農林水産省は、新規就農定着促進事業等を実施している市町村、地域協議会等(以下「協議会等」という。)に対して、担い手育成・確保対策整備費補助金等の国庫補助金等を交付している。新規就農定着促進事業等は、新規就農者による農業用機械の導入等に要する費用の一部について助成を行う事業であり、その助成対象者については、農業以外の職業に恒常的に従事し、片手間に農業に従事するような者は原則として対象にならないとされており、また、親の農業経営の下で農業に従事する者(以下「親元就農者」という。)が助成対象者と認められるためには、自らが経営責任を有する部門を親の経営と明確に区分する必要があるとされている。しかし、助成対象者が自らの農業経営以外の職業に常勤で従事していて片手間に農業に従事していたり、親元就農者である助成対象者が自ら農業経営を行っているとは認められなかったりしているなどの事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、新規就農者を対象とした助成事業の実施要綱等に、自らの農業経営以外の職業に常勤で従事していて片手間に農業に従事している者については原則として助成の対象とならないことを明確にするとともに事業実施後のフォローアップ等の実施方法を具体的に定めたり、親元就農者に対して助成する場合に協議会等が確認する事項を明確にするとともに事業実施後のフォローアップ等の実施方法を具体的に定めたりするよう、農林水産大臣に対して平成26年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、27年4月までに、24年度までに廃止された新規就農定着促進事業等に代わり新規就農者を助成対象としている経営体育成支援事業の実施要綱を改正するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 助成の対象とする新規就農者を農業経営基盤強化促進法(昭和55年法律第65号)等により市町村が定める農業所得の目標等に照らして適切であると認定された認定新規就農者に限ることにより、自らの農業経営以外の職業に常勤で従事していて片手間に農業に従事している者は助成の対象とならないことを明確にするとともに、地方農政局長等に対して事務連絡を発して、事業実施後のフォローアップに当たっては、原則として現地調査を実施することや、税務申告書類等を確認することなどを具体的に定めて周知した。
イ 親元就農者を助成の対象とする場合には、自らが行う農業経営と親族の経営との区分を明確にすることが必要とされている認定新規就農者に限ることにより、後継事業を実施している市町村が確認する事項を明確にするとともに、アで発した事務連絡に、事業実施後のフォローアップに当たっては、農業経営の収支に関する帳簿等を確認することなどを具体的に定めて周知した。