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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 文部科学省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1)文化芸術振興費補助金(文化遺産を活かした地域活性化事業)の実施に当たり、補助事業者等に対して、補助の対象とならない経費の範囲を明確に示したり、帳簿等を作成することにより補助事業に係る収支を明確にするよう周知したり、契約事務を市町村等の契約規則等に準拠して実施することを明確にしその旨を周知したりするなどして、補助事業が適切に実施されるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)文化庁 (項)文化財保存事業費
部局等
文化庁
補助の根拠
予算補助
補助金の概要
地域の多様で豊かな文化遺産の活用を図ることにより、文化振興とともに地域活性化に資することを目的として、市町村等が策定する実施計画に基づき官民が一体となって取り組むなどして実施される地域の文化遺産の情報発信、普及啓発、継承等の事業に対して国が補助するもの
補助事業者
事業主体
132補助事業者
上記の補助事業者に交付された国庫補助金額
24億3958万余円(平成23年度~26年度)
上記のうち国庫補助金が過大に交付されていた補助事業者数及び過大に交付されていた国庫補助金額(1)
2補助事業者 541万円(平成25、26両年度)
補助事業に係る経理が適正に行われたか確認できない状況となっていた補助事業者数及びその経費に係る国庫補助金相当額(2)
9補助事業者 8468万円(平成23年度~25年度)
契約金額等の妥当性が確認できない状況となっていた補助事業者数及びその経費に係る国庫補助金相当額(3)
52補助事業者 3億8148万円(平成23年度~26年度)
(1)から(3)までの純計
4億0246万円

1 制度の概要

(1) 文化芸術振興費補助金(文化遺産を活かした地域活性化事業)の概要

文化芸術振興費補助金(文化遺産を活かした地域活性化事業)(平成24年度以前は文化芸術振興費補助金(文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業)。以下「補助金」という。)は、地域の多様で豊かな文化遺産の活用を図ることにより、文化振興とともに地域活性化に資することを目的として、市町村等が策定する実施計画に基づき官民が一体となって取り組むなどして実施される地域の文化遺産の情報発信、普及啓発、継承等の事業に対して国が補助するものとして23年度に創設された事業である。

(2) 交付要綱等の内容

文化芸術振興費補助金(文化遺産を活かした地域活性化事業)交付要綱(平成25年文化庁長官決定。24年度以前は文化芸術振興費補助金(文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業)交付要綱。以下「交付要綱」という。)等によれば、補助事業者は、地域の文化遺産の所有者、保護団体等によって構成される実行委員会等とすることとされている。そして、補助金の交付額は、予算の範囲内において定額とすることとされており、その補助対象経費は、地域の文化遺産に関する総合的な情報を発信するための映像、パンフレット等の制作、地域の文化遺産を普及啓発するための発表会、地域の文化遺産の継承のために用いる用具の修理等の事業に係る報償費、委託費、請負費等の経費とすることとされている。このうち、報償費については、講演謝金、会議出席者謝金等の項目ごとに決められた上限金額を超えて支払った額は補助の対象とならないこととされている。

各年度の補助金交付の対象となる事業期間(以下「補助事業期間」という。)については、当該年度の4月1日から翌年の3月31日までの間等とされており、補助事業期間外に実施した事業に係る経費は、補助の対象とならないこととされている。

また、補助事業者は、補助事業に係る収入及び支出を明らかにした帳簿を備えて、補助事業の完了した日の属する年度の翌年度から5年間保存しなければならないこととされるとともに、補助事業を遂行するために契約を締結し、又は支払を行う場合は、当該補助事業者の所在する市町村(注1)等の法令の定めに準拠して実施しなければならないこととされている。

さらに、補助事業を実施する際の発注予定金額が10万円以上の場合には見積書を徴取することなどとされており、また、発注予定金額が100万円以上(24年度以前は、50万円以上)の場合には複数者から見積書を徴取することとされている。

