国土交通省は、地方公共団体等(都道府県、市町村(特別区を含む。)又は地方自治法(昭和22年法律第67号)の規定による一部事務組合若しくは広域連合をいい、港湾法(昭和25年法律第218号)の規定による港務局、都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)の規定による市町村都市再生協議会及び地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法(平成17年法律第79号)の規定による地域住宅協議会を含む。以下同じ。)が行う社会資本の整備その他の取組を支援することにより、交通の安全の確保とその円滑化、経済基盤の強化、生活環境の保全、都市環境の改善及び国土の保全と開発並びに住生活の安定の確保及び向上を図ることを目的として、平成22年度から「社会資本整備総合交付金交付要綱」(平成22年国官会第2317号国土交通事務次官通知。以下「要綱」という。)等に基づき、地方公共団体等が作成した社会資本の整備その他の取組に関する社会資本総合整備計画(以下「整備計画」という。)に基づく事業又は事務の実施に要する経費に充てるために、社会資本整備総合交付金(以下「総合交付金」という。)を交付している。
総合交付金は、国土交通省所管の地方公共団体等向けの個別補助金を一括した、地方公共団体等にとって自由度が高く、創意工夫を生かせる総合的な交付金として創設されたもので、同省によればその特長は、①地方公共団体等において整備計画に位置付けた事業の範囲内で国費を自由に充当することができること、②ソフト事業についても地方公共団体等の創意工夫を生かして実施することができること、③従来は国が詳細に事前審査していたものを地方公共団体等が自ら目標を設定して、事後に評価を実施するとともにその結果を公表するものにしたこと、④従来は個々の事業のアウトプット(事業実績)に着目していたものを整備計画全体としてのアウトカム(成果)に着目するものにしたことなどとなっている。
総合交付金の交付対象事業は、要綱によれば、整備計画の目標を実現するために交付金事業者(注1)が実施する基幹的な事業(以下「基幹事業」という。)と、整備計画の目標を実現するために基幹事業と一体的に実施する関連事業に大別されている(以下、これら事業の個々の交付対象事業を「要素事業」という。)。
基幹事業は、道路事業等16事業(注2)から構成されている。関連事業は、関連社会資本整備事業と、整備計画の目標を実現するために基幹事業と一体となってその効果を一層高めるために必要な効果促進事業から成っている。効果促進事業に係る国の負担割合は基本的に交付対象事業費の50%となっており、交付金事業者の運営に必要な人件費、賃借料その他の経常的な経費への充当を目的とする事業等は総合交付金の交付対象外となっている。
また、基幹事業のうち都市再生整備計画事業等については、基幹事業と一体となってその効果を増大させるために必要な事業等を提案事業として実施できることとなっており、実施できる事業の内容等は効果促進事業とほぼ同様となっている。
総合交付金の交付を受けて交付対象事業を実施しようとする地方公共団体等は、要綱に基づいて整備計画を作成して国土交通大臣に提出することとなっている。整備計画には、整備計画の名称、目標、期間、交付対象事業、全体事業費、目標の実現状況等を評価するための指標(以下「評価指標」という。)等を記載することとなっている。そして、「社会資本整備総合交付金に係る計画等について」(平成22年国官会第2318号国土交通事務次官通知。以下「計画通知」という。)で示された整備計画の参考様式において、交付対象事業については要素事業ごとの事業種別、事業箇所、事業内容、事業実施期間、全体事業費等を、評価指標については当初現況値、交付期間の中間年度における中間目標値及び交付期間の終了時における最終目標値を記載することとなっている。
整備計画の作成に当たっては、整備計画の期間内(おおむね3年から5年まで)における事業等の実施によって実現しようとするものであること、評価指標が定量的指標により適切に設定されていること、交付対象事業は、整備計画の目標及び評価指標の設定内容に対して構成が妥当であり、一定の期間内に重点的、効果的かつ効率的に行われる必要があり、早期に事業効果の現れるものであることに留意することとなっている。
なお、要綱の施行の際に、現に国土交通省に提出されていて、整備計画に記載することとなっている事項に相当する事項を含む特定計画(都市再生整備計画等)については、当該計画の計画期間に限り整備計画とみなす経過措置が講じられている。
