農林水産省は、平成24年度から、新規就農総合支援事業実施要綱(以下「実施要綱」という。)等に基づき、都道府県等を事業主体として、就農に向けて研修を受ける者に対して準備型の青年就農給付金(以下「準備給付金」という。)を、経営の不安定な就農初期段階の新規就農者に対して経営開始型の青年就農給付金(以下「経営給付金」という。)を、それぞれ給付する青年就農給付金事業を実施している。しかし、青年就農給付金の給付を受けようとする者は生活費の確保を目的とした国の他の事業による給付等を受けていないことが要件(以下、この要件を「重複受給禁止要件」という。)となっているのに失業等給付金を受給している者に青年就農給付金を給付していたり、準備給付金の給付期間に対応する研修期間を通して研修が実施されたことを確認できない月に係る準備給付金を給付していたり、経営給付金の給付に当たり設定する経営開始時期が各々の農業経営の実態に即して設定されていなかったり、前年の総所得が250万円未満であれば総所得の多寡にかかわらず経営給付金の給付額を一律にしていたりしている事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、実施要綱等により、事業主体が重複受給禁止要件を確認する際に本人からの自己申告のみでなく客観的な資料により確認するようにすること及び農業大学校等の教育機関における研修状況を確認する際に準備給付金の給付期間に対応する研修期間を通して実際に研修が実施されることを確認するようにすることを具体的に示したり、経営給付金における経営開始時期を農業経営の実態に即して設定する方法を具体的に示したり、経営給付金の給付額を新規就農者の総所得に応じた適切な額とするための基準を検討して給付額を見直したりするよう、農林水産大臣に対して26年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、並びに同法第36条の規定により改善の処置を要求し及び意見を表示した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、27年4月までに実施要綱を改正するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 前職を離職した者については申請手続の際に失業等給付金の申請に必要な離職票の原本の提示を求めて重複受給禁止要件を確認すること及び前記の教育機関でのカリキュラム以外に先進農家等で研修を計画して実施している者については研修状況を定められた様式において報告させることを具体的に示した。
イ 給付要件の確認方法等を定めた「青年就農給付金の事務手続きの手引き」を改正して、経営給付金における経営開始時期を農業経営の実態に即して統一的に設定できるように、経営開始時期の設定方法を具体的に示した。
ウ 新規就農者の前年の総所得に応じて経営給付金の給付額を変動させる仕組みを導入した。