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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書
  • 平成26年10月
  • 第2 検査の結果
  • 1 年金記録問題に関する事業の実施状況

年金記録問題に関する日本年金機構等の取組に関する会計検査の結果について


(11) 総務省における年金記録問題への取組の実施状況

ア 第三者委員会の業務の概要

前記のとおり、年金記録に係る確認の申立てについて調査審議を行うなどのため、19年6月から総務省に第三者委員会が設置された。第三者委員会は、委員30人以内で構成される中央委員会と委員数の上限が地域の実情に応じて20人から150人と定められている地方委員会から成っている。そして、中央委員会は、①総務大臣の求めに応じて、年金記録に係る苦情のあっせんに当たっての基本方針等を調査審議すること、②総務大臣の求めに応じて、年金記録に係る苦情のあっせんであって他の年金記録に係る苦情のあっせんを行うに際しての先例となると認められるものに関する調査を行うなどしてあっせん案を作成することを所掌事務としている。また、地方委員会は、総務大臣の求めに応じ、年金記録に係る苦情のあっせんに関する調査を行い、当該調査の結果及び基本方針に基づき、あっせん案を作成することなどを所掌事務としている。このあっせん案を作成するに当たっては、中央委員会及び地方委員会は、年金記録確認第三者委員会令(平成19年政令第186号)により部会を設置し、部会の議決をもって中央委員会又は地方委員会の議決とすることができることとなっている。

そして、中央委員会及び各地方委員会には、具体的な調査等を行う事務室が置かれ、総務省の職員等が配置されている。

年金記録に係る確認の申立てから調査審議、総務大臣の厚生労働大臣へのあっせんまでの流れは図表1-50のとおりとなっている。

図表1-50 年金記録に係る確認の申立てから調査審議、総務大臣の厚生労働大臣へのあっせんまでの流れ

(第三者委員会ホームページを基に会計検査院が作成)

図表1-50 年金記録に係る確認の申立てから調査審議、総務大臣の厚生労働大臣へのあっせんまでの流れ画像

また、前記のとおり、年金記録に係る確認の申立ての多数は全国50か所(25年5月16日からは9か所に集約)に設置された地方委員会で調査審議等されることなどから、地方委員会が行う調査審議及びあっせん案の作成に当たっては統一的な運用が求められており、これらは、総務大臣が中央委員会の調査審議の結果に従って定めた「年金記録に係る申立てに対するあっせんに当たっての基本方針」(平成19年7月10日総務大臣決定。以下、「基本方針」という。)等によることとなっている。基本方針においては、本人からの保険料納付の領収書等の直接的な証拠がなくても、当時の家計簿等の記載内容、申立てがなされた当時の集金等の実態等の関連資料、周辺事情を踏まえて、社会通念に照らして「明らかに不合理ではなく、一応確からしいこと」などをあっせんに当たっての判断基準としている。さらに、中央委員会が多数の先例を発出することなどにより、その事務処理の統一的な運用を確保している。

そして、前記のとおり、第三者委員会の指摘を受けるなどして、19年12月に厚生年金特例法が成立、施行されたことから、厚生年金において、申立者が事業主に保険料を源泉控除されていた事実が認められるがオンライン記録等には納付済みとされていない場合についても、基本方針等に基づき、第三者委員会は、事業主による保険料納付義務の履行に関する調査をした上であっせん案の作成を行っている。

イ 第三者委員会の業務の実績と人員の状況

(ア) 第三者委員会の事務処理状況

図表1-7で記載した26年3月末までに年金記録に係る確認の申立てを年金事務所等で受け付けた件数(以下「受付件数」という 、第三者委員会に転送された。)件数(以下「転送件数」という。)、第三者委員会で処理した件数(以下「処理件数」という。)等について年度別にみると、図表1-51のとおりとなっていた。

そして、受付件数は21年度に60,374件、転送件数及び処理件数は22年度にそれぞれ60,385件、62,505件とピークとなっていたが、23年度以降は減少傾向にあり、25年度には、受付件数18,038件、転送件数7,919件及び処理件数8,190件と、ピーク時に比べて受付件数は29.9%、転送件数及び処理件数はともに13.1%まで減少していた。

