国有林野事業は、企業的な運営等を図るために国有林野事業特別会計で経理されていたが、国有林野の産物の売払収入の減少等により危機的な財務状況に陥り、国は、「国有林野事業の改革のための特別措置法」(平成10年法律第134号)を制定して、平成10年10月の借入金残高3兆8875億余円のうち、2兆8421億余円を一般会計に帰属させることとし、残りの1兆0454億円については、国有林野事業特別会計において60年度までに返済することとなった。その後、「国有林野の有する公益的機能の維持増進を図るための国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する等の法律」(平成24年法律第42号)の制定等により、国有林野事業は25年4月以降一般会計で経理されることとなり、公益重視の管理経営を一層推進するための施策や森林・林業再生に貢献するための施策を実施する中で、施業の結果、副次的に得られる木材を計画的に供給することにより国有林野の産物の売払収入等を得ることになった。そして、国有林野事業特別会計の負担に属する借入金に係るものは国有林野事業債務管理特別会計に帰属することとなり、当該借入金は、従前と同様、国有林野の産物の売払収入等により返済することとされた。
このような状況の中で、国有林野事業が60年度までに借入金の着実な返済を実現するためには、我が国の森林・林業の再生等を通じた国産材の新規需要の開拓や木材自給率の増加等が重要な課題となっており、林野庁は、これらの課題を解決するために、国産材の安定供給体制の構築、木材の効率的な生産・販売等の実現及び施業コストの縮減を図るための各施策を実施している。
したがって、一般会計への移行後の早い段階において、国有林野事業について、事業の運営等の結果を総括するとともに、上記施策の実施状況とその効果を検証及び分析すること、また、借入金の返済状況等を分析することは、今後の国有林野事業の運営等に当たり重要であると考えられる。
本報告書は、以上を踏まえて、国有林野事業について、公益重視の管理経営に係る施策や森林・林業再生に貢献するための施策は、それぞれ適切に実施され、かつ、効果を発揮しているか、当該施策が発揮している効果は、60年度までに借入金の返済を可能とするものとなっているかなどについて検査を実施し、その状況を取りまとめたことから、会計検査院法(昭和22年法律第73号)第30条の2の規定に基づき、会計検査院長から衆議院議長、参議院議長及び内閣総理大臣に対して報告するものである。