我が国は、昭和52年度以前に実施した円借款の返済が困難となっている国に対して、原則、返済額と同額の無償資金(以下「資金」という。)を贈与すること(以下「債務救済無償資金協力」という。)による債務救済措置を採用し、外務省は、53年度から平成14年度までの間に債務救済無償資金協力の対象となる国(以下「被援助国」という。)30か国に対して実施していたが、14年度末に債務救済無償資金協力を廃止した。債務救済無償資金協力の実施に当たっては、被援助国との間で資金の贈与に関する合意文書を締結するなどしており、被援助国は、その合意に基づき、贈与の対象について、調達の対象を列挙した一覧表に掲げられた生産物及び同生産物に付随する役務の購入に必要な支払、並びに両国が合意するその他の支払(以下、これらの支払の原因となる行為を合わせて「生産物の購入等」という。)のために使用すること、我が国の銀行に資金の受入れ及び生産物の購入等に係る代金の支払に限定された被援助国名義の口座を開設すること(以下、生産物の購入等のために預金された資金及び預金に伴い発生した利子を合わせて「資金等」という。)、資金等を全て使用した場合等には、遅滞なく当該取引についての報告書面(以下「使途報告書」という。)により報告することなどとなっている。また、外務省は、26年9月以降、被援助国との間で贈与後使用されていない資金等(以下「未使用資金」という。)を被援助国内に所在する銀行の口座(以下「現地口座」という。)に送金した上で被援助国が直接支払を行う方法に変更(以下「支払方法の変更」という。)している。しかし、我が国が資金を贈与した後、長期にわたり生産物の購入等のための資金等が使用されないままの状態になっている事態、2被援助国において支払方法の変更後に現地口座へ送金された資金等について、外務省が現地口座における未使用資金の残高を適時に把握しておらず、その残高に応じた適切な対応が困難となっている事態及び長期にわたり使途報告書の提出が遅滞していて、資金の使途を確認できていない事態が見受けられた。
したがって、外務本省において、未使用資金を保有している被援助国に対して資金等の早期使用に向けたより実効性のある働きかけを行える体制を整備したり、2被援助国において支払方法の変更後に現地口座に送金された未使用資金について、被援助国の実情も踏まえつつ必要に応じて随時その残高等に係る情報を把握する体制を整備した上で、その実施を2被援助国を管轄する在外公館に対して指示するとともに、今後、当該指示を他の在外公館に対しても同様に周知したり、使途報告書の遅滞のない提出及び資金等の使途の確認につながる働きかけを行える体制を整備したりするよう、外務大臣に対して27年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、外務本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、外務省は、本院指摘の趣旨に沿い、27年11月に在外公館に対して通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 未使用資金を保有している被援助国に対して、他の被援助国における生産物の購入等の実施事例を紹介するなどするよう該当する在外公館に周知することにより、資金等の早期使用に向けた働きかけを行える体制を整備した。
イ 支払方法の変更後に現地口座に未使用資金が送金された2被援助国に対して、6か月ごとに中間報告書を提出したり、必要に応じて随時報告を行ったりするよう申入れを行うことについて2被援助国を管轄する在外公館に指示することにより、2被援助国の未使用資金の残高等に係る情報を把握する体制を整備した上で、これらの情報を把握していた。また、2被援助国以外の被援助国に対しても、今後、現地口座に送金される未使用資金について同様に申入れを行うことについて該当する在外公館に周知した。
ウ 生産物の購入等を実施した後、長期にわたり使途報告書の提出が遅滞している被援助国においては、可能な範囲で所要の事項を記入して提出することができるよう、また、生産物の購入等が未実施の被援助国においても、その実施後、遅滞なく提出することができるよう、報告項目や必要となる添付資料等を示した使途報告書の様式を定めるとともに、被援助国に対して使途報告書を提出するよう申入れを行うことについて該当する在外公館に周知することにより、使途報告書の遅滞のない提出及び資金等の使途の確認につながる働きかけを行える体制を整備した。