農林水産省は、農業者戸別所得補償制度実施要綱(以下「実施要綱」という。)等に基づき、平成23年度から農業者戸別所得補償制度(25年5月から26年3月までは経営所得安定対策。26年4月からは経営所得安定対策及び水田活用の直接支払交付金)を実施している。同制度においては、水田活用の所得補償交付金(25年5月からは水田活用の直接支払交付金。同交付金の中には、地域振興作物等の生産を支援するための助成を行う産地資金(26年4月からは産地交付金)がある。)等について、それぞれ地域農業再生協議会(以下「協議会」という。)が確認した本地面積(作付けが可能な面積であり交付対象面積の基本となる面積)を基に地方農政局等の地域センター等が算定した交付対象面積に交付単価を乗ずるなどして算出した額を販売農家等に対して交付することとなっている。しかし、本地面積の算定根拠が明確でなかったり、本地面積が適切に確認されていなかったり、園芸施設で作付けされる作物に対して産地資金を交付する際に本地面積等を交付対象面積としたりしている事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、実施要綱等により、協議会において本地面積の算定根拠を資料等により明確にすることを明示して、地域センター等に対して実施要綱等により明示した内容について協議会への周知徹底を図るよう指示したりするとともに、実施要綱等に、本地面積の定期的な確認方法として、水稲共済細目書との照合による場合には、他の公的資料との照合も併せて行う必要があることを明示したり、園芸施設で作付けされる作物に対して産地交付金を交付する場合の交付対象面積は園芸施設の設置面積とするなどの適切な算定方法を明示したり、地域センター等に対してこれらの内容及び農地転用等の情報が反映された公的資料との定期的な照合等の本地面積の適切な確認の実施について協議会への周知徹底を図るよう指示したりするよう、農林水産大臣に対して26年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求し、及び同法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、27年4月に経営所得安定対策等実施要綱を改正するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 協議会において本地面積の算定根拠を資料等により明確にするために、交付対象水田の確認に要した資料を次に確認を行うまで保管することを明示して、地域センター等に対して改正内容について協議会への周知徹底を図るよう指示した。
イ 本地面積の定期的な確認方法として、水稲共済細目書のほか、土地登記簿等の農地転用等に係る情報が反映された公的資料との照合も併せて行うことを明示した。
ウ 施設園芸を交付対象とする場合の交付対象面積は生産に用いる園芸施設の面積とすることを明示した。
エ 27年5月に、地域センター等に対してイ及びウの内容並びに本地面積の適切な確認の実施について協議会への周知徹底を図るよう指示した。