資源をいかした再生可能エネルギー等の導入を実施することが示されている。

(イ) 地球温暖化への対応

国は、10年に、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号。以下「温対法」という。)を制定して、京都議定書の規定に基づく約束を履行するために必要な目標の達成に関する計画(以下「京都議定書目標達成計画」という。)を定めるとともに、温室効果ガスの排出の抑制等のために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するよう努めることなどとしており、17年4月に京都議定書目標達成計画(20年3月全部改定)を策定(閣議決定)して、温室効果ガスの排出抑制・吸収量について目標達成のための対策と施策を行っている。そして、京都議定書目標達成計画において、「太陽光や太陽熱、風力、バイオマス等を活用した新エネルギーは、地球温暖化対策に大きく貢献するとともに、エネルギー源の多様化に資するため、国の支援策の充実等によりその導入を促進する。」などとされている。このように、再生可能エネルギーは、地球温暖化対策の面からも導入促進が求められている。また、国は、24年度末をもって京都議定書第一約束期間が終了したことに伴い京都議定書目標達成計画に基づく取組も同時期に終了したことから、25年に温対法を改正し、京都議定書目標達成計画に代わり、地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図るために地球温暖化対策に関する計画(以下「地球温暖化対策計画」という。)を定めることとした。

エ 再生可能エネルギーの導入拡大政策

国は、14年に、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(平成14年法律第62号。以下「RPS法」という。)を制定し、15年4月以降、電気事業法(昭和39年法律第170号)に規定する一般電気事業者、特定電気事業者及び特定規模電気事業者(以下、これらを「電気事業者」という。)に対して、太陽光、風力、水力(出力1,000kW以下の発電)、バイオマス(廃棄物発電等)又は地熱によって発電された電気を一定量以上調達することを義務付けることとした。なお、RPS法における電気の価格については、電気事業者と再生可能エネルギー発電事業者(以下「再エネ事業者」という。)との間で定めることとなっている。

そして、国は、21年11月に、エネルギー供給構造高度化法に基づき、電気事業者に対して、500kW未満の太陽光発電の余剰電力について、国が定めた1kWh当たりの価格(以下「調達価格」という。)及び調達価格による調達に係る期間(以下「調達期間」という。)での調達を義務付ける制度(以下「余剰電力買取制度」という。)を創設している。余剰電力買取制度については、電気事業者が調達する電気の調達費用のうち、電気事業者が自ら電気を調達した場合の費用を超過する分の費用について、太陽光発電促進付加金として、通常の電気料金と併せて電気利用者から徴収する仕組みとなっている。

その後、国は、23年に、電気についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源の利用を促進することとして、RPS法に代わって「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(平成23年法律第108号。以下「再エネ法」という。)を制定し、電気事業者による再生可能エネルギー電気(以下「再エネ電気」という。)の調達に関し、その価格、期間等について特別の措置を講ずることにより、電気についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源の利用を促進することが、我が国の国際競争力の強化、地域の活性化等に寄与するなどとしている。そして、24年7月以降は、電気事業者に対して、再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力(出力30,000kW以下の発電)、バイオマス又は地熱)を用いて発電された電気について、調達価格及び調達期間での調達を義務付ける制度(以下「固定価格買取制度」という。)を導入して実施している。

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

再生可能エネルギーに関する事業を実施している主な機関は、内閣府、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省(以下、これらを総称して「6府省」という。)及びNEDO(以下、6府省とNEDOを合わせて「7府省等」という。)となっている。

