水産庁は、我が国の政府開発援助の一環として、我が国漁業の海外漁場の確保と水産資源の持続的利用の推進により総合的な食料安全保障の確立を図ることを目的として、国際漁業振興協力事業を実施しており、同事業の実施に当たり、我が国と入漁関係にある開発途上国(以下「相手国」という。)の水産業の開発、振興等を図るために公益財団法人海外漁業協力財団(以下「財団」という。)に対して、財団が相手国内で実施する水産施設の修理、資機材の供与等の援助に要する経費について国庫補助金を交付している。しかし、財団が修理等した施設等が稼働を停止するなどして援助の効果が十分に発現していなかったり、施設等の本体に組み込まれていて単体で利用されることのない資機材等について現状報告を受ける対象となっていないなどのため援助のフォローアップを十分に行うことができなかったり、相手国が免除又は負担することとなっている現地で調達した資機材等に係る付加価値税を財団が負担していたりしている事態が見受けられた。
したがって、水産庁において、財団に対して、援助の効果が十分に発現していない要因を解消するための相手国への助言を適時適切に行わせたり、事前調査において援助の効果の持続的な発現を妨げる要因の把握をさせたり、援助の効果を発現させる方策に関して必要に応じて相談等を行うよう相手国に周知させたり、単体では利用されることのない資機材等もフォローアップできるよう資機材等のリストの作成対象を見直させたり、付加価値税についての適切な対処がなされるよう相手国に働きかけさせたりするとともに、財団に対する指導監督の徹底を図るよう、水産庁長官に対して平成26年9月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、水産庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、水産庁は、本院指摘の趣旨に沿い、26年10月に財団に対して文書を発するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 援助の効果が十分に発現していない事態を把握した場合は、その要因を解消するための相手国への助言を適時適切に行ったり、事前調査の項目に援助の効果が十分に発現することを妨げる要因となる事項を含めたり、援助の効果を発現させる方策に関して必要に応じて問合せや相談を行うよう相手国に周知したりするよう指示した。
イ 単体では利用されることのない資機材等もフォローアップできるよう、資機材等のリストの作成対象の見直しを指示した。
ウ 付加価値税の免除又は負担について適切な対処がなされるように、相手国に働きかけるよう指示した。
エ 財団がア、イ及びウを受けて必要な処置を講じ、その後の事業において実施していることを確認するなどして指導監督の徹底を図った。