独立行政法人都市再生機構(以下「機構」という。)は、日本住宅公団等が昭和30年代から40年代にかけて、土地を借り上げるなどして建設した事務所、店舗等の用に供する施設部分と住宅部分とが一体となった建物(以下「市街地住宅」という。)を機構が設立された平成16年に承継し、その住宅部分の管理及び運営を実施している。しかし、機構から譲渡されて店舗等の施設部分を所有することとなった土地所有者等が市街地住宅の敷地内に設置した工作物等について、その設置に係る機構の4支社等の承諾又は4支社等を含む区分所有者間の合意(以下、これらを合わせて「合意等」という。)の内容を示す書類が保存されておらず当該工作物等の設置に当たっての具体的な条件等を確認できない事態及び施設部分における工作物等が設置された場合に、施設部分と住宅部分の専有部分の割合に応じるなどして算定される市街地住宅の土地に係る賃借料(以下「土地賃借料」という。)の変更の要否等を客観的に判断できるようになっておらず、土地所有者等との間の土地賃借料の変更に係る協議(以下「変更協議」という。)に際しての事務手続が明確になっていない事態が見受けられた。
したがって、機構において、敷地図面等に記載のない既存の工作物等について把握を行うとともに、今後土地所有者等が工作物等を設置するに当たっては、土地所有者等との間の市街地住宅の譲渡、返還等に向けた円滑な協議の実施に資するなどのために、合意等の内容を文書等により記録し保存して、これを適切に管理したり、変更協議に係る事務手続について、土地賃借料の変更の要否等を客観的に判断できるような基準を定めるなどしてその明確化を図ることにより、適切に変更協議を行ったりするよう4支社等に周知するよう、独立行政法人都市再生機構理事長に対して27年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、機構本社において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、28年1月に、4支社等に対して業務連絡を発するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 敷地図面等に記載のない既存の工作物等について把握を行った。そして、今後土地所有者等が工作物等を設置するに当たっては、土地所有者等との間の市街地住宅の譲渡、返還等に向けた円滑な協議の実施に資するなどのために、合意等の内容を文書等により記録し保存して、これを適切に管理するよう周知した。
イ 変更協議に係る事務手続について、土地賃借料の変更の要否等を客観的に判断できる基準を定めるなどしてその明確化を図ることにより、適切に変更協議を行うよう周知した。