整備計画を作成して国土交通大臣に提出しようとする地方公共団体等は、計画通知において、整備計画の目標の妥当性、整備計画の実現可能性等について、自主的・主体的に検証(以下「事前評価」という。)した結果(以下、事前評価の結果を記載した書面を「事前評価書」という。)を整備計画に添付することとなっている。
そして、地方公共団体等は、整備計画を作成したときはこれを公表することとなっており、整備計画の公表と併せて事前評価の結果も公表することとなっている。なお、特定計画については、要綱等において、事前評価の実施、事前評価書の提出及び事前評価の結果の公表並びに整備計画の公表の規定を適用しないことができることとなっている。
さらに、交付期間の終了後又は交付期間の最終年度中に、整備計画の目標の実現状況等について評価(以下「事後評価」という。)を行い、事後評価の結果(以下、事後評価の結果を記載した書面を「事後評価書」という。)を遅滞なく公表するとともに、国土交通大臣に報告しなければならないこととなっている。そして、必要に応じて、交付期間の中間年度の終了後においても評価(以下「中間評価」という。)を行い、中間評価の結果(以下、中間評価の結果を記載した書面を「中間評価書」という。)についても事後評価の場合と同様に遅滞なく公表するとともに同大臣に報告することとなっている。
事後評価又は中間評価の実施に当たっては、評価の透明性、客観性及び公正性を確保するために、学識経験者等の第三者の意見を求めたり、地方公共団体独自の評価制度を活用したりすることができることとなっており、また、事業の成果を地域住民等に対してより分かりやすく示すよう留意することとなっている。
国土交通省が、地方公共団体等に対して交付した総合交付金、地域自主戦略交付金、沖縄振興自主戦略交付金及び沖縄振興公共投資交付金の額(以下、これらの額を「交付金交付額」という。)についてみると、22年度1兆5347億余円、23年度2兆2701億余円、24年度2兆2258億余円、25年度2兆7011億余円、26年度2兆4958億余円、計11兆2277億余円と毎年度多額に上っている。
国土交通省は、25年度の「国土交通省政策評価年次報告書」において同省全体の政策を評価するために設定した業績指標については、政策目標の達成度を適切に表す指標であり、その性格は、①アウトカムに着目した指標といえるもの、②アウトプットに着目した指標の場合は、当該アウトプットとアウトカムとの因果関係について説明可能であるもの、③顧客満足度に着目した指標といえるものなどとしている。
総合交付金は、前記のとおり、国土交通省所管の地方公共団体等向けの補助金を一括する形で22年度に創設されたもので、地方公共団体等自らが目標を設定した整備計画を作成して、これに基づき総合交付金の交付を受けて交付対象事業を実施し、自らが整備計画の目標の実現状況、今後の方針等について評価を実施する制度となっている。
また、基幹事業の効果を一層高めるソフト事業等として効果促進事業が実施できることになっているが、その内容は地方公共団体等の創意工夫に委ねられている。
本院は、総合交付金について、毎年検査して、検査報告に不当事項や処置要求事項等を掲記しているところであるが、総合交付金の創設から5年が経過し、その間、毎年度多額の国費が投入されていることなどを踏まえて、社会資本整備総合交付金等による事業等(以下「社会資本整備総合交付金事業等」という。)の実施状況について、合規性、効率性、有効性等の観点から、次のような点に着眼して検査した。
ア 整備計画の作成に当たり、地域住民等の意向等が反映されるようニーズ調査等が実施されているか、評価指標が適切に設定されているか、事前評価は適切に実施されているか、また、整備計画等は適切に公表されているか。
イ 効果促進事業は、基幹事業の効果を一層高めるために、基幹事業と一体的に実施されているか。
ウ 中間評価及び事後評価は適切に実施されているか、整備計画の目標の達成状況はどのようになっているか、また、中間評価及び事後評価の結果は適切に公表されているか。
本院は、22年度から26年度までの間において、914地方公共団体等(17都道府県(注3)、管内872市町村、23一部事務組合、1広域連合及び1地域住宅協議会)が実施した社会資本整備総合交付金事業等(これらに対して22年度から26年度までの間に交付された交付金交付額計6兆0605億余円(注4))を対象として検査した。
そして、国土交通本省及び17都道府県において、社会資本整備総合交付金事業等の実施状況について、関係資料の提出や説明を受けるなどして会計実地検査を行った。また、上記の914地方公共団体等から、これらの地方公共団体等が作成した2,828計画(計画額(注5)計25兆7198億余円)について、評価指標の設定、事後評価の内容等に係る調書の提出を受けるなどして、整備計画の作成状況、事前評価、中間評価及び事後評価の実施状況等について検査した。
