(平成25年度決算検査報告参照)
(平成26年度決算検査報告参照)
厚生労働省は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)等に基づき、市町村(特別区を含む。以下同じ。)、後期高齢者医療広域連合(以下「広域連合」という。)等が行う保険給付に関する事務を所管している。そして、保険者である市町村及び広域連合(以下「保険者等」という。)は、海外渡航期間中に現地の病院等で診療等を受けた被保険者から療養費(以下「海外療養費」という。)の支給申請があった場合には、審査を行った上で海外療養費を支給することとなっている。しかし、保険者等において、海外療養費の支給に当たり、被保険者が保険者等である市町村又は広域連合の区域内(以下「市町村等の区域内」という。)に生活の本拠を有する者であるかについての審査を行っていた事績を確認することができない事態及び国内の保険医療機関等において同様の疾病等について療養の給付等を受けた場合を標準として算定される額(以下「標準額」という。)の算定を行うことなく実際に海外の病院等に対して支払われた額に基づき支給額を決定している事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、海外療養費の支給に当たり適切な審査等が行われるよう、保険者等に対して、都道府県を通じるなどして、海外療養費の支給に当たってはパスポート(写し)の提出を受けるなどして被保険者の海外渡航期間を確認するほか、その理由、渡航期間中の居住実態等についても併せて確認することなどにより、当該被保険者が市町村等の区域内に生活の本拠を有する者であるかどうかの審査を行う必要があることについて周知したり、審査の具体的な方法等について技術的助言を行ったり、海外療養費の支給額の算定のために必要となる標準額の算定方法を具体的に示して、その周知徹底を図ったりするよう、厚生労働大臣に対して平成26年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、28年2月に国民健康保険法施行規則等を改正し、同年3月に都道府県に対して通知を発して、同年4月以降の海外療養費の支給申請については、パスポート(写し)の提出を受けるなどして保険者等が被保険者の海外渡航期間を確認することなどについて周知する処置を講じていた。
一方、厚生労働省は、市町村等の区域内に生活の本拠を有する者であるかどうかの審査の具体的な方法等及び海外療養費の支給額の算定のために必要となる標準額の算定方法について検討を行っているところであり、その結果を踏まえて、保険者等に対して、これらの周知徹底を図ることとしている。