独立行政法人は、独立行政法人の運営の基本その他の制度の基本となる共通の事項について定める独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)、各独立行政法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定める法律(以下「個別法」という。)等に基づき設立される法人であり、平成28年3月末現在における独立行政法人の数は98法人、25、26両年度における経常費用は、27年4月1日に設立された国立研究開発法人日本医療研究開発機構を除く97法人で計22兆4289億余円及び計21兆1516億余円となっている。そして、国は、通則法等に基づき、独立行政法人に対して、その資本金を出資するなどの財政上の措置を講じている。
各独立行政法人は、個別法等に定められた業務を効果的かつ効率的に実施するため、施設管理・運営、調査・研究、広報、データ入力作業等の定型的支援等の業務について、当該業務を自ら実施することが効率的でないと認められる場合等に、法人ごとに定める業務方法書及び会計に関する事項について定める規程(以下、この規程を「会計規程」という。)に基づくなどして、当該業務の全部又は一部を民間事業者に委託(請負を含み、工事に係るものを除く。以下「民間委託」という。)して実施している。
ほとんどの法人において、競争入札により契約の相手方を選定する場合には、原則として予定価格の制限の範囲内で最低の価格の入札者を自動的に落札者として決定する(以下、この落札方式を「自動落札方式」という。)ほか、情報システムの調達、調査・研究、広報等の技術的要素等の評価を行うことが重要である業務については、自動落札方式に代えて、価格と価格以外の技術的要素等を総合的に評価して、発注者にとって最も有利な申込みをした者を落札者として決定する方式(以下「総合評価落札方式」という。)によることができることとなっている。
国においては、「公共調達の適正化について」(平成18年8月財計第2017号)において、研究開発、調査・研究、広報等の技術的要素等の評価を行うことが重要であるものについては、総合評価落札方式による一般競争入札を拡充することとされ、評価基準や実施要領の作成等円滑な実施に必要な措置を講じつつ、その導入に努めるものとされている。また、総合評価落札方式の実施に当たっては、発注者による提案の審査の透明性及び公正性の確保が重要であることから総合評価の結果の公表を徹底すること、評価方法の作成や落札者決定段階において、学識経験者等の第三者の意見を効率よく反映させるための方策を講ずるよう努めることとされている。
独立行政法人については、上記の国における取組を踏まえるなどして、法人ごとに「随意契約見直し計画」を策定することとされたことから、各法人は、その中で、「総合評価方式の導入拡大」等の項目を設け、総合評価落札方式の導入拡大に向けた取組が行われてきている。
独立行政法人の契約等の状況について、本院は、会計検査院法第30条の3の規定に基づき、20年11月及び21年9月に、「独立行政法人の業務、財務、入札、契約の状況に関する会計検査の結果について」を参議院に報告している。そして、その中で、総合評価落札方式等、契約の適正性及び透明性の向上に効果があると認められる取組については、今後更なる導入を図るとともに、実施に当たっては、要領、マニュアル等の整備を行うことに留意する必要がある旨を記述している。総務省はこれを踏まえて「独立行政法人における契約の適正化について」(平成20年11月総務省行政管理局長事務連絡)を発出して、独立行政法人を所管する府省に対して、各法人において、総合評価落札方式に関する規定について会計規程等に明確に定めること、総合評価落札方式を実施する場合は要領、マニュアル等の整備を行うことなどの具体的な措置を講ずるよう要請している。
独立行政法人等が自ら実施する公共サービスについては、より良質かつ低廉な公共サービスを実現することを目指して、18年7月に、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」(平成18年法律第51号。以下「公共サービス改革法」という。)が施行されている。