文化庁は、補助事業が完了した場合に、交付要綱等に基づき、補助事業者の提出する実績報告書に補助事業の支出等の内容を示す証拠書類の写しを添付させた上で、審査及び確認を行い、補助金の額の確定を行うこととなっている。

(注1)
補助事業者の所在する市町村等  補助事業者が実施する文化遺産を活かした地域活性化事業に係る実施計画を策定する市町村等のことである。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、補助対象経費が適切に算定されているか、経理関係書類の作成及び保存は適切に行われているか、契約事務は適切に行われているかなどに着眼して、23年度から26年度までの間に全国で実施された2,527補助事業のうち、21府県(注2)の132補助事業者が実施した295補助事業(事業費計26億0951万余円、補助金交付額計24億3958万余円)を対象として、実績報告書、領収書等の補助対象経費の根拠資料等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注2)
21府県  京都、大阪両府、栃木、群馬、千葉、神奈川、福井、長野、愛知、三重、兵庫、和歌山、鳥取、岡山、広島、徳島、香川、福岡、大分、宮崎、鹿児島各県

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた((1)、(2)及び(3)の事態には重複しているものがある。)。

(1) 補助の対象とならない経費を補助対象経費に含めていたため、補助金が過大に交付されていた事態

過大に交付されていた国庫補助金額計541万余円

2補助事業者が実施した補助事業(事業費計2361万余円、補助金交付額計2187万余円)において、(ア)補助事業の成果品が補助事業期間経過後に納品されていたのに、補助事業期間中に納品されたこととして成果品の作成に係る経費を補助対象経費に含めていたり、(イ)講演謝金について補助対象経費として計上できる上限金額を超えた額を補助対象経費に含めていたりしていて、補助金計541万余円が過大に交付されていた(表参照)。

上記について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

天龍村霜月神楽等資産化実行委員会は、平成26年度の補助事業において、長野県下伊那郡天龍村の霜月神楽等の祭りについての調査、記録映像の作成等を事業費6,994,972円で実施しており、このうち6,186,592円を補助対象経費として実績報告書を提出して、同額の補助金の交付を受けていた。

しかし、同実行委員会は、26年度に業者に発注した記録映像の作成業務(4,284,800円)及び調査報告書の作成業務(742,500円)に係る成果品が、翌年度の27年10月15日及び11月10日に納品されていたにもかかわらず、それぞれ実際の納品日より前の日付である同年3月25日及び3月30日を納品日とする事実と異なる納品書等に基づき、補助事業期間中に成果品が納品されたこととして、上記の業務に係る経費計5,027,300円を補助対象経費に含めていた。

したがって、上記補助の対象とならない経費計5,027,300円を除いて適正な補助対象経費を算定すると1,159,292円となり、これに対する補助金は1,159,292円となることから、前記の補助金6,186,592円との差額5,027,300円が過大に交付されていた。

(2) 補助事業に係る収入及び支出を明らかにした帳簿等が作成されていなかったため、補助事業に係る経理が適正に行われたか確認できない状況となっていた事態

補助事業に係る経理が適正に行われたか確認できない状況となっていた経費に係る国庫補助金相当額計8468万余円

9補助事業者が実施した補助事業(事業費計1億3204万余円、補助金交付額計1億1833万余円)については、補助事業者は、補助事業者以外の者に補助事業を実施するための業者の選定、契約の締結、経費の支払等の全部又は一部の事務を行わせていたが、当該事務の実施状況を把握しておらず、当該事務に係る収入及び支出を明らかにした帳簿、金融機関の通帳等(以下「帳簿等」という。)を作成していなかった。このため、補助事業に係る経理が適正に行われたか確認できない状況となっていた(表参照)。

上記について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

行橋市伝統芸能の会は、平成24年度の補助事業において、24年度行橋市浄喜寺薪能の公演を事業費9,074,000円で実施しており、同額を補助対象経費として実績報告書を提出して、補助金8,338,000円の交付を受けていた。

