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  • 保険給付

労働者災害補償保険の休業補償給付等の支給が適正でなかったもの[厚生労働本省、34労働基準監督署](40)-(52)


会計名及び科目
労働保険特別会計(労災勘定) (項)保険給付費
部局等
厚生労働本省(平成23年4月以前は34労働基準監督署)(支給庁)
34労働基準監督署(支給決定庁)
休業補償給付等の概要
業務上又は通勤による傷病に係る療養のため労働することができない労働者に対して賃金を受けていない日数について支給するもの
支給の相手方
49人
休業補償給付等の支給額
1,201,471,539円(昭和60年度~平成27年度)
不当と認める支給額
64,421,790円(昭和61年度~平成27年度)

1 保険給付の概要

(1)休業補償給付等と障害厚生年金等との併給調整

労働者災害補償保険の休業補償給付及び休業給付(以下「休業補償給付等」という。)は、業務上又は通勤による傷病に係る療養のため労働することができない労働者(以下「被災労働者」という。)に対して、賃金を受けていない日数(以下「休業日数」という。)について支給するものである。

そして、休業補償給付等は、被災労働者がその支給の原因となった傷病と同一の事由により、障害厚生年金又は障害基礎年金(以下、これらを合わせて「障害厚生年金等」という。)の支給を受ける場合には、給付基礎日額の100分の60に相当する額に障害厚生年金等の種類の別に定められた調整率(0.73から0.89までの率)を乗じて得た額に減額して支給することとなっている(以下、これらの取扱いを「併給調整」という。なお、休業補償給付等、併給調整等の概要については、「休業補償給付等の支給に当たり、休業補償給付等の受給者データと障害厚生年金、障害基礎年金等の受給権者情報とを照合できるようにして、併給調整の確認対象者に係る情報を労働基準監督署に配信することなどにより、併給調整に係る事務を適切かつ効率的に行うよう改善の処置を要求したもの」参照)。

(2)併給調整の手続

休業補償給付等の支給を受けようとする被災労働者は、同一の事由により障害厚生年金等の支給を受ける場合には、休業補償給付等に係る請求書(以下「請求書」という。)に、その障害厚生年金等の種類及び支給額並びに支給されることとなった年月日を記載して、この請求書を労働基準監督署長(以下「監督署長」という。)に提出することとなっている。また、休業補償給付等の支給を受けている被災労働者は、療養の開始後1年6か月を経過した日において傷病が治っていないときは、監督署長に対して、障害厚生年金等の受給の有無等を記載した届書(以下「届書」という。)を提出することとなっている。

そして、請求書又は届書の提出を受けた監督署長は、その内容を調査し確認するなどして、同一の事由により障害厚生年金等の支給を受けている被災労働者については併給調整を行った上で、休業補償給付等の支給決定を行うこととなっている。

2 検査の結果

(1)検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、休業補償給付等の支給を受けている被災労働者に対して同一の事由により障害厚生年金等が支給されている場合に休業補償給付等の併給調整が適正に行われているかなどに着眼して、全国47都道府県労働局(平成12年3月31日以前は都道府県労働基準局。以下、都道府県労働局を「労働局」という。)の321労働基準監督署(以下、労働基準監督署を「監督署」という。)のうち、21労働局管内の113監督署において、請求書、支給決定決議書、届書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。また、厚生労働本省から提出を受けた休業補償給付等の受給者データと、日本年金機構から提出を受けた障害厚生年金、障害基礎年金等の受給権者情報とを照合して、カナ氏名、生年月日等が一致する者で、障害厚生年金等の受給権が発生しており、かつ、併給調整を行っていない被災労働者を抽出するなどして検査した。

(2)検査の結果

検査の結果、13労働局(注1)管内の34監督署(注2)の管轄区域に所在する事業場に勤務していた被災労働者49名については、休業補償給付等の支給を受ける原因となった傷病と同一の事由により、障害厚生年金等の支給も受けているのに併給調整が行われていなかったことなどのため、これらの被災労働者に対して支給した休業補償給付等の額計1,201,471,539円のうち64,421,790円は支給が適正でなく、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、34監督署において、被災労働者から提出を受けた請求書又は届書の内容の調査確認が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
13 労働局  北海道、埼玉、東京、神奈川、大阪、兵庫、和歌山、岡山、広島、香川、高知、福岡、宮崎各労働局
(注2)
34 監督署  札幌中央、小樽、帯広、滝川、稚内、浦河、さいたま、春日部、中央、池袋、向島、八王子、平塚、大阪中央、大阪南、天満、西野田、羽曳野、北大阪、茨木、神戸東、加古川、和歌山、和気、広島中央、三原、尾道、三次、高松、四万十、北九州東、田川、宮崎、都城各監督署

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

北海道労働局管内の札幌中央労働基準監督署(以下「札幌中央署」という。)は、管内の事業場に勤務していた被災労働者Aから、平成19年6月から25年10月までの間に計60回にわたり請求書の提出を受けて、18年1月から25年9月までの間の休業日数計2,803日分に係る休業補償給付の額計14,970,823円の支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省(23年4月以前は札幌中央署)は、Aに対して同額の休業補償給付を支給していた。そして、札幌中央署は、上記休業補償給付の支給決定に当たり、Aから提出を受けた請求書には障害厚生年金等の支給を受けている旨の記載がなかったことなどから、併給調整を行っていなかった。

しかし、札幌中央署は、Aから提出を受けた届書に、障害厚生年金等の支給を受けている旨の記載があったにもかかわらず、その記載内容を看過するなどして、Aに対する障害厚生年金等の支給状況について調査を行っていなかった。そこで、Aに対する障害厚生年金等の支給状況について札幌中央署を通じて、日本年金機構の年金事務所に確認するなどしたところ、Aは、休業補償給付の支給を受ける原因となった傷病と同一の事由により、18年10月分から、障害厚生年金等の支給を受けており、札幌中央署は、同月以降のAの休業日数に係る休業補償給付の支給決定に当たり、併給調整を行う必要があった。

したがって、前記休業補償給付の額14,970,823円のうち、障害厚生年金等の支給を受けている同月から25年9月までの間の休業日数計2,557日分に係る休業補償給付の額計13,656,937円について併給調整を行ったとして適正な休業補償給付の額を算出すると、計9,969,743円となり、その差額3,687,194円は支給が適正でなかったと認められる。

なお、このうち366,268円については、既に時効が成立している。

なお、本院の指摘により、前記の適正でなかった支給額のうち、時効が成立しているものを除いた36,428,632円については、返還の処置が執られた。

これらの適正でなかった支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

  労働局名 労働基準監督署 併給調整を行う必要があった被災労働者数 左の被災労働者に支給した休業補償給付等の額 左のうち不当と認める休業補償給付等の額
      千円 千円
(40) 北海道 札幌中央等6 12 503,690 23,827
(41) 埼玉 さいたま等2 3 20,101 1,737
(42) 東京 中央等4 4 24,226 2,386
(43) 神奈川 平塚 1 5,067 756
(44) 大阪 大阪中央等7 8 92,964 11,026
(45) 兵庫 神戸東等2 2 33,760 647
(46) 和歌山 和歌山 1 13,894 1,418
(47) 岡山 和気 1 63,943 2,121
(48) 広島 広島中央等4 8 318,771 6,897
(49) 香川 高松 2 13,620 3,500
(50) 高知 四万十 1 10,807 1,002
(51) 福岡 北九州東等2 2 10,032 1,569
(52) 宮崎 宮崎等2 4 90,590 7,533
(40)―(52)の計 49 1,201,471 64,421