防衛省は、我が国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等(以下「駐留軍等」という。)に必要な労働力を提供するために、駐留軍等のために労務に服する者(以下「駐留軍等労働者」という。)を雇用している。そして、駐留軍等労働者の給与の計算は、独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構(以下「機構」という。)の支部が行い、給与の支払は、地方防衛局等に設置された資金前渡官吏等が前渡資金等から行っている。また、給与の過払いによる返納金に係る債権(以下「返納金債権」という。)が発生した場合は、地方防衛局等が返納金債権の管理を行っている。しかし、地方防衛局等において、給与の過払いが発生した際に機構の支部が駐留軍等労働者に対して過払いの発生事由、返納の手続等について十分な説明を行っているかなどを把握していなかったり、返納金債権をより円滑に回収するための制度等を整備することについて十分に検討していなかったりしていて、給与の過払額が当該駐留軍等労働者から返納されずに返納金債権として管理されている事態が見受けられた。
したがって、防衛省において、駐留軍等労働者の給与に係る返納金債権の発生の抑止のために、機構の支部が当該駐留軍等労働者に対して国の返納金債権について十分な説明を行っているかなどについて、地方防衛局等と機構の支部との間で適宜情報を共有するなどの連携を図る体制を整備したり、駐留軍等労働者の給与に係る返納金債権について、当該駐留軍等労働者から同意を得て、資金前渡官吏等が給与の支払った日の属する年度内に複数月にわたって当該駐留軍等労働者に支払う給与から控除して徴収するなどの返納金債権を円滑に回収するための制度等を整備したりするよう、防衛大臣に対して平成27年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、防衛省内部部局等において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、防衛省は、本院指摘の趣旨に沿い、27年10月に地方防衛局等及び機構に対して通知を発して、次のような処置を講じていた。
ア 駐留軍等労働者の給与に係る返納金債権の発生の抑止のために、機構の支部が駐留軍等労働者に対して国の返納金債権について十分な説明を行っているかなどについて、地方防衛局等と機構の支部との間で、所定の様式に基づき情報を共有することとするなどの連携を図る体制を整備した。
イ 駐留軍等労働者の給与に係る返納金債権について、当該駐留軍等労働者から同意を得て、資金前渡官吏等が給与の支払った日の属する年度内に複数月にわたって当該駐留軍等労働者に支払う給与から控除して徴収するなどの返納金債権を円滑に回収するための制度を整備した。