しかし、同会は、補助事業の実施に当たり、補助事業者以外の者に補助事業の実施に係る業者の選定、契約の締結、経費の支払等の全ての事務を行わせていたが、当該事務の実施状況を把握しておらず、当該補助事業に係る帳簿を作成していなかったり、同会が業者に振込払をしたとする経費について金融機関を通じた支払の事実を証する通帳等を作成していなかったりしていた。このため、本件補助事業に係る経理が適正に行われたか確認できない状況となっていた。

(3) 補助事業を実施するための契約事務が適切に行われていなかったため、契約金額等の妥当性が確認できない状況となっていた事態

契約金額等の妥当性が確認できない状況となっていた経費に係る国庫補助金相当額計3億8148万余円

交付要綱等によれば、補助事業者は、補助事業を実施する際には、発注予定金額に応じて1者又は複数者から見積書を徴取することとされ、また、契約を締結する場合等には、その所在する市町村等の契約規則等の定めに準拠して契約書等を作成しなければならないこととされている。

しかし、52補助事業者が実施した補助事業(事業費計8億1445万余円、補助金交付額計7億6575万余円)については、見積書を徴取しないまま契約相手方を決定したり、複数者から見積書を徴取して見積額を経済比較することなく、1者から徴取した見積書のみによって契約相手方を決定したり、契約書等を作成しておらず、契約内容を書面で明確にしないまま、契約相手方からの請求に応じて支払を行ったりしていて、補助事業を実施するための契約事務を適切に行っていなかったため、契約金額や契約内容の妥当性が確認できない状況となっていた(表参照)。

上記について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3>

小牧市文化遺産活用実行委員会は、平成25年度の補助事業において、愛知県小牧市の秋葉祭に使用する用具等の修繕等を事業費6,699,056円で実施しており、このうち6,698,956円を補助対象経費として実績報告書を提出して、同額の補助金の交付を受けていた。そして、同実行委員会は、人形衣裳等の修理に要した経費として2,000,000円及び山車の修繕に要した経費として1,500,000円を補助対象経費に含めていた。

しかし、同実行委員会は、上記の修理等を発注する際、複数者から見積書を徴取して見積額を経済比較することなく1者から徴取した見積書のみによって契約相手方を決定したり、契約書を作成しておらず、契約内容を書面で明確にしないまま、契約相手方からの請求に応じて支払を行ったりしていて、契約金額や契約内容の妥当性が確認できない状況となっていた。