また、各年度の年度末残件数は、22年度末までは2万件前後となっていたが、23年度末3,885件、24年度末2,211件、25年度末1,940件と減少していた。

なお、21年6月に中央委員会が取りまとめた「年金記録確認第三者委員会報告書-これまでの活動実績を振り返って-」(以下「21年報告」という。)によれば、申立内容を第三者委員会で調査する過程で、未統合記録が発見され、あっせんによって基礎年金番号に統合されたものや年金給付に至った例も多数存在したとされており、図表1-51のあっせんの件数にはその分も含まれている。また、厚生年金特例法に基づき、申立者が事業主に保険料を源泉控除されていた事実が認められるがオンライン記録等には納付済みとされていない場合に事業主による保険料納付義務の履行に関する調査をした上であっせんとなった分も、同様に含まれている。さらに、24年度及び25年度に受付件数と転送件数に大きな差があるのは、年金記録に係る確認の申立てに関し、その効率化を図るため、第三者委員会においてこれまでのあっせん事案の分析等を行い、その結果、第三者委員会での調査審議を経ずに年金事務所段階での記録訂正が可能となるよう「年金事務所段階での回復基準」が23年10月に策定されたことなどにより、第三者委員会に転送しないで年金事務所で処理されたものが一定数含まれていることが影響している。

図表1-51 第三者委員会の処理件数等

(単位:件)

年度
平成
19年度

20年度

21年度

22年度

23年度

24年度

25年度

合計
年金事務所等での受付件数 50,752 49,807 60,374 59,912 27,607 17,883 18,038 284,373
年金事務所等からの転送件数(うち地方委員会分) 34,079
(33,568)
49,885
(47,780)
54,925
(52,374)
60,385
(60,336)
26,149
(26,137)
9,833
(9,832)
7,919
(7,916)
243,175
(237,943)
処理件数(うち地方委員会分) 5,796
(5,474)
53,742
(51,614)
57,377
(54,673)
62,505
(62,447)
42,118
(42,104)
11,507
(11,505)
8,190
(8,186)
241,235
(236,003)
年金記録訂正が必要と判断(あっせん) 2,397 20,368 27,562 30,381 19,631 5,454 4,308 110,101
年金訂正不要と判断(非あっせん) 2,938 31,176 26,956 28,879 20,791 5,658 3,506 119,904
取下げなど 461 2,198 2,859 3,245 1,696 395 376 11,230
年度末残件数
(うち地方委員会分)
28,283
(28,094)
24,426
(24,260)
21,974
(21,961)
19,854
(19,850)
3,885
(3,883)
2,211
(2,210)
1,940
(1,940)
注(1)
あっせん案を作成したものについては、全て年金記録が訂正されている。
注(2)
平成19年度の年金事務所等での受付件数には、社会保険庁が受け付けて調査、確認をしていたものを第三者委員会に引き継いだ318件も含まれている。このため、年金事務所等での受付件数の合計284,373件は図表1-7の受付件数284,055件と一致しない。
注(3)
19年度に年金事務所等での受付件数と年金事務所等からの転送件数に差があったり、22年度に年金事務所等からの転送件数が年金事務所等での受付件数を上回ったりしているのは、年金事務所等において年金記録に係る確認の申立てを受け、翌年度に第三者委員会に転送されたものがあるためである。
注(4)
年金事務所等からの転送件数は、第三者委員会が転送を受けた年度で整理しており、図表1-7の第三者委員会への転送件数は、機構が申立てを受け付けた年度で整理している。そして、機構が25年度中に受け付けて26年度に第三者委員会に転送したものがあること、また、19年度の年金事務所等からの転送件数には社会保険庁が第三者委員会に引き継いだ318件が含まれていることから、年金事務所等からの転送件数の合計243,175件と図表1-7の第三者委員会への転送件数242,987件は一致しない。

