ページトップ
  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成28年4月|

東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

1 検査の結果の概要

会計検査院は、東日本大震災からの復旧・復興事業に関する各事項について、合規性、効率性、有効性等の観点から、①東日本大震災に伴う被災の状況等はどのようになっているか、②復興特会において措置された復旧・復興予算は、どのような経費に配分されているか、予算の執行は計画的、効率的に行われているか、また、復興債の発行及び償還は適時に行われているか、③復興交付金事業及び復興関連基金事業における各基金の使途は適切か、使用見込みのない余剰金が基金に滞留するなどしていないか。また、被災地のうち津波等により甚大な被害を受けた沿岸6県における補助事業等、復興交付金事業、復興関連基金事業等の復旧・復興事業について、予算の執行は円滑かつ適切に行われているか、④復興基本方針の基本的考え方に沿って、沿岸6県における復旧・復興事業の成果は着実に上がっているか、⑤原子力災害からの復興再生について、各府省庁、福島県等が実施する事業は円滑かつ迅速に実施されているか。また、国から東京電力に対する求償は適切に行われているかなどに着眼して、検査を実施した。

会計検査院は、復旧・復興予算が措置されている16府省庁等を対象として引き続き検査するとともに、東日本大震災による被害を受けた地方公共団体については、特定被災自治体である11道県及び227市町村における被災状況、復旧・復興事業等の実施状況等について検査した。特に、沿岸6県及び管内200市町村に対して、予算の執行状況や成果等の状況について検査した。また、日本公庫に対して、事業者等への資金繰り支援の成果等の状況について検査した。検査に当たっては、16府省庁等の内部部局等並びに日本公庫、沿岸6県及び管内57市町において、会計実地検査を行い、調書及び関係資料を徴したり担当者等から説明を聴取したりするなどして把握した内容等を基に調査分析を行った。

(1)東日本大震災に伴う被災等の状況

ア 被害等の状況
(ア)人的被害及び建物被害の状況

死者、行方不明者等の人的被害は、死者15,894人、行方不明者2,562人等となっており、また、建物被害については、全壊121,803戸、半壊278,440戸、一部破損726,131戸等となっている(2011_2_1_1_1リンク参照)。

(イ)公共施設等の被災の状況

各府省庁が所管する公共施設等に関する被災の状況については、基盤整備関係では被災地区海岸数677海岸、交通関係では高速道路の通行止め路線数15路線、直轄国道等の通行止め区間数711区間、農林水産業関係では津波により被災した農地面積21,480ha等となっている。また、全壊等の被害を受けた施設は医療施設4,158施設、福祉施設1,626施設、学校施設等12,150施設等となっている(2011_2_1_1_2リンク参照)。

(ウ)避難の状況

避難所は26年3月末までに全て解消されたが、27年12月10日現在の避難者数は、全国でなお182,000人に上っており、このうち東北3県の各県内の避難者数は、計131,506人となっていて全体の72%を占めている。応急仮設住宅に居住している避難者数は、27年11月末現在で、建設型応急仮設住宅には東北3県で64,988人(31,295戸)、借上型応急仮設住宅には全国で74,972人(32,579戸)とされており、震災から4年以上経過しているにもかかわらず、多くの被災者が不自由な生活を余儀なくされている(2011_2_1_1_3リンク参照)。

イ 国の復旧・復興への取組
(ア)復旧・復興に向けて進められた主な取組

a 集中復興期間に進められた主な取組

復興基本方針では、復興期間は10年間とされ、当初の5年間が集中復興期間と位置付けられて、復興支援の体制、復興施策、事業規模、財源等に関する基本方針が定められた。このうち復興支援の体制については、国は、24年2月に復興庁を設置し、同庁内に復興推進会議を設置した。復興施策については、23年12月に特区法が施行され、国は、被災地域の地方公共団体の申出により、区域に限って、地域における創意工夫をいかして行われる規制の特例措置その他の特別措置を適用する制度を創設するとともに、使い勝手の良い自由度の高い交付金として復興交付金を創設して、住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォースの検討の下に、27年8月までに、用地取得手続の迅速化、技術者・技能者の確保、資材の円滑な確保等の加速化措置等を実施した。財政面では、23年12月に復興財源確保法が施行され、また、国は、道府県及び市町村の負担額等に対処するための財政措置として震災復興特別交付税等を創設した。また、24年4月に、特会法が改正され、国は、復興事業に関する経理を明確にすることを目的として復興特会を設置した(2011_2_1_2_1リンク参照)。

b 集中復興期間終了後の復旧・復興事業の基本的枠組み

第13回復興推進会議において、集中復興期間終了後の28年度からの5年間については「復興・創生期間」と位置付け、被災地の復興のために真に必要な事業に重点化する観点から、復興特会で実施する事業は、被災者支援、災害復旧事業等、原子力事故災害特有の課題に対応する事業、復興交付金事業(基幹事業)等とされた(2011_2_1_2_1_1リンク参照)。

(イ)原子力災害に対する国の復旧・復興の主な取組

国は、福島基本方針を閣議決定して、原子力災害からの福島の復興及び再生に関する施策の総合的な推進を図るために、福島全域での復興及び再生と避難解除等区域等の復興及び再生という二つの観点から、必要な取組の基本的な方針を定めた。除染等の放射能汚染対策については、放射性物質汚染対処特措法に基づき、環境省等は、東京電力の負担の下に特措法3事業を実施している。避難解除区域への帰還支援等の取組については、国は、長期避難者支援から早期帰還までの対応策を一括して支援する福島交付金を創設するなどの取組を行っている(2011_2_1_2_2リンク参照)。