表 (1)から(3)までの事態に係る補助事業者名、国庫補助金交付額等

(単位:千円)
補助事業者名 府県及び市町村名 年度 国庫補助金交付額 (1)過大に交付されていた国庫補助金額 (2)補助事業に係る経理が適正に行われたか確認できない状況となっていた経費に係る国庫補助金相当額 (3)契約金額等の妥当性が確認できない状況となっていた経費に係る国庫補助金相当額
益子町文化遺産活用実行委員会 栃木県芳賀郡益子町 平成24~26 41,505 38,751 38,751
桐生の文化遺産継承発信事業実行委員会 群馬県桐生市 26 10,220 8,591 8,591
千葉県文化遺産継承実行委員会 千葉県千葉市 25、26 15,687 385 385
千葉市幕張夕べの会 千葉県千葉市 24 8,335 8,335 5,985 8,335
銚子資産活用実行委員会 千葉県銚子市 24~26 13,693 8,227 10,612 11,621
船橋市文化遺産を活かした地域活性化事業実行委員会(24 年度以前は船橋市の文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業実行委員会) 千葉県船橋市 23~25 24,184 10,449 7,919 11,403
青木繁≪海の幸≫誕生の家と記念碑を保存する会 千葉県館山市 23 944 430 430
館山市の文化遺産を活用した観光振興・地域活性化事業実行委員会 千葉県館山市 24~26 20,037 15,031 15,031
佐倉山車人形保存会 千葉県佐倉市 23、24 12,537 3,652 3,652
一般社団法人波の伊八鴨川まちづくり塾 千葉県鴨川市 23、24 17,238 7,204 10,931 11,382
鴨川市の文化遺産を活かした地域活性化実行委員会 千葉県鴨川市 25、26 8,665 3,142 3,142
香取市伝統文化活性化実行委員会 千葉県香取市 23~25 21,306 16,235 18,928 19,896
特定非営利活動法人さすが一の宮 千葉県長生郡一宮町 24 7,974 600 600
川崎市乙女文楽・継承と地域活性化総合事業実行委員会 神奈川県川崎市 25 4,393 1,000 1,000
大和市伝統文化伝承事業実行委員会 神奈川県大和市 23~25 6,154 2,586 2,586
大和市遺跡・歴史施設PR 事業実行委員会 神奈川県大和市 24 6,114 5,151 5,151
伊勢原歴史文化遺産活用実行委員会 神奈川県伊勢原市 25、26 11,414 1,600 1,600
近松の里づくり事業推進会議 福井県鯖江市 25、26 4,420 3,465 3,465
一般社団法人三國會所(23 年度はみくに歴史を生かすまちづくり推進協議会) 福井県坂井市 23、24 18,649 10,177 10,177
七夕人形を活用した地域連携事業実行委員会 長野県松本市 23、24 15,249 11,783 11,783
天龍村霜月神楽等資産化実行委員会(25 年度は天龍村霜月神楽等資産化事業実行委員会) 長野県下伊那郡天龍村 25、26 11,349 5,027 9,997 9,997
『尾州廻船が伝えた常滑』地域活性化推進委員会 愛知県常滑市 25 7,414 100 100
大野谷文化圏活性化推進委員会(24 年度以前は尾張大野まちおこし実行委員会) 愛知県常滑市 23~26 23,184 9,042 9,042
特定非営利活動法人尾張小牧歴史文化振興会 愛知県小牧市 23、24 39,755 12,810 12,810
小牧市文化遺産活用実行委員会 愛知県小牧市 25 6,698 5,039 5,039
東海市伝統文化保存継承実行委員会 愛知県東海市 25、26 11,450 6,458 6,458
知多市文化遺産活用事業実行委員会 愛知県知多市 25、26 16,575 1,505 1,505
京都の文化遺産総合活性化実行委員会 京都府京都市 25、26 71,381 12,947 12,947
堺市地域文化遺産活性化実行委員会 大阪府堺市 26 16,511 1,653 1,653
泉佐野市文化遺産活用活性化実行委員会 大阪府泉佐野市 25 5,361 1,323 1,323
泉佐野郷土芸能の集い実行委員会 大阪府泉佐野市 26 3,052 1,594 1,594
神戸市文化遺産活用実行委員会 兵庫県神戸市 24 16,332 8,687 2,350 8,687
芦屋市文化遺産継承・活性化事業実行委員会 兵庫県芦屋市 25 9,492 7,283 7,283
平野伝統文化遺産保存実行委員会 兵庫県川西市 23 9,399 7,317 7,317
平成 26 年度川西市文化遺産継承・活性化事業実行委員会(25 年度は平成25 年度川西市文化遺産継承・活性化事業実行委員会、24 年度は川西市文化遺産継承・活性化事業実行委員会) 兵庫県川西市 24~26 17,443 12,994 12,994
和歌山市伝統文化活性化実行委員会 和歌山県和歌山市 23、24 17,284 3,488 3,488
新宮市伝統文化継承事業実行委員会 和歌山県新宮市 23~25 11,957 8,432 8,432
鳥取県文化財保存協会 鳥取県鳥取市 25、26 21,638 13,488 13,488
岡山県文化財保護協会 岡山県岡山市 24、26 35,029 15,520 15,520
長船刀剣製作技術総合伝承事業実行委員会 岡山県瀬戸内市 24~26 4,698 2,224 2,224
徳島市文化遺産活用事業実行委員会 徳島県徳島市 23 5,132 777 777
小松島市文化財活性化実行委員会 徳島県小松島市 23~25 14,878 8,644 8,644
阿南市伝統文化活性化実行委員会 徳島県阿南市 23 2,336 492 492
高松市伝統文化活用事業実行委員会 香川県高松市 24 10,924 8,656 8,656
垂水町の文化財保存活用実行委員会 香川県丸亀市 24 1,122 980 980
丸亀市文化財保存活用実行委員会 香川県丸亀市 25 2,309 1,908 1,908
行橋市伝統芸能の会 福岡県行橋市 23、24 13,153 13,153 11,730 13,153
行橋市文化遺産活性化実行委員会 福岡県行橋市 25 1,245 1,012 1,012
築上町伝統芸能普及の会 福岡県築上郡築上町 24 7,894 4,460 6,632 7,165
おおいた民謡・民俗芸能活性化委員会 大分県大分市 25、26 10,454 8,041 8,041
オール延岡人!!市民みんなでスクラム組 んで!!いっしょにやっちみろや!!文化遺産を活かした地域活性化実行委員会(24 年度以前はオール延岡人!!市民みんなでスクラム組んで!! いっしょにやっちみろや!!文化遺産を活かした観光振興・地域活性化実行委員会) 宮崎県延岡市 23~26 58,263 22,924 22,924
あがたの趣を伝える地域活動実行委員会 宮崎県延岡市 25、26 21,068 9,884 9,884
鹿児島市伝統芸能普及の会 鹿児島県鹿児島市 24 7,930 7,930 3,887 7,930
781,443 5,412 84,681 381,480 402,462
(注)
(1)から(3)までの事態に係る金額の合計額については、(1)から(3)までの事態に重複した金額があるため一致しない。

