国土交通省は、河川法(昭和39年法律第167号)等に基づき、堤防、護岸等の河川管理施設を整備する河川工事を直轄事業及び補助事業により実施している。また、河川区域内の土地に工作物を設置しようとする者は、土地の占用の許可と合わせて設置の許可を河川管理者等から受けなければならないこととなっている(以下、許可を受けて設置された工作物を「許可工作物」という。)。本来、河川管理者等の工事施行の権限は、河川工事に限られるものであるが、河川工事により許可工作物の改築工事等の必要が生じた場合には、当該河川工事と合わせて実施することができることとなっている(以下、当該改築工事等を「附帯工事」という。)。そして、河川管理者等は、附帯工事により改築等を実施する工作物について、河川管理施設等構造令(以下「構造令」という。)等の基準に適合させたり、許可工作物の管理者等の要望により機能を向上させる場合には「河川附帯工事の費用負担に関する事務取扱規則」(以下「取扱規則」という。)に基づき、管理者に対して当該機能の向上に係る費用(以下「機能向上費用」という。)の負担を求めたりする必要がある。しかし、河川管理者等である府県等において、附帯工事により改築を実施した工作物について、その管理者を把握していないことにより適切な維持管理を行わせることができない状況となっている事態及び現行の構造令等の基準に適合させないまま改築を実施するなどしていたり、工作物の機能を向上させた場合の機能向上費用の負担をその管理者に求めていなかったりしている事態が見受けられた。
したがって、国土交通大臣に対して平成27年10月に、次のとおり意見を表示し、及び是正改善の処置を求めた。
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、27年10月に地方整備局等に対して事務連絡を発するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 都道府県等に対して、管理者が不明となっている工作物の管理者を把握する方法の例を参考に示すなどして、管理者の把握等に努めることを周知した。
イ 都道府県等に対して、工作物を改築する際は、現行の構造令等の基準を遵守すること、工作物の機能を向上させる場合には、取扱規則に基づいてその管理者に機能向上費用の負担を求めることなどを周知徹底した。