また、第三者委員会に転送されてから処理を終えるまでに要した平均日数は、中央委員会の抽出調査によれば、図表1-52のとおりとなっていた。

このように、抽出調査を開始した21年2月以降、第三者委員会の委員数等の見直しを行いながら処理期間の短縮が図られている一方で、25年5月の地方委員会の集約化等が行われた後の同年10月以降は、若干処理期間が長くなっている。

図表1-52 年金記録に係る確認の申立てが年金事務所等から第三者委員会に転送されてから処理を終えるまでに要した平均日数

(単位:日)
調査時点 平成
21年2月
21年4月 22年3月 23年3月 25年3月 25年10月 26年3月
平均日数(注) 231.0 171.7 147.6 130.2 100.1 107.8 109.5
(注)
各地方委員会においてそれぞれの調査時点までに処理を終えた事案のうち、直近のものから遡って、国民年金に係るあっせん事案及び訂正不要事案、厚生年金に係るあっせん事案及び訂正不要事案からそれぞれ5件ずつ計20件を抽出し、各地方委員会で受け付けてから処理を終えるまでに要した平均の期間を調査し、全地方委員会の平均を算出したものである。

また、中央委員会及び地方委員会の部会の開催状況は図表1-53のとおりとなっていた。そして、中央委員会及び地方委員会では、調査審議を効率的に行うため、申立事案件数を一定件数確保した上で部会を開催しており、転送件数、処理件数の減少等に伴い部会の開催回数は減少していた。また、体制の見直しが行われた25年度においては、部会の開催回数は半減していた。

図表1-53 中央委員会及び地方委員会の部会の開催状況

(単位:回)
年度 平成
19年度
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
中央委員会 146 113 34 16 13 4 3
地方委員会 2,122 9,204 9,178 8,703 6,305 2,523 1,356
2,268 9,317 9,212 8,719 6,318 2,527 1,359
(注)
事案審議のために開催されたもののほかに、委員長互選等のために開催されたものを含む。

(イ) 転送件数の制度別内訳

第三者委員会が調査等を行うことになる転送件数について、国民年金、厚生年金の年金制度別の内訳の推移をみると、図表1-54のとおりとなっていた。全体の転送件数は22年度をピークに減少傾向にある中で、年金記録問題への対策の取組当初の19、20両年度において、国民年金に関するものの件数が2万件以上となっていたが、その件数は21年度以降、減少していた。そして、全体の転送件数は22年度をピークに減少傾向にある中、近年の申立ての大部分は厚生年金に関するものとなっていた。

これについて、23年6月に中央委員会が取りまとめた「年金記録確認第三者委員会報告書-信頼回復へ向けたこれまでの活動と今後の課題- 」(以下「23年報告」という。)によれば、報告当時の状況として、年金記録の確認を申し立てる事案には、厚生年金に関する申立てで賞与支払届の届出漏れ、賞与額の誤りの事案が多いなどとされている。また、第三者委員会が設置された19年6月以降の厚生年金の記録についての申立ても23年5月末時点で累計7,484件あったなどとされている。

そして、24、25両年度でも厚生年金の年金記録に関する申立ての転送件数が、それぞれ7,281件、6,231件あることからすると、今後も、厚生年金記録に関するもので「年金事務所段階での回復基準」では処理できず第三者委員会の調査審議が必要となる案件が相当数あると思料される。

図表1-54 転送件数の制度別内訳

図表1-54 転送件数の制度別内訳画像

(ウ) 第三者委員会の人員の状況

第三者委員会の委員等の実人員数は、図表1-55及び図表1-56のとおりとなっていた。設置直後の19年7月には、中央委員会及び全国50の地方委員会に、委員計338人、事務室の職員計459人が配置され、20年4月以降、調査審議の迅速化を図る観点から順次体制整備が図られ、21年4月に委員計950人、事務室の職員計2,253人が配置されて体制が拡充された。その後は、未処理件数及び転送件数の減少傾向を踏まえて人員体制が見直されてきた。