上記の2,828計画のうち、長寿命化計画の策定等のみで社会資本整備を実施することとしていない31計画を除いた2,797計画における社会資本整備に対する地域住民等のニーズ調査又は民間等の活動との連携等の実施状況についてみると、334計画については特段の理由もなく実施していないなどとしていて、地域住民等の意向の把握や民間等の活動との連携等を図って整備計画に反映しているか不明な状況となっていた。
2,828計画計65,827事業において基幹事業の要素事業の実施が評価指標の当初現況値から最終目標値までの変化量(以下「変化量」という。)に及ぼす影響についてみたところ、評価指標の変化量に影響しない基幹事業の要素事業が532計画計7,285事業あった。
国土交通省は、評価指標については、アウトカムに着目したものであることが望ましいとしており、地方公共団体等へ評価指標の考え方を広く周知するなどしているが、具体的な評価指標が適切かどうかについては、整備計画の公表による地域住民等のチェック及び評価に委ねているため、地方公共団体等の責任の範囲で対応することになるとしている。
地方公共団体等が設定した2,828計画計7,862指標の内訳についてみたところ、事業の進捗に伴い結果的に増加する整備延長、整備箇所、整備数、整備面積等のうちの一つの要素のみを評価指標として設定しているもの(以下「アウトプット指標」という。)が2,823指標あった。そして、地方公共団体等がアウトカムとして設定した評価指標(以下「アウトカム指標」という。)が4,281指標あった。また、アウトプット指標に該当せず、かつ、地方公共団体等がアウトカム指標として設定していない評価指標が758指標あった。
整備計画ごとの指標の設定状況についてみたところ、アウトプット指標のみを設定したものが635計画計1,185指標あり、中には従来の個々の事業のアウトプットに着目したものと同様であり、整備計画全体としてのアウトカムに着目したものとなっていない事態も見受けられた。
アウトカム指標を設定した4,281指標の内訳についてみたところ、地方公共団体等が、整備計画作成時において交付対象事業が評価指標の変化量に与える影響を一定の方法で計算するなどして設定したアウトカム指標が1,426指標あった。
一方、交付対象事業が評価指標の変化量に与える影響を計算するための一定の方法がないため、地方公共団体等が最終目標値を予測するなどして設定したアウトカム指標が2,855指標あった。
上記の2,855指標を含む1,197計画における当該評価指標の変化量に影響する他の事業主体の事業等との関係についてみたところ、360計画において、その影響を当初から想定していたのに、他の事業主体の事業等を記載しておらず、交付対象事業と評価指標の変化量との因果関係が明確となっていなかった。
また、観光客の増加等を掲げている225計画計275指標についてみたところ、55計画計64指標において、観光客が訪れると想定した観光拠点が、当初現況値を把握した箇所と一致していない状況が見受けられた。これらの当初現況値は、評価指標の変化量の算定の基礎となるのに、交付対象事業の実施により観光客が訪れると想定した観光拠点の当初の状況を明確に示しておらず、交付対象事業と評価指標の変化量との因果関係が明確となっていない状況となっていた。
さらに、地域住民等の満足度の増加等を掲げている410計画計554指標の満足度調査等における説明内容をみたところ、302計画計408指標については、毎年行っている地方公共団体等の全般的な取組に関する地域住民等の意向調査等が満足度調査等を兼ねているなどしており、交付対象事業について説明していなかったことから、これらの満足度調査等により算定された当初現況値は、交付対象事業を実施する前の状況に対する満足度を明確に示しておらず、交付対象事業と評価指標の変化量との因果関係が明確となっていない状況となっていた。
2,828計画から特定計画527計画を除いた2,301計画における事前評価の実施状況についてみたところ、2,114計画において事前評価を実施していたものの、このうち108計画については国土交通大臣に事前評価書を提出していなかった。また、187計画については事前評価を実施していなかった。そして、国土交通省は、上記の108計画と187計画の計295計画について、整備計画に事前評価書が添付されていないにもかかわらずそのまま確認せずに受領している事態が見受けられた。
上記の2,114計画のうち事前評価書でその内容が確認できた1,993計画について、検証事項の設定及び検証状況をみたところ、国土交通省が検証事項として例示した8事項全てを検証していたものが1,502計画、一部の事項について検証していなかったものが491計画となっており、そのうち上位計画等との整合性を確認していなかったものが77計画となっていた。また、上位計画等との整合性を確認していた1,916計画のうち、1,094計画において整合性を確認した上位計画等の名称を事前評価書に記載していなかった。
