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年金記録問題に関する日本年金機構等の取組に関する会計検査の結果について


(8) 機構における契約方式、入札の状況等について

ア 機構の契約方式等

(ア) 機構の契約方式の概要

機構の支出の原因となる契約は、租税収入等及び保険料が支払の財源として充てられていることから、最も効率的な使用となるように、契約相手方の選定が適切に行われるなどの必要がある。

機構は、前記のとおり、中期計画及び年度計画を策定しており、これらの計画では、事業運営の効率化の取組の一つとして、契約の競争性及び透明性の確保並びにコストの削減に努め、競争入札(総合評価方式を含む。以下同じ。)による調達を徹底することとしている。

機構の契約相手方の選定方法、すなわち、その契約方式については、日本年金機構会計規程(平成22年1月1日規程第50号。以下「会計規程」という。)によれば、一般競争契約及び随意契約があり、随意契約によることができるとされているのは、①契約の性質又は目的により一般競争入札によることが適当ではないと認められる場合、②緊急の必要により一般競争入札によることができないと認められる場合、③一般競争入札によることが不利と認められる場合、④契約に係る予定価格が少額である場合、⑤一般競争入札を行った場合において、入札者がない場合、⑥一般競争入札を行った場合において、再度入札を行っても落札者がない場合であるとされている。

そして、一般競争入札のうち、契約の性質及び目的に応じ、予定価格の範囲内で最低の価格をもって申込みをした者以外の者を契約の相手方とすることが適当であると認める契約については、入札価格に加え、性能、機能、技術等を総合的に評価するなどの総合評価方式によることができることとなっている。

また、(日本年金機構契約事務取扱細則 平成22年1月1日細則第20号)によれば、前記①の随意契約による場合で、契約の競争性及び透明性を確保するため必要があると認める場合には、複数の者から企画、技術の提案等をさせて契約の相手方を選定する企画競争方式によるよう努めることとされている。

さらに、「機構本部において公募を行う場合の手続き(指示・依頼)」(平成24年3月28日調達指2012-12)において、公募の契約方式について定めており、公募には、契約の相手方を選定するための通常の公募と契約の相手方の有無を確認するための調査の公募がある。通常の公募は、原則として、書籍の購入等のように価格変動要素がなく、複数の履行可能業者が存在する場合に実施し、公募方式による調達の公示を機構ホームページ等に掲載し、参加の意思表示をした相手方と契約する方式である。調査の公募は、価格変動要素があり、履行可能業者の有無の調査を行う場合に実施し、調査の公募の公示を機構ホームページ等に掲載して、参加の意思表示をした相手方が複数の場合は一般競争入札、企画競争等により、参加の意思表示をした相手方が1者の場合は随意契約により、その相手方と契約する方式である。

(イ) 機構における契約の適正を確保するための体制

会計規程等によれば、機構は、契約の締結に当たって、契約業務の適正化及び達委員会及び各ブロック本部にブロック本部長を委員長とする契約審査会を設置することとされている。そして、概算所要見込額が1億円以上又は総合評価方式による競争契約、(ア)の④から⑥までを除く随意契約(以下「少額等以外の随意契約」という。)等について契約方式等の審査を実施し、少額等以外の随意契約のうち、概算所要見込額が500万円以上のものについては、調達委員会等で審査後、監事及び理事長に契約締結前に報告することとされている。

また、機構が締結する契約が適正に行われるよう監視するために、機構本部に監事及び外部委員で組織する契約監視委員会を設置して、同委員会が抽出した調達案件、監事及び理事長に契約締結前に報告された随意契約の事後審査並びに点検等について審議することとなっている。

イ 年金記録問題への取組のために締結した契約の事項別の内容等

機構が22年1月1日から26年3月31日までの間に年金記録問題への取組のために契約を締結し、同日までに年金記録問題対策に関する経費として国から交付を受けた運営費交付金を充てて支払を行った契約計462件(支出済額計1444億0537万余円)について、事項別に示すと、図表1-35のとおりとなっていて、契約件数及び支出済額は、紙台帳等とオンライン記録との突合せ関係が計399件(支出済額計1433億0113万余円)と最も多くなっていた。

図表1-35 年金記録問題への取組のために締結した契約の事項別件数、支出済額

(単位:件、千円)
事項別の内容 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
件数 支出済額 件数 支出済額 件数 支出済額 件数 支出済額 件数 支出済額 件数 支出済額
ねんきん特別便等関係
(各種便の送付、専用ダイ
ヤル、顧客への回答の処
理等)
1 137,746 0 - 1 132 10 43,587 6 6,502 18 187,968
紙台帳等とオンライン記録
との突合せ関係(紙台帳
検索システムの構築、突合 せ作業、国民年金特殊台
帳との突合せ等)
1 3,412 84 21,594,778 114 60,342,858 111 47,301,171 89 14,058,917 399 143,301,138
「ねんきんネット」関係(シ
ステム構築等)
0 - 3 270,196 13 4,598 19 148,914 10 492,555 45 916,265
2 141,159 87 21,864,975 128 60,347,590 140 47,493,672 105 14,557,975 462 144,405,373
(注)
支出済額の年度区分は、契約の相手方に支払を行った年度で整理している。一方、同様に事項別の内容で区分している図表1-48は、機構の決算(損益計算書ベース)により年度区分しており、年度の決算において費用と計上されているものの中には翌年度に支払を行っているものがある。このように年度区分が同一でないなどのために、支出済額と図表1-48の経費の金額とは一致しない。