そして、24年度には、①申立件数の減少等による転送件数の減少が見込まれる中で、従来どおり1回の部会に諮る申立事案件数が一定件数となるまでに従前より長い期間を要することとなり、この場合、申立ての処理までに要する期間が長期化することが想定されること、また、②人件費等の削減による予算の効率的執行に努める必要があることなどの観点から、地方委員会の体制の見直しの検討が行われた。そして、総務省は、全国50の地方委員会を集約しても受付場所は全国の年金事務所であることに変更がないこと、申立者への調査は主に電話や文書で行っていることにより申立者に新たな負担は生じないことから地方委員会の体制を見直すこととし、体制の見直しに伴う事案処理方法等の具体的な手順について地方委員会と協議を行うなどして、見直しの内容について調整を進めた。

その結果、25年5月16日に年金記録確認第三者委員会令が改正され、50の地方委員会は9地方委員会(注17)に集約され、その他の41地方委員会は廃止された。これにより、同日の地方委員会の委員数は計243人、地方委員会事務室の職員数は計575人となった。

(注17)
9地方委員会  北海道、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州各管区行政評価局、四国行政評価支局及び沖縄行政評価事務所に置かれた地方委員会

図表1-55 第三者委員会委員数

(単位:人)
委員会\年月 平成
19年7月
20年
4月
21年
4月
22年
4月
23年
4月
24年
4月
25年
4月
25年
5月16日
26年
3月末
中央委員会 30 30 29 25 25 20 20 20 16
地方委員会 308 600 921 914 913 817 574 243 237
338 630 950 939 938 837 594 263 253

図表1-56 第三者委員会事務室の職員(常勤・非常勤)数

(単位:人)
職員等\年月 平成
19年7月
20年
4月
21年
4月
22年
4月
23年
4月
24年
4月
25年
4月
25年
5月16日
26年
3月末
中央委員会 常勤 57 58 56 50 44 42 37 38 36
非常勤 10 32 24 28 24 19 18 18 18
67 90 80 78 68 61 55 56 54
地方委員会 常勤 284 628 632 614 560 393 324 231 228
非常勤 108 805 1,541 1,519 1,213 704 344 344 339
392 1,433 2,173 2,133 1,773 1,097 668 575 567
合計 459 1,523 2,253 2,211 1,841 1,158 723 631 621
注(1)
非常勤職員は、主に社労士、行政書士から選出されており、個別の申立ての内容を調査する点について、業務内容は常勤職員と差異はない。
注(2)
平成25年5月16日において地方委員会の非常勤職員数に変動がなかったのは、同年4月の人員体制において、将来の地方委員会の集約化を見越して採用を減らすなどの対応をしていたためである。

(エ) 業務実績と人員の状況との対比

前記のとおり、第三者委員会の委員数等の見直し等が行われているが、このうち、年金記録に係る確認の申立てに関する多数の具体的な調査等を行う地方委員会事務室の職員数の見直しについて、総務省は、その必要人員の判断について、処理件数の動向、現有の職員の処理能力等を総合的に勘案し、各地方委員会が必要とする人員を決定してきたとしている。

第三者委員会は、国民の立場に立って申立てを十分に汲み取り、様々な関連資料を検討するなどして速やかに処理を行うことが求められていること、前記のとおり、年金記録に係る確認の申立ての転送件数等は減少しており、一般的には、転送件数等の減少により地方委員会事務室の職員の業務量も減少すると考えられることなどを踏まえ、地方委員会事務室の職員数について、適切に見直しを行う必要がある。

地方委員会事務室の職員が行った個々の事案について調査等に要した日数等の具体的なデータはないが、前記のとおり、年金記録に係る確認の申立てが第三者委員会に転送されてから処理を終えるまでに要した平均日数が短縮されている傾向にあることなどを踏まえると、地方委員会事務室の職員が行った調査等に要した日数等も短縮されている傾向にあると思料される。

