国有林野は、国有林野の管理経営に関する法律(昭和26年法律第246号。以下「管理経営法」という。)において、国の所有に属する森林原野であって、国において森林経営の用に供し、又は供すると決定したものなどとなっており、降水を貯留して洪水や渇水を緩和するなどの水源かん養機能、下層植生が地表の浸食を抑制したり樹木が根を張り巡らせたりすることによって土砂の崩壊を防いだりする土砂災害防止・土壌保全機能等の公益的機能及び木材等生産機能といった多面的な機能(注1)を有している。
そして、国は、森林・林業基本法(昭和39年法律第161号)において、国土の保全その他国有林野の有する公益的機能の維持増進を図るとともに、あわせて、林産物を持続的かつ計画的に供給し、及び国有林野の活用によりその所在する地域における産業の振興又は住民の福祉の向上に寄与することを旨として、国有林野の管理及び経営の事業(以下「国有林野事業」という。)の適切かつ効率的な運営を行うこととなっている。
農林水産大臣は、管理経営法において、国有林野の管理経営に関する計画を明らかにするなどして、その適切かつ効率的な管理経営の実施を確保するために、5年ごとに、10年を一期とする国有林野の管理経営に関する基本計画(以下「管理経営基本計画」という。)を定めなければならないこととなっている。
そして、林野庁は、管理経営基本計画に基づき、平成26年度末において我が国の国土面積の約2割に当たる国有林野7,582,743ha(土地、立木竹等の国有財産台帳価格計3兆8943億4154万余円)の管理経営を行っており、森林管理局は、管理経営基本計画に即して、国有林野の管理経営に関する基本的な事項等について、森林計画区(注2)ごとに5年を一期とする地域管理経営計画を定めるとともに、樹木の伐採、路網の整備等の国有林野での施業に係る計画(以下「国有林野施業実施計画」という。)を定めている。
国有林野事業は、24年度以前は、国有林野の有する公益的機能の維持増進を基本としつつ企業的に運営し、その健全な発達に資するために、国有林野事業特別会計(以下「林野特会」という。)において経理されていたが、25年度以降は一般会計において経理されている。そして、林野特会における国有林野事業に関連する16年度から24年度までの間の収納済歳入額及び支出済歳出額は、それぞれ3327億余円から4378億余円の間及び3448億余円から4310億余円の間で推移し、24年度には4378億余円及び4266億余円となっており、一方、一般会計で経理することとなった25年度以降の国有林野事業に関連する収納済歳入額及び支出済歳出額は、25年度281億余円及び1480億余円、26年度293億余円及び1442億余円となっている(図表1参照)。
図表1 国有林野事業に関連する収納済歳入額及び支出済歳出額
(単位:千円) | (単位:千円) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
林野特会 | 一般会計 | |||||||
年度 注(1) | 収納済歳入額 | 支出済歳出額 | 年度 注(1) | 収納済歳入額 | 支出済歳出額 | |||
共通 注(2) | 共通 注(2) | |||||||
平成 | 332,735,622 | 344,817,146 | - | 平成 | 28,197,287 | 148,031,933 | 32,730,296 | |
16年度 | 25年度 | |||||||
17年度 | 344,174,779 | 356,927,789 | - | 26年度 | 29,349,220 | 144,277,340 | 33,327,430 | |
18年度 | 366,600,428 | 372,835,324 | 695,979 | 計 | 57,546,507 | 292,309,273 | 66,057,727 | |
19年度 | 398,987,354 | 411,525,069 | 1,084,398 | 注(1) 特別会計の見直しに伴い、林野特会において、平成 | ||||
