各府省等は、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号。以下「政策評価法」という。)に基づき、所掌する政策のうち、国民生活等に相当程度の影響を及ぼすこと又は政策の効果の発揮までに多額の費用が見込まれるものなどについて、平成14年度から政策評価法に基づく政策評価を実施している。
政策評価法によれば、各府省等は、所掌する政策について、適時に、その政策効果を政策の特性に応じた合理的な手法を用いてできる限り定量的に把握し、これを基礎として、必要性、効率性又は有効性の観点その他当該政策の特性に応じて必要な観点から、自ら評価するとともに、その評価結果を当該政策に適切に反映させることとされている。
そして、政策評価法によれば、各府省等は、政策評価の計画的かつ着実な推進を図るために政府が定めた「政策評価に関する基本方針」(平成17年12月閣議決定。以下「基本方針」という。)に基づいて、3年以上5年以下の期間ごとに、政策評価の観点、政策効果の把握、事前評価及び事後評価の実施、学識経験を有する者(以下「有識者等」という。)の知見の活用、政策評価の結果の政策への反映等のそれぞれに関する事項等について、政策評価に関する基本計画(以下「基本計画」という。)に定めることとされている。また、1年ごとに、事後評価の対象としようとする政策や当該政策ごとの具体的な事後評価の方法について、事後評価の実施に関する計画(以下「実施計画」という。)に定めることとされている。
また、政策評価法によれば、各府省等は、政策評価の結果等を記載した評価書や政策評価の結果の政策への反映状況を公表等することとされているほか、政府は、毎年、各府省等における政策評価の実施状況、その結果の政策への反映状況等について報告書を作成して国会に提出、公表することとされている。
基本方針及び「政策評価の実施に関するガイドライン」(平成17年12月政策評価各府省連絡会議了承。以下、これらを合わせて「基本方針等」という。)によれば、各府省等は、政策評価の体系的かつ合理的で的確な実施を確保するために、所掌する政策の体系(以下「政策体系」という。)をあらかじめ明らかにした上で政策評価を実施することとされている。そして、政策体系は、「政策(狭義)」、「施策」及び「事務事業」の3区分に一般に整理することができるとされている。
そして、政策評価法及び「行政機関が行う政策の評価に関する法律施行令」(平成13年政令第323号。以下、これらを合わせて「政策評価法等」という。)において、政策を決定する前に実施する事前評価や、政策を決定した後に実施する事後評価が規定されていて、各府省等においては、政策のうち次の①から⑤までのいずれかの条件を満たす事務事業(④、⑤の条件は、それぞれ19年10月、22年5月から実施)について、事前評価の実施が義務付けられている。
上記①から⑤までの条件にかかわらず、研究開発、公共事業、政府開発援助、規制及び租税特別措置等の事務事業(以下、これらを合わせて「5分野の事務事業」という。)以外の政策であっても、基本方針等によれば、新規に開始しようとするものや国の補助事業に係るものなどについては、各府省等は、積極的に事前評価を実施するよう努めることとされている。
また、政策評価法等によれば、各府省等は、その任務を達成するために、社会経済情勢等に応じて実現すべき主要な行政目的に係る政策を事後評価の対象として基本計画に定めることとされるとともに、政策の決定後5年を経過しても着手していないものや、10年を経過しても完了していないものについて、各府省等の実施計画に事後評価の方法を定めて実施することが義務付けられている。さらに、基本方針によれば、事務事業のうち、事前評価義務租特を事後評価の実施の対象として、各府省等の基本計画に定めることとされ、事後評価の実施が義務付けられている。
なお、事務事業については、各府省等において、政策評価法に基づく政策評価とは別に、「行政事業レビューの実施等について」(平成25年4月閣議決定)に基づき、所掌する事務事業ごとに、予算の執行状況等を整理した上で検証する取組も、毎年度行われている。
政策に係る評価方法の概要について、政策(狭義)及び施策に係るものと事務事業に係るものとに大別して示すと、次のとおりである。
基本方針等において、政策効果に着目した目標を設定し、この目標について、定期的、継続的に実績を測定し、必要に応じて、随時、関係する政策の改善若しくは見直し又は目標自体の見直しを行い、また、目標期間が終了した時点で、目標がどの程度達成されたかについて評価する実績評価方式が示されており、主として、政策(狭義)及び施策に係る政策評価はこの方式によって実施されている。そして、主として施策に係る事後評価については、「目標管理型の政策評価の実施に関するガイドライン」(平成25年12月政策評価各府省連絡会議了承)に基づき、目標の達成度合いについて各府省等共通の5区分を適用及び明示して、評価(以下「目標管理型の政策評価」という。)を実施することとなっている。