また、前記のとおり、転送件数は減少傾向にある。

そこで、地方委員会の処理件数、年度末残件数及び事務室の職員数の推移をみると、図表1-57のとおりとなっていた。

図表1-57 地方委員会の処理件数、年度末残件数及び事務室の職員数の推移

図表1-57 地方委員会の処理件数、年度末残件数及び事務室の職員数の推移画像

処理件数と事務室の職員数はほぼ同じように推移していた。

また、事務室の職員1人当たりの処理件数と、前年度末残件数及び当年度転送件数の合計に対する年度末残件数の割合は、図表1-58のとおりとなっていた。

図表1-58 事務室の職員1人当たりの処理件数等

(単位:人、件、%)
年度 平成
19年度
20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度
事務室の職員数 A 392 1,433 2,173 2,133 1,773 1,097 668
当年度処理件数 B 5,474 51,614 54,673 62,447 42,104 11,50 58,186
当年度転送件数 C 33,568 47,780 52,374 60,336 26,137 9,832 7,916
年度末残件数  D 28,094 24,260 21,961 19,850 3,883 2,210 1,940
職員1人当たりの処理件数   B÷A 14.0 36.0 25.2 29.3 23.7 10.5 12.3
前年度末残件数及び当年度転送件数の合計
に対する年度末残件数の割合
- 32.0 28.7 24.1 8.4 16.1 19.2
(注)
事務室の職員数のうち、19年度については7月12日の実人員であり、20年度以降については、各年度の4月1日の実人員である。

当年度処理件数を事務室の職員数で除した、職員1人当たりの処理件数は、19年度14.0件、20年度36.0件、21年度25.2件、22年度29.3件、23年度23.7件、24年度10.5件、25年度12.3件と20年度をピークに減少傾向となっていた。

地方委員会が処理した年金記録に係る確認の申立てには個別の事案により資料の収集等に時間を要するものがあるなどの状況の違いがあったり、また、地方委員会事務室の職員が調査等の業務に加えて情報公開請求や訴訟への対応等の業務を並行して行ったりすることがあるなどのため、事務室の職員1人当たりの処理件数のみで適切な体制となっているかを単純に判断することはできないが、24年度の数値からは、同年度は処理件数の減少に応じた人員体制となっていなかったか、又は申立事案1件当たりの調査に長期間を要したなどの特別な事情があった可能性がある。しかし、前記のとおり、24年度以降、地方委員会の体制については見直しの検討が行われるなどしており、25年度の職員1人当たりの処理件数が増加していることから、業務量を踏まえた人員体制とすることに努めてきていることがうかがえる。

また、前年度末残件数及び当年度転送件数の合計に対する年度末残件数の割合は、20年度32.0%、21年度28.7%、22年度24.1%、23年度8.4%、24年度16.1%、25年度19.2%となっており、おおむね減少傾向となっていた。23年度に大きく減少したのは、事務処理の促進が図られるなどしたこと、25年度に若干増加しているのは、25年5月に地方委員会の集約化等が行われたことによると思料される。

ウ 第三者委員会の運営に要した経費

前記図表1-56のとおり、地方委員会事務室の職員は、21年4月に計2,173人、22年4月に計2,133人の人員が配置され、その後は縮小されてきている。そして、第三者委員会の運営に要した経費は、図表1-59のとおりとなっている。