国は、26年4月にエネルギー基本計画を見直し、再生可能エネルギーに関しては、「2013年から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく。」とする政策の方向性を示しており、7府省等における再生可能エネルギーに関する事業を含む予算額は、毎年度多額に上っている。また、7府省等が直接導入した、又は都道府県、市区町村(一部事務組合を含む。以下同じ。)及び民間団体(以下、これらを合わせて「地方公共団体等」という。)が7府省等の補助金、交付金、助成金、負担金等(以下「国庫補助金等」という。)を活用して導入した再生可能エネルギー設備も多数に上っている。また、24年7月に再エネ法に基づく固定価格買取制度が導入されて以降、国庫補助金等を活用して導入した再エネ発電設備によって発電された電気を固定価格買取制度に基づき売電する地方公共団体等が増加している。そして、地方公共団体において、国庫補助金等を活用して再生可能エネルギー設備を導入する場合は、導入した再生可能エネルギー設備を効率的に活用して、国の施策に準じた施策を講ずるとともに、その区域の実情に応じた施策を実施等するための計画を策定することが重要である。そこで、7府省等における再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等について、経済性、効率性、有効性等の観点から、7府省等及び地方公共団体等が導入した再生可能エネルギー設備は導入目的どおり活用されているか、6府省において再エネ法に基づく固定価格買取制度における国庫補助金等の取扱いは適切に行われているか、地方公共団体において再生可能エネルギーの導入等に関する計画が適切に策定されているかなどに着眼して検査を実施した。

(2) 検査の対象及び方法

21年度から25年度までの間に、7府省等が直接導入した、又は地方公共団体等が国庫補助金等を活用して導入した再生可能エネルギー発電設備(太陽光、風力、水力、バイオマス又は地熱。以下「再エネ発電設備」という。)及び再生可能エネルギー源による熱利用設備(太陽熱、雪氷熱、バイオマス熱、温度差熱、地中熱、空気熱又は温泉熱。以下「再エネ熱利用設備」という。)等を対象とした。

そして、7府省等及び12道府県(注1)において、再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等について、関係資料の提出や説明を受けたり、現地の状況を確認したりするなどして会計実地検査を実施した。また、7府省等並びに上記の12道府県及び32都府県(注2)の計44都道府県(管内1,615市町村)から21年度から25年度までの間における再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等に係る調書の提出を受けるなどして、再生可能エネルギーの導入状況等について検査を実施した。

なお、東日本大震災により特に甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島各県については、検査の対象から除外した。

(注1)
12道府県  北海道、京都府、青森、千葉、神奈川、愛知、山口、徳島、福岡、熊本、鹿児島、沖縄各県
(注2)
32都府県  東京都、大阪府、秋田、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、香川、愛媛、高知、佐賀、長崎、大分、宮崎各県

3 検査の状況

(1) 再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等

ア 再生可能エネルギーに関する事業の実施状況

21年度から25年度までの間に、7府省等が自ら又は委託者として導入した再エネ発電設備は47設備で191億6199万円、再エネ熱利用設備は39設備で39億2351万円となっていて、地方公共団体等が7府省等の国庫補助金等を活用して導入した再エネ発電設備(以下「再エネ発電設備(補助)」という。)は6,628設備で1808億8557万円、再エネ熱利用設備(以下「再エネ熱利用設備(補助)」という。)は1,122設備で509億0257万円となっていた。また、20年度から25年度までの間に、経済産業省所管の国庫補助金を活用した太陽光発電設備(住宅用)は1,091,724設備(国庫補助事業実績額2214億2663万円)となっていた。

上記の事業費を、再生可能エネルギー設備を整備する事業(整備事業)、再生可能エネルギーを利活用するための実証事業(実証事業)及び再生可能エネルギーを利活用するための研究事業(研究開発事業)の分類別についてみると、整備事業が計4412億1002万円と最も多く、次いで、実証事業が計263億0188万円等となっていた。そして、7府省等のうち、整備事業を最も多く実施しているのは経済産業省(事業費2602億2477万円。4412億1002万円の58.9%)、次いで、環境省(同734億0441万円。同16.6%)となっており、実証事業を最も多く実施しているのはNEDO(同127億7543万円。263億0188万円の48.5%)、次いで、経済産業省(同53億6636万円。同20.4%)となっていた。

イ 再生可能エネルギー設備の廃止及び休止の状況

7府省等が自ら若しくは委託者として、又は地方公共団体等が国庫補助金等を活用して導入した再エネ発電設備及び再エネ熱利用設備のうち、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)に規定される耐用年数内の設備(国の場合)又は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(昭和30年法律第179号)に基づき定められる処分制限財産の処分制限期間内の設備(地方公共団体等の場合)を対象として、21年度から25年度までの間に廃止された設備についてみると、8設備となっていた。そして、事業主体は、これらの設備はいずれも一定期間は稼働していたとしており、廃止の主な理由を、設備が破損したことなどとしている。

