厚生労働省は、雇用安定事業の一環として、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等に基づき、60歳以上65歳未満の高年齢者や障害者等の就職が特に困難な者を、公共職業安定所等の紹介により、継続して雇用することが確実であると認められる労働者として新たに雇い入れた事業主に対して、当該雇用労働者の賃金の一部に相当する額を助成する特定就職困難者雇用開発助成金を支給している。しかし、支給対象となった障害者(以下「支給対象障害者」という。)のうち、雇入れ後3年未満の早期に離職している者が多数見受けられる一方で、支給対象障害者の就労・離職等の雇用状況の把握、離職した場合の具体的な離職理由の調査及び離職の実態等を踏まえた助成の効果の検証が行われていない事態並びに事業主においてこれまでに雇い入れた障害者の雇用状況等を考慮した障害者に対する職業紹介や障害者及び事業主に対する職場適応等のための指導(以下「定着指導」という。)が行われていないなどの事態が見受けられた。
したがって、厚生労働本省において、都道府県労働局(以下「労働局」という。)等に対して障害者の就労・離職状況や具体的な離職理由等の把握及び調査を十分に行うよう指導したり、障害者の離職の実態等を十分に踏まえて障害者の雇用に関する事業主に対する助成の効果の検証を行ったりするとともに、労働局等に対して事業主における障害者の就労・離職等の雇用状況等を考慮して職業紹介や定着指導を行うよう指導するよう、厚生労働大臣に対して平成27年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 28年4月に通知を発するなどして、労働局等に対して、障害者の就労・離職状況や具体的な離職理由等の把握及び調査を十分に行うこと、事業所における障害者の離職状況等に関する情報を職業紹介等を担当する部門に提供することなどを指示した。また、28年5月までに、障害者の離職の実態等を踏まえて障害者の雇用に関する事業主に対する助成の効果の検証を行った。
イ アの通知等により、事業主における障害者の就労・離職等の雇用状況等を考慮して職業紹介や定着指導を適切に行うよう労働局等に指示した。