我が国では、台風や局地的な集中豪雨が頻発するなどして土砂災害が発生し、人的被害等が生じたことなどから、これまで砂防法、土砂災害防止法等のハード対策及びソフト対策に係る法令等が整備されてきている。そして、平成27年1月に土砂災害防止法が改正され、基礎調査を実施して土砂災害の危険性の高い箇所が判明した場合には、都道府県がその結果を住民に公表するなどのソフト対策が強化されており、また、国土交通省は今後おおむね31年度までの5年間で基礎調査を完了するよう都道府県に要請している。
一方、土石流等が発生した際に、夜間である場合は避難に時間を要したり、高齢者や子供等は速やかに避難することが困難であったりすることなども考えられる。また、近年、市街化地域の拡大に伴い渓流下流部や急傾斜地の直下等の土砂災害の危険性の高い箇所において住宅等が立地している場合もあるため、そのような箇所で土石流等が発生した場合には、多大な被害が生ずることが想定される。
このようなことから、土砂災害の危険性の高い箇所については、ソフト対策と連携して限られた予算の中でハード対策を着実に実施していくことが重要である。
そこで、会計検査院は、砂防関係施設について、合規性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査を実施した。
会計検査院は、27都道府県(注2)管内において国庫補助事業等により実施された土砂災害対策事業等を対象として検査した。検査に当たっては、警戒区域等の指定状況、砂防関係施設の点検状況、砂防えん堤の土砂等の管理状況等について調書を徴して調査分析するとともに、基礎調査結果、砂防関係施設の台帳、定期点検結果等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。