(ウ)東日本大震災の復旧・復興に係る復興財源フレーム

国は、復興期間10年間に係る事業規模と財源の見込みを32兆円程度の規模とする32兆円フレームを示した。

32兆円フレームでは、27年度までの集中復興期間に係る事業費を25.5兆円程度、28年度からの復興・創生期間に係る事業費を6.5兆円程度と見込んでいる(2011_2_1_2_3リンク参照)。

(2)復興等の各種施策及び支援事業の実施状況

ア 復旧・復興予算の執行等の状況
(ア)23年度から26年度までの復旧・復興事業に係る歳出予算とその執行状況

a 経費項目別の復旧・復興予算の歳出予算

23年度から26年度までの4か年度の復旧・復興予算における歳出予算額の合計は29兆2285億余円となっている(2011_2_2_1_1リンク参照)。

b 復旧・復興予算の執行状況

23年度から26年度までの予算措置年度ごとに整理された予算現額の合計額29兆3946億余円の26年度末現在における執行状況は、支出済額23兆9132億余円、繰越額1兆5352億余円、不用額3兆9461億余円であり、累計執行率81.3%、繰越率5.2%、不用率13.4%となっている。このうち26年度予算の執行状況をみると、執行率は57.2%にとどまり、繰越率は28.6%、不用率は14.1%となっている(2011_2_2_1_1_1リンク参照)。

c 経費項目別の執行状況

23年度から26年度までの4か年度の復旧・復興予算の経費項目別の支出済額をみると、公共土木施設、文教施設、医療施設等の災害復旧事業の実施に係る経費項目については、「災害対応公共事業関係費」「施設費災害復旧費等」「公共事業等の追加」及び「復興関係公共事業等」の4経費項目で計3兆1361億余円、また、特措法3事業の実施に係る経費項目については、「原子力災害復興関係経費」1兆7220億余円となっていて、これらの経費項目の累計執行率は、他の経費項目と比べておおむね低くなっている(2011_2_2_1_1_2リンク参照)。

d 事業類型別の執行状況

23年度から26年度までの4か年度の復旧・復興予算の執行状況を事業類型別にみると、支出済額は「④補助(基金)」「②補助」「⑧地方交付税交付金」等、特定被災自治体が実施する事業等への財政支援を行う方法において多額となっている(2011_2_2_1_1_3リンク参照)。

(イ)23年度から26年度までの復旧・復興事業に係る歳入の予算及び実績の状況

a 財源項目別の歳入の予算・決算

23年度から26年度までの各年度の決算額と予算額とを比較すると、復興特別所得税は24年度以降の3年間、復興特別法人税は24、25両年度に、いずれも決算額が予算額を上回っている。また、前年度剰余金受入は、25年度以降は決算額が予算額を大幅に上回っているが、これは、24年度以降に復興特会で予算措置された財源等が当年度のうちに支出されずに、繰越し又は不用として翌年度以降の財源となっていることによるものである(2011_2_2_1_2リンク参照)。

b 復興債の発行及び償還の状況

23年度から26年度までの4か年度の復興債の発行状況をみると、発行計画額計15兆4072億円に対して発行実績額計13兆6732億余円となっていて、24年度以降は発行計画額、発行実績額ともに大幅に減少している。そして、復興特別所得税及び復興特別法人税の税収が予算額を上回ったり、繰越し及び不用の発生による決算剰余金が計上されたりしたことにより、25年度においては復興債は発行されず、26年度においても発行計画額の1兆0970億円に対して発行実績額は1199億余円と大幅に下回っている。

復興債の償還は、24年度以降、国債整理特会において行われている。26年度の国債整理特会の歳出では、債務償還費が1兆5736億余円となり、このうち復興債の借換え分が8421億余円であるため、これを除く7315億余円の復興債が償還されている。復興債の年度末現在額をみると、23年度末の11兆2574億余円から26年度末の8兆3996億余円に減少している(2011_2_2_1_2_1リンク参照)。

イ 国から財政支援等を受けて地方公共団体等が実施する復旧・復興事業の状況
(ア)国からの地方公共団体等に対する財政支援の状況

23年度から26年度までの4か年度に東日本大震災関係経費として国から交付された国庫補助金等及び地方交付税のうち、沿岸6県及び管内200市町村に交付されたものは、計11兆2586億余円となっている。また、国からの財政支援に係る類型ごとに、国庫補助金等及び地方交付税の交付額等の合計に占める割合をみると、補助事業等が31.6%と最も高く、次いで復興交付金事業22.7%、震災復興特別交付税21.8%、復興関連基金事業19.9%の順となっている(2011_2_2_2_1リンク参照)。

(イ)復興交付金事業の実施状況

復興交付金の基金型事業については、23年度から26年度までの4か年度の実施計画分に係る交付額は計2兆0412億余円、基金事業執行率は48.5%、取崩未済額は1兆0509億余円となっている。取崩未済額が多い原因として、運営要領において、復興交付金事業が全て終了したときに、基金の残余額を国庫に返還することとなっていて、復興交付金事業のうち一部の事業が終了して残余額が生じたとしても引き続き基金での保有を続けていることなどが挙げられる。基金型事業のうち、効果促進事業(一括配分)については、24年度から26年度までの3か年度の実施計画分に係る交付額計1448億余円のうち549億余円(37.9%)の復興交付金の事業内容が未定であり、そのうち約7割については交付された後2年以上にわたり、事業内容が未定のままとなっており、一方、事業内容が決定しているものはそのほとんどが基幹事業に伴って実施するものとなっていた(2011_2_2_2_2リンク参照)。

