(4件 不当と認める国庫補助金 75,282,000円)
部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(297) | 秋田県 | 男鹿市 | 社会資本整備総合交付金 (公営住宅等整備) |
23 | 59,251 (54,000) |
27,000 | 54,890 (50,025) |
25,012 |
(298) | 同 | 鹿角市 | 同 | 25 | 20,191 (19,652) |
8,843 | 12,382 (12,052) |
5,423 |
(299) | 島根県 | 益田市 | 同 | 23 | 113,597 (113,401) |
51,030 | 54,052 (53,979) |
24,290 |
(300) | 同 | 隠岐郡西ノ島町 | 同 | 23 | 62,160 (62,160) |
27,972 | 45,679 (45,679) |
20,555 |
(297)―(300)の計 | 255,200 (249,213) |
114,845 | 167,005 (161,735) |
75,282 |
これらの交付金事業は、3市1町が、公営住宅等整備事業の一環として、木造軸組工法により公営住宅(以下「木造建築物」という。)の建築等を実施したものである(木造建築物の設計の概要については、「公営住宅等の木造施設の設計が適切でなかったもの」参照)。
しかし、次のとおり、木造建築物の施工が設計と相違していた。
すなわち、男鹿市において請負人が、柱と厚さ9cmの筋交いとを接合する際に、誤って厚さ4.5cmの筋交いに対応した方法により接合していたり(参考図1参照)、鹿角市において請負人が、金物を柱、梁(はり)等に取り付ける際に、梁の側には長さ100mmのねじを使用しなければならないのに、誤って柱側に使用する長さ65mmのねじを使用するなどしていたり、益田市において請負人が、筋交いのみを取り付けることになっている出隅の柱(注1)に、誤って筋交いに加え耐力壁用パネルを取り付けていたりしたため、鋼板添え板や金物の引抜耐力が不足して、引抜力等に対して抵抗できない状態となっている事態が見受けられた。また、西ノ島町において請負人が、4か所の耐力壁の長さがそれぞれ1.9mとなるように筋交いを取り付けることとなっているのに、誤って3か所について、耐力壁の長さをそれぞれ0.95mとして筋交いを取り付けている事態が見受けられた(参考図2参照)。
このように、梁、土台等との接合方法が適切でない柱で構成された壁及び柱との接合方法が適切でない筋交いで構成された壁は、いずれも設計計算上耐力壁とは認められないことなどから、鹿角市及び益田市の木造建築物について、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出したところ、張り間方向(注2)及び桁行方向(注2)において、有効な設計計算上の耐力壁の長さが水平力に対して必要な長さを大幅に下回っていた。また、男鹿市及び西ノ島町の木造建築物について、改めて壁量充足率及び壁率比を計算したところ、耐力壁の側端部分における壁量充足率が1.0以下の場合に必要とされる壁率比0.5を大幅に下回っていた。したがって、いずれも木造建築物の所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額計75,282,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事業主体において、請負人が設計図書等についての理解が十分でないまま施工していたのに、これに対する監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
男鹿市は、公営住宅等整備事業の一環として、男鹿市船越地内において、内子第3団地(間取りと構造が同じ木造2階建て4棟)の建築等を行った。
同市は、本件住宅の1階については、筋交いを取り付けた耐力壁を配置することとし、このうち厚さ9cm、幅9cmの筋交いの端部については、建築基準法等に基づく告示「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1460号。以下「告示」という。)に基づき、径12mmのボルトを使用して柱と接合することとしていた。
しかし、請負人は、上記筋交いの端部を柱と接合する際に、誤って、径12mmのボルトではなく、告示において、厚さ4.5cm、幅9cmの筋交いを接合する際に使用することとなっている鋼板添え板により接合していたため、鋼板添え板の引抜耐力が不足しており、引抜力等に抵抗できないものとなっていた。
このように、柱との接合方法が適切でない筋交いで構成された壁は設計計算上耐力壁とは認められないことから、改めて本件住宅の1階の耐力壁の壁量充足率を計算したところ、桁行方向の両側端部分における壁量充足率は、それぞれ0及び5.29となり、その結果、壁率比は0となっていて、設計計算上必要とされる壁率比0.5を大幅に下回っていた。
したがって、本件住宅4棟(工事費相当額計54,890,245円、交付対象工事費相当額計50,025,000円、交付金相当額計25,012,500円)は、施工が設計と相違していたため、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。
(参考図1)
柱と筋交いとの接合の状況
(参考図2)
耐力壁の長さの概念図