国土交通省は、高齢者世帯等の住宅確保要配慮者(以下「要配慮者」という。)の居住の安定確保を図るなどのために、空き家を有する既存の民間賃貸住宅(以下「賃貸住宅」という。)の改修工事を行う事業主体に対して、要配慮者の入居等を条件として、当該改修工事費の一部を補助する住宅セーフティネット整備推進事業(以下「SN事業」という。)を実施している。そして、国土交通省は、SN事業の実施に当たり、国土交通大臣が公募により選定した者(以下「事務事業者」という。)に国庫補助金を交付して、事業主体から提出された完了実績報告の審査等の事務を行わせている。しかし、SN事業の対象となった賃貸住宅が国庫補助金の交付を受けるための要件(以下「補助要件」という。)を満たしておらず、国庫補助金が過大に交付されていたり、補助要件を満たしているかなどについて確認ができなかったりしている事態や、事務事業者から定期的に賃貸住宅の入居の有無等の管理状況の報告(以下「管理状況報告」という。)の提出を求めていなかったり、要配慮者に対して賃貸住宅に関する正確な情報が提供されていなかったりなどしていて、SN事業実施後に的確な管理が図られていないなどの事態が見受けられた。
したがって、国土交通省において、SN事業の補助要件を満たしていることや支払が適正に行われたことなどを確実に確認できるよう審査等の体制を整備したり、個人や民間事業者が事業主体となって要配慮者の住宅確保に係る各種の施策を実施する場合に補助要件を満たしていることなどを確実に確認できるよう事業の実施方法や審査体制を整備したりするとともに、SN事業実施後の賃貸住宅について、定期的に管理状況報告の提出を求めるなどして管理状況を的確に把握するための実効性のある措置を講じたり、地方公共団体等の協力を得るなどして要配慮者に賃貸住宅に係る情報を的確に提供したりするよう、国土交通大臣に対して平成26年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 事務事業者に対して、SN事業の実施について、26年4月に交付申請書を提出する際の建築士等による補助要件の確認や完了実績報告書を提出する際の工事費の支払を証する書類の提出等の手続をマニュアルに定めさせて手続の厳格化を図った。そして、26年9月に審査等に係る要領を作成させるなどして、審査等に係る体制の強化を図った。また、27年度に創設された個人や民間事業者が事業主体となって実施する要配慮者の住宅確保に係る新規の事業においても、上記の手続の厳格化を図った。
イ 事務事業者等に対して、SN事業実施後の賃貸住宅について、27年1月から定期的に事業主体から管理状況報告を徴取させることとして、地方公共団体等の協力を得るなどして要配慮者に賃貸住宅に係る情報を的確に提供させるなどした。