(ウ)復興関連基金事業の実施状況

国から国庫補助金等の交付を受けた基金団体が設置造成等した23年度から26年度までの4か年度の復興関連基金事業122事業に係る26年度末までの国庫補助金等の交付額は計4兆0864億余円となっている。このうち、既存の基金事業等と復興関連基金事業とを区分して経理していないなどの10事業を除いた112事業に係る国庫補助金等交付額は計3兆8167億余円、26年度末までの基金の取崩額は1兆9674億余円、基金事業執行率は51.5%となっている。

また、122事業のうち48事業において、各基金団体は26年度末までに2016億余円、27年度(27年8月末現在)に714億余円、計2731億余円の基金残額を国庫に返納しているが、「安心こども基金(地域子育て創生事業)の活用による被災児童の生活復旧支援」において、復旧・復興予算による事業の終了後に、残余額を同基金の復旧・復興事業以外の区分に配分変更している事態が見受けられた(2011_2_2_2_3リンク参照)。

(エ)震災復興特別交付税に係る経費の状況

震災復興特別交付税に係る経費の繰入先の交付税特会における執行状況をみると、23年度から26年度までの4か年度の繰入額計3兆3227億余円に対する交付税特会での支出済額は計2兆5995億余円(4か年度の執行率78.2%)となっている(2011_2_2_2_4リンク参照)。

(オ)沿岸6県における復旧・復興事業の実施状況

沿岸6県及び管内200市町村において実施されている補助事業等について、23年度から26年度までの4か年度の国庫補助金等の交付決定額は、173事業、計4兆7279億余円(補助事業執行率86.0%)となっており、このうち東北3県の分は計4兆4323億余円で、交付決定額全体の9割以上を占めている。

4か年度の交付決定額計の9割程度を占める1事業当たり100億円以上の事業を抽出してその事業内容により区分して、その交付決定額の合計が1000億円以上となる事業区分を示すと、9事業区分(交付決定額計4兆2241億余円)となり、これらの9事業区分は①「公共施設等の復旧等に関する事業」、②「被災者の支援に関する事業」、③「各種産業の再生に関する事業」及び④「災害廃棄物の処理等に関する事業」に大別される。このうち、①「公共施設等の復旧等に関する事業」及び③「各種産業の再生に関する事業」については、他事業、地元等との調整等による遅延、事業計画の変更等により、交付率がそれぞれ65.3%、60.9%、補助事業執行率がそれぞれ73.7%、76.3%となっている(2011_2_2_2_5リンク参照)。

また、③「各種産業の再生に関する事業」の区分に大別され、多額の交付決定がなされている「漁業」「中小企業」及び「農業」をみると、「漁業」の交付率は50.7%、補助事業執行率は69.7%と、「中小企業」の交付率86.9%、補助事業執行率89.3%と比べて低くなっている。これは、地元や他事業との調整等の影響により事業が遅延したり、調整した結果、事業規模が縮小したりしたことによるものである。①「公共施設等の復旧等に関する事業」の区分に大別される「河川等」「社会資本整備」「文教施設」及び「港湾」をみると、「文教施設」については、交付決定額の82.9%に当たる1380億余円が交付され、補助事業執行率が87.5%と比較的堅調に執行されているが、「河川等」「社会資本整備」及び「港湾」については、設計変更や施工方法の見直しによる事業計画の変更等の要因により、交付率は59.8%から63.0%、補助事業執行率は62.7%から73.7%となっている(2011_2_2_2_5_1リンク参照)。

沿岸6県管内の42市町において実施されている復興交付金事業について、23年度から26年度までの4か年度の実施計画分に係る復興交付金交付額は計1兆4427億余円で執行率は45.8%となっている。沿岸6県の県・市町事業を事業数でみると、26年度末現在における基幹事業及び効果促進事業は、基幹事業1,920事業、効果促進事業535事業、計2,455事業となっている。このうち全て完了した事業は、それぞれ441事業、246事業、計687事業であり、事業完了率はそれぞれ22.9%、45.9%、27.9%と、いずれも50%を下回っていて、特に基幹事業の事業完了率が低くなっている。

事業区分別に完了状況をみると、基幹事業と効果促進事業を合わせた事業数は、「住宅等」が240事業と最も多くなっていて、次いで「市街地整備等」が195事業、「農業用施設等」が55事業となっている。また、事業完了率でみると、「試験研究施設等」が最も高い77.2%となっている一方、「住宅入居支援等」等4事業区分が10%程度又はそれ以下となっていて、事業区分により差が見受けられる。

26年度末現在実施中の基幹事業1,390事業のうち当初の復興交付金事業計画において事業完了時期を26年度末以前としていた511事業を対象に事業の完了予定時期の状況をみると、30年度までに全ての事業が完了予定とされていて、集中復興期間の終期である27年度末までに完了予定の基幹事業は371事業となっている。また、復興・創生期間となる28年度以降に完了予定の基幹事業は140事業と27.3%を占めていて、事業区分別にみると、「住宅等」が78事業と最も多く、次いで「道路」が30事業、「漁業用施設等」が24事業となっている。