20年度 | 396,588,552 | 400,586,008 | 1,171,870 | 18年度から国有林野事業勘定と治山勘定が統合されて | ||||
21年度 | 427,469,672 | 431,014,229 | 593,819 | いる。 | ||||
22年度 | 413,828,603 | 423,865,430 | 786,273 | 注(2) 国有林野事業に関連する額と関連しない額を明確に | ||||
23年度 | 415,301,738 | 424,479,007 | 757,259 | 区分できない共通的な支出済歳出額 | ||||
24年度 | 437,883,477 | 426,690,790 | 786,904 | |||||
計 | 3,533,570,231 | 3,592,740,796 | 5,876,505 |
国有林野事業は、昭和22年度以降、企業的な運営等を図るために、林野特会で経理されていた。しかし、50年代に入ると、図表2のとおり、増加傾向にあった国有林野の産物の売払収入は、木材需要が頭打ちとなったことなどにより、56年度の2594億余円をピークに減少に転じるとともに、その後の円高による輸入材の価格低下に伴う国産材の価格低下や、いわゆるバブル経済の崩壊による景気後退に伴う木材需要の減少等により、平成9年度には662億余円と大幅に落ち込んだ。一方、国有林野の産物の売払収入の減少等に合わせた組織体制の合理化が進まなかったことなどにより、9年度末の借入金残高は3兆7446億余円となり、国有林野事業は危機的な財務状況に陥った。 このような状況の中、農林水産大臣の諮問を受けて、林政審議会(注3)において国有林野事業の抜本的改革等についての議論が開始され、林野庁は、一定の前提の下で今後の国有林野の管理運営に係る収支の見通しについての試算を行った。その後、林政審議会の最終答申を経て、国は、国有林野事業の改革のための特別措置法(平成10年法律第134号。以下「改革特措法」という。)を制定して、10年10月から15年度までの期間を集中改革期間と位置付けて、職員数の適正化を行うなどの管理経営体制の効率化を図るとともに、10年10月の借入金残高3兆8875億余円のうち、2兆8421億余円を一般会計に帰属させることとし、残りの1兆0454億円については、林野特会において、60年度までに返済することとした。
図表2 木材価格及び国有林野の産物の売払収入の推移
このような状況を受けて、会計検査院は、平成15年度決算検査報告において特定検査対象に対する検査状況として「国有林野事業の抜本的改革の実施状況について」を掲記しており、会計検査院の所見として、改革の努力は、必ずしも十分な成果に結びついたとは認められず、60年度までに借入金残高1兆0454億円を着実に返済するには収支両面にわたるより一層の努力が必要であるとし、国有林野事業の管理運営及び抜本的な改革の進捗状況について引き続き注視していくとしているところである。
国有林野の管理経営の方針は、改革特措法により、それまでの林産物の供給に重点を置いたものから公益的機能の維持増進を旨とするものへと転換することとなり、これに伴い、林野特会は、企業特別会計の骨格を維持しつつも、国有林野のうち、公益的機能が高い森林(以下「公益林」という。)の管理等に要する経費等を対象として、一般会計から恒常的に繰入れを行う仕組みに移行することとなった。
その後、国有林野については、集中改革期間以降も公益的機能重視の管理経営が続けられてきており、農林水産省は、21年12月に森林・林業再生プラン(注4)を策定するとともに、本プランを具体化していくために、22年11月に、国有林野について「森林・林業行政の観点から国が責任をもって一体的に管理するとともに、その組織・技術力・資源を活用し、我が国森林・林業の再生に貢献できるよう見直す」こととする「森林・林業の再生に向けた改革の姿」を取りまとめている。
また、22年10月の行政刷新会議による「事業仕分け」においては、今後の国有林野事業の経理の在り方として「特別会計は一部廃止し一般会計に統合、負債返済部分は区分経理を維持」、財産・負債の在り方として「抜本的見直し(負債は区分経理し、国民負担は増やさない)」とされた。
