消防庁は、緊急消防援助隊の通信基盤として消防救急デジタル無線施設を整備する市町村(特別区及び市町村の加入する一部事務組合等を含む。以下同じ。)に対して、緊急消防援助隊設備整備費補助金等を交付している。補助対象となる消防救急デジタル無線施設については、大規模災害の際に異なる市町村の消防職員間での通信に使用される電波の周波数(以下「共通波」という。)に係る部分(以下「共通波部分」という。)を整備することなどの要件を満たすものとしている。また、各市町村消防の管轄区域内における通常の消防救急業務の通信のために日常的に使用される電波の周波数(以下「活動波」という。)に係る部分(以下「活動波部分」という。)と共通波部分で共用する電源設備、車載無線機等(以下「共用施設等」という。)について、補助対象とすることを妨げないとしている。そして、市町村の通常の消防救急業務に要する費用については、消防組織法(昭和22年法律第226号)の規定に基づき、当該市町村が負担しなければならないこととなっている。しかし、共用施設等に係る補助対象事業費の算定に関する具体的な取扱いが定められていないことなどから、市町村が負担すべき通常の消防救急業務に使用する活動波部分の経費を除外することなく共用施設等の整備に係る経費の全額を補助対象事業費としている事態が見受けられた。
したがって、消防庁において、今後の緊急消防援助隊設備整備費補助金の算定が適切に行われるよう、共用施設等として整備される消防救急デジタル無線施設は、市町村の通常の消防救急業務において日常的に使用されるものであることを踏まえて、消防救急デジタル無線施設のうち共用施設等に係る補助対象事業費の算定に関する具体的な取扱いを定めるよう、消防庁長官に対して平成27年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、消防庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、消防庁は、本院指摘の趣旨に沿い、27年10月に、消防救急デジタル無線施設のうち共用施設等に係る補助対象事業費の算定に関して、共通波部分と活動波部分を明確に区分できない場合は、共通波と活動波の波数の合計に占める共通波の波数の割合を用いた案分により算定することとするなどの取扱いを定める処置を講じていた。