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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成26年10月

各省庁が所管する政府開発援助(技術協力)の実施状況について(外務省が所管する技術協力を除く。)


4 所見

(1) 検査の状況の概要

我が国は、国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することを目的として、毎年度、多額のODAに係る予算を計上して、ODAを実施している。

21年度から25年度までの間の11省庁の技術協力事業予算の総額は、21年度の942億余円に対して、25年度は722億余円となっており、2割強の減少となっている。会計別にみると、一般会計予算は、21年度の773億余円に対して、25年度は452億余円となっており、4割強の減少となっている。一方で、特別会計予算は、21年度の168億余円に対して、25年度は269億余円となっており、約6割の増加となっている。これは、経済産業省及び環境省所管のエネルギー対策特別会計の技術協力事業予算が増加したことによるものである。

また、同期間の技術協力事業予算の予算額を省庁別にみると、文部科学省及び経済産業省が全体の約9割を占めている。また、省庁別の推移をみると、エネルギー対策特別会計を所管している経済産業省はおおむね横ばいで推移し、同じく環境省は倍増しているが、この2省を除く9省庁は2割以上減少している。

11省庁等において、技術協力事業の実施状況、DAC基礎資料の作成状況、事業展開計画の策定状況、技術協力の成果の公表の状況等について検査したところ、次のような事態等が見受けられた。

ア 技術協力事業予算に係るDAC基礎資料への記載について

DAC報告は、DAC加盟国の開発途上国に対する援助実績を取りまとめたものであり、DAC加盟国の国際貢献の度合いを測る指標の一つとなっている。11省庁は、外務省がDACへの報告を作成する際の基礎となるDAC基礎資料の作成の対象とする技術協力について、技術協力事業予算として計上されているものとしているが、11省庁のうち9省において、技術協力事業予算により実施した事業の決算額をDAC基礎資料に計上する際に、計上することができる額の一部を計上していなかった事態が見受けられた。

イ 技術協力事業予算以外の予算とDAC基礎資料の対象事業について

外務省は、DAC基礎資料の集計対象について、「政府開発援助の一環として貴府省庁所管の予算から実施した実績」としているが、11省庁はDAC基礎資料を作成するに当たり、技術協力事業予算により実施した事業のみを対象としていた。そして、技術協力事業予算以外の予算により実施された事業の中に、ODAの要件を満たしていると思料される開発途上国向けの事業を省庁や独立行政法人が実施しているものが見受けられた。

ウ 11省庁の技術協力のODA政策における位置付けについて

我が国は、ODA大綱の下に、ODA中期政策、国別援助方針等を策定しており、ODA政策としてODA大綱を頂点とした一貫性を確保している。国別援助方針の附属資料である事業展開計画には、プロジェクト名、援助のスキーム、実施期間、支援額等が記載されているが、11省庁の技術協力についてみると、事業展開計画に技術協力のプロジェクトを記載しているのは、財務省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省の4省のみとなっていた。そして、11省庁が実施している技術協力の中には、特定の開発途上国を対象としていて、事業展開計画に記載することを検討する必要があると思料されるものが見受けられた。また、技術協力に係る中期的な事業計画を策定することなく、単独の事業として当該事業を実施しているものが見受けられた。

エ 外務省からのDAC基礎資料の集計依頼文書等について

ア、イ及びウについては、11省庁に係るものであるが、外務省からのDAC基礎資料の集計依頼文書及び、事業展開計画の確認・追加のコメントの依頼の内容を11省庁の担当者が十分に理解できなかった結果として生じているものも見受けられた。

オ 外務省の「ODA見える化」と11省庁の情報公開の取組状況について

ODA大綱によれば、ODAの政策、実施、評価に関する情報を、幅広く、迅速に公開し、十分な透明性を確保するとともに積極的に広報することが重要であるとし、様々な手段を活用して、分かりやすい形で情報提供を行うとともに、国民が我が国のODA案件に接する機会を作ることとされている。

外務省は、22年6月に発表した「ODAのあり方に関する検討」を受けた取組として、ODA案件の現状、成果等を公表するために、JICAのホームページ上に「ODA見える化サイト」を開設して、JICAが実施する技術協力等について、国別、課題別及び協力形態別に案件の概要、評価等を掲載している。一方、11省庁における情報公開の実施状況についてみると、実施している技術協力事業の現状、成果等を毎年度取りまとめて公表している省庁はなく、「ODA見える化」が立ち遅れている事態が見受けられた。

カ 個別の事業の状況について

委託事業及び補助事業において、人件費が過大に算定されていた事態及び援助の効果が十分に発現していない事態が見受けられた。

(2) 所見

我が国のODAは、今後も重要な政策分野として実施されていくことが見込まれる。一方で、我が国の財政は引き続き厳しい状況にあることから、ODAの実施に当たっては、ODA大綱を頂点とした一貫性を確保し、戦略的、効果的、効率的な援助の実施に向けて、より一層ODA事業の透明性の向上を図るとともに、実施した援助については我が国の国際貢献として適切な評価が得られることが望まれる。また、ODAの理念や援助実施の原則等を定めるODA大綱について、政府は、ODAの更なる積極的、戦略的活用の要請等を踏まえて、ODA大綱の見直しを行うことを決定し、26年中を目途に閣議決定を行う予定としている。

以上のような状況を踏まえて、11省庁及び外務省においては、次の点について留意して、技術協力を実施することなどが必要である。

ア 11省庁は、DAC基礎資料の作成に当たり、技術協力事業予算として計上している技術協力については、DAC基礎資料から除外すべき合理的な理由があるものを除き、DAC基礎資料の対象とすること

イ 11省庁は、DAC基礎資料の作成に当たり、技術協力事業予算として計上していない事業についても、事業内容や対象地域、国からみてDAC報告の対象になる事業については、DAC基礎資料の対象とすること。また、現在の政府が示している日本の国益にもつながるODAを実施するという我が国のODAの在り方を踏まえて、技術協力事業予算の対象とする事業の精査を行うこと

ウ 11省庁は、技術協力を戦略的、効果的、効率的に実施していくために、事業展開計画に記載することが可能な技術協力については、事業展開計画に記載すること。また、これが困難な事業については、ODA大綱等の趣旨を踏まえて、各省庁において中期的な計画を策定すること

エ 外務省は、11省庁がDAC基礎資料を作成するに当たり、DAC報告の対象を十分理解し、適切なものが作成されるよう支援すること。また、事業展開計画の策定、更新を行う際に事業展開計画に記載するプロジェクトについて、策定時に11省庁、また、更新時に11省庁のうち関係する省庁に確認・追加のコメントを求めるに当たり、記載すべきプロジェクトの考え方等をより明示的に示し、適切な検討がなされるよう支援すること

オ 11省庁は、外務省が実施している「ODA見える化」のように、11省庁が実施している技術協力について、各省庁のホームページを活用したり、各省庁が実施している行政事業レビューと連携を図ったりするなどして、「ODA見える化」に積極的に取り組み、透明性を高め、説明責任の向上を図ること

カ 11省庁が実施した技術協力事業の中には、人件費が過大に算定されていた事態及び援助の効果が十分に発現していない事態が一部見受けられたことから、11省庁においては、今後の技術協力事業の適正かつ適切な実施が更に確保されることとなるよう、厳正な事業執行体制の整備に引き続き努めること

会計検査院としては、11省庁による開発途上国への技術協力について、今後とも適切に実施され、また、その援助実績が我が国及び世界各国において適切に評価されるよう、引き続き多角的な観点から注視していくこととする。