基本方針等において、政策を決定する前に、予測される政策効果や必要となる費用を推計し、又は測定し、それらを比較するなどにより、費用に見合った政策効果が得られるかなどを事前評価するとともに、必要に応じ事前評価の評価結果を踏まえて事後評価する事業評価方式が示されており、主として、事務事業に係る政策評価はこの方式によって実施されている。
そして、5分野の事務事業については、それぞれの特性に応じた政策評価の標準的な指針等が更に策定されるなどしており、これらの評価方法に係る概要を示すと、次の(ア)から(オ)までのとおりである。
「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(平成24年12月内閣総理大臣決定)によれば、必要性、効率性、有効性及び対象となる研究開発の国際的な水準の向上の観点の下、研究開発の特性や評価の目的等に応じて、適切な評価項目及び評価基準を設定するなどして評価を実施することとされている。
公共事業に係る政策評価を実施している総務、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、環境各省の6府省等は、原則として費用及び効果を定量的に把握するなどして費用便益分析を行うことによって、その結果を政策評価の判断材料とすることとしている。そして、費用便益分析における測定指標には、事業期間における現在価値(注1)に換算された総便益を総費用で除して得られる費用便益比が主に用いられている。
事前評価の実施が義務付けられた無償資金協力及び有償資金協力に係る政策評価を実施している外務省は、主な両協力事業の実施機関である独立行政法人国際協力機構が行っている事業の採択前の準備調査等も参考にして、基本計画に基づき、事業実施による効果について、できる限り定量的な指標を用いて把握して、必要性、効率性及び有効性の観点から評価することとしている。
「規制の事前評価の実施に関するガイドライン」(平成19年8月政策評価各府省連絡会議了承)によれば、事前評価の実施に当たっては、費用及び便益の分析を可能な限り定量化して行うこととされており、また、代替案と比較しながら妥当性の検討を行うこととされている。
「租税特別措置等に係る政策評価の実施に関するガイドライン」(平成22年5月政策評価各府省連絡会議了承)等によれば、事前評価及び事後評価の実施に当たっては、当該租税特別措置等によって達成しようとする目標及びその測定指標をできる限り定量的に設定し、また、税収減を是認する効果が見込まれるか又は確認されるかを分析することとされていて、租税特別措置等による効果をできる限り定量的に把握することとされている。
各府省等において、政策評価法に基づき、政策の特性等に応じた評価方法、評価基準等を客観的かつ厳格に運用して政策評価を実施し、その評価結果や政策の効果を的確に把握して政策や次年度以降の予算等に一層適切に反映することは、政策の実施や予算の執行における効率性、有効性等の向上につながるものと考えられる。
そこで、本院は、政策評価法の施行から10年以上が経過した現在、政策評価法に基づく各府省等における政策評価の実施状況等について、効率性、有効性等の観点から、次のような点に着眼して各府省等横断的に検査した。
ア 各府省等が所掌する政策に係る政策評価の実施状況等はどのようになっているか。
イ 各府省等において、政策の効果の把握をできる限り定量的に行うなどして政策評価が実施されているか。定性的な把握のみを行っているものについては、合理的な理由があるか。また、具体的な効果を測定することができるように指標を設定するなどして客観的な把握が行われているか。
ウ 各府省等において、事前評価が実施された当該府省等が所掌する政策について、その後、事後評価又は検証が適時適切に実施されているか。
21府省等が22年度から26年度までに実施した政策評価は、表のとおり、政策(狭義)及び施策1,965件、事務事業8,885件の計10,850件となっている。
表 21府省等における政策評価の実施状況(平成22年度~26年度)
区分 | 平成22年度 | 23年度 | 24年度 | 25年度 | 26年度 | 合計 | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
事前評価 | 事後評価 | 計 | 事前評価 | 事後評価 | 計 | 事前評価 | 事後評価 | 計 | 事前評価 | 事後評価 | 計 | 事前評価 | 事後評価 | 計 | 事前評価 | 事後評価 | 合計 | |
政策(狭義)及び施策 | 39 | 450 | 489 | 5 | 396 | 401 | 5 | 380 | 385 | ― | 382 | 382 | ― | 308 | 308 | 49 | 1,916 | 1,965 |
事務事業 | 829 | 1,077 | 1,906 | 767 | 1,121 | 1,888 | 824 | 873 | 1,697 | 864 | 904 | 1,768 | 798 | 828 | 1,626 | 4,082 | 4,803 | 8,885 |