公共サービス改革法によれば、国民に対するサービスの提供等のうち、①施設の設置、運営又は管理の業務、②研修の業務、③相談の業務、④調査又は研究の業務等であって、内閣府に設置(28年4月以降は総務省に設置)されている官民競争入札等監理委員会の議を経た上で閣議決定される公共サービス改革基本方針によって選定された公共サービス(以下「対象公共サービス」という。)を対象に、官民競争入札又は民間競争入札(以下、これらを合わせて「官民競争入札等」という。)を行うこととされている。
独立行政法人については、「独立行政法人整理合理化計画」(平成19年12月閣議決定)及び「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定)において、公共サービス改革法に基づく官民競争入札等の積極的な導入を推進し、独立行政法人の提供するサービスの質の維持向上と経費削減を図ることとされている。また、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月閣議決定)において、業務フローやコストの分析を行い、その結果に基づき、民間委託等を含めた自主的な業務改善を図ることとなっている。
公共サービス改革法によれば、独立行政法人の長等は、対象公共サービスごとに、公共サービス改革基本方針に従って、官民競争入札実施要項又は民間競争入札実施要項(以下、これらを合わせて「実施要項」という。)を定めて、対象公共サービスの実施に当たり確保されるべきサービスの質に関する事項等を定めることとされている。
対象公共サービスの質は、民間事業者に要求する対象公共サービスの達成目標として定めるものであり、当該事業の政策目的を具体化するような客観的・定量的な指標によって表すことが望ましいとされ、その設定に当たっては、利用者にとっての利便性や、当該対象公共サービスが生み出す性能や成果をサービスの質と捉えることを基本とするなどとされている。そして、事業実施中のサービスの質の達成水準を計測するためのモニタリングの方法についても定めることとされている。
また、対象公共サービスに関する従来の実施状況について、より一層のサービスの質の維持向上及び経費の削減につながる提案を行うことを可能にするなどのために、従来の実施に要した経費(以下「従来経費」という。)、従来の実施に要した人員、従来の実施における目的の達成の程度等の情報を開示することとされている。
公共サービス改革法によれば、官民競争入札等の実施において、独立行政法人の長等は、民間事業者から提出を受けた対象公共サービスの具体的な実施体制及び実施方法並びに入札金額を記載した書類について、実施要項に定めた対象公共サービスを実施する者を決定するための評価の基準に従って評価を行い、対象公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を実現する上で最も有利な申込みをした者を落札者として決定することとされている。そして、対象公共サービスに係る官民競争入札等における落札者決定方式には原則として総合評価落札方式が適用されている。
内閣総理大臣(28年4月以降は総務大臣)は、毎年度、公共サービス改革基本方針を見直すこととされており、必要が生じたときは、独立行政法人の長等と協議して同方針の変更の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないとされている。そして、見直しに当たっては、対象公共サービスの実施期間の終了に合わせて対象公共サービスを継続させる必要性その他その業務の全般にわたる評価を行うこととされている。
独立行政法人は、効果的かつ効率的な業務運営、国民向けサービスの質の向上及び業務の成果の最大化を実現することが求められている。
そして、独立行政法人において、競争入札により契約相手方を選定する場合には原則として自動落札方式が用いられるが、調査・研究、広報等の技術的要素等を重視する民間委託の契約には、総合評価落札方式が取り入れられており、総合評価落札方式の実施に当たっては、国の場合と同様に、発注者による提案の審査の透明性及び公正性の確保が重要であるなどと考えられる。また、独立行政法人は、公共サービス改革法に基づく官民競争入札等も活用しながら、それぞれの業務の特性に応じて民間委託を実施するなどして、業務の効率化や提供するサービスの質の維持向上等に取り組むこととされている。
本院は、これらの状況を踏まえて、独立行政法人における民間委託の状況について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査した。
ア 民間委託の実施状況及び民間委託の実施に係る検討の状況はどのようになっているか。
