日本年金機構(以下「機構」という。)は、一定金額以上の産品及びサービスの調達(以下「特定調達」という。)を行うに当たっては、世界貿易機関(WTO)の下で運用されている政府調達に関する協定(以下「協定」という。)等及び協定等を遵守した契約事務を行うために機構が定めた「日本年金機構政府調達契約事務取扱細則」等(以下「細則等」という。)に従った契約手続を実施することとなっている。そして、我が国の電気及びガスの小売市場は自由化が進められており、制度上、国内外の事業者が広く参入できるような状況となっている。しかし、電気及びガスの調達契約について、特定調達の対象となる要件を満たしているにもかかわらず、一般競争に付するなどの特定調達に係る契約手続が実施されていない事態が見受けられた。
したがって、機構において、協定の趣旨を十分に理解した上で、これを関係部局に周知徹底し、電気及びガスの調達契約について、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、特定調達に係る契約手続を協定等及び細則等に基づいて実施するよう、日本年金機構理事長に対して平成26年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、26年10月に関係部局に対して通知を発して、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、特定調達に係る契約手続を協定等及び細則等に基づいて実施するよう周知徹底するとともに、同年12月及び27年3月並びに26年10月に、特定調達の対象となる要件を満たす電気及びガスの調達契約について、それぞれ上記の手続を踏まえて、官報に入札公告を掲載して一般競争に付する処置を講じていた。