計 | 868 | 1,527 | 2,395 | 772 | 1,517 | 2,289 | 829 | 1,253 | 2,082 | 864 | 1,286 | 2,150 | 798 | 1,136 | 1,934 | 4,131 | 6,719 | 10,850 |
そして、宮内庁を除く20府省等の個別施策に係る決算額の合計額に対する事後評価が実施された施策に係る決算額の割合は77.2%と高く、20府省等の実施施策に係る決算額の合計額に対する、24年度までに事務事業に係る事前評価が実施されていて、かつ、25年度に実施された事務事業に係る決算額の割合は1.0%と低いものとなっていた。一方、事務事業については、各府省等において、政策評価とは別に、原則として全ての事務事業を対象として、行政事業レビューが実施されていた。
26年度に実施された政策評価の実施状況について、政策(狭義)及び施策に係る区分と事務事業に係る区分とに大別して示すと、次のとおりである。
21府省等は、26年度に、表のとおり、政策(狭義)及び施策に係る事前評価を実施しておらず、事後評価を計308件実施していた。そして、このうち296件について、宮内庁、特定個人情報保護委員会及び国土交通、防衛両省を除く17府省等は、目標管理型の政策評価を実施していた。
17府省等及び26年度にモニタリング(注3)を実施していた国土交通省の計18府省等において、26年度の目標管理型の政策評価の対象である施策は計479件となっている。そして、この479件について測定指標の設定状況をみると、計2,307指標に対して、定量的な目標値等が設定されたものは1,714指標(74.2%)、定性的な目標等が設定されたものは593指標(25.7%)となっている。
上記593指標のうち391指標は、測定指標が目標を達成したか否かを判定するための目標を達成すべき時期及び目標とする対象並びに実現すべき内容の水準が、あらかじめ事前分析表に具体的に定められていなかった。また、上記593指標のうち事後評価が実施された施策に係る419指標をみると、103指標は、測定指標が目標等を達成したか否かを判定するための目標を達成すべき時期及び目標とする対象並びに実現すべき内容の水準が、具体的に定められていなかった。さらに、前記479件のうち18件は、測定指標が設定されておらず、施策の実施状況を基に判定が行われるなどしていた。
目標管理型の政策評価が実施された前記の296件について、設定された定量的な測定指標計835指標に係る目標の達成度合いの判定状況をみると、127指標は、目標年度を設定していたものの、その目標年度の前に実施することとしている事後評価時に、その進捗状況等を判定するための年度ごとの目標値を設定していなかったなどのため、「判定不能」と判定されていた。
前記296件のうち、事前分析表に行政事業レビューの対象となる事務事業が達成手段として記載されていた251件について、その評価対象年度である25年度に実施された事務事業を対象とする26年度の行政事業レビューに係る情報の事後評価時の活用状況をみると、目標達成度合いの測定結果、施策の分析等が記載された評価書の「評価結果」欄に、当該情報を活用した旨が記載されていたものは2件のみとなっていた。この2件以外について、17府省等は、評価書の作成の際に参考とするなどして活用したとしているものの、当該情報が事後評価の評価結果に至るまでの過程でどのように活用されたのか、評価書上、不明確なものとなっていた。
前記296件のうち90件は、25年度の予算額が評価書に明示されているものの、評価書の様式では同年度の執行額の記載が任意とされているなどとして、執行額が明示されないまま事後評価が実施されていた。
事務事業に係る政策評価の実施状況について、5分野の事務事業に係る各分野の事務事業と5分野の事務事業以外の事務事業とに分けて示すと、次のとおりである。
総務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、防衛各省の7府省等は、26年度に、事前評価105件及び事後評価61件の計166件の研究開発に係る政策評価を実施していた。そして、この166件について、費用及び効果に関する評価項目の設定状況をみると、160件は、必要性、効率性、有効性等の観点に関して設定されたいずれかの評価項目において、研究開発の実施体制や実施期間の妥当性等と併せて評価したとされているものの、当該評価項目では、費用及び効果に関する具体的な評価内容は評価書に記載されておらず、どのような評価が行われたのかが分からない状況となっていた。また、測定指標の設定状況をみると、事前評価において設定された定性的な2指標は、目標とする対象や実現すべき内容の水準が具体的に定められておらず、また、事後評価において設定された27指標は、判定基準が設定できなかったなどとして、判定されていなかった。