事業期間の延長の程度をみると、1年以上延長されている事業は371事業と72.6%を占めていて、事業区分別では、「住宅等」「漁業用施設等」「道路」及び「市街地整備等」について特に延長されている事業数が多くなっている。事業期間の延長の理由について、事業主体は、それぞれ、住民との合意形成に時間を要したこと、当該事業と関連する事業の進捗に遅延が生じたこと、必要な用地を取得するための地権者の所在把握や交渉等に時間を要したこと、工事費の高騰による計画の見直しに時間を要したことなどによるとしている(2011_2_2_2_5_2リンク参照)。

沿岸6県における復興関連基金事業に係る23年度から26年度までの4か年度の国庫補助金等交付額は、23基金74事業に対して計2兆2482億余円となっていて、このうち、既存の基金事業等と復興関連基金事業とを区分して経理していないため基金事業執行率を把握できない4基金4事業を除く20基金70事業の国庫補助金等交付額は計2兆1664億余円、26年度末までの取崩額は計1兆3348億余円、基金事業執行率は61.6%となっている。

また、70事業を事業区分別にみると、「原子力災害等への対応」が24事業(全体の34.2%)、国庫補助金等交付額計1兆1702億余円(全体の54.0%)となっていて、24年度から26年度までの年度別・事業区分別に取崩額の状況をみると、各年度とも最も多額となっている。「原子力災害等への対応」は、福島県における実施がほとんどであり、福島県の基金事業執行率は63.2%となっている。一方、「保健・医療・福祉」「農林水産業」及び「防災・復旧事業等」は、復興交付金事業等により実施する造成工事、除染等の他事業の進捗等により影響を受けている事業区分であり、基金事業執行率は40.8%から49.9%となっている。

70事業を終了年度別にみると、26年度末現在、27年度を終了年度とする事業に対する国庫補助金等交付額が最も多く、その額は18事業に係る4570億余円となっている。また、終了年度が28年度以降とされている13事業のうち8事業及び終了年度未定の14事業のうち13事業、計21事業は「原子力災害等への対応」である。そして、70事業の中には終了年度を延長したものが28事業あり、そのうち延長の際に基金に積増しを行っていない18事業の基金事業執行率は50.4%であり、積増しを行った10事業の78.8%よりも約30ポイント低い状況となっている(2011_2_2_2_5_3リンク参照)。

ウ 復旧・復興事業の成果の状況
(ア)復旧・復興事業の成果の概況

沿岸6県及び管内33市町における23の施策項目の計画事業費は、26年度末現在、計6兆6259億余円であり、これに対する完成分事業費は計1兆6743億余円(うち国庫補助金等計1兆1460億余円)となっている。完成率をみると、100%は「鉄道」及び「空港」の2区分であり、80%以上が「河川」「公営住宅等」「医療・福祉施設」「文教施設」「農業用施設」及び「養殖施設」の6区分、20%以下が「海岸(防潮堤)」「海岸防災林」「液状化対策及び地盤沈下対策」「上水道」「漁業集落防災機能強化事業」及び「都市再生区画整理事業」の6区分である。このうち「海岸(防潮堤)」では整備が計画されている634海岸のうち完成施設数が60海岸、完成率9.4%、事業費進捗率17.8%となっている(2011_2_2_3_1リンク参照)。

(イ)津波対策に関する復旧・復興事業の成果

a ハード施策としての津波対策に係る復旧・復興事業の状況

海岸保全施設に係る復旧・復興事業の状況については、33市町のうち28市町の512海岸において事業が計画されており、このうち460海岸で実施されていて、26年度末までの完成施設数は52海岸(完成率10.1%)となっている。計画事業費9398億余円のうち支出済事業費は1427億余円、完成分事業費は85億余円(うち国庫補助金等77億余円)であり、事業費進捗率は15.1%となっている。

上記460海岸の防潮堤の高さについて、現況堤防高と復旧後堤防高とを比較すると、復旧後堤防高が現況堤防高より高くなっているものが359海岸、復旧後堤防高と現況堤防高が同じものが96海岸となっている。また、359海岸のうち5m以下の範囲で高くなっているものが266海岸と最も多くなっているが、10m超高くなっているものも13海岸ある状況となっている。

460海岸の防潮堤の高さを「T.P.10m超」「T.P.5m超からT.P.10m以下」及び「T.P.5m以下」に区分して、防潮堤の設置海岸数の変化について、東日本大震災前の現況と復旧・復興事業による復旧後の状況とを比較してみると、T.P.10m超の防潮堤が設置される海岸が現況7海岸から復旧後62海岸へ、T.P.5m超からT.P.10m以下の防潮堤が設置される海岸が現況123海岸から復旧後256海岸へと増加しており、これに伴ってT.P.5m以下の防潮堤が設置される海岸が現況239海岸から復旧後132海岸へ、防潮堤等が整備されないなどの海岸が現況91海岸から復旧後10海岸へとそれぞれ減少している。また、海岸保全区域延長は、現況計232.9kmから復旧後計317.1kmに延長されている。

東北3県の60地域海岸のうち防潮堤を整備している17市町の46地域海岸の地域海岸内堤防高を設定した根拠について確認したところ、設計津波水位によっているとしている地域海岸は32地域海岸となっていて、東北地方太平洋沖地震により発生した津波は、いずれの地域海岸においても対象津波群を構成するものとされていない。

