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雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの[厚生労働本省、51公共職業安定所、32公共職業安定所](48)


会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等
(1)(2) 厚生労働本省(支給庁)
51公共職業安定所(支給決定庁)
(3) 厚生労働本省(支給庁)
32公共職業安定所(支給決定庁、支給庁)
支給の相手方
(1) 85人
(2) 20人
(3) 114人
計 203人(純計)
不当と認める失業等給付金
(1) 求職者給付(日雇労働求職者給付金を除く。)
(2) 就職促進給付
(3) 日雇労働求職者給付金
失業等給付金の支給額の合計
(1) 48,681,296円(平成23年度~28年度)
(2) 9,167,927円(平成25年度~27年度)
(3) 151,224,000円(平成25年度~28年度)
計 209,073,223円
不当と認める支給額
(1) 16,465,887円(平成23年度~28年度)
(2) 9,167,927円(平成25年度~27年度)
(3) 91,958,300円(平成25年度~28年度)
計 117,592,114円

1 保険給付の概要

(1) 雇用保険

雇用保険は、常時雇用される労働者等を被保険者として、被保険者が失業した場合、被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合等に、その生活及び雇用の安定を図るなどのために失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業等を行う保険である。

(2) 失業等給付金の種類

失業等給付金には、次の求職者給付及び就職促進給付のほか、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種がある。

ア 求職者給付には基本手当、日雇労働求職者給付金(以下「日雇給付金」という。)等7種の手当等があり、このうち基本手当は、失業等給付金の支給額の大半を占めており、失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注)が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。

イ 就職促進給付には6種の手当等があり、このうち再就職手当は、早期の再就職の促進を図るもので、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上残して安定した職業に就いた場合に支給される。また、就業促進定着手当は、再就職手当の支給を受けた者が再就職先に6か月以上雇用され、かつ、再就職後の6か月間の賃金日額が離職前の6か月間の賃金日額を下回る場合に支給される。

ウ アの求職者給付の手当等のうち、日雇給付金は、日々雇用される者又は30日以内の期間を定めて雇用される者であって、一定の要件を満たす者(以下「日雇労働被保険者」という。)が失業した場合に支給される。

(注)
受給資格者  被保険者が、離職して労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上(倒産等により離職した者(特定受給資格者)及び特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新を希望したにもかかわらず、当該更新がないことなどにより離職した者については、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上)あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者

(3) 失業等給付金の支給

上記の手当等は、公共職業安定所(以下「安定所」という。)が次のように支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省等が支給することとなっている。

ア 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認して、失業の認定を行った上で、支給決定を行う。

イ 再就職手当及び就業促進定着手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書及び就業促進定着手当支給申請書に記載されている雇入年月日や賃金額等について調査し確認した上で、支給決定を行う。

ウ 日雇給付金については、「日雇労働求職者給付金に係る制度の運用に当たり、一般被保険者等への切替えなどの取扱いが適切に行われるよう是正改善の処置を求め、失業認定における労働の意思の有無等の確認が十分に行われるよう意見を表示し、及び日雇労働被保険者に対する支給要件の確認が十分に行われるとともに、日雇労働求職者給付金の不正受給を防止するための取組が効果的に実施されるよう是正改善の処置を求めたもの」参照

また、偽りその他不正の行為により上記手当等の支給を受け、又は受けようとした者に対しては、その支給を受け、又は受けようとした日以後、当該手当等を支給しないことなどとなっており、安定所は、既に支給した手当等の返還等を命ずることができることとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、失業等給付金の支給を受けた者(ただし、日雇給付金の支給を受けた者(以下「日雇受給者」という。)を除いた者。以下「受給者」という。)に対する失業等給付金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、全国47都道府県労働局(以下、都道府県労働局を「労働局」という。)の436安定所(平成28年3月末現在)のうち、15労働局の135安定所において会計実地検査を行い、23年度から28年度までの間における受給者から4,970人を選定して、失業等給付金の支給の適否について検査した。また、合規性等の観点から、日雇受給者に対する日雇給付金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、12労働局の59安定所において会計実地検査を行い、日雇労働被保険者を雇用している管内の1,659事業所のうち203事業所を選定して、26年度にこれらの事業所が雇用するなどした日雇受給者2,234人に対する日雇給付金の支給の適否について検査した。