イ 民間委託における総合評価落札方式の業務種別ごとの実施状況はどのようになっているか。また、総合評価落札方式に関する要領、マニュアル等は整備されているか。さらに、透明性及び公正性の確保に資する措置の実施状況はどのようになっているか、加点評価した提案内容の履行は契約上担保されているか。
ウ 民間委託において、サービスの質の維持向上及び経費削減が図られているか。また、サービスの質及びモニタリングの方法の設定は適切に行われているか。
28年3月末現在における独立行政法人98法人のうち、27年4月1日に設立された国立研究開発法人日本医療研究開発機構を除く97法人において、19年度から26年度までに事業が開始された対象公共サービス104事業(契約151件、計493億余円)及び25、26両年度の民間委託に係る契約51,358件、計1兆8112億余円(25年度契約25,519件、計9868億余円及び26年度契約25,839件、計8243億余円。25、26両年度に事業が開始された対象公共サービスに係る契約件数及び金額を含む。)を対象とし、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき提出された22年度から26年度までの財務諸表等のほか、上記の104事業及び25、26両年度の民間委託に係る契約51,358件の実施状況に係る調書等の提出を求めるなどして、これらを在庁して分析した。また、40法人において会計実地検査を行った。
検査の対象とした独立行政法人97法人において、26年度に民間委託を実施している契約件数及び契約金額を業務種別ごとにみたところ、表のとおり、「施設管理・運営」が最も多く5,151件(民間委託に係る契約件数全体に占める割合19.9%)、1885億余円(民間委託に係る契約金額全体に占める割合22.8%)、続いて、「調査・研究」が3,917件(同15.1%)、1196億余円(同14.5%)、「システム」が2,918件(同11.2%)、1130億余円(同13.7%)等となっており、これら三つの業務種別は多くの法人において共通して民間委託が実施されている業務種別と共通している。
表 業務種別ごとの民間委託の実施状況(平成25、26両年度)
業務種別 注(2) |
民間委託を実施している主な業務内容 | 左の業務の民間委託を実施している法人数 | 平成25年度 | 26年度 | 計 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
契約件数 | 契約金額 | 契約件数 | 契約金額 | 契約件数 | 契約金額 | |||
施設管理・運営 | 施設管理(清掃、警備、植栽、空調等設備保守点検等)、施設運営(食堂・売店運営、給食等) 等 | 91 | 5,497 | 302,862 | 5,151 | 188,502 | 10,648 | 491,365 |
(93.8%) | (21.5%) | (30.6%) | (19.9%) | (22.8%) | (20.7%) | (27.1%) | ||
研修 | 研修準備・補助・運営、教材作成 等 | 46 | 1,075 | 12,540 | 1,178 | 21,855 | 2,253 | 34,396 |
(47.4%) | (4.2%) | (1.2%) | (4.5%) | (2.6%) | (4.3%) | (1.8%) | ||
相談 | コンサルティング、法律相談 等 | 84 | 618 | 8,524 | 702 | 7,984 | 1,320 | 16,508 |
(86.5%) | (2.4%) | (0.8%) | (2.7%) | (0.9%) | (2.5%) | (0.9%) | ||
調査・研究 | 調査支援、研究支援、アンケート発送・集計、情報収集 等 | 83 | 3,814 | 107,941 | 3,917 | 119,683 | 7,731 | 227,625 |
(85.5%) | (14.9%) | (10.9%) | (15.1%) | (14.5%) | (15.0%) | (12.5%) | ||
システム | システム開発・改修・保守・運用、サーバー保守、データベース更新 等 | 93 | 2,887 | 82,599 | 2,918 | 113,037 | 5,805 | 195,636 |
(95.8%) | (11.3%) | (8.3%) | (11.2%) | (13.7%) | (11.3%) | (10.8%) | ||