さらに、23年12月には、林政審議会は、農林水産大臣の諮問に応じて、「今後の国有林野の管理経営の在り方について」を答申しており、これによれば、国有林野の管理経営は、森林・林業・木材産業に対する社会の要請に柔軟かつ効果的に対応する一般行政として関係省庁との連携を図りつつ、一体的に一般会計の下で実施することが適当であるとしている。
このような背景の下、国は、24年6月に、森林が有する多面的機能の持続的な発揮を図り、厳しい状況に置かれている林業を活性化するなどのために、「国有林野の有する公益的機能の維持増進を図るための国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する等の法律」(平成24年法律第42号。以下「管理経営法等改正法」という。)を制定し、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)を改正して、25年4月に林野特会は廃止された。林野特会の廃止に伴い、特別会計に所属していた権利義務は一般会計等に帰属するものとされ、また、林野特会の負担に属する借入金に係るものは国有林野事業債務管理特別会計(以下「債務管理特会」という。)に帰属するなどとされた。
これにより、国有林野事業は、25年4月以降一般会計で経理されることとなり、管理経営基本計画に基づく公益重視の管理経営を一層推進することとされるなど、企業的な運営から脱却することとなったが、債務管理特会に承継された借入金は、新たな国民負担を生じさせないために、従前と同様、国有林野の産物の売払収入等により返済することとされた(図表3参照)。そして、債務管理特会で経理することとなった25年度以降の収納済歳入額及び支出済歳出額は、それぞれ25年度3013億余円、3013億余円、26年度3121億余円、3121億余円となっている。
図表3 借入金返済の仕組み
農林水産大臣は、管理経営法等改正法附則第2条の規定に基づき、21年度から30年度までを計画期間とする管理経営基本計画を24年12月に変更している。なお、管理経営基本計画は、25年度で5年が経過することから、25年12月に新たに策定されているが、基本的な方針は変わっていない。
管理経営基本計画における主な施策の概要及び各施策における本庁、森林管理局、森林管理署等の役割は、図表4のとおりである。
図表4 主な施策の概要及び各施策における本庁等の役割
管理経営基本計画における各施策の内容及び制度の概要は次のとおりとなっている。
国有林野は前記のとおり多面的な機能を有していることから、農林水産省は、管理経営基本計画において、個々の国有林野を重視すべき機能に応じて区分(以下、機能に応じた区分を「機能類型区分」という。)し、林野庁は、各機能類型区分に応じた管理経営を行っている。
国有林野の機能類型区分について、農林水産省は、図表5のとおり、24年12月に変更される前の管理経営基本計画においては、公益林を2区分、木材等生産機能の発揮を重視する資源の循環利用林を1区分、計3区分としていた。しかし、管理経営基本計画の変更により、25年度以降は、上記木材等生産機能の発揮を重視する国有林野の機能類型区分を廃止して公益林を5区分に再編した。そして、林野庁は、機能類型区分に応じた施業の結果得られる木材を計画的に供給することにより、木材等生産機能を発揮することとしている。
図表5 国有林野の機能類型区分
機能類型区分 | 機能類型区分の考え方 | ||
---|---|---|---|
平成 24年度 以前 |
公益林 | 水土保全林 | 土砂流出・崩壊の防備、水源のかん養等安全で快適な国民生活を確保することを重視する森林 |
森林と人との共生林 | 原生的な森林生態系等貴重な自然環境の保全、国民と自然とのふれあいの場としての利用を図ることを重視する森林 | ||
資源の循環利用林 | 環境に対する負荷の少ない素材である木材の効率的な生産を行うことを重視する森林 | ||
25年度 以降 |
公益林 | 山地災害防止タイプ | 山地災害防止及び土壌保全機能の発揮を第一とすべき森林 |