特に、社会資本整備重点計画(以下「重点計画」という。)に位置付けられている事業を交付対象事業としていて、地方公共団体等が重点計画を上位計画と位置付けている1,066計画について、重点計画との整合性の確認状況をみたところ、確認していなかったものが647計画となっていた。また、確認していた419計画のうち、事前評価書に重点計画名を記載していなかったものが293計画となっていた。
整備計画の公表状況についてみたところ、前記の2,301計画のうち、公表していたものは1,977計画、公表していなかったものは324計画となっていた。
上記の1,977計画における公表方法についてみたところ、ホームページに整備計画書を掲載するなどしていたものは1,774計画、閲覧請求に応ずるなどとしていたものは195計画、その他は8計画となっていた。
上記の195計画の閲覧請求先等の明示状況についてみたところ、公報による告示、ホームページ等により閲覧請求先等を明示していたものは35計画となっており、残りの160計画は明示していなかった。
また、整備計画の公表と併せて事前評価の結果も公表することとなっていることから、前記の1,774計画のうち事前評価を実施していなかった98計画を除いた1,676計画における事前評価の結果の公表状況についてみたところ、公表していたものは512計画、公表していなかったものは1,164計画となっていた。
効果促進事業の実施状況についてみたところ、22年度から25年度までの間に実施した効果促進事業の要素事業数は、2,828計画のうち931計画計6,704事業となっていて、その内容は、施設整備、点検、調査、イベントの実施等となっていた。
効果促進事業の要素事業と基幹事業の要素事業との一体性についてみたところ、前記の931計画計6,704事業のうち104計画計605事業(交付金交付額計86億余円)は、同一の整備計画において一体的に実施する基幹事業の要素事業がなかった。
地方公共団体等が整備計画の開始前から実施している事業で、かつ、法令又は条例に基づいて実施している事業については、総合交付金により実施しない場合においても引き続き実施する可能性が高いことから、経常的な経費に該当すると思料される。
そこで、前記の931計画計6,704事業についてみたところ、35計画計71事業(交付金交付額計65億余円)において、上記の事業を効果促進事業として実施していた。
効果促進事業について、ア及びイの事態のほかに、次の事態が見受けられた。
住宅の耐震改修に関する事業の実施状況についてみたところ、22年度から25年度までの間に、2,828計画のうち47計画において計66事業(交付金交付額計66億余円)実施していた。このうち基幹事業の採択要件を満たすものなどについて、基幹事業として実施すると国の負担割合が低いことなどから効果促進事業として実施していたものは34計画34事業(同計41億余円)、提案事業として実施していたものは10計画10事業(同計3億余円)となっており、基幹事業として実施していたものは22計画22事業(同計22億余円)となっていた。
基幹事業である都市再生整備計画事業においては、地域の創意工夫を生かして行うイベントの開催、社会実験等を提案事業として実施することが認められている。一方、都市再生整備計画事業のうち、都市再構築戦略事業(24、25両年度は地方都市リノベーション事業)については、提案事業が総合交付金の交付対象外となっている。
そこで、都市再構築戦略事業の実施状況についてみたところ、24年度から26年度までの間に、2,828計画のうち47計画において実施していた。このうち、都市再構築戦略事業は提案事業が総合交付金の交付対象外となっているため、前記の提案事業に該当する事業を効果促進事業として実施していたものが21計画計70事業(交付金交付額計9億余円)見受けられた。
地方公共団体等は、必要に応じて、交付期間の中間年度の終了後において評価を行い、これを国土交通大臣に報告することとなっている。そこで、2,828計画のうち、交付期間の中間年度が終了した1,387計画の中間評価の実施状況をみたところ、88計画において実施していたものの、1,299計画において実施していなかった。また、中間評価を実施したことによるメリットについては、進捗状況の確認を行ったことにより事業の課題が抽出され、その後の事業の実施に資することとなったとの意見が多かった。一方、計画期間を6年以上に延長していた16計画をみたところ、全ての整備計画において計画期間を延長する際に中間評価等を実施していなかった。