検査に当たっては、受給者から提出された失業認定申告書、日雇受給者に係る認定・支給歴照会票等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、他の年度分も含めて更に当該安定所に調査及び報告を求めて、また、当該日雇受給者が他の労働局管内の安定所において日雇給付金の支給を受けている場合には、その労働局に調査及び報告を求めて、それらの報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

検査の結果、14労働局の51安定所管内における23年度から28年度までの間の受給者89人、及び12労働局の32安定所管内における25年度から28年度までの間の日雇受給者114人に対する失業等給付金の支給額計209,073,223円のうち計117,592,114円は、支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。

これを給付等の種別に示すと次のとおりである(下記ウの安定所、事業所及び日雇受給者の数については、複数の態様に該当するものがある。)。

ア 求職者給付(日雇給付金を除く。)

48安定所管内の受給者85人は、再就職した後も引き続き基本手当の支給を受けるなどしており、これらに対する基本手当の支給額計48,681,296円のうち計16,465,887円は、支給の要件を満たしていなかった。

イ 就職促進給付

19安定所管内の受給者20人は、事実と相違した雇入年月日により再就職手当の支給を受けるなどしており、これらに対する再就職手当等の支給額計9,167,927円(再就職手当計8,183,652円、就業促進定着手当計984,275円)の全額は、支給の要件を満たしていなかった。

ア及びイの事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

旭川安定所は、受給者Aから、平成27年6月に就職したとする失業認定申告書及び再就職手当支給申請書の提出を受けて、これに基づき、基本手当17,319円及び再就職手当1,132,662円の支給決定を行っていた。

しかし、実際には、受給者Aは27年5月に就職していたのに、上記のとおり27年6月に就職したと偽って申告したことから、受給者Aに対する基本手当17,319円及び再就職手当1,132,662円、計1,149,981円の全額が支給の要件を満たしていなかった。

ウ 日雇給付金

(ア) 30安定所管内の日雇受給者96人(当該日雇受給者が雇用されていた事業所数27)は、実際には就労していた日について、事業主から日雇労働被保険者手帳(以下「日雇手帳」という。)に印紙の貼付を受けないまま、後日、その日に就労していないこととするなどして失業認定を受けることで支給を受けており、これらに対する日雇給付金の支給額計57,066,200円は、支給の要件を満たしていなかった。

(イ) 5安定所管内の日雇受給者36人(当該日雇受給者が雇用されていた事業所数8)は、実際には就労していない日について、事業主から日雇手帳に印紙の貼付を受け、その日を含めて失業の日の属する月の前2月間に通算して26日分以上の印紙保険料が納付されていることとして支給を受けており、これらに対する日雇給付金の支給額計33,262,500円は、支給の要件を満たしていなかった。

(ウ) 3安定所管内の日雇受給者17人(当該日雇受給者が雇用されていた事業所数4)は、就労していた日について、事業主から日雇手帳に賃金の日額に対応しない種類の印紙の貼付を受け、所定の額よりも高額な日雇給付金の支給を受けるなどしており、これらに対する日雇給付金の支給額計1,629,600円は、支給の要件を満たしていなかった。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

名古屋中安定所は、管内の事業主Bに雇用されていた日雇受給者8名が安定所に提出した日雇手帳等に基づき失業認定を行うなどして、平成26年3月から27年11月までの間の1,744日分について、日雇給付金計13,080,000円の支給決定を行っていた。

しかし、日雇受給者8名は、実際には就労していた日について、事業主Bから日雇手帳に印紙の貼付を受けないまま、後日、就労していた事実を安定所に申告せずに失業していたと偽って日雇給付金の支給を受けるなどしており、当該1,744日分の日雇給付金計13,080,000円が支給の要件を満たしていなかった。

このような事態が生じていたのは、ア及びイの事態については、受給者が誠実でなかったなどのため、失業認定申告書、再就職手当支給申請書及び就業促進定着手当支給申請書の記載内容が事実と相違するなどしていたのに、前記の51安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。また、ウの事態については、日雇受給者が誠実でなかったなどのため、日雇受給者が提出した日雇手帳の印紙の貼付状況が日雇受給者の実際の就労状況と相違していたのに、前記の32安定所においてこれに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたこと、厚生労働本省において日雇給付金の適正な支給に関する指導等が十分でなかったことなどによると認められる。