広報 | 広報誌製作、広告宣伝、パンフレット作成、広報イベント・展示 等 | 82 | 1,504 | 12,682 | 1,522 | 18,692 | 3,026 | 31,374 |
(84.5%) | (5.8%) | (1.2%) | (5.8%) | (2.2%) | (5.8%) | (1.7%) | ||
徴収 | 債権回収、債務者住所調査、督促、入金管理 等 | 19 | 313 | 21,190 | 306 | 19,989 | 619 | 41,179 |
(19.5%) | (1.2%) | (2.1%) | (1.1%) | (2.4%) | (1.2%) | (2.2%) | ||
定型的支援 | 帳票整理、事務補助、データ整備・登録・管理、書類の電子化 等 | 69 | 354 | 9,446 | 397 | 9,424 | 751 | 18,871 |
(71.1%) | (1.3%) | (0.9%) | (1.5%) | (1.1%) | (1.4%) | (1.0%) | ||
その他 | / | 92 | 9,457 | 429,085 | 9,748 | 325,180 | 19,205 | 754,266 |
(94.8%) | (37.0%) | (43.4%) | (37.7%) | (39.4%) | (37.3%) | (41.6%) | ||
計 | / | 97 | 25,519 | 986,872 | 25,839 | 824,351 | 51,358 | 1,811,224 |
各法人における法人の職員が自ら実施している業務や既に民間委託を実施している業務について、法人の職員が自ら実施する場合と民間委託を実施する場合とで経費削減やサービスの質の向上等の点から優劣を比較するなどの検討(以下「民間委託の実施に係る検討」という。)の状況をみたところ、22年度から26年度までの間に、民間委託の実施に係る検討を行っていたとする法人は55法人、このうち、検討を行った結果、民間委託を実施する業務の拡大につながった法人は43法人、民間委託を実施する業務の縮小につながった法人は19法人、民間委託を実施する業務に変化がなかった法人は2法人となっていた。また、民間委託の実施に係る検討を行っていなかったとする法人は42法人となっていた。
民間委託の実施に係る検討内容についてみたところ、法人の職員が自ら実施している業務については、現状の実施体制等を踏まえ、民間委託を実施することとした場合に、法人の職員が自ら実施する場合と比べて経費削減効果があるか、業務の信頼性は確保されるか、民間事業者のノウハウを活用することでサービスの質が向上するかなどの点から検討を行っていた。また、既に民間委託を実施している業務については、民間委託を実施した後の人件費単価の変動等に伴い、法人の職員が自ら実施することとした方が民間委託を実施する場合と比べて経費削減効果があるのではないか、サービスの質を向上することができるのではないかなどの点から検討を行っていた。民間委託の実施に係る検討を行っていなかったとする42法人では、現状において民間委託を実施することが可能な業務については既に民間委託を実施しており、民間委託の実施対象とする業務を新たに拡大する余地はないなどとしていた。
独立行政法人97法人における25、26両年度の総合評価落札方式等(注1)の実施状況についてみたところ、25年度における契約件数は1,670件(民間委託に係る契約件数全体に占める割合6.5%)、契約金額は計2213億余円(民間委託に係る契約金額全体に占める割合22.4%)、26年度における契約件数は1,245件(同4.8%)、契約金額は計1787億余円(同21.6%)となっていた。
競争入札において、総合評価落札方式等により契約相手方を決定する場合には、自動落札方式等の例外となることから、会計規程及び会計規程に基づく契約事務に関する細則(以下、これらを合わせて「会計規程等」という。)に基づいて適正に契約事務を行う点から、会計規程等に総合評価落札方式等を実施する根拠として価格及び価格以外の技術的要素等により発注者にとって最も有利な申込みをした者を落札者として決定することができることなどとする規定(以下「総合評価落札方式等に関する規定」という。)を定めておく必要がある。