また、上記の46地域海岸で復旧・復興事業が実施されている419海岸の復旧後堤防高と地域海岸内堤防高とを比較してみると、復旧後堤防高が地域海岸内堤防高より高いものが419海岸のうち1地域海岸の2海岸、低いものが28地域海岸の130海岸となっている。130海岸を所在県別にみると宮城県が110海岸と大半を占め、海岸区分別にみると農地海岸が61海岸、漁港海岸が38海岸と多くなっている。復旧後堤防高が地域海岸内堤防高より低くなっている理由について、海岸管理者によれば、湾の形状を考慮した津波シミュレーション等の結果によるとしているものが49海岸、海岸背後地に重要な保全対象がないことによるとしているものが29海岸等となっている。

復旧・復興事業が実施されている460海岸の防潮堤の完成(予定)年度の状況をみると、26年度末現在、集中復興期間の最終年度である27年度が完成年度となっているものが116海岸、28年度以降に完成する予定となっているものが292海岸となっていて、防潮堤の整備の進捗に伴い、津波に対する防御能力は高くなっていくが、沿岸6県において頻度の高い津波に対する十分な防御能力が発現するには今なお時間を要する状況となっている(2011_2_2_3_2_1リンク参照)。

b ソフト施策としての津波対策に係る復旧・復興事業の状況

33市町の津波避難計画の策定状況をみると、26年度末現在、33市町のうち津波避難計画を策定しているのは19市町で、このうち東日本大震災前に津波避難計画を策定していたのは3市町となっており、多くの市町は東日本大震災後に策定している。また、津波避難計画を策定していない14市町における、頻度の高い津波を防御するための防潮堤や市街地の復興を推進するための都市再生区画整理事業の完了予定年度をみると、防潮堤については11市町が、都市再生区画整理事業については8市町が28年度以降としている。甚大な津波被害を受けた市町では、各地域において策定された復興計画に基づく住民の居住地域及び道路等基盤施設の整備等のまちづくりが現在も進捗中であり、津波避難計画は新しく整備される居住地域等に対応したものとしなければならないなどの事情により、頻度の高い津波に対する防御が十分ではない市町においても今なお津波避難計画が策定されていない状況となっている。

津波ハザードマップの作成状況をみると、26年度末現在、33市町のうち26市町が津波ハザードマップを作成し、これを公表しており、住民等はインターネットの利用等によりその提供を受けることができる状況となっている。一方、7市町が津波ハザードマップを作成していないが、これは、浸水した地域が少なかったこと、まちづくりに関する事業を実施中であるため市街地等が形成される範囲と浸水域を合わせて図示することが現状では困難であることなどによるものである。

33市町における避難所、津波避難ビル等の整備の状況をみると、15市町が避難所又は津波避難ビル等を、11市町が避難路を、23市町が避難標識等をそれぞれ整備している。津波対策に係る避難所、津波避難ビル等の指定の状況を22年度末と26年度末で比較してみると、全体では、避難所が1,289施設から1,477施設へ、津波避難ビル等が50施設から188施設へとそれぞれ増加している。

沿岸6県の市町では、避難所、津波避難ビル等が指定されているが、復旧・復興事業により整備された避難所の中に、津波避難計画における避難所として指定できなくなったものが見受けられた。

津波情報の収集・伝達に係る事業として、復興基金によるラジオ等の電子機器の購入等の状況をみると、23年度から26年度までの4か年度の購入数量は計43,219台となっているが、住民等に対する未配布数量は27年9月末現在で26,316台に上っている。未配布となっている電子機器には、災害時に備えて備蓄されているものなどもあるが、地域住民に配布するために購入した電子機器の配布が進まず、事業の効果が十分に発現していないものが見受けられた(2011_2_2_3_2_2リンク参照)。

(ウ)住宅の供給等に関する復旧・復興事業の成果

a 被災者に対する生活支援

沿岸6県の被災者生活再建支援制度による支援金の支給世帯数及び支給額をみると、27年6月末現在、基礎支援金が200,009世帯、1539億余円、加算支援金が122,911世帯、1550億余円となっている。基礎支援金の支給世帯数に対する加算支援金の支給世帯数の割合は61.4%となっていて、基礎支援金の支給を受けたものの住宅の再建に至っていない世帯が相当数ある状況となっている(2011_2_2_3_3リンク参照)。

b 避難者に対する応急仮設住宅の供与

沿岸6県の27年6月末現在における応急仮設住宅の供与の状況をみると、建設型応急仮設住宅は、計53,119戸が設置されており、建設費が3112億余円、維持管理費が551億余円となっている。完成戸数53,119戸のうち27年6月末までに撤去したものは1,105戸あり、その撤去費は9億余円となっている。また、借上型応急仮設住宅は、沿岸6県で計35,346戸、借上げに要した費用は1526億余円となっている。