なお、前記のとおり、図表1-59の経費は図表1-48の特別委員会の報告書等による年金記録問題対策に関する経費として計上されていない。

図表1-59 第三者委員会の運営に要した経費

(単位:百万円)
委員会等\年度 平成
19年度

20年度

21年度

22年度

23年度

24年度

25年度

人件費 注(1) 注(2) 120 583 2,284 2,192 2,133 1,857 9,170
中央
委員
物件費等
注(7)
447 注(5) 633 449 349 229 276
4,068
非常勤
人件費
129 441 446 327 188 150
地方
委員
物件費等
注(7)
832 9,479
注(6)
3,105 3,052 2,243 1,177 574
45,173
非常勤
人件費
786 7,074 6,959 5,373 2,906 1,609
注(4)
2,195
9,599 11,837 13,191 10,485 6,633 4,467 58,412
注(1)
人件費の欄は、中央委員会及び地方委員会の常勤職員の人件費の額である。総務省によると、常勤職員は年金記録問題対策の専従の職員とは限らず年金記録従事割合は明確でないとしている。このため、各年度の新規増員分の人件費予算額の算出方法によって試算している。
注(2)
平成19年度の人件費の欄は、当該業務に当たった常勤職員が主に他省庁からの併任により、その費用を当該他省庁が支弁するものであったことなどから試算が困難なため、集計には含めていない。
注(3)
21年度以降の中央委員会及び地方委員会の欄は、総務省において、支出済額を抽出したものである。
注(4)
関係書類等の保存期限が経過しているため、19年度の中央委員会及び地方委員会の欄は、平成19年度決算検査報告の、会計検査院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項(年度途中に急きょ設置された組織等の運営経費に係る経理について、方針を定めることにより、速やかに適切な手続が執られるよう改善させたもの)に掲記されている19年度の第三者委員会の運営経費21億9583万余円及びその内訳を記載している。
注(5)
関係書類等の保存期限が経過しているため、20年度の中央委員会及び地方委員会の欄は歳出決算報告書から記載することとしたが、歳出決算報告書では中央委員会に係る支出が他の支出と区分されておらず、その分を特定することはできないため、集計には含めていない。
注(6)
20年度の地方委員会の欄は、歳出決算報告書において地方委員会に係る支出として特定できる「(事項)年金記録確認地方第三者委員会に必要な経費」の94億7987万余円を記載している。
注(7)
物件費等は、事務所借料、委員手当等である。

エ 第三者委員会の報告

前記の21年報告では、それまでの第三者委員会の活動状況のほか、今後、新たな年金記録問題を起こさないための予防策としての、具体的な対策について、関係省庁において検討・実施がなされるよう期待すること、また、ねんきん定期便の継続的送付が開始されたことや機構の設立を踏まえて、第三者委員会を含め、今後の年金記録確認体制をどのように構築していくのか、政府における検討を期待することなどが指摘されている。

そして、前記の23年報告では、これまでの第三者委員会の活動状況のほか、厚生年金に関する申立てにおいては、現在も引き続き誤った年金記録が生じていることが認められるなど、第三者委員会設置時の状況からの変化が生じていること、現在の仕組みにおいては、総務大臣のあっせんは個別法令に基づく行政作用ではなく、事実上の行為にすぎないが、新たな年金記録確認体制の構築により司法手続も考慮に入れた仕組みとすることも可能となることなどを踏まえ、新たな年金記録確認体制の構築について政府において早急に検討を進め、必要な対応をとるよう強く要請することなどが指摘されている。

オ 年金業務監視委員会の業務等

年金業務監視委員会は、機構の設立等を踏まえ、22年2月に総務大臣が主宰する外部有識者からの意見を聞く場として設置されて、(同年4月以降は総務省組織令 平成12年政令第246号)及び年金業務監視委員会令(平成22年政令第115号)により、26年3月31日までの間、総務本省に設置され、各種年金に関する厚生労働省及び機構の事務のうち「事業の実施」に関する事務について調査審議することなどをその任務としている。

そして、23年2月には「運用3号問題」について、24年12月には「時効特例給付問題」について、それぞれ調査審議を開始している。

このうち、年金記録と実態に不整合が生じている第3号被保険者の救済を「運用3号通知」という課長通知により行ったことが問題視された「運用3号問題」については、調査審議の結果、「その内容が国民年金法に違反する疑いがある上、年金受給者間において著しい不公平をもたらすと考えられることから、廃止すべきであり、必要な立法措置を講ずるべきである」旨を内容とする「運用3号の取扱いに関する意見」を23年3月8日に総務大臣に具申し、同日付けで総務大臣から厚生労働大臣に対し文書を手交して意見を表明している。これを受けて、厚生労働省は、「運用3号通知」による取扱いを廃止し、また、前記のとおり、25年6月に年金健全化法が成立し、第3号被保険者の年金記録不整合問題については年金健全化法に基づいて対応している。

また、時効特例給付問題については、前記のとおり、機構の職員からの情報提供が行われたことを契機に調査審議がなされている。そして、厚生労働省及び機構から、機構が同年1月に設置した「時効特例給付の業務実態等に関する調査委員会」の調査結果及びその後の対応等の説明を受けるなどしている。

