外務省は、開発途上にある国又は地域の地方公共団体、非政府組織等(以下、これらを合わせて「事業実施機関」という。)が実施する比較的小規模なプロジェクトに対して、草の根レベルに直接ひ益するきめの細かい援助として草の根・人間の安全保障無償資金協力(以下「草の根無償」という。)を実施している。草の根無償は、在外公館が事業実施機関と贈与契約を締結して、事業実施機関に贈与資金を支払うものであり、贈与契約締結日から事業実施機関が計画していた活動を完了させる日までの期間(以下「実施期間」という。)は1年以内とすることとなっている。そして、在外公館は、事業実施中に事業実施機関から中間報告書を提出させたり、事業実施現場に赴いたりするなどしてモニタリングを実施すること、事業の完了後に事業実施機関から事業完了報告書の提出を受けるなどして事業の完了や実施状況等を確認することなどとなっている。しかし、実施期間が2年超となっていたり事業が未了となっていたりして効果の発現が遅れている事業が多数あったり、事業実施機関から速やかに事業完了報告書が提出されていなかったりしている事態が見受けられた。
したがって、外務省において、在外公館に対して、これまでに実施した草の根無償について、施設整備の有無等の事業内容別の進捗の傾向を十分に把握して分析し、その分析の結果を踏まえて事業のモニタリングを行ったり、見積書を確認して贈与資金を支払う場合は、事業実施国の商慣習等の事情のある場合を除いて事業実施機関に調達契約の早期の締結に向けた働きかけを行ったり、事業実施機関の事業の管理能力に差があることを考慮して、事業実施機関に事業完了報告書の作成に必要な内容を周知するなどの事業完了報告書の提出を速やかに受けられるようにするための働きかけを行ったりすることについて指導するよう、外務大臣に対して平成26年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、外務本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、外務省は、本院指摘の趣旨に沿い、27年4月に在外公館に対して通知を発して、次のような処置を講じていた。
ア 施設整備を伴うなど一般的に時間が掛かる傾向にある事業について把握し分析した上で、モニタリング等を行うよう指導した。
イ 見積書を確認して贈与資金を支払う場合は、モニタリング等を通じて、調達契約の締結状況を把握して契約の早期締結に向けて対応するよう指導した。
ウ 事業完了報告書の作成に必要な内容を事業実施機関に周知するなどして、事業完了報告書の提出を速やかに受けられるようにするための取組を行うよう指導した。