また、21年度から25年度までの間に導入した設備のうち、26年3月末時点において休止している設備は41設備となっていた。そして、事業主体は、休止の主な理由を、故障の原因を調査中のため、修理や部品等の調達に時間を要しているためなどとしている。また、これら41設備の中には、1年以上休止している設備が8設備見受けられた。このほか、20年度以前に国庫補助事業で導入した設備が休止しているもの1設備(国庫補助金交付額2億8496万円(10、11、13各年度))が見受けられた。

ウ 7府省等が実施している再生可能エネルギーに関する事業の重複等の状況

7府省等が実施している再生可能エネルギーに関する国庫補助事業には、類似の事業が多数見受けられ、また、各国庫補助事業に関する情報は府省ごとに発信されている。このような状況について、地方公共団体に見解を徴したところ、これらの情報の把握や類似事業の比較分析等に相当の時間を要することなどから、いわゆる事業の縦割りによる弊害等について問題があるなどとしている。

21年度から25年度までの間に学校に導入された太陽光発電設備についてみると、5府省、計3,830設備(国庫補助金等交付額546億2445万円)となっており、その内訳は、文部科学省が3,506設備(同483億1522万円)、環境省が145設備(同28億9476万円)、内閣府が121設備(同27億2507万円)、経済産業省が46設備(同5億7099万円)、国土交通省が12設備(同1億1839万円)となっていた。

上記のように、地方公共団体等が学校に太陽光発電設備を導入した際に活用した国庫補助金等を所管する府省は5府省に上っている。また、各府省が実施する国庫補助事業の目的は様々であり、例えば、文部科学省における目的は環境教育のため、環境省における目的は防災拠点の機能維持のためなどとなっている。

そして、太陽光発電設備を導入した地方公共団体によれば、上記のように各府省が異なる目的別に様々な国庫補助事業を用意していることは、選択の幅が広がるなどという面において歓迎するとしている。一方、国庫補助事業を所管する府省が複数にまたがることから各府省がどのような国庫補助事業を行っているのかについて情報収集が困難であることなどの問題点を指摘する地方公共団体も見受けられる。

(2) 再エネ法に基づく固定価格買取制度の実施状況等

ア 再エネ法に基づく固定価格買取制度の概要等

(ア) 再エネ法に基づく固定価格買取制度の概要

前記のとおり、再生可能エネルギー源の利用を促進することとして、再エネ法に基づき、24年7月1日から固定価格買取制度が導入され実施されている。

電気事業者が再エネ電気の買取りに要する費用は、電気の使用者から、使用した電気に係る電気料金と併せて再エネ電気の供給の対価の一部として賦課金を徴収することにより賄うこととなっている。

(イ) 再エネ電気の調達価格及び調達期間

再エネ法によれば、経済産業大臣は、毎年度、再エネ発電設備の区分、設置の形態及び規模ごとに調達価格及び調達期間(以下「調達価格等」という。)を定めることとされている。

調達価格は、再エネ発電設備による再エネ電気の供給を調達期間にわたり安定的に行うことを可能とする価格として、当該供給が効率的に実施される場合に通常要すると認められる費用等を基礎とし、我が国における再エネ電気の供給量の状況、再エネ発電設備を用いて再エネ電気を供給しようとする者が受けるべき適正な利潤等を勘案して定めるものとされている。また、調達期間は、再エネ発電設備による再エネ電気の供給の開始から、その供給の開始後に行われる再エネ発電設備の重要な部分の更新の時までの標準的な期間を勘案して定めるものとされている。

そして、経済産業大臣は、再エネ法に基づき、24年度以降、毎年度調達価格等(図表2参照)について定めて、これらを告示している(以下「調達告示」という。)。

また、調達告示によれば、再エネ法の施行日の前に発電を開始した再エネ発電設備に係る調達期間は、調達告示に規定する調達期間から、発電開始日から再エネ法の施行の日までの期間に相当する期間を除いた期間とするとされている。

