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(2)国民健康保険の財政調整交付金が過大に交付されていたもの[21都道府県](118)-(164)


47件 不当と認める国庫補助金 504,558,000円

国民健康保険(「国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの」参照)については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が行う国民健康保険について財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金は、市町村間で医療費の水準や住民の所得水準の差異により生じている国民健康保険の財政力の不均衡を調整するために、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づいて交付されるもので、普通調整交付金と特別調整交付金がある。

普通調整交付金は、被保険者の所得等から一定の基準により算定される収入額(以下「調整対象収入額」という。)が、医療費等から一定の基準により算定される支出額(以下「調整対象需要額」という。)に満たない市町村に対して、その不足を公平に補うことを目途として交付されるもので、医療費等に係るもの(以下「医療分」という。)、後期高齢者支援金等(注1)に係るもの(以下「後期分」という。)及び介護納付金(注2)に係るもの(以下「介護分」という。)の合計額が交付されている。そして、普通調整交付金の交付額は、「国民健康保険の調整交付金の交付額の算定に関する省令」(昭和38年厚生省令第10号)等に基づき、医療分、後期分及び介護分のいずれも、それぞれ当該市町村の調整対象需要額から調整対象収入額を控除した額に基づいて算定することとなっている。

(注1)
後期高齢者支援金等  高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)の規定に基づき、各医療保険者が社会保険診療報酬支払基金に納付する支援金等
(注2)
介護納付金  介護保険法(平成9年法律第123号)の規定に基づき、各医療保険者が社会保険診療報酬支払基金に納付する納付金

特別調整交付金は、市町村について特別の事情がある場合に、その事情を考慮して交付されるもので、非自発的失業財政負担増特別交付金等がある。

財政調整交付金の交付手続については、①交付を受けようとする市町村は、都道府県に交付申請書及び事業実績報告書を提出し、②これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査した上で厚生労働省に提出し、③厚生労働省は、これに基づき交付決定及び交付額の確定を行うこととなっている。

本院は、34都道府県の307市区町村において、平成21年度から25年度までの間に交付された財政調整交付金について、会計実地検査を行った。その結果、21都道府県の47市区町において、普通調整交付金の調整対象需要額を過大に算定したり、調整対象収入額を過小に算定したり、特別調整交付金のうち非自発的失業財政負担増特別交付金等を過大に算定したりするなどしていたため、財政調整交付金の交付額計92,037,119,000円のうち計504,558,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、上記の47市区町において制度の理解が十分でなく事務処理が適切でなかったこと、上記の21都道府県において事業実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について態様別に示すと次のとおりである。

ア 普通調整交付金の調整対象需要額を過大に算定していたもの

普通調整交付金の調整対象需要額は、本来保険料で賄うべきとされている額であり、そのうち医療分に係る調整対象需要額は、一般被保険者(退職被保険者及びその被扶養者以外の被保険者をいう。以下同じ。)に係る医療給付費等の合計額から療養給付費負担金等の国庫補助金等を控除した額となっている。

このうち、一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額と入院時食事療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額との合計額とすることとなっている。

9府県の17市町は、普通調整交付金の実績報告等に当たり、負担軽減措置の対象者に対する高額療養費の一部を減額調整の対象としていなかった(「国民健康保険に係る療養給付費負担金及び財政調整交付金の交付に当たり、都道府県に対して減額調整の対象となる高額療養費及びその集計方法等を具体的に示して、これを都道府県を通じて市町村に対して周知徹底することにより、その交付額の算定が適正に行われるよう是正改善の処置を求めたもの」参照)などのため一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定しており、調整対象需要額を過大に算定していた。このため、交付金交付額計104,881,000円が過大に交付されていた。

イ 普通調整交付金の調整対象収入額を過小に算定していたもの

普通調整交付金の調整対象収入額は、医療分、後期分及び介護分それぞれについて、一般被保険者又は介護納付金賦課被保険者の数を基に算定される応益保険料額と、それら被保険者の所得を基に算定される応能保険料額との合計額となっており、本来徴収すべきとされている保険料の額である。

このうち、医療分及び後期分の応能保険料額は、一般被保険者の所得(以下「算定基礎所得金額」という。)に一定の方法により計算された率を乗じて算定することとなっている。そして、算定基礎所得金額は、保険料の賦課期日現在において一般被保険者である者の前年における所得金額の合計額を基に算定することなどとなっている。

