海上自衛隊は、艦船の洋上任務に従事する隊員の生命を守るために、水分に反応して自動的に膨張する型式と着用者が作動レバーを引くことで膨張する型式の救命胴衣(以下、これらを合わせて「膨張式救命胴衣」という。)を艦船、造修補給所等(以下「艦船等の部隊」という。)において保有している。そして、膨張式救命胴衣の整備について、海上自衛隊補給本部(平成22年3月31日以前の所管は海上幕僚監部。以下「補給本部」という。)は、型式ごとに制定した技術刊行物において、確実に実施すべき整備の間隔、方法等の内容を定めている。しかし、補給本部は膨張式救命胴衣に係る技術刊行物を制定したものの、艦船等の部隊に全く配布しておらず、実施すべき整備内容を周知していなかった。そのため、艦船等の部隊において、技術刊行物において実施することとされている漏えい試験及び膨張試験を全く実施しておらず、膨張式救命胴衣が所定の機能を発揮できないおそれがある事態が見受けられた。
したがって、補給本部において、艦船等の部隊に対して速やかに実施すべき整備内容を示した技術刊行物を配布して、艦船等の部隊がこれに基づき適切に整備を実施することを指導するよう、海上自衛隊補給本部長に対して27年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、補給本部等において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、補給本部は、本院指摘の趣旨に沿い、28年2月に、膨張式救命胴衣について、実施すべき整備内容を示した技術刊行物の全文を海上自衛隊内のホームページに掲載して周知するとともに、27年12月から28年2月までの間に全5地方総監部地区を巡回して、艦船等の部隊に対して、技術刊行物の内容に基づき適切に整備を実施するよう指導する処置を講じていた。