ウ 契約方式の適用状況等

機構が締結した上記の契約について契約方式別の件数及び支出済額は、図表1-36のとおり、一般競争契約が計118件、計242億5255万余円、随意契約(企画競争、公募によるものを含む。以下同じ。)が計344件、計1201億5281万余円となっていた。全体に占める件数、支出済額の割合は、一般競争契約が件数で25.5%、支出済額で16.8%、随意契約が件数で74.5%、支出済額で83.2%となっていた。

図表1-36 契約方式別の件数、支出済額等

(単位:件、%、千円)
契約方式 平成21年度 22年度 23年度
件数 支出済額 件数 支出済額 件数 支出済額
割合 割合 割合 割合 割合 割合
一般競争契約 0 0 - 0 50 57.5 19,652,712 89.9 17 13.3 2,923,499 4.8
随意契約 2 100 141,159 100 37 42.5 2,212,262 10.1 111 86.7 57,424,090 95.2
2 100 141,159 100 87 100 21,864,975 100 128 100 60,347,590 100
契約方式 24年度 25年度
件数 支出済額 件数 支出済額 件数 支出済額
割合 割合 割合 割合 割合 割合
一般競争契約 32 22.9 783,957 1.7 19 18.1 892,385 6.1 118 25.5 24,252,555 16.8
随意契約 108 77.1 46,709,715 98.3 86 81.9 13,665,590 93.9 344 74.5 120,152,817 83.2
140 100 47,493,672 100 105 100 14,557,975 100 462 100 144,405,373 100

エ 競争性のある契約の割合

機構は、第1期中期計画(22年1月1日から26年3月31日までの期間に係る中期計画をいう。)及び同期間における各事業年度の年度計画で、随意契約によることができる契約予定価格が少額のものを除く契約のうち、競争入札の契約件数が占める割合(以下「競争入札の割合」という。)について80%以上の水準を確保することを目指すこととしている。そして、前記のとおり、厚生労働大臣は、機構の業務実績について評価を行うこととされていることから、機構は、毎事業年度、業務実績報告書を厚生労働大臣に提出していて、競争入札の割合の実績についても報告している。

上記の競争入札の割合は、機構が当該事業年度に締結する契約全体で算出されるものであり、一部の契約のみを対象に算出することは想定されていないものの、機構において、年金記録問題対策に関する経費として支出された額は多額であることなどから、図表1-35の年金記録問題への取組のための契約から契約予定価格が少額のものを除く契約についての競争入札の割合(以下「年金記録問題契約分の競争割合」という。)をみると、図表1-37のとおり、第1期中期計画期間で33.8%となっていた。

図表1-37 年金記録問題契約分の競争割合

(単位:件、%)
競争入札の割合 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
競争入札の件数  a 0 50 10 27 11 98
随意契約の件数 b 2 23 70 58 39 192
契約件数(a+b) c 2 73 80 85 50 290
競争入札の割合(a /c) 0.0 68.5 12.5 31.8 22.0 33.8

なお、機構が締結した契約全体の競争入札の割合(以下「契約全体の競争割合」という。)について、22年度から25年度までのものは各事業年度の業務実績報告書に基づき、21年度のものは機構からの報告に基づき、それぞれ示すと、図表1-38のとおり、第1期中期計画期間で63.7%となっていた。

図表1-38 契約全体の競争割合

(単位:件、%)
競争入札の割合 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
競争入札の件数  a 72 1,143 1,061 1,030 864 4,170
随意契約の件数 b 55 574 595 636 518 2,378
契約件数(a+b) c 127 1,717 1,656 1,666 1,382 6,548
競争入札の割合(a /c)(注) 56.7 66.6 64.1 61.8 62.5 63.7
(注)
前記のとおり、第1期中期計画等において、機構は、契約予定価格が少額のものを除いた競争入札の割合について80%以上の水準を目指すとしていたが、第1期中期計画期間で契約全体の競争割合は63.7%となるなどしていた。

機構は、平成21年度から25年度までの業務実績報告書において、上記の各事業年度の契約全体の競争割合(a/c)の数値を示すとともに、契約予定価格が少額のものに加えて、事務室等の賃貸借の更新契約等の契約の性質等から随意契約によることがやむを得ないものを除くなどした補正後の競争入札の割合(21年度79.1%、22年度84.1%、23年度83.0%、24年度83.6%、25年度81.9%)をみて、目標の水準に達していると自己評価していた。そして、厚生労働省においても、機構の各年度の業務実績の評価において、機構の補正後の競争入札の割合等に基づき、「概ね計画を達成できているものと認められる。」としていた。