このように、補助の対象とならない経費を補助対象経費に含めていたため、補助金が過大に交付されていたり、補助事業に係る収入及び支出を明らかにした帳簿等が作成されていなかったため、補助事業に係る経理が適正に行われたか確認できない状況となっていたり、補助事業を実施するための契約事務が適切に行われていなかったため、契約金額等の妥当性が確認できない状況となっていたりしていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、補助事業者において、適正な会計経理を行うことについての認識が欠けていたり、補助事業を適切に実施することについての理解が十分でなかったりしていたことにもよるが、文化庁において、次のことによると認められた。

  • ア 補助事業期間経過後に納品された成果品に係る経費は補助の対象とならないことなどについて、補助事業者に対して十分に周知していなかったこと、また、実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったこと
  • イ 補助事業の事務を補助事業者以外の者に行わせた場合でも、補助事業者は当該事務の実施状況を十分に把握した上で補助事業に係る収入及び支出を明らかにした帳簿等を作成する必要があることについて、補助事業者に対して十分に周知していなかったこと
  • ウ 見積書を適切に徴取する必要があることについて、補助事業者に対して十分に周知していなかったこと、また、補助事業を遂行するために契約を締結する場合等に準拠することとされている法令の具体的な内容を明確にしておらず、補助事業者に対して十分に周知していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、文化庁は、前記の2補助事業者に対して過大に交付されていた補助金を28年8月までに返還させるとともに、同月に補助事業者等に対して通知を発するなどして次のような処置を講じた。

ア 補助事業期間経過後に納品された成果品に係る経費は補助の対象とならないことなどについて、補助事業者に対して周知した。また、実績報告書等の審査及び確認に当たり、疑義がある場合には納入業者に納品状況等を確認することなどとした。

イ 補助事業の事務を補助事業者以外の者に行わせる場合でも、補助事業者は当該事務の実施状況を十分に把握した上で補助事業に係る収入及び支出を明らかにした帳簿等を作成する必要があることなどについて、補助事業者に対して周知した。また、補助事業者の提出する実績報告書に帳簿等の写しを添付させることとした。

ウ 補助事業を遂行するために契約を締結する場合等には、当該補助事業者の所在する市町村等の契約規則等に準拠した手続をとる必要があること、及び見積書の徴取についても同様に市町村等の契約規則等に準拠することを明確にし、その旨を補助事業者に対して周知した。また、市町村等に、補助事業者に対して、各市町村等の契約規則等で定められている契約書を作成する基準額、見積書を徴取する基準額等を示させることとし、その作成及び徴取が適切に行われるよう指導させることとした。