独立行政法人農畜産業振興機構(以下「機構」という。)は、畜産経営の安定を図るために、肉用牛肥育経営安定特別対策事業及び養豚経営安定対策事業(以下「両事業」という。)により、肥育牛生産者及び養豚事業者に対して、肉用牛又は肉豚(以下「肉用牛等」という。)を販売した日が属する四半期における1頭当たりの粗収益が同四半期における生産費を下回ったなどの場合に、その差額の8割について補填金を交付している。また、農業協同組合連合会等(以下「農協連等」という。)は、農業協同組合法(昭和22年法律第132号)の規定により、組合員等のために行う農業の経営及び技術の向上に関する指導(以下「指導事業」という。)等のほか、農業者の営農と競合しない範囲において一定の農業の経営等を行うことが認められている。そして、直営の牧場等で肉用牛等を飼養し、販売していた農協連等において、両事業の補填金の交付を受けていた。しかし、指導事業の一環として肉用牛等を飼養及び販売している農協連等に対しても両事業の補填金が交付されていて、販売を目的として肉用牛等を飼養する畜産経営の安定を図るという事業の目的に沿うものとなっていない事態が見受けられた。
したがって、機構において、農協連等に対する補填金について、両事業の実施要綱等を改正して、指導事業の一環として肉用牛等を飼養及び販売する場合には両事業の補填金の交付対象としないこととして、その交付対象を明確にすることなどにより、補填金の交付が販売を目的として肉用牛等を飼養する畜産経営の安定を図るという事業の目的に沿うものとなるよう、独立行政法人農畜産業振興機構理事長に対して平成26年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、27年4月に両事業の実施要綱を改正して、指導事業の一環として肉用牛等を飼養及び販売する場合には両事業の補填金の交付対象としないこととして、その交付対象を明確にするなどの処置を講じていた。