そこで、97法人の会計規程等において総合評価落札方式等に関する規定が整備されているかについてみたところ、全ての法人において、会計規程等に総合評価落札方式等に関する規定を定めており、このうち、22年度から26年度までの間に総合評価落札方式等を実施していたのは74法人、総合評価落札方式等を実施していなかったのは23法人となっていた。
総合評価落札方式等は、提案内容の審査の過程で発注者の恣意が働いた場合には、特定の民間事業者に有利となるおそれがあることなどから、自動落札方式等に比べて契約手続における透明性及び公正性を確保することがより重要である。
総合評価落札方式等の適用対象となる業務、実施手続、評価項目及び評価基準の設定の例や考え方等を定めた内規である要領、マニュアル等(以下「要領、マニュアル等」という。)の整備状況についてみたところ、総合評価落札方式等を実施していた74法人のうち、要領、マニュアル等を整備していた法人は64法人、整備していなかった法人は10法人となっている。
対象公共サービス以外の業務に係る民間委託において総合評価落札方式等を実施していた73法人における、契約相手方の選定過程における透明性及び公正性の確保に資する措置の実施状況についてみたところ、①評価項目・評価基準・配点が適切に設定されているかについて調達要求部門や契約担当部門以外の部門が事前に審査を行ったとする法人が51法人、②評価項目・評価基準・配点を事前に入札説明書等で公表したとする法人が73法人、③入札参加者の名称等をマスキングするなどして判別できないようにして審査を行ったとする法人が28法人、④法人外部からの審査員を含めて審査を行ったとする法人が42法人、⑤加点を行った理由等を評価書等に記述させたとする法人が36法人、⑥評価点の採点結果を入札参加者に通知等していたとする法人が60法人となっていた。そして、これらの法人において、要領、マニュアル等に上記①から⑥までの措置の適用条件を定めているかについてみたところ、要領、マニュアル等に適用条件を記載している法人は、①は31法人、②は53法人、③は8法人、④は43法人、⑤は8法人、⑥は33法人となっていた。
総合評価落札方式等は、価格及び価格以外の技術的要素等により発注者にとって最も有利な申込みをした者を落札者等として決定するものであることから、発注者は落札者等に対して、加点評価した業務実施の方法等に係る提案内容について、その履行を契約上担保する必要がある。
総合評価落札方式等を実施していた74法人における加点評価した提案内容の履行の担保の状況についてみたところ、加点評価した提案内容の履行を契約上担保しているとする法人は62法人となっており、これらの法人では、受託者が仕様書、提案書等に基づき業務を実施することとする旨や仕様書、提案書等に基づく実施計画書に沿って業務を実施することとする旨を契約書に記載したり、加点評価した提案内容に必要な調整を加えた仕様書を作成したりするなどして、加点評価した提案内容の履行を契約上担保している。一方、12法人は、上記のような措置を執っておらず、加点評価した提案内容の履行を契約上担保していなかった。
独立行政法人において、19年度から26年度までの間に事業が開始された対象公共サービス104事業(35法人における契約件数151件)について、業務種別ごとにみたところ、「施設管理・運営」が54事業、「システム」が14事業等となっていた。そして、契約金額は計493億余円となっていた。
対象公共サービス104事業について、実施要項に定められた対象公共サービスの質、モニタリングの方法及び契約金額の増減措置等の設定状況についてみたところ、対象公共サービスの質については、「業務の継続性の確保」及び「利用者の快適性の確保」が共通的に設定されていて、「業務の継続性の確保」に関しては事故等による業務中断が発生しないことなどが、「利用者の快適性の確保」に関してはアンケートで利用者がサービスに満足であると回答した割合等が一定以上であることなどが、その達成すべき指標として設定されていた。
モニタリングの方法については、「業務の継続性の確保」に関する指標に対しては、業務実施報告書等による確認が共通的に定められ、「利用者の快適性の確保」に関する指標に対しては、全ての事業でアンケートの実施による確認が共通的に定められていた。
そして、これらの中には、サービスの質の設定が適切なものとなっていなかったものも見受けられた。
また、民間事業者が対象公共サービスの達成目標を上回る成果を上げた場合の契約金額の増額措置や当該目標を下回った場合の減額措置(以下、増額措置及び減額措置を合わせて「増減措置」という。)の設定状況については、増額措置を設定していたのは7事業、減額措置を設定していたのは17事業、増減措置を設定していたのは17事業、計41事業となっていた。
