生活保護制度は、前記のとおり、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを活用してもなお生活に困窮する者に対して、その困窮の程度に応じた必要な保護を行うことにより、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長する制度である。
そして、近年、被保護者数及び保護費はいずれも増加してきていることなどから、要保護者への適切かつ効果的、効率的な保護の実施が引き続き求められる状況となっており、また、稼働能力を有する被保護者について、その稼働能力の十分な活用を図るために、厚生労働省及び事業主体において就労支援の取組を一層強化している。
前記のとおり、会計検査院は、保護の実施状況等について、毎年検査を行い、検査報告に不当事項や処置要求事項等を掲記しているが、上記の状況を踏まえ、保護費が多額に上っている医療扶助、生活扶助、住宅扶助、被保護者に対する就労支援等に関する各事項について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の着眼点により検査を実施した。
ア 医療扶助は適切に実施されているか、特に入退院に係る手続や薬剤の処方等について問題はないか。
イ 生活扶助費及び住宅扶助費は適切に支給されているか、特に公的年金の収入認定等の状況はどのようになっているか、入院又は入所している被保護者について加算等の計上の停止の状況はどのようになっているか、被保護者について保護を廃止した際の保護費の精算等は適切に行われているか。
ウ 就労支援は就労の開始や保護の廃止に至っているか、就労支援により就労した被保護者の就労後の状況はどのようになっているか。
24都道府県(注1)511事業主体(別表参照)における23年度の保護費2兆6445億余円(国庫負担金相当額1兆9833億余円)を主な対象として、厚生労働本省及び24都道府県の201事業主体(特定の項目については9事業主体を加えた210事業主体)において会計実地検査を行うとともに、上記の511事業主体について保護に係る関係書類を確認するなどの方法により検査を行った。
なお、23年度における47都道府県892事業主体の保護費3兆5015億余円に対して上記の24都道府県511事業主体の保護費2兆6445億余円は、全体の75.5%を占めている。