厚生労働省は、生活保護法(昭和25年法律第144号)等に基づき、都道府県又は市町村(特別区を含む。以下、これらを「事業主体」という。)が同法による保護(以下「保護」という。)を受ける者(以下「被保護者」という。)に支弁した保護に要する費用(以下「保護費」という。)について、生活保護費等負担金を交付している。保護のうち生活扶助は、基準生活費、特別の需要がある者に対する各種の加算等で構成されていて、著しい障害があるなどのため救護施設に入所している被保護者(以下「救護施設入所者」という。)については、救護施設基準生活費が算定され、各種の加算等が計上されることとなっている。そして、金銭管理能力がないために救護施設の長等に金銭の管理を委ねている救護施設入所者において、合理的な目的のない手持金の累積が生ずる場合には、「入院患者、介護施設入所者及び社会福祉施設入所者の加算等の取扱いについて」に定められた各種の加算等(以下「加算等」という。)について、消費の実態に見合った額を計上することとなっているが、事務的な理由等から消費の実態に見合った額の計上が困難な場合であって、かつ、手持金の累積額が加算等の6か月分の額に達しているときは、加算等の計上を停止することとなっている。また、保護費のやり繰りによって生じた預貯金等については、使用目的が保護の趣旨目的に反すると認められる場合は、最低生活の維持のために活用すべき資産に該当することとなっている。しかし、事業主体が、救護施設基準生活費と障害者加算を合わせた額の6か月分の額に達したときに加算等の計上の停止を行うと誤って認識していたことから、救護施設入所者のうち金銭の管理を委ねている者について、手持金の額が障害者加算の6か月分の額に達しているのに、加算等について停止の検討をすることなく計上を続けている事態や、認知症対応型共同生活介護等を行う住居等に入居している被保護者(以下「グループホーム等入居者」という。)のうち同様に金銭の管理を委ねている者について、多額の手持金を保有しているのに手持金の保有状況を把握しないまま保護費を支給している事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、救護施設入所者について、事業主体に対して救護施設基準生活費は加算等の6か月分の額の算出に含めないことを示して加算等の計上の停止の検討が適切に行われるよう周知徹底するとともに、グループホーム等入居者について、事業主体の意見等を踏まえつつ手持金の保有状況や使用目的の確認を行うことについての方策を検討することにより、金銭管理を委ねている被保護者について、合理的な目的のない手持金が生ずることのないよう、厚生労働大臣に対して平成26年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、27年3月に都道府県等に対して通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 救護施設入所者について、救護施設基準生活費は加算等の6か月分の額の算出に含めないことを明確に示して加算等の計上の停止の検討を適切に行うよう周知徹底した。
イ グループホーム等入居者について、事業主体の意見等を踏まえつつ手持金の保有状況や使用目的の確認を行うことについての方策を検討して、その結果、新たに、グループホーム等入居者の手持金等資産の保有状況に関する確認方法を定めた。