自然維持タイプ | 原生的な森林生態系や希少な生物の生育・生息する森林等属地的な生物多様性保全機能の発揮を第一とすべき森林 | ||
森林空間利用タイプ | 保健、レクリエーション、文化機能の発揮を第一とすべき森林 | ||
快適環境形成タイプ | 快適な環境の形成の機能の発揮を第一とすべき森林 | ||
水源かん養タイプ | 水源のかん養の機能の発揮を第一とすべき森林 |
国有林野に囲まれたり隣接したりしている民有林(以下「介在地等」という。)の中には、小規模で孤立分散していて立地条件が不利であることなどから民有林所有者等による森林の整備・保全が十分に行われず、土砂の流出等により国有林野が発揮している国土保全等の公益的機能に悪影響を及ぼしたり、外来樹種の繁茂により国有林野で実施する外来樹種の駆除の効果に悪影響を及ぼしたりするものがある。そのため、25年4月の管理経営法等改正法の施行により、森林管理局が公益的機能の維持増進を図るために必要があると認めるときは、介在地等の民有林所有者等と協定を締結する(以下、この協定を「公益増進協定」という。)ことにより、国の負担で国有林野と介在地等を一体的に整備及び保全できることとなった。
公益増進協定の対象区域となる介在地等については、森林法(昭和26年法律第249号)及び「「公益的機能維持増進協定取扱要領」の制定について」(平成25年24林国経第61号林野庁長官通知)において、国有林野と一体的な施業を行うこと、施業を行わなければ国有林野が発揮する公益的機能等を低下させるおそれがあることなどを条件に選定されることとなっている。
また、森林管理局は、「公益的機能維持増進協定取扱要領の運用について」(平成25年24林国経第62号林野庁国有林野部長通知)に基づき、介在地等における森林の整備及び保全に消極的な民有林所有者等との合意形成等に資するために、公益増進協定による森林の整備及び保全に係る効果の分析や評価を行うこととなっている(図表6参照)。
図表6 公益増進協定の制度の概要
森林の公益的機能が持続的に発揮されるためには、人工林における間伐(注5)や造林等の森林経営を持続的に行うことにより、森林を適切に管理する必要があるが、国内の林業については、路網整備や施業の集約化(注6)の遅れなどから生産性が低く、木材価格が低迷する中で民有林所有者等の林業への関心が低下していることなどから、森林の適切な管理に支障を来すことが危惧されている。
このため、林野庁は、森林・林業再生に貢献するために、国産材の安定供給体制の構築、木材の効率的な生産・販売の実施、施業の効率化や低コスト化等を通じた国産材の需要拡大や価格の上昇を目的として、次の(ア)から(ウ)までの施策を実施することとしている。
林野庁は、改革特措法に基づく国有林野事業の抜本的改革以前は、基幹作業職員(注7)等が自ら伐採等の施業を行い、保有する貯木場等に木材を集積するなどして、木材を需要者に直接販売する普通販売を多く実施していた。一方、抜本的改革以降は、財務の健全化 を図るために、職員数の適正化に取り組んだり、必要性が乏しい貯木場を売却したりなどするとともに、市場で販売できる木材については、木材市場等に販売を委託する委託販売を推進してきている。
また、林野庁は、従来、林内に切り捨てるなどして、利用が低位であった曲がり材等の低質な間伐材等について、需要者とあらかじめ取引量等に係る協定を締結し、木材市場等を介さずに需要者へ直送することにより、安定的かつ計画的な供給を行う販売方法(以下、このような販売方法を「システム販売」、取引量等に係る協定を「システム販売協定」という。)を活用して、林業・木材産業の活性化を図ってきている。さらに、これまで委託販売の対象としてきた木材についても、安定的かつ計画的な供給により国産材の需要拡大を図って木材自給率を高めるために、木材市場等で高額で取引される一部の優良木等を除いて、システム販売を推進している。
森林管理局は、システム販売協定の締結に当たって、システム販売の目的を達成し、木材買受けの機会の均等を図るために、「国有林材の安定供給システムによる販売について」(平成14年14林国業第25号林野庁長官通知)等に基づいて、次のとおり、企画競争方式により相手方の選定を行うこととなっている。
