独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)は、経済的理由により修学に困難がある優れた学生等に対して学資を貸与する事業(以下、この貸与する学資を「奨学金」といい、奨学金の貸与を受ける者を「奨学生」という。)を実施している。しかし、退学等により奨学生の資格を失った者に振り込まれた奨学金(以下「振込超過金」という。)が大学等の事務処理の遅延により多額となっていたり、振込超過金の件数及び金額の把握並びに大学等における再発防止策の実施状況の確認が行われていなかったり、奨学生としての資格の有無の確認等(以下「適格認定」という。)に係る実態調査の結果、適格認定が適切でなかったことが判明した奨学生について当該奨学生が在学する大学等に適格認定の修正を行わせないまま奨学金が貸与され続けていたりしている事態が見受けられた。
したがって、機構において、大学等の学籍事務担当者と当該大学等の奨学金事務担当者が退学者等に関する情報を直ちに共有することの重要性を大学等に周知徹底するなどの振込超過金の発生を防止する方策を検討して実施したり、振込超過金の件数及び金額を把握して振込超過金が発生した大学等に対して再発防止策の実施状況を確認するなどの的確な指導を行ったり、適格認定が適切でなかったことが判明した奨学生について、当該奨学生が在学する大学等に本来奨学生の資格を失わせる「廃止」と認定すべきであった時点まで遡って適格認定の修正を行わせてその結果に基づいて奨学生の資格を失わせることとする取扱いを定めるとともに、その内容について大学等及び奨学生に対して周知したりするよう、独立行政法人日本学生支援機構理事長に対して平成26年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、機構において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 振込超過金の発生を防止する方策として、27年1月に大学等に対して事務連絡を発したり、26年11月から27年3月までの間に大学等の奨学金事務担当者に対する研修会を開催したりして、大学等の学籍事務担当者と当該大学等の奨学金事務担当者が退学者等に関する情報を直ちに共有することの重要性を周知徹底するとともに、26年11月から振込超過金の件数及び金額を把握して、振込超過金が発生した大学等に対しては、再発防止策の実施状況を確認するなどの指導を行った。
イ 27年度の奨学金事務に関する手引において、適格認定が適切でなかったことが判明した奨学生については、当該奨学生が在学する大学等に本来「廃止」と認定すべきであった時点まで遡って適格認定の修正を行わせてその結果に基づいて奨学生の資格を失わせることとする取扱いを定めるとともに、その内容について、大学等に対しては適格認定の実施に係る通知文書等により、また、奨学生に対しては奨学金の貸与手続に係る配布資料により、それぞれ周知した。