公共事業を実施している前記の6府省等は、26年度に、事前評価340件及び事後評価725件の計1,065件の公共事業に係る政策評価を実施していた。このうち、事前評価の実施が義務付けられるなどしている総事業費の見込額又は実績額が10億円以上の922件をみると、費用便益比を算出する方法により費用便益分析を行って評価されたものは854件、それ以外による評価方法により評価されたものは68件となっていた。
上記854件のうち4件については、発生が見込まれる維持管理費を費用に計上することと実施要領等では定められているのに、誤って計上されていなかった。また、43件の事後評価については、物価変動の取扱いが実施要領等に具体的に定められていないなどとして、物価変動の影響を除かないまま現在価値に換算されていた。
公共事業には、将来の費用や便益に大きな影響を及ぼす不確実な要因が存在し、事前評価時に算出された費用便益比は、その後の社会経済情勢の変化等により、変動する可能性がある。そこで、感度分析(注4)の実施状況をみると、感度分析が実施されていなかった事前評価又は再評価の273件のうち236件は、実施要領等に感度分析の実施についての定めがないため、また、9件は、実施要領等に感度分析の実施が定められているものの、補助事業の事業主体である地方公共団体の協力が得られなかったため、さらに、8件は、感度分析を実施する際の明確な基準がないため、それぞれ感度分析が実施されていなかった。
外務省は、26年度に、事前評価63件及び事後評価8件の計71件の政府開発援助に係る政策評価を実施していた。事前評価63件の有効性に関する評価の状況をみると、定量的な指標を用いて評価されていたものは59件、定性的な指標のみを用いて評価されていたものは4件となっていた。そして、この4件について、外務省が設定した測定指標には、国際機関からの要請書に、達成すべき具体的な内容の水準を示す関連指標が設定されるなどしていて、達成したかどうかを事後に客観的に判定することができるように設定されたものなどとなっていた。
内閣府等12府省等は、26年度に、事前評価89件及び事後評価1件の計90件の規制に係る政策評価を実施していた。このうち事前評価46件は、国において行政費用の発生等が見込まれたものであり、これらについて費用及び便益の分析状況をみると、費用及び便益について定量的に分析されているものは全くなく、全て定性的に分析されたものとなっていた。また、この46件について、費用及び便益のうち、自らが負担することとなる行政費用の分析内容をみると、発生等が見込まれた行政費用の要素を列挙するのみで、その規模を全く示していなかったものは36件見受けられた。さらに、代替案の設定状況をみると、設定していなかったものは12件となっていた。
内閣府等12府省等は、26年度に、事前評価138件及び事後評価7件の計145件の租税特別措置等に係る政策評価を実施していた。このうち、国税に係る事前評価110件について、目標及び測定指標の設定状況をみると、目標が設定されていなかったものが2件、目標は設定されたものの測定指標が設定されていなかったものが6件見受けられた。また、国税に係る租税特別措置等の内容の拡充又は期限の延長に係る事前評価(以下「拡充延長事前評価」という。)79件及び事後評価5件の計84件について、測定指標の設定状況をみると、81件は測定指標が設定されていたものの、設定されていなかったものが3件見受けられた。そして、上記81件の目標の達成状況をみると、「未達成」と判定されたものは39件で、このうち18件は、未達成となった原因が分析されていなかった。また、目標の達成状況が測定されていなかったものが19件見受けられた。
国家公安委員会・警察庁等5府省等は、26年度に、事前評価63件及び事後評価26件の計89件の5分野の事務事業以外の事務事業に係る政策評価を実施していた。このうち事後評価8件は、当該事務事業の執行額が明示されないまま事後評価が実施されていた。
21府省等が25年度までに実施した事前評価について、22年度から26年度までの間の事後評価又は検証の実施状況をみると、総事業費の見込額又は実績額が10億円以上の公共事業で、26年度末までに事後評価が実施されていなかったものが計688件となっており、このうち、定められた事後評価の実施時期が未到来のものは608件、東日本大震災の影響等により実施を延期せざるを得なかったものなどは8件となっていた。しかし、残りの72件は、補助事業の事業主体である地方公共団体から完了後評価に関する資料等が得られず、完了後評価が実施されていなかったり、実施要領等に実施時期等を具体的に定めていないため、完了後評価が実施されていなかったりなどとなっていた。
また、国において行政費用の発生等が見込まれた規制に係る事前評価のうち、実際に施行されたものについて、26年度末までに事後評価又は検証が実施されていなかったものが計238件となっており、このうち、事前評価時に事後評価又は検証の実施時期又は条件が設定されていなかったものは8件、明確に設定されていなかったものは79件見受けられた。そして、明確に設定されていた151件のうち7件は、設定された時期が到来してから1年以上経過しているにもかかわらず、事後評価又は検証が実施されていなかった。
