鳥取労働局(以下「鳥取局」という。)は、地域雇用開発促進法(昭和62年法律第23号)等に基づき、雇用保険で行う事業のうちの雇用安定事業等の一環として、平成23年度から25年度までの間に、雇用機会が不足している地域において、市町村や経済団体等が一致協力し、創意工夫や発想をいかして雇用の創出を図ることを目的とした地域雇用創造推進事業を実施している(地域雇用創造推進事業の概要については、「地域雇用創造推進事業及び実践型地域雇用創造事業に係る委託事業の実施に当たり、事業の実施による効果に対する評価を適切に行い、地域における効果的な雇用の創出に資するために、アウトプット実績及びアウトカム実績の把握、事業に係る個別の雇用対策事業の利用対象者の範囲の設定等を適切に実施するよう改善の処置を要求したもの」参照)。
厚生労働省が定めた地域雇用創造推進事業募集要項(平成23年職発1007第2号等。以下「募集要項」という。)等によれば、地域雇用創造推進事業は、都道府県労働局(以下「労働局」という。)が市町村や経済団体等の関係者で構成される地域の協議会(以下「協議会」という。)と委託契約を締結して、セミナー、研修会等の個別の雇用対策事業(以下「個別事業」という。)を実施することとされている。また、協議会は、個別事業の一部を民間団体等へ再委託して実施することができるとされている。
そして、募集要項等によれば、地域雇用創造推進事業の委託契約の締結及び実施に当たっては、地域雇用創造推進事業委託要綱(平成21年職発0911第6号。以下「委託要綱」という。)等に基づくこととされ、委託要綱によれば、協議会は、各年度の地域雇用創造推進事業の終了後に、事業実施結果・精算報告書(以下「精算報告書」という。)等を労働局に提出し、労働局は、精算報告書等の内容を審査して委託費の額を確定することなどとされている。また、地域雇用創造推進事業の委託費の対象となる経費は、個別事業の実施に必要な講師謝金、旅費、会場借料等とされており、事業の実施に必要不可欠とは認められない備品の購入費等は、委託費の対象とはならないなどとされている。そして、労働局は、各年度の地域雇用創造推進事業の終了後において、事業の実施状況や経理の状況の確認のために、協議会に対して関係書類の提示を求めることができるなどとされており、協議会が民間団体等に個別事業を再委託している場合は、再委託先の民間団体等に対して関係書類の提示を求めることができるなどとされている。
鳥取局は、地域雇用創造推進事業の実施に当たり、個別事業を実施するために鳥取県雇用創造協議会(以下「県協議会」という。)と委託契約を締結し、同契約に基づき、23年度102,900,040円、24年度198,268,939円、計301,168,979円の委託費を県協議会に支払っている。そして、県協議会は、民間団体等30社と再委託契約を締結して個別事業の一部を実施しており、再委託費として23年度は民間団体等20社に対して86,452,935円、24年度は民間団体等25社に対して146,971,061円、計233,423,996円を支払っている。また、再委託契約に係る契約書によれば、事業に要した経費と再委託契約額のいずれか低い額をもって再委託費の額を確定することなどとされている。
本院は、合規性等の観点から、委託費の額の確定は適正に行われているかなどに着眼して、上記の委託契約(委託費支払額計301,168,979円)を対象として、鳥取局において、委託契約書、精算報告書等の関係書類を確認するとともに、鳥取局に対して、県協議会が民間団体等に再委託して実施した再委託費の請求内容に関する調査確認を求めるなどして、会計実地検査を行った。
検査したところ、県協議会から再委託を受けていた民間団体等は、個別事業の終了後に納品されたパソコン等の購入費、個別事業以外の用務に係る旅費、個別事業の実施期間以外の期間に係る事務室使用料等の、地域雇用創造推進事業の委託費の対象とはならない経費や経費の内容や金額が確認できない経費等、23年度27,493,790円、24年度43,648,949円、計71,142,739円を含めたまま再委託費として計233,423,996円を県協議会に請求し、県協議会は、それらの請求内容を十分に確認しないまま再委託費として支払っていた。そして、鳥取局は、県協議会からの請求に基づき委託費として上記の再委託費計233,423,996円が含まれた計301,168,979円を県協議会に支払っていた。
したがって、地域雇用創造推進事業の委託費の対象とはならない経費、経費の内容や金額が確認できない経費等を差し引いて適正な再委託費の額を算定すると計162,281,257円となることから、前記の再委託費の支払額計233,423,996円との差額71,142,739円が県協議会から民間団体等に過大に支払われており、このため鳥取局から県協議会に委託費として同額が過大に支払われていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、県協議会において再委託費の請求内容を十分に確認していなかったことにもよるが、鳥取局において県協議会から提出された精算報告書等の審査を適切に行うことに対する認識が欠けており、関係書類の提示を求めるなどして、これらの関係書類に基づく実際の支出額等の確認を十分に行っていなかったことなどによると認められる。