東北3県の応急仮設住宅の入居等の状況をみると、27年6月末現在で建設型応急仮設住宅の入居戸数が34,407戸、空き戸数が18,472戸、入居人数が71,900人であり、借上型応急仮設住宅の入居戸数が33,953戸、入居人数が77,906人となっている。26年から27年の入居戸数の増減率をみると、建設型応急仮設住宅が18.6%、借上型応急仮設住宅が10.9%それぞれ減少しており、住まいの復興に係る4事業の進捗に伴い、仮住まいから安定した生活に向けて踏み出した者も多数いる。しかし、建設型応急仮設住宅及び借上型応急仮設住宅には、依然として約14万人が入居している状況であり、その解消にはなお時間を要することが見込まれる(2011_2_2_3_3_1リンク参照)。

c 恒久住宅等の整備に係る復旧・復興事業

災害公営住宅整備事業等により整備した住宅の状況をみると、沿岸6県及び管内33市町のうち、災害公営住宅整備事業を実施している1県及び24市町は、26年度末までに153地区において、6,363戸(完成率34.2%)の住宅の整備を完了している。このうち、入居可能となっている4,254戸に対する入居率をみると、26年度末現在の入居率は85.8%となっている。防集事業により整備した宅地の状況をみると、防集事業を実施している4県管内の16市町のうち、移転者が他地区の災害公営住宅に入居するため宅地造成を実施していない1県1市を除く3県管内の15市町は、26年度末までに118地区において、2,192区画(完成率29.9%)の宅地の整備を完了している。このうち、26年度末までに分譲等が可能となっている103地区1,901区画の分譲等の状況をみると、26年度末の分譲等率は85.4%となっている。漁業集落防災機能強化事業により整備した宅地の状況をみると、26年度末現在、2県管内の8地区において34区画(完成率10.0%)の整備にとどまっている。都市再生区画整理事業により整備した宅地の状況をみると、26年度末現在、3県管内の8地区において206区画(完成率2.4%)の整備にとどまっている。

沿岸6県及び管内33市町における都市防災推進事業(市街地液状化対策事業)の実施状況をみると、2県管内の6市の56地区で実施されていて、26年度末までに全ての地区で液状化対策事業計画案作成に必要な調査等が完了しているが、液状化対策事業計画案を作成した地区は25地区にとどまっている(2011_2_2_3_3_2リンク参照)。

(ウ)産業再生に関する復旧・復興事業の成果

沿岸6県における農地及び農業用施設に係る復旧・復興の状況をみると、農地については、計画施設数23,061hzのうち26年度末までに12,405hzが完成(完成率53.7%)し、農業用施設については、計画施設数6,987施設のうち6,453施設が完成している(同92.3%)。農地の完成率は、青森、茨城、千葉各県が100%となっていて整備が完了している一方、岩手県が75.5%、宮城県が54.7%、福島県が39.7%となっている。農業用施設の完成率は、宮城、福島両県を除きいずれの県も90%を超えている。

沿岸6県における水産業共同利用施設及び養殖施設に係る復旧・復興の状況をみると、26年度末までに水産業共同利用施設については、計画施設数943施設のうち805施設が完成(完成率85.3%)し、養殖施設については、計画施設数35,949施設のうち35,439施設が完成(同98.5%)している。水産業共同利用施設の完成率は、岩手県が86.9%、宮城県が83.5%、福島県が52.1%となっている。また、養殖施設の完成率は青森、福島、千葉各県が100%となっていて整備が完了し、岩手、宮城両県も90%以上となっている。

東日本大震災により被災した中小企業者等の復旧・復興について、グループ補助金の26年度末までの事業実績をみると、延べ9,458事業者のうち8,216事業者が事業を完了しているが、180事業者が事業を廃止し又は取り消しているほか、1,062事業者が事業を延期するなどしている(2011_2_2_3_4リンク参照)。

農林漁業者、中小企業者等に対する資金繰り支援について、農林漁業者等震災特例貸付及び復興特別貸付の22年度(23年3月)から26年度までの5か年度の実績をみると、農林漁業者等震災特例貸付が2819億余円、復興特別貸付が3兆7401億余円、計4兆0221億余円となっている。沿岸6県における農林漁業者等震災特例貸付及び復興特別貸付の実績について、設備資金及び運転資金の資金使途別にみると、農林漁業者等震災特例貸付では、貸付額計2010億余円のうち設備資金が1215億余円、運転資金が794億余円となっている。復興特別貸付では、貸付額計9064億余円のうち設備資金が1920億余円、運転資金が7144億余円となっていて、沿岸6県のいずれも7割以上が運転資金となっている(2011_2_2_3_4_1リンク参照)。

被災地における企業立地の状況について、津波・原子力災害立地補助金の26年度末までの採択、交付決定等の状況をみると、採択件数が374件、採択額が1494億余円、交付決定が107件、交付決定額が528億余円となっていて、対象市町村100市町村のうち67市町村において、採択事業者の立地が見込まれている。また、採択時の計画において見込まれている新規地元雇用者数は、26年度末現在、計4,713人となっている(2011_2_2_3_4_2リンク参照)。

エ 原子力災害からの復興再生
(ア)原子力災害関係の事業の執行状況

23年度から26年度までの4か年度の原子力災害関係経費の支出済額計2兆3467億余円のうち、特措法3事業に係る支出済額が1兆1844億余円と全体の50.4%を占めていて、その大部分は汚染土壌等の除染等の費用の1兆1007億余円となっている。そして、26年度の原子力災害関係経費の執行率は、汚染土壌等の除染等が66.5%、汚染廃棄物処理事業が18.7%、中間貯蔵施設事業が5.5%、福島復興事業が47.3%となっている。

