厚生労働省は、地域雇用開発推進法(昭和62年法律第23号)等に基づき、平成19年度から23年度までの間に地域雇用創造推進事業を、また、24年度からは実践型地域雇用創造事業を実施している(以下、これらの事業を合わせて「パッケージ事業」という。)。パッケージ事業は、都道府県労働局(以下「労働局」という。)が市町村等で構成される地域の協議会(以下「協議会」という。)と委託契約を締結した上で実施されている。同省が定めた実践型地域雇用創造事業実施要領(24年3月以前は地域雇用創造推進事業実施要領。以下「実施要領」という。)及び実践型地域雇用創造事業募集要項(24年1月以前は地域雇用創造推進事業募集要項。以下「募集要項」という。)によれば、協議会は、パッケージ事業の実施に当たり、雇用の創出効果に係る数値目標について、対象地域内において求職している失業者等(以下「地域求職者」という。)のうち事業を利用する人数等の見込みをアウトプット指標、また、地域求職者の就職者数等の見込みをアウトカム指標としてそれぞれ設定し、パッケージ事業の実施による効果としてアウトプット指標の達成状況(以下「アウトプット実績」という。)及びアウトカム指標の達成状況(以下「アウトカム実績」という。)をそれぞれ把握することなどとされている。しかし、アウトプット実績及びアウトカム実績を協議会が適切に把握していない事態、個別の雇用対策事業(以下「個別事業」という。)の利用対象者の範囲の設定等が適切なものとなっていない事態、原則として地域求職者を対象とすることとなっている研修等の取組(以下「人材育成メニュー」という。)等に係る個別事業において地域求職者以外の人数が地域求職者の人数を上回っている事態及び労働局がそれらの確認を十分に行っていないなどの事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、協議会がアウトプット実績及びアウトカム実績を適切に把握する具体的な方法、個別事業の利用対象者の範囲の設定等を適切に行うこと、労働局がそれらの確認を適切に実施することなどについて、実施要領及び募集要項に明示するなどしてこれを労働局に対して周知したり、人材育成メニュー等に係る個別事業の対象について、原則として地域求職者とすることを実施要領及び募集要項に明示するなどして、労働局等に対して周知等し、また、地域求職者が対象となっていない個別事業については、その原因等の検証を十分に行った上で、検証結果を踏まえた改善策を労働局等に対して周知したりするよう、厚生労働大臣に対して27年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、28年6月に実施要領及び募集要項を改正するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 協議会において、アウトプット実績及びアウトカム実績を個別事業の受講申込書、利用者アンケート調査票等に基づき適切に把握すること、個別事業の利用対象者を明確にして利用対象者の範囲の設定等を適切に行うこと、また、労働局においてそれらの確認を適切に実施することなどについて、それぞれ実施要領及び募集要項に明示するなどして、労働局等に対して周知した。
イ 人材育成メニュー等に係る個別事業の対象について、原則として地域求職者とすることを実施要領及び募集要項に明示するなどして、労働局等に対して周知した。
一方、厚生労働省は、原則として地域求職者を対象としているのに地域求職者が対象となっていない人材育成メニュー等に係る個別事業については、今後、その実態を本省に報告させることとし、原因等の検証を行った上で、検証結果を踏まえた改善策を労働局等に対して周知することとしている。