ライフサイクルコスト(以下「LCC」という。)は、製品、構造物等の構想から開発、取得、運用・維持を経て廃棄に至るまでの過程(以下「ライフサイクル」という。)における費用の総額とされている。そして、防衛省は、開発や量産に着手するなどの各段階における費用対効果の判断を踏まえた意思決定をはじめ、ライフサイクルを通じた効果的かつ効率的な防衛装備品の取得に資するとともに、費用面に係る説明責任の強化を図るために、防衛装備品のLCCの面からの管理(以下「LCC管理」という。)の全省的な取組を行っている。しかし、LCCの算定に当たり、契約金額等のデータの収集等が適切でなかったり、部隊整備等に係る人件費を算定していなかったりしている事態及びLCCの検証に当たり、一部の費目についてLCCの見積値と実績値との間に大きなかい離が生じた場合にその原因を特定するための分析(以下「差異分析」という。)を行っていなかったり、見積量産単価を算定していなかったりしている事態が見受けられた。
したがって、防衛省において、LCC管理の目的の達成を図るために、平成27年10月に新設される防衛装備庁と陸上、海上、航空各幕僚監部等が、それぞれのLCC管理上の役割を適切に認識し、相互に密接に協力する態勢を整備して、今後のLCCの見積値の算定や見積値の実績値への更新を適切に行うとともに、これに基づく差異分析等の検証を適切に行い、その結果を防衛装備品の取得の意思決定等に適切に活用することができる方策を講ずるよう、防衛大臣に対して27年9月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、防衛省内部部局、防衛装備庁等において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、防衛省は、本院指摘の趣旨に沿い、27年10月に「装備品等のプロジェクト管理に関する訓令」を制定して、同訓令に基づき防衛装備庁において、28年2月に「ライフサイクルコストの見積及び管理要領について(通達)」等を発するなどして、LCC管理について、事業計画官、事業監理官等の各組織の役割を定めるとともに、関係する部署に所属する者から構成される会議体を設置するなどして相互に密接に協力する態勢を整備した。そして、各組織の協力の下、計画的な資料収集、データ蓄積、更新等により今後のLCCの見積値の算定や見積値の実績値への更新を適切に行うとともに、これに基づく差異分析等の検証を適切に行い、必要に応じ、防衛装備品の仕様又は構成品の見直しなどについて検討し、これらの結果を防衛大臣に報告するなどの手続を定めて防衛装備品の取得の意思決定等に適切に活用することとする処置を講じていた。