上記のとおり、第1期中期計画期間における契約全体の競争割合が63.7%となっているのに対し、年金記録問題契約分の競争割合は33.8%となっていた。これは、22年度に総合評価方式で契約した紙台帳等とオンライン記録との突合せ業務委託について、23年度以降も同じ契約相手方に随意契約により業務を委託したことなどによると思料される。

オ 一般競争契約の入札実施状況

機構が締結した前記の年金記録問題への取組のための一般競争契約について、21年度から25年度までの間の事項別の入札者数をみると、図表1-39のとおり、1者入札となっている契約が計25件見受けられた。なお、「ねんきんネット」関係において、入札者数が5者以上となっている契約の割合が高くなっていた。

図表1-39 一般競争契約の事項別の入札者数

(単位:件)
事項別の内容 平成21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
入札者数の区分 入札者数の区分 入札者数の区分 入札者数の区分 入札者数の区分 入札者数の区分
1者 2~4
5者
以上
1者 2~4
5者
以上
1者 2~4
5者
以上
1者 2~4
5者
以上
1者 2~4
5者
以上
1者 2~4
5者
以上
ねんきん特別便等関係(各種
便の送付、専用ダイヤル、顧客
への回答の処理等)
0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 4 1 0 0 2 0 4
紙台帳等とオンライン記録との突合
せ関係(紙台帳検索システムの構
築、突合せ作業、国民年金特殊台
帳との突合せ等)
0 0 0 9 11 29 5 11 0 3 12 4 5 7 2 22 41 35
「ねんきんネット」関係(システ
ム構築等)
0 0 0 0 1 0 0 0 1 1 1 6 0 0 4 1 2 11


 
0 0 0 9 12 29 5 11 1 5 13 14 6 7 6 25 43 50

カ 随意契約の適用理由

機構が締結した前記の年金記録問題への取組のための随意契約について、21年度から25年度までの間の随意契約の適用理由別にみると、図表1-40のとおり、件数及び支出済額とも、①契約の性質又は目的により一般競争入札によることが適当ではないと認められる場合が計251件、計1198億4043万余円となっていて最も多く、全体に占める割合も、件数で73.0%、支出済額で99.7%を占めていた。これは、紙台帳等とオンライン記録との突合せ業務委託等の契約金額が比較的高いものを①の適用理由に該当するものとしていることによる。

図表1-40 随意契約の適用理由別の件数、支出済額等

(単位:件、%、千円)
随意契約の適用理由 平成21年度 22年度 23年度
件数 支出済額 件数 支出済額 件数 支出済額
割合 割合 割合 割合 割合 割合
①契約の性質又は目的により一般競
争入札によることが適当ではないと認
められる場合
2 100 141,159 100 31 83.8 2,209,134 99.9 77 69.4 57,409,926 100.0
②緊急の必要により一般競争入札
によることができないと認められる場
0 0 - 0 0 0 - 0 1 0.9 132 0.0
③一般競争入札によることが
不利と認められる場合
0 0 - 0 0 0 - 0 0 0 - 0
④契約に係る予定価格が少額
である場合
0 0 - 0 6 16.2 3,128 0.1 32 28.8 7,966 0.0
⑤一般競争入札を行った場合におい
て、入札者がない場合又は⑥一般競
争入札を行った場合において、再度入
札を行っても落札者がない場合
0 0 - 0 0 0 - 0 1 0.9 6,065 0.0
2 100 141,159 100 37 100 2,212,262 100 111 100 57,424,090 100
随意契約の適用理由 24年度 25年度
件数 支出済額 件数 支出済額 件数 支出済額
割合 割合 割合 割合 割合 割合
①契約の性質又は目的により一般競
争入札によることが適当ではないと認
められる場合
78 72.2 46,525,398 99.6 63 73.3 13,554,820 99.2 251 73.0 119,840,439 99.7
②緊急の必要により一般競争入札
によることができないと認められる場
0 0 - 0 0 0 - 0 1 0.3 132 0.0
③一般競争入札によることが
不利と認められる場合
0 0 - 0 0 0 - 0 0 0 - 0
④契約に係る予定価格が少額
である場合
27 25.0 12,415 0.0 22 25.6 7,024 0.1 87 25.3 30,534 0.0
⑤一般競争入札を行った場合におい
て、入札者がない場合又は⑥一般競
争入札を行った場合において、再度入
札を行っても落札者がない場合
3 2.8 171,900 0.4 1 1.2 103,745 0.8 5 1.5 281,711 0.2
108 100 46,709,715 100 86 100 13,665,590 100 344 100 120,152,817 100