2,828計画のうち、26年度までに交付期間が終了した1,332計画の事後評価の実施状況をみたところ、758計画において実施していたものの、574計画において実施していなかった。
事後評価については、①総合交付金を充てた要素事業の進捗状況、②事業効果の発現状況、③評価指標の最終目標値の実現状況及び④今後の方針について評価を実施することとなっている。
そこで、事後評価を実施していた758計画の評価内容についてみたところ、①は548計画、②は583計画、③は758計画、④は586計画でそれぞれ評価を実施しており、他方、要綱等に定める評価項目の一部を評価していないものがあった。そして、事後評価書における事業費の記載状況についてみたところ、計画全体及び要素事業別の計画額については520計画で記載していて、計画全体及び要素事業別の実績額については390計画で記載していなかった。また、最終目標値の変更状況等を記載していない整備計画があった。
前記の758計画のうち、学識経験者等の第三者の意見を求めるために地方公共団体等が設置する評価委員会を開催するなどしていたものがあった一方で、開催していなかったものが214計画あった。また、地域住民等から広く意見を収集し、それらの意見を反映して評価結果をまとめるために、事後評価原案を公表していたものがあった一方で、公表していなかったものが514計画あった。
事後評価を実施していた758計画計2,186指標について評価指標の達成率(注6)をみたところ、最終目標値を達成していた評価指標は1,430指標あり、最終目標値を達成していなかった評価指標は751指標あった。
達成率の分布傾向についてみたところ、達成率500%以上のものが137指標、マイナスのものが211指標見受けられるなど、最終目標値に対し実績値が大きくかい離している評価指標があった。また、評価指標の設定に当たり、当初現況値を推計値により把握していたものなどがあった。
評価指標の達成率と事業の進捗率の関係についてみたところ、進捗率が100%以上であるにもかかわらず最終目標値を達成していないものが410指標あった。一方、進捗率が100%未満であるのに最終目標値を達成しているものが367指標あった。
事後評価時における評価指標の実績値の算定方法をみたところ、算定方法の正確性に疑義があると事後評価書に記載されているものなどが、前記の2,186指標のうち56指標となっていて、実績値の算定方法について正確性等に十分留意する必要がある評価指標があった。
前記の2,186指標について、最終目標値の達成要因の分析状況についてみたところ、最終目標値の達成又は未達成の要因分析を行っていなかったものが274指標あり、このうち、最終目標値が未達成にもかかわらずその要因分析を行っていなかったものが70指標あった。そして、最終目標値と実績値との間に差が発生していた1,758指標において、その発生要因を分析していなかったものが791指標あった。
中間評価を実施していた88計画のうち国土交通大臣に中間評価書を提出していた58計画の中間評価の結果の公表状況についてみたところ、公表していたものは53計画、公表していなかったものは5計画となっていた。
上記の53計画における公表方法についてみたところ、ホームページに中間評価書を掲載するなどしていたものは51計画、閲覧請求に応ずるなどとしていたものは2計画となっており、このうち1計画は閲覧請求先等を明示していなかった。
事後評価を実施していた758計画のうち国土交通大臣に事後評価書を提出していた694計画の事後評価の結果の公表状況についてみたところ、公表していたものは643計画、公表していなかったものは51計画となっていた。
上記の643計画における公表方法についてみたところ、ホームページに事後評価書を掲載するなどしていたものは624計画、閲覧請求に応ずるなどとしていたものは18計画となっており、このうち13計画は閲覧請求先等を明示していなかった。また、その他が1計画となっていた。
総合交付金は、国土交通省所管の地方公共団体等向けの補助金を一括する形で22年度に創設されたもので、地方公共団体等自らが目標を設定した整備計画を作成して、これに基づき総合交付金の交付を受けて交付対象事業を実施し、自らが整備計画の目標の実現状況、今後の方針等について評価を実施する制度となっている。
また、基幹事業の効果を一層高めるソフト事業等として効果促進事業が実施できることになっているが、その内容は地方公共団体等の創意工夫に委ねられている。
国土交通本省及び17都道府県において、2,828計画について、整備計画の作成に当たり、評価指標が適切に設定されているか、効果促進事業は、基幹事業の効果を一層高めるために、基幹事業と一体的に実施されているか、事後評価は適切に実施されているかなどについて検査したところ、次のような状況が見受けられた。
