ページトップ
  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成26年10月

各省庁が所管する政府開発援助(技術協力)の実施状況について(外務省が所管する技術協力を除く。)


2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

政府全体の一般会計のODAに係る当初予算は、11年度から25年度まで、14年連続の減額となっており、また、国際的にみても、前記のとおり、DAC加盟国のODA実績で、2007年(平成19年)から2012年(平成24年)までは5位にとどまっている。しかし、25年度の一般会計のODAに係る当初予算は、政府全体で5572億余円が計上されており、依然として多額かつ重要なものとなっている。このような状況を勘案すると、ODAについて、国民の理解を深めつつ、限られた予算の中で更に戦略的、効果的、効率的な実施等を図っていくことが重要となる。

また、技術協力については、前記のとおり、12省庁において実施されているが、その予算の大部分は外務省が所管しており、25年度の一般会計当初予算ベースでみると、その約8割を外務省が占めている。そして、会計検査院は、外務省、JICA等が技術協力も含めて行っているODA事業全体について、毎年重点を置いて検査を実施している。そのような中で、会計検査院は、20年1月に、参議院から、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省の計5省(以下「5省」という。)所管の技術協力の実施状況等について会計検査を行い、その結果を報告するよう要請を受けた。そして、前記のとおり、同年10月に、検査の結果を参議院に報告しているところであるが、この報告から既に5年以上が経過し、5省には含まれなかった環境省の技術協力の予算規模が拡大するなど、技術協力をめぐる各種状況は大きく変化してきている。

さらに、前記のとおり、「ODAのあり方に関する検討」や「日本再興戦略」により、ODAについては、開発途上国の開発に貢献すると同時にその成長を取り込むことで日本経済の活性化にもつなげるなどとする今後の方針等が示されており、26年中を目途にODA大綱の見直しが行われる予定となっている。

そこで、今回、検査の対象を5省から11省庁に広げて、11省庁が実施している技術協力について、合規性、経済性、有効性等の観点から、次のような点に着眼して各省庁横断的に検査を実施した。

ア 11省庁の技術協力に係る予算額、決算額は、どのように推移しているか。また、技術協力による事業の実施状況はどのようになっているか。

イ 11省庁が技術協力に係る予算により実施した事業は、適切に前記のDAC報告に計上される対象となっているか。また、11省庁が技術協力に係る予算以外の予算により実施した事業の中に、ODAの要件を満たしていて、DAC報告の対象に計上することができるものはないか。

ウ 11省庁が実施している技術協力は、ODA大綱等に基づき、計画的に実施されているか。また、実施した技術協力の内容、援助の効果等について、適切な情報の発信が行われているか。

エ 技術協力に係る契約その他の会計経理等は適切に行われているか。また、委託、補助等の相手方において当該技術協力に係る会計経理等は適切に行われているか。

(2) 検査の対象及び方法

11省庁(警察庁、金融庁、総務省、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省及び環境省(各省庁には各省庁の外局等を含む。))が21年度から25年度までの間に実施した技術協力に係る事業(以下「技術協力事業」という。)を対象として検査を実施した。なお、政府開発援助(ODA)白書(以下「ODA白書」という。)では、財務省の技術協力等の予算にJICA有償勘定技術支援等が含まれているが、これは財務省が実施する技術協力ではないことから、検査対象とはしていない。

検査に当たっては、11省庁から調書を徴して、これらの調査、分析等を行うとともに、11省庁及び11省庁のうち7省(法務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省及び環境省)から委託、補助等を受けるなどして技術協力事業を実施している21法人に赴くなどして会計実地検査を行った。また、11省庁所管の事業を実施しているものではないが、DACへの報告及び事業展開計画の取りまとめなどを行っている外務省においても会計実地検査を行った。