また、介護分の応能保険料額は、介護納付金賦課被保険者について上記と同様に算定することとなっている。

5県の5市町は、普通調整交付金の実績報告等に当たり、算定基礎所得金額を過小に算定するなどしており、調整対象収入額を過小に算定していた。このため、交付金交付額計49,712,000円が過大に交付されていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

新潟県南蒲原郡田上町は、平成24年度の普通調整交付金の実績報告等に当たり、保険料の賦課期日現在において一般被保険者である者の前年における所得金額の合計額の算定を誤ったため、算定基礎所得金額を過小に算定しており、調整対象収入額を過小に算定していた。

その結果、適正な算定基礎所得金額により算定した調整対象収入額に基づいて普通調整交付金の交付額を算定すると、29,434,000円が過大に交付されていた。

ウ 特別調整交付金を過大に算定していたもの

非自発的失業財政負担増特別交付金は、賦課期日の翌日以降の非自発的失業者に係る保険料(税)軽減措置による財政負担が多額になっている場合に交付するものである。

そして、この交付額は、一般被保険者数、非自発的失業による保険料軽減世帯に係る一般被保険者数等から一定の計算式により調整基準額を算定し、これに基づいて算定することとなっている。

13都道府県の20市区町は、非自発的失業財政負担増特別交付金の実績報告等に当たり、非自発的失業による保険料軽減世帯に係る一般被保険者に算定の対象とならない者を含めたことなどのため調整基準額を過大に算定しており、非自発的失業財政負担増特別交付金を過大に算定していた。このため、交付金交付額計223,024,000円が過大に交付されていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

熊本市は、平成23、24両年度の非自発的失業財政負担増特別交付金の実績報告等に当たり、非自発的失業による保険料軽減世帯に係る一般被保険者数に、国民健康保険の被保険者資格を喪失したため算定の対象とならない者を含めており、調整基準額を過大に算定していた。

その結果、適正な調整基準額に基づいて非自発的失業財政負担増特別交付金の交付額を算定すると、計75,669,000円が過大に交付されていた。

以上のほか、11道県の13市町は、特別調整交付金の実績報告等に当たり、対象となる保険料調定額や一般被保険者数を過大に算定するなどしていた。このため、結核・精神病特別交付金(注3)126,430,000円、財政負担増影響額等特別交付金(注4)9,763,000円、離職者減免特別交付金(注5)3,287,000円、東日本大震災財政負担増特別交付金(注6)1,161,000円等の交付金交付額計126,941,000円が過大に算定されていた。

(注3)
結核・精神病特別交付金  結核性疾病及び精神病に係る医療給付費等が多額である場合に交付される交付金
(注4)
財政負担増影響額等特別交付金  前年度の財政調整交付金の交付額が申請誤りなどのため過小となっていて、国民健康保険の財政負担となる影響額等がある場合に交付される交付金
(注5)
離職者減免特別交付金  一般被保険者又はその属する世帯の世帯主が経済状況の悪化に伴い離職したと保険者が認める者に対して条例に基づき保険料(税)の減免を実施した場合に交付される交付金
(注6)
東日本大震災財政負担増特別交付金  東日本大震災により被災した被保険者等に係る保険料(税)の減免措置等により財政負担が増加する場合に交付される交付金