さらに、26年3月31日には「失踪宣告を受けた者に係る消滅時効に関する解釈変更及び取扱変更について並びに東日本大震災の行方不明者に係る死亡一時金の支給事務の実情が把握されていないことに関する意見」(注18)を総務大臣に具申しており、同日付けで総務省から厚生労働省へ文書で通知している。

このほか、22年7月1日には「紙台帳等とコンピュータ記録との突合せ業務の入札案件問題に関する厚生労働省及び日本年金機構の対応について」と題する所見を厚生労働大臣に提出している。この所見では、紙台帳等とオンライン記録との突合せ業務に関し、同年6月に入札関係の情報漏えいが発覚したことについて、同業務の発注の公平性、適正性を著しく損なうものであり、今後の同業務の発注の在り方を再検討する必要があるなどとしている。

これを受けて、機構は 「紙台帳等とコンピュータ記録との突合せ業務の入札に、関する第三者検証会議」を設置し、調査を実施し、再発防止策を策定している。

(注18)
国民年金の被保険者が死亡するなどしたときに遺族に支給される死亡一時金のうち、当該被保険者が裁判所の失踪宣告により死亡したものとみなされた場合の消滅時効の起算日について、国民等への周知がなされずに変更されたことなどについて、適切な措置が執られるよう意見することを内容としている。

カ 新たな年金記録訂正手続の創設

前記のとおり、23年報告では、新たな年金記録確認体制の構築、司法手続も考慮に入れた年金記録確認の仕組みについて、政府において早急に検討を進め、必要な対応をとるよう強く要請している。この要請等を踏まえ、26年6月に成立した「政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第64号。以下「年金事業改善法」という。)によって、新たに、年金個人情報(国民年金及び厚生年金の原簿記録)について、被保険者等による訂正請求を可能とし、民間有識者の審議に基づき厚生労働大臣が訂正する手続が整備された。年金事業改善法によれば、27年1月に厚生労働省の社会保障審議会の下に分科会が設置され、分科会は、厚生労働大臣から、年金記録の訂正手続に関する調査審議の基本方針(以下「審査基準等」という。)について諮問を受けて答申するなどの業務を行うこととされている。また、年金記録の訂正決定の可否を判断する際には、この審査基準等により調査及び審議が行われることとされている。そして、同年3月から、厚生労働大臣から訂正決定に関する権限の委任を受けた地方厚生局長又は地方厚生支局長(以下「地方厚生局長等」という。)が国民年金法又は厚生年金保険法による年金記録の訂正請求の受付及び調査を開始し、同年4月から、訂正決定等を実施することとされている。この調査は、国民の立場に立って、できる限り訂正請求に係る事実関係を明らかにすることを目的とするもので、保険料の納付状況等を確認するなどのため、金融機関、被保険者等の配偶者等に対して資料の提供又は報告を求めることができるように国民年金法等の一部が改正されている。地方厚生局長等が訂正決定等を実施する際には、訂正請求を受けた申立て事案について、事業主、関係者等を調査し、訂正の可否について、地方厚生局に設置する民間有識者から成る合議体(地方厚生局に置かれる政令で定める審議会。以下「地方審議会」という。)に諮問することとされている。そして、地方審議会が、審査基準等に従って調査、審議を行って議決し、その結果を地方厚生局長等に答申して、地方厚生局長等が訂正の可否を決定することとされている。

また、年金事業改善法により厚生年金特例法が改正され、改正後の厚生年金特例法が施行される同年4月以降、厚生年金特例法に規定する個別案件に係る調査審議は、地方審議会が担うこととなっている。

このように、同年3月以降の新たな年金記録に係る確認の申立てについては、年金事業改善法に基づく制度で処理できることとなり、総務省は、新たな訂正手続が開始された以降において、第三者委員会を廃止する予定としている。そして、第三者委員会で蓄積したノウハウや第三者委員会に転送された処理中の案件を厚生労働省に円滑に引き継ぐなどするための具体的な方法等について、現在、総務省及び厚生労働省において検討を進めているとしている。