図表2 調達告示における調達価格等

再エネ発電設備の区分 太陽光 風力 水力 バイオマス 地熱
調達区分 10kW以上 10kW未満 20kW以上 20kW未満 洋上風力
(20kW以上)
1000kW以上~30000kW未満 200kW以上~1000kW未満 200kW未満 特定水力発電設備 注(2) メタン発酵バイオガス、固形燃料燃焼(リサイクル木材)等 1.5万kW以上 1.5万kW未満
(200kW以上~1000kW未満) (1000kW以上~30000kW未満)
平成24年度調達価格 注(1) 40円 42円等 22円 55円 24円 29円 34円 13円~39円 26円 40円
25年度調達価格 36円 38円等 22円 55円 24円 29円 34円 13円~39円 26円 40円
26年度調達価格 32円 37円等 22円 55円 36円 24円 29円 34円 21円 14円 13円~39円 26円 40円
調達期間 20年 10年 20年 20年 20年 20年 20年 20年 20年 20年 20年 15年 15年
注(1)
平成24年7月1日から25年3月31日まで
注(2)
特定水力発電設備とは、水力発電設備のうち、水車及び発電機、変圧器、遮断機その他の電気設備の全部並びに水圧管路の全部若しくは一部のみを新設し、又は更新するもの
注(3)
10kW未満の太陽光発電設備以外の再エネ発電設備の調達価格は、本表の金額に消費税相当額を加えて得た額である。なお、消費税率は、平成24、25両年度については調達価格の5%、26年度については同8%である。

調達価格には、再エネ発電設備の建設価格が織り込まれている。また、通常よりも高い価格で売電を行うことにより再エネ事業者が得ることとなる利益は、賦課金の形で電気の使用者、最終的には国民の負担となる。これらのことなどを勘案して、再エネ発電設備に交付された補助金と売電による利益とが重複し、再エネ事業者に対していわば二重の給付となることを回避する観点から、調達告示によれば、再エネ事業者が、固定価格買取制度の導入目的(再生可能エネルギー源の利用等の促進)と政策目的が重複する経済産業省所管の国庫補助金である地域新エネルギー等導入促進対策費補助金、新エネルギー等事業者支援対策費補助金、新エネルギー事業者支援対策費補助金及び中小水力・地熱発電開発費等補助金(以下、これらを合わせて「4補助金」という。)を活用して導入した再エネ発電設備で発電した電気については、調達価格から国庫補助金相当額を控除することとされている(図表3参照)。

図表3 調達価格から国庫補助金相当額を控除する算式

調達価格から国庫補助金相当額を控除する算式

イ 固定価格買取制度施行に伴う6府省の再エネ発電設備に対する国庫補助金等の取扱状況

固定価格買取制度において認定を受け、国庫補助金等を活用して導入した設備(以下「認定設備(補助)」という。)に対する国庫補助金等の取扱状況についてみると、都道府県等が認定設備(補助)を導入する際に活用した国庫補助事業は、計41事業であった。そして、これらの国庫補助事業において認定設備(補助)に対する国庫補助金等の取扱いについてみると、国庫補助金等の取扱いに関する規定がないものが17事業と最も多くなっていた。一方、調達価格から当該国庫補助金等相当額を控除することとされている国庫補助事業が4補助金の4事業あるほか、一部の国庫補助事業においては、国庫補助金等相当額を返還させていたり、認定設備(補助)に係る売電収入の使途を限定していたりするなどしていた。

上記取扱いの区分ごとに認定設備(補助)を分類すると、計853設備のうち、国庫補助金等を返還しなくてもよいこととしている設備は470設備(853設備の55.0%)、国庫補助金等の取扱いに関する規定がない設備は169設備(同19.8%)、売電収入の使途を限定している設備は95設備(同11.1%)、固定価格買取制度の調達価格から国庫補助金等相当額を控除することとしている設備は84設備(同9.8%)、自家消費分と売電分との割合で案分するなどして国庫補助金等相当額を一部返還させることとしている設備は26設備(同3.0%)、売電は補助事業の対象外であることから国庫補助金等を全額返還させることとしている設備は3設備(同0.3%)等となっていた。国庫補助金等を返還しなくてもよいこととしている470設備は、文部科学省が当該補助事業の目的を勘案して国庫補助金等の取扱いをこのように定めており、その全てが同省所管の補助事業により導入されているものであった。