対象公共サービス以外の業務に係る民間委託における主なサービスの質及びモニタリングの方法の設定状況についてみたところ、対象公共サービスにおいて設定されているものと類似のものが多くなっていた。一方で、独立行政法人日本学生支援機構は「コールセンターの設置及び運営業務」において一定率以上のコールセンター応答率等を、独立行政法人労働政策研究・研修機構は「アンケート調査の実施に係るデータ作成等業務」において一定率以上の調査票回収率を、それぞれサービスの質として設定するなどしており、これらは、対象公共サービスには類似の業務はなく、各法人の独自のものとなっていた。そして、これらの中には、サービスの質が確保されていなかったものも見受けられた。
「施設管理・運営(美術館及び博物館)」及び「システム」については、対象公共サービスにおける類似業務の内容からみて、サービスの質を設定する余地が認められるのに、対象公共サービスでの実施結果を参考にするなどした積極的な検討がなされていない状況が見受けられた。
前記の対象公共サービス104事業のうち、27年度までに公共サービス改革法に基づく内閣総理大臣の評価を受けた81事業について、1年当たりの従来経費と対象公共サービスの実施に係る契約金額等(以下「実施経費」という。)を比較すると、実施経費が従来経費より増加したのは13事業で、計4億余円の増加となっており、実施経費が従来経費より削減されたのは68事業で、計13億余円の削減となっていた。
経費が削減された68事業について、包括化(注2)及び複数年化(注3)の取組状況をみたところ、包括化のみを行っていた事業は2事業、複数年化のみを行っていた事業は31事業、包括化及び複数年化を行っていた事業は33事業となっており、包括化、複数年化等の取組による経費の削減等について積極的に検討されているものと考えられる。
一方、経費が増加した13事業について、その理由ごとにみたところ、「施設管理・運営」及び「システム」における運用管理手順書の作成等の委託初年度に係る作業により経費が増加した事業は4事業、「施設管理・運営」における作業量の増加や「研修」における研修コースの増加といった業務量の増加により経費が増加した事業は6事業等となっていた。「施設管理・運営」においては、警備、清掃、植栽等の各業務の包括化により、包括化した各業務の指導監督及び委託者との連絡調整を行う統括業務が追加され、当該業務を実施する責任者(以下「統括責任者」という。)を設置したことに伴って経費が増加した事業は4事業となっていた。また、入札参加者が減少、すなわち競争性が低下したことにより、経費が増加したものもあった。
独立行政法人は、効果的かつ効率的な業務運営、国民向けサービスの質の向上及び業務の成果の最大化を実現することが求められている。そして、調査・研究、広報等の技術的要素等を重視する民間委託の契約には、総合評価落札方式が取り入れられており、総合評価落札方式の実施に当たっては、国の場合と同様に、発注者による提案の審査の透明性及び公正性の確保が重要であるなどと考えられる。また、独立行政法人は、公共サービス改革法に基づく官民競争入札等も活用しながら、それぞれの業務の特性に応じて民間委託を実施するなどして、業務の効率化や提供するサービスの質の維持向上等に取り組むこととされている。
そこで、独立行政法人における民間委託の状況について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、民間委託の実施状況及び民間委託の実施に係る検討の状況はどのようになっているか、民間委託における総合評価落札方式の業務種別ごとの実施状況はどのようになっているか、総合評価落札方式に関する要領、マニュアル等は整備されているか、透明性及び公正性の確保に資する措置の実施状況はどのようになっているか、加点評価した提案内容の履行は契約上担保されているか、民間委託において、サービスの質の維持向上及び経費削減が図られているか、サービスの質及びモニタリングの方法の設定は適切に行われているかに着眼して検査したところ、次のような状況となっていた。
26年度における独立行政法人97法人の民間委託の業務種別ごとの契約件数及び契約金額は、「施設管理・運営」が最も多く5,151件(民間委託に係る契約件数全体に占める割合19.9%)、1885億余円(民間委託に係る契約金額全体に占める割合22.8%)、「調査・研究」が3,917件(同15.1%)、1196億余円(同14.5%)等となっていた。
