(平成26年度決算検査報告2か所参照 リンク10110 20718)
外務省及び独立行政法人国際協力機構(以下「機構」という。)は、国際社会の平和と発展に貢献することなどを目的として、開発途上地域の政府等に対する無償資金協力等の政府開発援助を実施している。しかし、無償資金協力において製氷施設の一部がほとんど使用されていなかったり、草の根・人間の安全保障無償資金協力(以下「草の根無償」という。)において、病院に整備した手術機材等の一部が使用されていなかったり、過去の類似事業で生じていた小学校建設等が完了していない事態に対する再発防止策が適切に実施されていなかったため、小学校で使用する机・椅子の一部が調達されていなかったりなどしていて援助の効果が十分に発現していない事態、草の根無償において、贈与資金が支払われたのに事業実施機関において事業が実施されず、援助の効果が全く発現していない事態及び技術協力において、供与した機材の一部が援助の目的どおりに使用されていない事態が見受けられた。
したがって、無償資金協力については、機構において、今後、無償資金協力の実施に当たり水産施設として製氷施設の能力を設計する場合、需要予測を裏付ける調査を十分に実施し、その妥当性を検討して設計に適切に反映させる要がある。また、草の根無償については、外務省において、事業実施機関に対して事業効果の早期発現等に向けた働きかけなどを行うとともに、今後、病院に医療機材等を整備する場合、病院が提供可能な医療サービスの状況等について十分に確認したり、相手国において類似事業の援助の効果が十分に発現しない事態について再発防止策がある場合、これを確実に実施したり、過去に草の根無償による事業実績を有していない事業実施機関と贈与契約を締結する場合、当該事業実施機関に対して贈与資金を適正に使用することなどについての指導を十分に行ったりする要がある。さらに、技術協力については、機構において、今後、相手国等が過去の無償資金協力等を通じて設置した機材の撤去作業及び供与した機材の設置作業を行う場合、現地確認を行うなどして機材の更新が確実に行われるか確認を行う要がある。ついては、援助の効果が十分に発現するよう、外務大臣及び独立行政法人国際協力機構理事長に対して平成27年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、外務本省及び機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、外務省及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 無償資金協力について、機構は、28年6月に関係部署に対して通知を発して、水産施設として製氷施設の能力を設計する場合、需要予測を裏付ける調査を十分に実施し、その妥当性を検討して設計に適切に反映させることとした。
イ 草の根無償について、外務省は、事業実施機関等に対して整備した機材等に関する事業効果の早期発現等について働きかけを行うなどした結果、手術機材等が使用できるようになったり、机・椅子の調達等が行われたり、贈与資金が返還されたりしていた。また、外務省は、28年6月に在外公館に対して通知を発して、病院に医療機材等を整備する場合、病院が提供可能な医療サービスの状況等について十分に確認したり、相手国において類似事業の援助の効果が十分に発現しない事態について再発防止策がある場合、これを確実に実施したり、過去に草の根無償による事業実績を有していない事業実施機関と贈与契約を締結する場合、当該事業実施機関に対して贈与資金を適正に使用することなどについての指導を十分に行ったりすることについて周知するなどした。
ウ 技術協力について、機構は、28年6月に関係部署に対して通知を発して、過去の無償資金協力等を通じて設置した機材の更新等を内容とするフォローアップ協力を実施するに当たって、相手国等が既存の機材の撤去作業及び供与した機材の設置作業を行う場合、現地確認を行うなどして機材の更新が確実に行われるか確認を行うこととした。