① 森林管理局は、協定期間、対象樹種、取引予定量等を記載した公募公告を行う。
② 買受けを希望する需要者は、申請書とともに、流通コスト削減、新規需要開拓等に資する取組に係る企画提案書を森林管理局へ提出する。
③ 森林管理局は、局内に関係部局等の委員で構成する販売推進委員会を設置し、同委員会は、森林管理局があらかじめ定めた一定の評価基準に基づき、企画提案書の内容等を審査・評価して点数を付与する。
④ 森林管理局は、販売推進委員会の評価結果を受けて、最も評価の高かった者(平成26年8月以降は評価の高い者)とシステム販売協定を締結する。
⑤ 森林管理局は、協定期間終了後に、需要者から提出された結果報告等により、企画提案書に記載された取組について検証を行い、意図した結果が得られていないと判断した場合、ペナルティとして、当該需要者の次回の企画提案書の審査・評価の際に一定点数を減点する。
また、システム販売協定における協定期間は、樹木を立木のまま販売する立木販売は原則として複数年とされており、樹木を丸太に生産して販売する製品販売は特に規定はないものの、森林管理局においては通常1年以内と している。また、取引予定量は、収穫調査(注8)により事前に調査した材積に基づいて算出されるが、このうち、立木販売は、調査した立木の材積により、製品販売は、生産歩留りを考慮した材積により、それぞれ取引予定量が決まり、協定締結時に当該取引予定量を基に協定量が決まることになる。そして、システム販売協定に基づいて、立木販売は、立木の販売契約締結後に相手方が自ら伐採等を行うこととなっており、製品販売は、森林管理署等が伐採等を行った上で、相手方と販売契約を締結し、丸太を販売することとなっている。
国有林野では伐採適期を迎えた人工林が増加していることから、林野庁は、木材の効率的な生産・販売の実施に当たり、木材の搬出機能を高めるために、木材搬出用トラックに伐採した木材を直接積み込み、市場へ直送することが可能な土場(注9)(以下「ストックポイント」という。)等の整備及び木材搬出用トラックの通行量等の増加に対応するための林道の路盤等の強化を行う必要があるとして、25年に森林管理局に対して「路網整備関係事業に係る留意事項について」(平成25年5月9日林野庁業務課森林整備班担当課長補佐、供給対策班担当課長補佐連名事務連絡。以下「路網整備の留意事項」という。)を発して、25年度以降、路網のネットワーク機能強化事業を実施している。路網のネットワーク機能強化事業は、森林作業道(注10)に隣接している山元土場、林道及び林業専用道(注11)(以下「林道等」という。)に隣接していて複数の施業地から搬出してきた木材を集積して大型トラック等で搬出することが可能な中間土場等のストックポイントと通行量等の増大に対応するために路盤等を強化した林道等とを有機的に機能させることにより、木材の効率的な生産・販売を実現するものであり、次の(a)及び(b)の2項目で構成されている(図表7参照)。
ストックポイント及び付属路の整備は、木材の効率的な生産・販売の実施に当たり、木材の搬出機能を高めるために、林道等又は森林作業道に隣接した箇所にストックポイントの整備を行ったり、ストックポイントが林道等又は森林作業道から離れている場合に、両者を接続する付属路の整備を行ったりするものである。
林野庁は、ストックポイントを複数の施業地の中間地点等に整備して、木材を集積することにより大型トラック等での一括大量輸送が可能となったり、ストックポイントを施業地に隣接した箇所に整備して伐採した木材を施業地から木材搬出用トラックに直接積み込むことが可能となったりすることにより、木材の効率的な生産・販売を実施できるとしている。
(b) 林道等の特殊修繕林道等の特殊修繕は、林道等における木材搬出用トラックの通行量や積載荷重の増加等に対応するために路盤等の強化を行うもので、特に相当額の経費を投じて行う必要がある場合に実施される。