以上のとおり、認定設備(補助)を導入する際に活用した国庫補助金等の取扱いに関する規定がない又は国庫補助金等を返還しなくてもよいこととしている国庫補助事業が多数あり、これに係る認定設備(補助)639設備については、当該国庫補助金等の交付目的が固定価格買取制度の導入目的とは異なっていることなどを理由に、調達価格から国庫補助金等相当額を控除せずに売電が行われていたり、国庫補助金等が返還されていなかったりしていた。

しかし、前記のとおり、固定価格買取制度における調達価格には再エネ発電設備の建設価格が織り込まれており、また、通常よりも高い価格で売電を行うことにより、再エネ事業者が得ることとなる利益は、賦課金の形で最終的に国民の負担となるものであることから、再エネ発電設備の導入に国庫補助金等を活用するとともに、固定価格買取制度に基づき売電を行う場合は、国庫補助金等の交付目的を逸脱していないかなどについて、適宜、確認していく必要がある。

(3) 地方公共団体における再生可能エネルギーの導入等に関する計画の策定等

ア 再生可能エネルギーの導入等に関する計画の策定状況

エネルギー基本法によれば、地方公共団体は、基本方針にのっとり、エネルギーの需給に関し、国の施策に準じて施策を講ずるとともに、その区域の実情に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有するとされている。そして、前記のように、地方公共団体は、エネルギー基本法に基づく施策を実施するなどのため、国庫補助金等を活用して再生可能エネルギー設備を多数導入しており、交付された国庫補助金等の額も多額に上っている。

一方、温対法によれば、都道府県及び市町村は、地球温暖化対策計画に即して、当該都道府県及び市町村の事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置に関する計画(以下「地方公共団体実行計画(事務事業編)」という。)を策定するものとされている。また、都道府県並びに政令指定都市、中核市及び特例市については、地方公共団体実行計画(事務事業編)のほか、その区域の自然的社会的条件に応じて温室効果ガスの排出の抑制等を行うための施策に関する事項として、太陽光、風力その他の化石燃料以外のエネルギーであって、その区域の自然的条件に適したものの利用の促進に関する事項、その区域の事業者又は住民が温室効果ガスの排出の抑制等に関して行う活動の促進に関する事項等についても地方公共団体実行計画に定める(以下、当該部分を「地方公共団体実行計画(区域施策編)」という。)ものとされている。

また、環境基本法によれば、地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策等を策定し、及び実施する責務を有するとされている。このため、多くの地方公共団体は、国の環境基本計画に準じ、その区域における環境保全施策の基本となる計画(以下「地方公共団体環境基本計画」という。)を策定している。そして、第四次環境基本計画において、地方公共団体に期待される役割として、地域資源をいかした再生可能エネルギー等の導入を実施することが示されていることから、一部の地方公共団体環境基本計画には、再生可能エネルギーの導入に関する事項等が定められている。

このように、地方公共団体は、国の施策に準ずるなどして、地方公共団体実行計画(事務事業編)、地方公共団体実行計画(区域施策編)、地方公共団体環境基本計画等において、自ら再生可能エネルギーの導入等に関する事項を盛り込んで策定することが期待されている(以下、再生可能エネルギーの導入等に関する事項を盛り込んで策定された地方公共団体実行計画等を「再エネ導入促進計画」という。)。

したがって、地方公共団体が適切な再エネ導入促進計画を策定することは、国庫補助金等を活用して導入した再生可能エネルギー設備を効率的に活用して、国の施策に準じた施策を講じ、その区域の実情に応じた施策を実施していくことなどを確保する上で重要な第一歩となるものである。

