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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成26年10月

再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等について


4 所見

(1) 検査の状況の概要

経済性、効率性、有効性等の観点から、7府省等における再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等について、7府省等及び地方公共団体等が導入した再生可能エネルギー設備は導入目的どおり活用されているか、6府省において再エネ法に基づく固定価格買取制度における国庫補助金等の取扱いは適切に行われているか、地方公共団体において再生可能エネルギーの導入等に関する計画が適切に策定されているかなどに着眼して検査を実施した。

21年度から25年度までの間に、7府省等が自ら又は委託者として導入した再エネ発電設備は47設備で191億6199万円、再エネ熱利用設備は39設備で39億2351万円となっていて、地方公共団体等が7府省等の国庫補助金等を活用して導入した再エネ発電設備(補助)は6,628設備で1808億8557万円、再エネ熱利用設備(補助)は1,122設備で509億0257万円となっていた。また、20年度から25年度までの間に、経済産業省所管の国庫補助金を活用した太陽光発電設備(住宅用)は1,091,724設備(国庫補助事業実績額2214億2663万円)となっていた。

ア 再生可能エネルギー設備の廃止及び休止の状況等

7府省等が自ら若しくは委託者として、又は地方公共団体等が国庫補助金等を活用して導入した再生可能エネルギー設備のうち、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に規定される耐用年数内の設備(国の場合)又は補助金適正化法に基づき定められる処分制限財産の処分制限期間内の設備(地方公共団体等の場合)を対象として、21年度から25年度までの間に廃止された設備についてみたところ、廃止された設備は8設備となっていた。事業主体は、これらの設備はいずれも一定期間は稼働していたとしており、廃止の主な理由を、設備が破損したことなどとしている。

また、21年度から25年度までの間に導入した設備のうち、26年3月末時点において休止している設備は41設備となっていた。そして、事業主体は、休止の主な理由を、故障の原因を調査中のため(16設備)、修理や部品等の調達に時間を要しているため(5設備)などとしている。また、これら41設備の中には、1年以上休止している設備が8設備見受けられた。

イ 7府省等が実施している再生可能エネルギーに関する事業の重複等の状況

7府省等が実施している再生可能エネルギーに関する国庫補助事業には、類似の事業が多数見受けられ、また、各国庫補助事業に関する情報は府省ごとに発信されている。このような状況について、地方公共団体に見解を徴したところ、これらの情報の把握や類似事業の比較分析等に相当の時間を要することなどから、いわゆる事業の縦割りによる弊害等について問題があるなどとしている。

学校は、太陽光発電設備の導入場所として全導入数の約6割を占めていることから、地方公共団体等が太陽光発電設備を学校に導入するに当たり活用した国庫補助金等の所管府省についてみたところ、5府省、計3,830設備(国庫補助金等交付額546億2445万円)となっており、その内訳は、文部科学省が3,506設備(同483億1522万円)、環境省が145設備(同28億9476万円)、内閣府が121設備(同27億2507万円)、経済産業省が46設備(同5億7099万円)、国土交通省が12設備(同1億1839万円)となっていた。

また、各府省が実施する国庫補助事業の目的は様々であり、例えば、文部科学省における目的は環境教育のため、環境省における目的は防災拠点の機能維持のためなどとなっている。

そして、太陽光発電設備を導入した地方公共団体によれば、上記のように各府省が異なる目的別に様々な国庫補助事業を用意していることは、選択の幅が広がるなどという面において歓迎するとしている。一方、国庫補助事業を所管する府省が複数にまたがることから各府省がどのような国庫補助事業を行っているのかについて情報収集が困難であることなどの問題点を指摘する地方公共団体も見受けられる。

ウ 固定価格買取制度施行に伴う7府省等の再エネ発電設備に対する国庫補助金等の取扱状況

都道府県等が認定設備(補助)を導入する際に活用した国庫補助事業は、計41事業であった。そして、これらの国庫補助事業において認定設備に対する国庫補助金等の取扱いがどのようになっているかをみると、国庫補助金等の取扱いに関する規定がないものが17事業と最も多くなっていた。一方、調達価格から当該国庫補助金等相当額を控除することとされている国庫補助事業が4補助金の4事業あるほか、一部の国庫補助事業においては、国庫補助金等相当額を返還させていたり、認定設備(補助)に係る売電収入の使途を限定していたりするなどしていた。

上記の取扱いの区分ごとに認定設備(補助)を分類すると、計853設備のうち、国庫補助金等を返還しなくてもよいこととしている設備は470設備(853設備の55.0%)、国庫補助金等の取扱いに関する規定がない設備は169設備(同19.8%)、売電収入の使途を限定している設備は95設備(同11.1%)、固定価格買取制度の調達価格から国庫補助金等相当額を控除することとしている設備は84設備(同9.8%)、自家消費分と売電分との割合で案分するなどして国庫補助金等相当額を一部返還させることとしている設備は26設備(同3.0%)、売電は補助事業の対象外であることから国庫補助金等を全額返還させることとしている設備は3設備(同0.3%)等となっていた。

