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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(10)障害者医療費国庫負担金が過大に交付されていたもの[4道府県](180)-(187)


8件 不当と認める国庫補助金 85,642,291円

障害者医療費国庫負担金(以下「負担金」という。)は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号。平成25年3月31日以前は障害者自立支援法。以下「法」という。)に基づき、障害者及び障害児の福祉の増進を図ることなどを目的として、居住地の市町村(特別区を含む。以下同じ。)又は都道府県が、都道府県知事等の指定する医療機関において、自立した日常生活等を営むために必要な医療である自立支援医療を障害者及び障害児に提供し、当該自立支援医療に要した費用(以下「自立支援医療費」という。)を障害者及び障害児の保護者に支給した場合に、その費用の一部を国が負担するものである。

負担金の交付額は、障害者医療費国庫負担金交付要綱(平成21年厚生労働省発障第0519001号)等に基づき、次のように算定することとなっている。

① 自立支援医療費の額から法第7条に基づき他の法令による給付等との調整により給付を行わないとした額を控除して得た額と、市町村等が自立支援医療費の支給に要する費用から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額を選定する。

② ①により選定された額を国庫負担対象事業費として、これに100分の50を乗じて得た額を交付額とする。

また、医療保険の高額療養費制度は、費用が著しく高額な治療を著しく長期間にわたって継続しなければならない疾病として、人工透析療法を受ける慢性腎不全等の厚生労働大臣が定めた疾病(以下「特定疾病」という。)に係る療養を受けた場合の自己負担の限度額を、被保険者の負担軽減を図るために、特例的に1万円(標準報酬月額等が所定額以上の被保険者で70歳未満の者については2万円)とし、これを超える額全額を保険者が負担する制度である(以下、高額療養費制度のうち特定疾病の患者に対するこの負担軽減制度を「医療保険の特定疾病制度」という。)。

特定疾病のうち、人工透析療法を受ける慢性腎不全の患者は、市町村長の支給認定を受けると自立支援医療費の支給認定障害者になるとともに、保険者の認定を受けると医療保険の特定疾病制度の対象者にもなる(以下、両方の認定を受けた者を「特定疾病併用者」という。)。そして、特定疾病併用者の自立支援医療費の支給に当たっては、法に基づき、医療保険により同等の給付を受けることが可能な部分については、自立支援医療費の支給の対象とならないこととなっている。

本院が、18道府県の451市町村において会計実地検査を行ったところ、4道府県の8市において、負担金の交付額の算定に当たり、特定疾病併用者の自立支援医療費について医療保険の特定疾病制度の給付対象とすべき額を計上していたり、対象となる費用の額の集計を誤っていたりしていたため、負担金計85,642,291円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、7市において制度の理解が十分でなく自立支援医療費の審査が十分でなかったこと、1市において国庫負担対象事業費の額の確認が十分でなかったこと、道府県において事業実績報告書の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

京都市は、平成23年度の特定疾病併用者の自立支援医療費の算定に当たり、誤って医療保険の特定疾病制度の給付対象とすべき額を計上していたため、自立支援医療費が94,586,225円過大になっていた。

この結果、国庫負担対象事業費が同額過大に算定されており、これに係る負担金計47,293,112円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと、次のとおりである。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
年度 国庫負担対象事業費 左に対する国庫負担金交付額 不当と認める国庫負担対象事業費 不当と認める国庫負担金交付額 摘要
        千円 千円 千円 千円  
(180) 北海道 札幌市 23、24 6,720,384 3,360,192 21,510 10,755 対象外経費を計上していたもの
(181) 石狩市 26 120,127 60,063 24,592 12,296 対象経費の集計を誤っていたもの
(182) 京都府 京都市 (注)
23
3,605,456 1,802,728 94,586 47,293 対象外経費を計上していたもの
(183) 舞鶴市 (注)
23
74,537 37,268 6,198 3,099
(184) 城陽市 (注)
23
60,682 30,341 5,095 2,547
(185) 向日市 (注)
23
52,234 26,117 5,142 2,571
(186) 福岡県 春日市 (注)
23
107,094 53,547 5,521 2,760
(187) 長崎県 五島市 (注)
23
52,271 26,135 8,637 4,318
(180)―(187)の計 10,792,789 5,396,394 171,284 85,642  
(注)
京都、舞鶴、城陽、向日、春日、五島各市は、特定疾病併用者に係る自立支援医療費について、平成24年度においても他年度と同様に国庫負担対象事業費を過大に算定していたが、当該事態については平成25年度決算検査報告「特定疾病併用者に係る自立支援医療費の支給の制度、審査方法等を周知して、適正に審査を実施することにより、特定疾病併用者に係る自立支援医療費の額の算定が適正に行われるよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたもの」に掲記していることから、特定疾病併用者に係る24年度分については除外している。