独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「機構」という。)は、新幹線鉄道建設事業の一環として、沿線の住宅において個別に騒音測定を行い、測定された騒音値が騒音基準を超えていた住宅について、建物所有者が実施する防音サッシやルームエアコン等を設置するなどの住宅防音工事に要する費用の全額又は一部の額を助成する事業(以下「障害防止対策事業」という。)を実施している。しかし、障害防止対策事業について、当該住宅において個別に騒音測定を行った日から申出書提出日までの間に当該住宅に転入した者(以下「直前転入者」という。)や、将来当該住宅に転入を予定している者(以下「転入予定者」という。)等に係る居住実態を十分に調査し確認することなく、これらの者を助成の対象となる家族の人数(以下「助成対象家族数」という。)に含めている事態及び割高なルームエアコン機種に係る工事費用の全額を助成の対象にしている事態が見受けられた。
したがって、機構において、助成対象家族数の決定に当たり直前転入者や転入予定者等に係る居住実態を的確に調査し確認するための方策を検討したり、建物所有者が設置するルームエアコンの価格を的確に確認するための方策を検討したりするよう、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構理事長に対して平成27年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、機構本社において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 本社において、28年3月に障害防止対策事業の業務の処理について定めた要綱等を改正し、直前転入者や転入予定者等に係る居住実態を的確に調査し確認して助成対象家族数を決定する方法を明確にして、各支社局等に周知した。
イ 本社において、27年11月に住宅防音工事の工事見積書の審査に必要な事項を定めた手引き等を策定し、標準的な仕様のルームエアコンの価格の算出方法を定めるとともに、各支社局等に対して、建物所有者が設置するルームエアコンの価格を的確に確認するために標準的な仕様のルームエアコンの価格を定めるよう指示し、これを受けて各支社局等は当該価格を定めた。