以上のとおり、認定設備(補助)を導入する際に活用した国庫補助金等の取扱いに関する規定がない又は国庫補助金等を返還しなくてもよいこととしている国庫補助事業が多数あり、これに係る認定設備(補助)639設備については、固定価格買取制度とは政策目的が異なっていることなどを理由に、調達価格から国庫補助金等相当額を控除せずに売電が行われたり、国庫補助金等が返還されていなかったりしていた。

しかし、調達価格には再エネ発電設備の建設価格が織り込まれており、また、再エネ事業者が得ることとなる利益は、賦課金の形で最終的に国民の負担になることなどから、再エネ発電設備の導入に国庫補助金等を活用するとともに、固定価格買取制度に基づき売電を行う場合、国庫補助金等の交付目的を逸脱していないかなどについて、適宜、確認していく必要がある。

エ 地方公共団体における再生可能エネルギーの導入等に関する計画の策定状況

検査を実施した44都道府県及び1,615市町村、計1,659団体における再エネ導入促進計画の策定状況等についてみたところ、再エネ導入促進計画を策定している地方公共団体は、966団体(1,659団体の58.2%)となっていた。しかし、残りの693団体(同41.7%)は、再エネ導入促進計画を特段策定しておらず、特に町村の半数以上が再エネ導入促進計画を策定していない状況となっていた。また、966団体が策定した再エネ導入促進計画における再生可能エネルギーの導入目標の設定状況についてみたところ、目標年度や目標数値を具体的に設定するなど定量的な導入目標を設定している地方公共団体が466団体となっていた一方で、できるだけ早い時期に可能な限り再生可能エネルギーの導入を図るというように、定性的な導入目標だけを設定している地方公共団体が500団体となっていた。このほか、再生可能エネルギーの導入を推進するために体制を整備することとして、条例等を制定して再生可能エネルギーの導入促進を図っている地方公共団体が250団体見受けられた。

そして、再エネ導入促進計画の目標に対する達成状況の検証の実施を規定している地方公共団体は、312団体(466団体の66.9%)となっていた。検証の実施状況についてみると、計画期間の終了年度又は計画期間中の中間年度等において、約半数の164団体(312団体の52.5%)が検証を実施していた。

また、再エネ導入促進計画を策定していない693団体について、その理由をみたところ、再エネ導入促進計画を策定したいが、職員が少なく他の業務を優先させる必要があるため、策定していないとしている地方公共団体が514団体(693団体の74.1%)と最多数を占めるなどの状況となっていた。また、一部の地方公共団体は、長期的なエネルギー需給動向や送電網の整備等について不確定要素があるため、再生可能エネルギーの導入事業の採算性を考えると、計画を策定することに消極的となるとしていた。

オ 地域における再生可能エネルギーの導入拡大に関する問題点

地方公共団体における再生可能エネルギーの導入拡大に関する問題点について、44都道府県及び19政令指定都市、計63団体から意見を聴取したところ、多種多様な内容となっている。このうち、国庫補助事業に関する問題点が数多く挙げられており、中でも「再生可能エネルギーに係る様々な国庫補助メニューを一本化あるいは交付金化できないか。」など補助金・財政支援に関する項目が68件と最も多くなっている。また、「国の補助事業の所管が複数にまたがることから情報収集が困難である。」など情報開示に関する問題点等が挙げられている。

(2) 所見

国は、エネルギー需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進し、もって地球環境の保全に寄与することなどを目的としてエネルギー基本法を制定し、これに基づき基本計画を策定している。そして、23年3月に発生した東日本大震災を契機として、電力供給システムにおける再生可能エネルギーを含めた多様なエネルギー源の活用が改めて大きな課題となったことなどから、26年4月に基本計画を見直し、再生可能エネルギーに関しては、「2013年から3年程度導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく。」とする政策の方針を示していることなどから、再生可能エネルギーに関する事業は今後も引き続き実施されるものである。ついては、以上の検査の状況を踏まえて、国及びNEDOにおいては、次の点について留意することが望まれる。

ア 再生可能エネルギーに係る国庫補助金等を所管する府省において、処分制限期間内に長期間休止している再エネ発電設備(補助)及び再エネ熱利用設備(補助)について地方公共団体等から適宜に報告を求めて、その稼働状況を把握するとともに、修理を速やかに行い再稼働させ、また、再稼働できない場合は速やかに廃止等の手続をとるよう地方公共団体等に対して助言する。

イ 国において、複数の府省が所管する様々な再生可能エネルギーに係る国庫補助金等に関する情報を一元化して、地方公共団体等に対して開示することを検討する。

ウ 認定設備(補助)に係る国庫補助金等を所管する府省において、再エネ事業者が認定設備(補助)で発電した電気を固定価格買取制度に基づき売電する場合は、国庫補助金等の交付目的を逸脱していないかなどについて、適宜、確認する。

エ 国において、再エネ導入促進計画を策定していない地方公共団体に対して再エネ導入促進計画を策定するよう助言することなどを検討する。

オ 国及びNEDOにおいて、再生可能エネルギーに関する事業を実施するに当たり、地域において生じている再生可能エネルギーの導入拡大に係る問題点についての情報を収集し、必要に応じてこれらに対する対策を講ずることに努める。

会計検査院としては、今後とも、国における再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等について引き続き注視していくこととする。