前記のとおり、国有林野事業は、管理経営法等改正法により、25年4月以降一般会計で経理されることとなり、公益重視の管理経営を一層推進する ための施策や森林・林業再生に貢献するための施策を実施するとともに、施業の結果得られる木材を計画的に供給することにより国有林野の産物の売払収入等を得るなど企業的な運営から脱却することとなった。一方、債務管理特会に承継された借入金については、従前と同様、国有林野の産物の売払収入等により60年度までに返済することとなっており、新たな国民負担を生じさせることなく着実に借入金の返済を行うことが求められている。
したがって、一般会計への移行後の早い段階において、国有林野事業について、24年度以前の林野特会や25年度以降の一般会計への移行後における事業の運営等の結果を総括するとともに、公益重視の管理経営等に係る各施策の実施状況とその効果を検証及び分析すること、また、借入金の返済に係る林野庁の試算の内容と返済状況を検証及び分析して課題を明らかにすることは、今後の適切な国有林野事業の運営及び借入金の着実な返済に当たり重要であると考えられる。
そこで、会計検査院は、国有林野事業の運営等について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して、林野庁が管理経営を行っている国有林野7,582,743ha(土地、立木竹等に係る26年度末の国有財産台帳価格3兆8943億4154万余円)、16年度から26年度までの国有林野事業に係る収納済歳入額(林野特会3兆5335億7023万余円、一般会計575億4650万余円、債務管理特会6134億7853万余円)及び支出済歳出額(林野特会3兆5927億4079万余円、一般会計2923億0927万余円、債務管理特会6134億7853万余円)を対象として、本庁、7森林管理局(注12)及び29森林管理署等(注13)において会計実地検査を行うとともに、林野庁から調書を徴するなどして検査した。
ア 国有林野の管理経営に係る組織体制は、どのように変わってきているか、また、 一般会計等への移行に伴う権利義務の承継等は、どのようになっているか。
イ 公益重視の管理経営に係る施策である民有林との一体的な森林整備等の推進並びに森林・林業再生に貢献するための施策であるシステム販売、路網のネットワーク機能強化事業、民有林と連携した施業の推進及び林業の低コスト化等に向けた技術開発等は、それぞれ適切に実施され、かつ、効果を発揮しているか。
ウ 国有林野事業における施策が発揮している効果は、借入金の返済に係る林野庁の試算に照らして、60年度までに借入金の返済を可能とするものとなっているか、また、借入金の返済は、債務管理特会が設けられた趣旨に照らして、国有林野の産物の売払収入等により行われているか。