我が国の財政状況は、近年厳しさを増し、予算の執行結果等の厳格な評価、検証等が重視される中で、各府省等において政策評価が客観的かつ厳格に実施されることは、政策の実施や予算の執行における効率性、有効性等の向上につながるものと考えられる。
そこで、本院は、効率性、有効性等の観点から、21府省等における政策評価の実施状況等について、前記の点に着眼して検査したところ、次のような状況となっていた。
21府省等は、22年度から26年度までの間に、政策(狭義)、施策及び事務事業の3区分に係る政策評価を計10,850件実施していた。
施策に係る目標管理型の政策評価において、目標を達成すべき時期及び目標とする対象並びに実現すべき内容の水準が、あらかじめ事前分析表に具体的に定められていなかった定性的な測定指標が391指標、判定する際に具体的に定められていなかったものが103指標、「判定不能」と判定されたものが127指標見受けられた。また、事後評価249件は、評価結果に至るまでの過程で行政事業レビューに係る情報がどのように活用されたのか、評価書上、不明確なものとなっていた。さらに、事後評価90件は、25年度の予算額が評価書に明示されているものの、執行額が明示されないまま事後評価が実施されていた。
研究開発に係る政策評価において、160件は、費用及び効果についてどのような評価が行われたのかが評価書上分からない状況となっており、事前評価において設定された定性的な2指標は目標とする対象や実現すべき内容の水準が具体的に定められておらず、また、事後評価において設定された27指標は判定基準が設定できなかったなどとして、判定されていなかった。
公共事業に係る政策評価において、4件は、費用便益分析に当たって発生が見込まれる維持管理費が費用に計上されておらず、事後評価43件は物価変動の影響を除かないまま現在価値に換算されていた。また、事前評価又は再評価の253件は、実施要領等に感度分析の実施についての定めがないなどのため、感度分析が実施されていなかった。
政府開発援助に係る政策評価において、定性的な測定指標のみを設定して有効性に関する評価が実施された事前評価4件の測定指標は、達成すべき具体的な内容の水準を示す関連指標が設定されるなどしていて、事後に客観的に判定することができるように設定されるなどしていた。
規制に係る政策評価において、費用及び便益について定量的に分析されているものは全くなく、事前評価46件は全て定性的に分析されていて、また、このうち36件は、行政費用の分析において、発生等が見込まれた費用の要素を列挙するのみで、その規模が全く示されていなかった。
租税特別措置等に係る政策評価において、事前評価について目標が設定されていなかったものが2件、目標は設定されたものの測定指標が設定されていなかったものが6件見受けられた。また、拡充延長事前評価及び事後評価について、測定指標が設定されていなかったものが3件、目標が未達成となった原因が分析されていなかったものが18件、目標の達成状況が測定されていなかったものが19件見受けられた。
5分野の事務事業以外の事務事業に係る政策評価において、8件は、当該事務事業の執行額が明示されないまま事後評価が実施されていた。
事後評価又は検証の実施状況をみると、公共事業において完了後評価が実施されていなかったものが72件見受けられた。また、規制において事前評価時に事後評価の実施時期又は条件が設定されていなかったものなどが87件、設定されていた時期が到来してから1年以上経過しているにもかかわらず、事後評価又は検証が実施されていなかったものが7件見受けられた。
政府は、25年6月に、デフレからの早期脱却と持続的な経済成長を実現させるなどのために閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針~脱デフレ・経済再生~」の中で、「政策評価は、政策の効果と質を高めるための政策インフラである。」として、客観的なデータ等に基づく政策評価を確立することなどにより、実効性のあるPDCA(Plan(計画)―Do(実行)―Check(評価)―Action(改善))サイクルを確立し、行政サービスのコスト削減、質の向上等を図るとともに、政策目的に照らして効果の高い政策に重点的に資源を配分することとしていることなどから、各府省等において、政策評価を客観的かつ厳格に実施することがより一層求められている。
一方、「3 検査の状況」において記述したとおり、今回の検査で、各府省等における政策評価の実施状況等について留意しなければならない状況等が見受けられた。
したがって、各府省等においては、政策評価の実施に当たって、次の点に留意して、政策評価の対象等を適切に定めて適時に実施するとともに、有識者等の知見も活用した上で、できる限り定量的な測定指標を設定するなどして政策効果の客観的な把握に努め、評価結果を政策や次年度以降の予算に適切に反映させていくことが必要である。
本院としては、今後とも、各府省等における政策評価の実施状況等について引き続き注視していくこととする。