そこで、検査を実施した44都道府県及び1,615市町村、計1,659団体における再エネ導入促進計画の策定状況等についてみると、再エネ導入促進計画を策定している地方公共団体は、966団体(1,659団体の58.2%)となっていた。しかし、残りの693団体(同41.7%)は、再エネ導入促進計画を特段策定しておらず、特に町村の半数以上が再エネ導入促進計画を策定していない状況となっていた。また、966団体が策定した再エネ導入促進計画における再生可能エネルギーの導入目標の設定状況についてみると、目標年度や目標数値を具体的に設定するなど定量的な導入目標を設定している地方公共団体が466団体となっていた一方で、できるだけ早い時期に可能な限り再生可能エネルギーの導入を図るというように、定性的な導入目標だけを設定している地方公共団体が500団体となっていた。このほか、再生可能エネルギーの導入を推進するために体制を整備することとして、条例等を制定して再生可能エネルギーの導入促進を図っている地方公共団体が250団体見受けられた。

そして、地方公共団体が再エネ導入促進計画に基づく施策を着実に実施していくためには、設定した目標に対する達成状況を検証し、達成度を勘案して施策や目標の見直しをすることなどが重要であり、検証の実施を規定している地方公共団体は、312団体(466団体の66.9%)となっていた。検証の実施状況についてみると、計画期間の終了年度又は計画期間中の中間年度等において、約半数の164団体(312団体の52.5%)が検証を実施していた。

また、再エネ導入促進計画を策定していない前記の693団体について、その理由をみると、再エネ導入促進計画を策定したいが、職員が少なく他の業務を優先させる必要があるため、策定していないとしている地方公共団体が514団体(693団体の74.1%)と最多数を占めるなどの状況となっていた。また、一部の地方公共団体は、長期的なエネルギー需給動向や送電網の整備等について不確定要素があるため、再生可能エネルギーの導入事業の採算性を考えると、計画を策定することに消極的となるとしていた。

イ 地域における再生可能エネルギーの導入拡大に関する問題点

地方公共団体における再生可能エネルギーの導入拡大に関する問題点について、44都道府県及び19政令指定都市、計63団体から意見を聴取したところ、多種多様な内容となっている。このうち、国庫補助事業に関する問題点が数多く挙げられており、中でも「再生可能エネルギーに係る様々な国庫補助メニューを一本化あるいは交付金化できないか。」など補助金・財政支援に関する項目が68件と最も多くなっている。また、「国の補助事業の所管が複数にまたがることから情報収集が困難である。」など情報開示に関する問題点等が挙げられている。

4 所見

国は、エネルギー需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進し、もって地球環境の保全に寄与することなどを目的としてエネルギー基本法を制定し、これに基づき基本計画を策定している。そして、23年3月に発生した東日本大震災を契機として、電力供給システムにおける再生可能エネルギーを含めた多様なエネルギー源の活用が改めて大きな課題となったことなどから、26年4月に基本計画を見直し、再生可能エネルギーに関しては、「2013年から3年程度導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく。」とする政策の方針を示していることなどから、再生可能エネルギーに関する事業は今後も引き続き実施されるものである。ついては、以上の検査の状況を踏まえて、国及びNEDOにおいては、次の点について留意することが望まれる。

ア 再生可能エネルギーに係る国庫補助金等を所管する府省において、処分制限期間内に長期間休止している再エネ発電設備(補助)及び再エネ熱利用設備(補助)について地方公共団体等から適宜に報告を求めて、その稼働状況を把握するとともに、修理を速やかに行い再稼働させ、また、再稼働できない場合は速やかに廃止等の手続をとるよう地方公共団体等に対して助言する。

イ 国において、複数の府省が所管する様々な再生可能エネルギーに係る国庫補助金等に関する情報を一元化して、地方公共団体等に対して開示することを検討する。

ウ 認定設備(補助)に係る国庫補助金等を所管する府省において、再エネ事業者が認定設備(補助)で発電した電気を固定価格買取制度に基づき売電する場合は、国庫補助金等の交付目的を逸脱していないかなどについて、適宜、確認する。

エ 国において、再エネ導入促進計画を策定していない地方公共団体に対して再エネ導入促進計画を策定するよう助言することなどを検討する。

オ 国及びNEDOにおいて、再生可能エネルギーに関する事業を実施するに当たり、地域において生じている再生可能エネルギーの導入拡大に係る問題点についての情報を収集し、必要に応じてこれらに対する対策を講ずることに努める。

本院としては、今後とも、国における再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等について引き続き注視していくこととする。