なお、前記の47市区町のうち7市町については事態の態様が重複している。

以上を部局等別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

  部局等 交付先
(保険者)
交付金の種類 年度 交付金交付額 左のうち不当と認める額 摘要
          千円 千円  
(118) 北海道 留萌市 特別調整交付金(非自発的失業軽減特別交付金) 24 1,879 1,117 一般被保険者数を過小に算定するなどしていたもの
(119) 増毛郡
増毛町
特別調整交付金(離職者減免特別交付金等) 23、24 3,874 3,323 調整対象基準額を過大に算定していたものなど
(120) 川上郡
弟子屈町
特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 24 2,867 1,813 調整基準額を過大に算定していたもの
(121) 青森県 上北郡
おいらせ町
特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 24、25 69,998 3,839 調整基準額を過大に算定していたものなど
(122) 山形県 山形市 普通調整交付金 21~24 4,662,811 11,554 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(123) 栃木県 宇都宮市 22、23 3,701,028 2,099 調整対象収入額を過小に算定していたもの
(124) 小山市 特別調整交付金(非自発的失業軽減特別交付金等) 25 21,541 3,639 非自発的失業による保険税軽減世帯に係る保険税調定総額を過小に算定していたものなど
(125) 河内郡
上三川町
普通調整交付金 23 123,118 1,203 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(126) 群馬県 沼田市 23 368,335 1,083 調整対象収入額を過小に算定していたもの
(127) 埼玉県 狭山市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 23 9,554 5,853 調整基準額を過大に算定していたもの
(128) 深谷市 普通調整交付金、特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 21~24 2,561,581 46,695 調整基準額を過大に算定していたものなど
(129) 草加市 普通調整交付金 21~24 2,864,524 3,301 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(130) 入間市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 23、24 3,940 1,587 調整基準額を過大に算定していたもの
(131) 千葉県 浦安市 22 8,427 2,898
(132) 東京都 墨田区 24 31,936 4,825
(133) 神奈川県 小田原市 普通調整交付金 21~24 1,653,866 3,140 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(134) 新潟県 南蒲原郡
田上町
24 107,297 29,434 調整対象収入額を過小に算定していたもの
(135) 富山県 富山市 22~25 5,644,590 18,603 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(136) 長野県 上伊那郡
辰野町
特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 24 5,907 4,033 調整基準額を過大に算定していたものなど
(137) 岐阜県 多治見市 普通調整交付金 22、24、25 927,710 6,042 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(138) 関市 22~25 1,342,247 7,780
(139) 美濃市 特別調整交付金(非自発的失業軽減特別交付金) 25 6,056 4,535 一般被保険者の保険税調定総額を過大に算定していたもの
(140) 羽島市 普通調整交付金 22~25 1,113,528 11,445 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(141) 恵那市 22~25 696,470 9,045
(142) 美濃加茂市 22~25 612,024 4,281
(143) 山県市 22 198,389 1,020 調整対象収入額を過小に算定していたもの
(144) 愛知県 日進市 特別調整交付金(非自発的失業軽減特別交付金等) 23 11,109 4,923 一般被保険者数を過小に算定していたものなど
(145) 清須市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 23、24 18,465 7,500 調整基準額を過大に算定していたもの
(146) 京都府 京丹後市 23、24 13,891 9,445
(147) 大阪府 堺市 普通調整交付金 21~24 21,740,249 7,271 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(148) 泉佐野市 23 775,952 1,033
(149) 寝屋川市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 24 31,087 4,857 調整基準額を過大に算定していたもの
(150) 泉南郡
熊取町
22、23 11,031 8,781
(151) 奈良県 天理市 23 8,982 4,147
(152) 山口県 大島郡
周防大島町
特別調整交付金(結核・精神病特別交付金) 22~25 1,045,533 50,763 結核性疾病及び精神病に係る医療給付費等を過大に算定していたもの
(153) 熊毛郡
上関町
普通調整交付金 25 80,836 12,407 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(154) 福岡県 福岡市 普通調整交付金 21~24 37,685,435 36,140
(155) 飯塚市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 25 146,841 1,372 調整基準額を過大に算定していたもの
(156) 柳川市 普通調整交付金 24 652,911 2,144 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(157) 宗像市 普通調整交付金、特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金等) 23、24 933,006 17,081 調整基準額を過大に算定していたものなど
(158) 古賀市 普通調整交付金 22~24 908,741 12,852 調整対象需要額を過大に算定していたもの
(159) 熊本県 熊本市 特別調整交付金(非自発的失業財政負担増特別交付金) 23、24 111,043 75,669 調整基準額を過大に算定していたもの
(160) 八代市 24、25 3,489 2,406
(161) 玉名市 24、25 19,852 17,587
(162) 菊池市 特別調整交付金(結核・精神病特別交付金) 25 603,065 25,499 結核性疾病及び精神病に係る医療給付費等を過大に算定していたもの
(163) 合志市 24 474,850 2,765
(164) 沖縄県 浦添市 特別調整交付金(非自発的失業軽減特別交付金) 24、25 17,254 5,729 非自発的失業分の保険基盤安定負担金繰入額等を過小に算定していたもの
(118)―(164)の計 92,037,119 504,558  
(注7)
賦課期日現在における非自発的失業者に係る保険料(税)軽減措置により財政負担が多額になっている場合に交付される交付金