また、除染・中間貯蔵施設事業の費用について、福島復興の加速指針によれば、当時の環境省の試算により、福島復興の加速指針の閣議決定時(25年12月)に実施済み又は計画されている除染(汚染廃棄物処理を含む。)の費用は約2.5兆円程度、中間貯蔵施設の費用は約1.1兆円程度と見込まれるとされているが、費用の見直しが行われていないため費用の見通しに関して、28年度までの費用について試算した結果、特措法3事業の費用1兆1844億余円、内閣府の緊急実施除染事業の費用2151億余円、27年度の歳出予算現額1兆0124億余円に、28年度の概算決定額8685億円を考慮すると3兆2804億余円となる(2011_2_2_4_1リンク参照)。

(イ)特措法3事業の実施状況

a 汚染土壌等の除染等の実施状況

除染特別地域における特別地域内計画に基づく除染等の措置の状況をみると、11市町村中、4市町村は26年3月までに終了し、7市町村は、それぞれ28年3月又は29年3月までに終了するよう事業を実施しており、その進捗率を除染対象別にみると、農地について6市町村が50%を下回っていて進捗が遅れているが、市町村の意向により、農地よりも宅地を優先して除染等の措置を進めてきたことなどによるものである。また、除去土壌等の仮置場等の箇所数及び保管量は、27年9月末現在では247か所、約459万m3となっており、4町村で全体の65.9%を占めているが、これは除染対象となる区域の面積が広く、かつ、除染作業が一定程度進捗していることなどによる。そして、27年3月に中間貯蔵施設のストックヤードへのパイロット輸送が開始され、同年9月末現在の搬出量は8,476m3であり、8市町村からそれぞれ搬出されている(2011_2_2_4_2リンク参照)。

また、27年9月末現在、福島県管内で汚染状況重点調査地域に指定され、除染実施計画を策定した36市町村における除染等の措置の実施状況を地域別にみると、会津地域は計画に対する進捗率が100%となり、県北地域は森林(生活圏)を除く除染対象で70%以上進捗しているのに対して、県中、県南、相双、いわきの各地域では進捗率が50%以下の除染対象も見受けられる。除去土壌等の保管の状況をみると、保管箇所は114,536か所あり、このうち住宅等の敷地内において保管袋等に入れるなどして地上又は地下で保管している箇所が96.3%と大半を占めている。除去土壌等の保管量をみると、保管量は約455万m3となっており、住宅、学校等の施設において29.8%が保管されており、地元住民の生活にも少なからず負担を与えている。(2011_2_2_4_2_bリンク参照)。

さらに、27年9月末現在、福島県以外の7県管内で汚染状況重点調査地域に指定され、除染実施計画を策定した58市町村における除染等の措置の実施状況をみると、岩手、宮城両県以外の5県については栃木県を除きほぼ完了している。26年度末現在の除去土壌等の保管の状況をみると、22,741か所において340,622m3の除去土壌等が保管されていて、除染等の措置を実施した現場の地下での保管量が全体の83.3%に当たる283,864m3となっている(2011_2_2_4_2_2リンク参照)。

b 汚染廃棄物処理事業の実施状況

対策地域内における帰還の妨げとなる廃棄物の仮置場への搬入状況をみると、大熊、楢葉両町及び川内村は26年3月に、南相馬市、双葉町及び飯舘村は27年3月までにそれぞれ搬入を完了している。川俣町及び葛尾村は同月までに一部を除き完了していて、浪江、富岡両町は28年3月を完了予定として搬入中となっている(2011_2_2_4_2_3リンク参照)。

また、福島県を含む12都県に保管されている指定廃棄物の数量は、27年9月末には16.6万tとなっており、環境省は5県において、自ら指定廃棄物の処分に必要な長期管理施設等を確保することとしたが、同月末現在候補地を選定している段階であり、その全量が地方公共団体や地方公共団体から委託を受けた民間事業者等が管理する焼却施設等に保管されている(2011_2_2_4_2_4リンク参照)。

c 中間貯蔵施設事業の実施状況

環境省は、25年12月に関係自治体に対して中間貯蔵施設の設置及び管理型処分場の活用の受入れに係る要請を行い、27年1月までに各自治体からそれぞれ容認され、施設予定地内に除去土壌・廃棄物を一時的に保管するためのストックヤードの整備を開始し、大熊、双葉町内にそれぞれ約2万m3の保管分の整備を完了している。なお、中間貯蔵施設に係る用地取得の状況をみると、当該用地の登記簿上の約2,400人の地権者に対して、27年9月末までの土地の売買契約等の成立件数は9件にとどまっており、用地取得が進んでおらず、施設整備や輸送等の全体計画を示すことは困難な状況となっている。また、環境省は、仮置場等から中間貯蔵施設までの輸送に関する基本的事項をとりまとめた輸送基本計画を策定して、実施期間は26、27両年度のうちの1年程度として福島県管内43市町村の仮置場等からそれぞれ1,000m3程度を搬出することとし、27年3月に、中間貯蔵施設のストックヤードへのパイロット輸送を開始しており、同年9月末現在の搬入量は10市町村から大熊町へ計9,158m3、5市町村から双葉町へ計5,777m3となっている(2011_2_2_4_2_5リンク参照)。

(ウ)帰還支援等の取組等の実施状況

福島県等は、居住制限者の生活の拠点を形成することを目的として生活拠点形成事業を実施し、復興公営住宅の整備を行っていて、福島県の総整備計画戸数は計4,890戸となっている。このうち27年9月末現在の建築工事着手済戸数及び建物完成戸数をみると、建築工事に着手済みとなっているのは1,856戸、建物の完成に至っているのは687戸となっている(2011_2_2_4_3リンク参照)。