(ア) 334計画については、整備計画の作成に当たり、地域住民等の意向の把握や民間等の活動との連携等を検討して、これらを整備計画に反映しているか不明な事態となっていた。
(イ) 532計画については、基幹事業の要素事業が評価指標の変化量に及ぼす影響を考慮していないものがあった。また、635計画については、アウトプット指標のみを設定していた。そして、アウトプットとアウトカムとの因果関係を説明できる場合は、アウトプットに着目した指標の設定も認められているが、従来の個々の事業に着目したアウトプット指標のみを設定していた事態も見受けられた。さらに、アウトカム指標となっていても、地方単独事業等が評価指標の変化量に与える影響を当初から想定していたのに整備計画にその記載がないなど交付対象事業と評価指標の変化量との因果関係が明確となっていない事態も見受けられた。
(ウ) 187計画については、事前評価を実施しておらず、108計画については、事前評価書を国土交通大臣へ提出していなかった。そして、国土交通省において、整備計画に事前評価書が添付されていないにもかかわらずそのまま確認せずに受領している事態が見受けられた。また、491計画については、事前評価書に国土交通省が例示した検証項目の一部を設定せず検証していなかった。さらに、647計画については、重点計画を上位計画と位置付けているのに、重点計画との整合性を確認していなかった。
(エ) 整備計画及び事前評価の結果は、地域住民等のチェック及び評価を受けるために公表することとされているのに、324計画については、整備計画を公表しておらず、1,164計画については、事前評価の結果を公表していなかった。また、公表方法を閲覧請求等としている整備計画の中には、閲覧請求先等を明示していない事態が見受けられた。
基幹事業の要素事業との一体性が確保されていなかった効果促進事業が104計画計605事業、整備計画の開始前から実施していたなどの事業を効果促進事業として実施していて、経常的な経費に交付金を充当していると思料されたものが35計画計71事業見受けられた。また、国の負担割合の低い基幹事業として実施可能な事業等を国の負担割合が高い効果促進事業として実施していたものが34計画34事業、提案事業が交付対象外とされている事業において提案事業に該当する事業を効果促進事業として実施していたものが21計画計70事業見受けられた。
(ア) 1,299計画については、必要に応じて中間評価を実施することから、中間評価を実施していなかったが、中間評価を実施したことによるメリットについては、進捗状況の確認を行ったことにより事業の課題が抽出され、その後の事業の実施に資することとなったとの意見が多かった。このうち、計画期間を6年以上に延長していた16計画については、全ての整備計画について計画期間を延長する際に中間評価等を実施していなかった。
(イ) 574計画については、事後評価を実施しておらず、758計画については、事後評価を実施していた。そして、758計画の中には、要綱等に定める評価項目の一部を評価していなかったり、事後評価書に実績額を記載していなかったり、最終目標値の変更状況等を記載していなかったりしたものがあった。そして、214計画については、学識経験者等の第三者の意見を求めるための評価委員会を開催していなかった。また、514計画については、地域住民等から広く意見を収集し、それらの意見を反映して評価結果をまとめるための事後評価原案の公表を行っていなかった。さらに、実績値が最終目標値と大きくかい離する可能性があることに十分留意して、評価指標を設定する際の当初現況値や実績値の把握等を適切に行う必要がある評価指標があったり、実績値の算定に当たり正確性に疑義が生じていて、実績値の算定方法について正確性等に十分留意する必要がある評価指標があったり、最終目標値の達成要因において、未達成要因等を分析していなかったりしている事態が見受けられた。
(ウ) 中間評価及び事後評価の結果は、地域住民等のチェック及び評価を受けるために公表することとされているのに、5計画については、中間評価の結果を公表しておらず、51計画については、事後評価の結果を公表していなかった。また、公表方法を閲覧請求等としている整備計画の中には、閲覧請求先等を明示していない事態が見受けられた。
これらの状況を踏まえて、地方公共団体等が社会資本整備総合交付金事業等を適切に実施することができるよう、国土交通省において、次のア及びイの点について、地方公共団体等に対して支援、助言等を行う必要があり、また、ウの点について実施する必要がある。
適切に効果促進事業を実施できるよう、基幹事業との一体性の確保、対象となる事業の取扱いなどを検討すること
本院としては、今後とも、社会資本整備総合交付金等による事業等の実施状況について引き続き注視していくこととする。