民間委託の実施に係る検討の状況については、22年度から26年度までの間に、民間委託の実施に係る検討を行っていたとする法人は55法人、民間委託の実施に係る検討を行っていなかったとする法人は42法人となっていた。民間委託の実施に係る検討内容についてみたところ、現状の実施体制等を踏まえ、経費削減効果があるか、サービスの質が向上するかなどの点から検討を行っていた。
26年度における総合評価落札方式等の実施状況は、契約件数1,245件(民間委託に係る契約件数全体に占める割合4.8%)、契約金額計1787億余円(民間委託に係る契約金額全体に占める割合21.6%)となっていた。また、会計規程等における総合評価落札方式等に関する規定の整備状況については、全ての法人において、会計規程等に総合評価落札方式等に関する規定を定めていた。総合評価落札方式等の適用対象となる業務、実施手続、評価項目及び評価基準の設定の例や考え方等を定めた内規である要領、マニュアル等の整備状況については、整備していた法人は64法人、整備していなかった法人は10法人となっている。
契約相手方の選定過程における透明性及び公正性の確保に資する措置については、評価項目等が適切に設定されているかについて調達要求部門や契約担当部門以外の部門が事前に審査を行ったとする法人が51法人等となっていた。
加点評価した提案内容の履行の担保の状況について、加点評価した提案内容の履行を契約上担保しているとする法人は62法人となっていた。一方、12法人は加点評価した提案内容の履行を契約上担保していなかった。
対象公共サービスの質については、「業務の継続性の確保」及び「利用者の快適性の確保」が共通的に設定されていた。モニタリングの方法については、業務実施報告書等による確認やアンケートの実施による確認が共通的に定められていた。そして、サービスの質の設定が適切なものとなっていなかったものも見受けられた。また、契約金額の増減措置等については、計41事業において設定されていた。
対象公共サービス以外の業務に係る民間委託における主なサービスの質及びモニタリングの方法の設定状況についてみたところ、対象公共サービスにおいて設定されているものと類似のものが多くなっていたが、各法人の独自のものもあり、サービスの質が確保されていなかったものも見受けられた。また、サービスの質を設定する余地が認められるのに、積極的な検討がなされていない状況が見受けられた。
対象公共サービスの評価結果からみた経費削減等の状況については、27年度までに内閣総理大臣による評価を受けた81事業における1年当たりの従来経費と実施経費を比較すると、経費が増加したのは13事業で、計4億余円の増加となっており、経費が削減されたのは68事業で、計13億余円の削減となっていた。
経費が削減された68事業における包括化及び複数年化の取組状況についてみたところ、包括化のみを行っていた事業は2事業、複数年化のみを行っていた事業は31事業、包括化及び複数年化を行っていた事業は33事業等となっている。経費が増加した13事業についてその理由をみると、統括責任者を設置したことや、入札参加者が減少し競争性が低下したことにより経費が増加したものが見受けられた。
独立行政法人は、個別法等に定められた業務を効果的かつ効率的に実施するため、業務を自ら実施することが効率的でないと認められる場合等に、法人ごとに定める業務方法書及び会計規程に基づくなどして、業務の全部又は一部を民間委託して実施しており、効果的かつ効率的な業務運営を行うとともに、国民向けサービスの質の向上、業務の成果の最大化を実現することが求められている。そして、独立行政法人は、調査・研究、広報等の技術的要素等を重視する業務の民間委託の契約には、総合評価落札方式を取り入れており、総合評価落札方式の実施に当たっては、国の場合と同様に、発注者による提案の審査の透明性及び公正性の確保が重要であるなどと考えられる。また、各独立行政法人は、公共サービス改革法に基づく官民競争入札等も活用しながら、それぞれの業務の特性に応じて、民間委託を実施するなどして、業務の効率化や提供するサービスの質の維持向上等に取り組むこととされている。
したがって、各独立行政法人においては、民間委託の実施に際して、次の点に留意する必要がある。
本院としては、独立行政法人における民間委託の状況について、今後とも多角的な観点から引き続き注視していくこととする。