林野庁は、特殊修繕として、路盤の維持管理費を低減するための路面工等の実施を想定しているとしており、林道等の改良工事と同様に、主として請負契約により、調査、測量、設計業務及び建設工事を外部に発注して実施することとしている。なお、林道等における路盤等の強化を行う特殊修繕に対して、林道等の原形の保持を目的として常時行っている修繕は、維持修繕と呼ばれており、建設機械をチャーターして路面をならしたり、砕石を補塡するなどの方法で実施されている。
図表7 路網のネットワーク機能強化事業の概念図
林野庁は、地域における施業集約化の取組を支援するために、国有林野に隣接するなどしている民有林所有者等と森林管理署等との間で協定の締結(以下、この協定を「森林整備推進協定」という。)及び国有林と民有林との間で森林施業の一体化を図る森林共同施業団地(以下「施業団地」という。)の設定を行い、路網の整備や間伐等の実施に係る計画(以下「森林整備等実施計画」という。)を定めて、民有林と連結した路網の整備、計画的な間伐等の実施、民有林材との協調出荷等に取り組むことにより、施業の効率化や低コスト化、国産材の安定的かつ計画的な供給等を図ることにしている。
林野庁は、施業団地の設定等により効率的な森林整備等に取り組むために、15年に「民有林と協調した森林整備等を推進するために森林管理署等が地方公共団体等との間で締結する協定について」(平成15年14林国経第35号林野庁長官通知)を発して施策を開始しており、森林管理署等は、①国有林野施業実施計画の計画期間内で協定期間を設定して森林整備推進協定を締結すること、②協定期間の満了に際しては、相手方と協議の上、協定期間を更新することができること、③森林整備推進協定に係る施業の実施に当たっては、必要に応じて、協定の締結者により構成する運営会議を設置することができることとなっている。
さらに、林野庁は、国有林と民有林が連携した施業を実施することによる施業の効率化や低コスト化、国産材の安定的かつ計画的な供給等のメリットについて、民有林所有者等の理解を得ることが施業団地の設定を推進するために重要であることから、24年6月に、森林管理局に対して「森林共同施業団地の設定の推進と事業実施にあたっての留意点等について」(平成24年6月26日林野庁経営企画課経営計画班担当課長補佐、業務課地域振興・分収林班担当課長補佐、森林整備班担当課長補佐、販売班担当課長補佐連名事務連絡。以下「施業団地の留意点」という。)を発している。そして、施業団地の留意点においては、森林管理署等は、既設の施業団地について、過去の施業の実施結果を検証するとともに、新たな施業団地を設定したり、協定期間を更新したりする際には、当該検証結果を施業の効率化や低コスト化、国産材の安定的かつ計画的な供給等を図るための取組に反映することとされている。
林野庁は、民有林の経営に対する支援等を積極的に実施するために、林業の低コスト化等に向けた技術開発を一層推進し、実用段階に到達した先駆的な技術等については、国有林野の管理経営に役立てるとともに民有林の経営における普及・定着にも資するよう取り組むこととしている。
森林管理局は、新たな技術開発課題の設定を行うに当たっては、技術開発全体計画を作成するとともに、学識経験者等で構成される技術開発委員会(以下「局技術開発委員会」という。)の意見を徴した上で評価を行い、その評価結果を毎年度12月28日までに本庁に提出することとなっている。技術開発課題については、森林管理局の森林技術・支援センターが中心となって行っており、森林管理局は、技術開発課題の実施結果について、毎年度、局技術開発委員会の意見を徴した上で実施評価を行っている。
また、森林管理局は、技術開発期間が5年以上の技術開発課題については、技術開発期間の完了時に技術開発の結果をまとめた報告書(以下「結果報告書」という。)を作成して、開発が完了した年の12月28日までに本庁に提出することとなっている。そして、本庁は、結果報告書の提出を受けて、学識経験者等で構成された国有林野事業技術開発委員会(以下「本庁技術開発委員会」という。)の意見を徴するなどして事後評価を行うこととなっており、事後評価の結果は、森林管理局に通知され、その後の技術開発や新たな技術開発課題の設定に際して活用、反映されることになっている。