(エ)原子力災害関係経費の求償の状況

特措法3事業について、23年度から26年度までの4か年度の事業実施済額の合計は7857億余円となっており、27年10月末現在の求償額の合計は4605億余円、東京電力の支払額の合計は3653億余円となっている。特措法3事業のうち、農林水産省が実施した国有林における放射性物質に汚染された土壌等の除染等に係る事業費2億余円について、農林水産省は、求償を行うための体制や具体的な手法等を定めておらず求償を行っていなかった(2011_2_2_4_4リンク参照)。

上記のほか、緊急除染等についてみると、内閣府所管の緊急実施除染事業については、23年度から26年度までの4か年度の事業実施済額の合計2095億余円に対して、求償額の合計は536億余円、東京電力の支払額の合計244億余円となっている。

また、緊急実施除染事業を除く緊急除染等については、内閣府、文部科学省及び厚生労働省がそれぞれ所管する計4事業(支出済額計167億余円、除染等以外の費用も含んだ額)において実施されており、これについては、放射性物質汚染対処特措法の施行される前から緊急的に実施されていることなどから、求償は行われていない(2011_2_2_4_4_1リンク参照)。

2 所見

東日本大震災からの復旧・復興については、復興基本方針等で定めた5年間の集中復興期間に続き、28年度から5年間の復興・創生期間を迎えたところである。国及び地方公共団体は、これまで全力を挙げて復旧・復興に取り組んできており、事業の進捗とともにその成果も見受けられるようになってきたところである。一方、津波による被害から国民の生命、身体及び財産を保護する津波対策についてみると、防潮堤の大部分は完成しておらず、津波避難計画の策定や津波ハザードマップの作成がなされていない市町があるなどの状況が一部において見受けられた。また、災害公営住宅や宅地の供給はまだ計画の半分に満たない状態であり、多くの避難者が応急仮設住宅等の生活を続けている。さらに、福島県の避難指示区域等については、復旧・復興の完了までには今後なお相当の時間を要する状況となっている。

復旧・復興事業については、27年度以降も多くの事業が一刻も早い完了を目指して実施されているところであり、また、復興・創生期間と位置付けられた28年度からの5年間は、被災自治体においても一定の負担を行うものとされた上で、被災地の自立につながり地方創生のモデルとなるような復興の実現を目指すこととなっている。

ついては、復興庁及び関係府省等は連携して、国及び地方公共団体が行う施策が基本理念に即して更なる復旧・復興の進展につながるよう、今後、次の点に留意して、復興施策の推進及び支援に適切に取り組む必要がある。

  • ア 復旧・復興事業については、今後更に3.2兆円の新規財源を要することとされたところであり、各種事業が有効かつ効率的に実施されるように努めること
  • イ 復興交付金については、復興庁が新たに定めた対応等に基づき使用見込みのない額の返還の促進を図るとともに、効果促進事業(一括配分)の効果的な活用に向けた支援を行い、機動的な事業の実施についても十分に配慮しつつ、各特定被災自治体における事業内容の決定状況等を踏まえた復興交付金の交付時期や規模等について検討を行っていくこと。復興関連基金事業の基金残額については、その規模が適切か検証し、復旧・復興事業への使用が見込めなくなった場合、残余額等については速やかに国庫への返納を要請すること
  • ウ 国庫補助金等を交付して実施している事業において、特に公共施設等の整備については、国は、特定被災自治体の意向や要望を十分に把握して、情報提供、助言その他着実な執行に向けた支援を行っていくこと。そして、今後の事業期間の設定において、被災者の生活再建の見通しなどに与える影響にも十分配慮して、これまでの実績を十分に反映するなどした的確なものとなるような方策について検討すること。

    また、復興関連基金事業において、特に福島県内における「原子力災害等への対応」は事業の今後の見通しが立てにくい中で、更に継続していくことが見込まれるが、国は、福島県等と十分連携して、適切な基金の執行管理を行うよう努めること

  • エ 復旧・復興事業の実施に当たっては、復興等に向けた支援を的確に実施して、事業の成果を発現させていくよう努めること。特に、津波防災に係る復旧・復興事業については、復興基本方針においても被災しても人命が失われないことを最重視するとされていることなどを踏まえて、防潮堤の整備等を着実に実施していくとともに、住民等の適切な避難を確保するための施策についても早期の実施が図られるよう、技術的な助言等も含めて必要な支援を行っていくこと
  • オ 原子力災害からの復興再生については、国は、除染等の措置をより進捗させるために、除去土壌等の保管場所である中間貯蔵施設等の整備の促進に努めること

会計検査院は、東日本大震災からの復興に向けた確実な歩みがなされている一方、復旧・復興の完了までに長期間を要するものもあることから、東日本大震災に伴う被災等の状況とともに、復興等の各種施策及び支援事業の実施状況として、復旧・復興予算の執行状況、津波被害の大きかった沿岸6県における復旧・復興事業の実施状況や復旧・復興事業の成果の状況、原子力災害からの復興再生の状況等を分析して報告した。

会計検査院としては、復興基本方針等で定められた27年度までの集中復興期間が終了し、28年度から復興・創生期間として、復興は新たな段階を迎えたことから、引き続き被災の状況、復興事業の実施状況等について検査を実施して、その結果については、集中復興期間における復興事業の実施状況等の総括として取りまとめが出来次第報告することとする。