株式会社商工組合中央金庫(以下「金庫」という。)は、東日本大震災災害復旧資金の貸付けとして、東日本大震災により被害を受けた者に対して、株式会社日本政策金融公庫(以下「公庫」という。)から利子補給金の支給を受けて、これを借受者に交付することで実質的に金利を引き下げる貸付けを行っている。このうち、事務所等が全壊したり流失したりするなどの直接被害を受けた者等に対する貸付けにおいては、利子補給等を行うことができる貸付金額に、より多くの借受者が限りある復興予算を効果的に利用できるようにするために限度額(以下「低利適用限度額」といい、低利適用限度額が設けられている貸付けを「低利貸付」という。)が設けられている。そして、低利貸付と同様の貸付けは、公庫、沖縄振興開発金融公庫及び株式会社日本政策投資銀行(以下、これらを合わせて「他の融資機関」という。)においても行われており、金庫及び他の融資機関が同一の借受者に併せて低利貸付を行おうとする場合の低利適用限度額は、金庫及び他の融資機関における低利貸付の貸付金元高の合計金額により判断することとなっている。しかし、借受者が低利適用限度額を超えて低利貸付を受けていないかについて実効性のある確認を行うような仕組みとなっていなかったり、低利適用限度額を超えて低利貸付が行われていたりしている事態が見受けられた。
したがって、金庫において、金庫と他の融資機関との間で、低利貸付の貸付金元高の合計金額を把握するための協力体制が執られるよう協定等を締結したり、「危機対応業務にかかる手続要領(営業店編)」(以下「要領」という。)等において、当該協定等に基づき、他の融資機関から貸付金元高に係る証ひょうの提供を受けるなどして低利適用限度額の確認を行い、その内容を記録するなどのための具体的な方法を財務省及び中小企業庁と協議した上で定めて、各支店に周知したりするよう、株式会社商工組合中央金庫代表取締役社長に対して平成26年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、金庫本店において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、金庫は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 金庫と他の融資機関との間で、27年3月に、低利貸付の貸付金元高の合計金額を適切に把握するための覚書を締結した。
イ 他の融資機関から貸付金元高に係る証ひょうの提供を受けるなどして低利適用限度額の確認を行いその内容を記録することとするよう、財務省及び中小企業庁と協議した上で27年3月に要領等を改正し、同年4月から実施する旨を各支店に周知した。