なお、これらの適正でなかった支給額は、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。

これらの適正でなかった支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

ア及びイの事態
労働局名 安定所 本院の調査に係る受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業等給付金 左のうち不当と認める失業等給付金
    千円 千円
北海道 旭川 等6 303 16 7,344 1,452
旭川 等3 78 3 1,885 1,885
小計       9,230 3,338
青森 弘前 等3 119 8 3,132 561
青森 等2 78 3 1,784 1,784
小計       4,917 2,345
茨城 筑西 等2 61 2 2,246 698
   
小計       2,246 698
埼玉 川口 等4 96 5 4,331 3,210
大宮   38 1 195 195
小計       4,526 3,406
神奈川 相模原   48 2 3,016 1,461
   
小計       3,016 1,461
愛知 名古屋東 等4 174 6 4,438 1,037
津島   16 1 445 445
小計       4,883 1,483
大阪 梅田 等5 72 5 1,981 824
池田   35 1 275 275
小計       2,256 1,099
兵庫 神戸 等3 128 5 1,242 545
神戸   51 1 202 202
小計       1,444 747
奈良 奈良 等3 154 3 790 445
奈良 等3 102 3 1,246 1,246
小計       2,037 1,692
和歌山 和歌山 等3 153 11 6,458 1,753
橋本   23 1 60 60
小計       6,519 1,814
香川 高松 等5 168 9 5,524 1,398
観音寺   23 1 940 940
小計       6,465 2,338
福岡 大牟田   46 1 789 301
福岡西   18 1 304 304
小計       1,093 606
熊本 熊本 等4 231 7 4,521 1,621
熊本 等3 153 3 1,498 1,498
小計       6,019 3,119
大分 大分 等4 165 5 2,863 1,151
  日田   21 1 327 327
  小計       3,191 1,479
求職者給付計 48か所 1,918 85 48,681 16,465
就職促進給付計 19か所 636 20 9,167 9,167
合計         57,849 25,633
注(1)
上段は求職者給付に係る分、下段は就職促進給付に係る分である。
注(2)
安定所数及び不適正受給者数については、両給付間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ51か所、89人である。
ウの事態
労働局名 安定所 本院の調査に係る日雇受給者数 労働局管内に所在する事業所数 不適正日雇受給者数 左の日雇受給者に支給した日雇給付金 左のうち不当と認める日雇給付金
      千円 千円
北海道 小樽 等2 13 2 4 4,695 416
埼玉 川口   164 1(1) 1,215 1,215
千葉 市川   3(3) 2,332 435
東京 上野 等4 429 7 13(1) 10,320 6,930
神奈川 横浜 等2 347 4 29 38,760 24,735
愛知 名古屋中   117 5 23 35,857 28,640
京都 京都田辺   3(3) 2,407 697
大阪 大阪港 等11 499 7 27(4) 40,531 21,613
兵庫 神戸 等3 324 3 6(3) 6,735 802
奈良 奈良 等4 238 4 13 15,945 6,427
和歌山 湯浅   1(1) 1,020 15
島根 石見大田   1(1) 855 30
32か所 1,991 32 114 151,224 91,958
注(1)
本院の調査に係る日雇受給者数については、異なる労働局管内に所在する複数の事業所で就労する日雇受給者がいるため、数値を合計しても計とは一致しない。
注(2)
不適正日雇受給者数の( )書きは、他の労働局管内に所在する事業所で就労した不適正日雇受給者数で、内数である。
注(3)
不適正日雇受給者数及び不適正日雇受給者に支給した日雇給付金については、異なる労働局管内に所在する2安定所で不適正な支給を受けている日雇受給者が7人、4安定所で不適正な支給を受けている日雇受給者が1人いるため、数値を合計しても計とは一致しない。
ア、イ及びウの事態の合計(純計)
  不適正受給者及び不適正日雇受給者数 左に支給した失業等給付金 左のうち不当と認める失業等給付金
千円 千円
203 209,073 117,592