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政府の情報システムを統合・集約等するための政府共通プラットフォームの整備及び運用の状況について


3 検査の状況

(1)政府情報システムの政府共通PFへの移行状況等

ア 政府情報システムの政府共通PFへの移行予定

25年6月に策定された創造宣言では、特別な検討を要する政府情報システムを除き、33年度を目途に、原則全ての政府情報システムをクラウド化するとされている。そして、内閣官房は、このクラウド化とは政府共通PFへの移行であるとしている。

前記のとおり、27年3月に改定されたロードマップによれば、ロードマップ記載1,312システムのうち、33年度末までに474システムについて廃止を予定していて、政府共通PFへの移行対象システムが316システム、移行対象外のシステムが522システムとなっている。

ロードマップ記載1,312システムについて、27年度に各府省が総務省に回答した33年度末までの政府共通PFへの移行予定等をみたところ、33年度末で政府共通PF上で運用する予定の政府情報システムが317システム(ロードマップ記載1,312システムに対する割合24.1%)、政府共通PF以外で運用する予定の政府情報システムが511システム(同38.9%、政府共通PF及び政府共通ネットワークを含む。)、他のシステムに統合されるなどして廃止される予定のシステムが484システム(同36.8%)となっていた。

このように33年度末においても、509システム(511システムから政府共通PF及び政府共通ネットワークを除いている。33年度末のシステム数の合計828システムに対する割合61.4%)が政府共通PF以外で運用される予定となっている。

イ 移行対象システムの移行状況

移行対象システムの政府共通PFへの移行状況についてみたところ、ロードマップにおいて、33年度末までに政府共通PFに移行するとしていた316システムのうち、27年度末までに利用を開始することを予定していたものは56システムとなっていた(表3参照)。このうち、システムの一部を政府共通PFに移行させた4システムを含めて49システムが利用を開始していた。また、ロードマップでは移行対象外とされていた1システムが27年度末までに政府共通PFの利用を開始していた。そして、利用開始50システムのうち、27年度末までに36システムが運用を開始していた(以下「運用開始36システム」という。)。

表3 政府共通PFへの移行状況(27年度末現在)

移行状況   システム数
27年度末までに運用を開始したシステム数
ロードマップにおいて平成27年度末までに利用を開始することを予定していたシステム 56
  27年度末までに利用を開始したシステム 50 36
  ロードマップにおいて利用を開始することを予定していたシステム 49 36
  システムの一部を政府共通PFに移行させたシステム 4 4
  ロードマップでは移行対象外とされていたシステム 1 0

さらに、27年度末までに利用を開始していなかった7システムについてみたところ、4システムは移行対象外又は廃止に予定を変更しており、3システムは28年5月までに利用を開始していた。

ウ 移行対象外の政府情報システムの移行を行わない理由

移行対象外の509システム(511システムから政府共通PF及び政府共通ネットワークを除いている。)について、移行を行わない理由をみたところ、表4のとおり、前記の政府情報システム改革検討要領等において、原則として政府共通PFへ移行するものの例外とされていた4類型に該当するものは、185システムとなっていた。そして、4類型以外に、高度なセキュリティレベルを確保する必要があるためとするものが55システム、システムの運用要件が政府共通PFの要件に合致しないためとするものが51システム等となっていた。したがって、計324システムが政府情報システム改革検討要領等で想定されていなかった理由により移行対象外とされていた(内訳は別表1参照)。

表4 政府共通PFへの移行を行わない理由

理由 システム数   平成26年度運用等経費(千円)
割合   割合
府省内LANのため 78 15.2% 35,024,098 10.3%
通信ネットワークシステムのため 25 4.8% 6,755,891 1.9%
メインフレーム型の情報システムのため 5 0.9% 103,488,978 30.4%
捜査・国防・航空管制の情報システム、これらの情報システムと同様の独立的運用の妥当性が認められるその他の情報システムであるため 77 15.0% 63,088,456 18.5%
多くの個人情報が含まれるなど、高度なセキュリティレベルを確保する必要があるため 55 10.7% 14,563,536 4.2%
システムの運用要件(例えば極めて短時間での復旧等)が政府共通PFの要件に合致しないため 51 9.9% 85,985,665 25.2%
特定の技術・動作環境に依存するため 28 5.4% 726,555 0.2%
運用等経費の削減が見込めないため 26 5.0% 269,699 0.0%
民間サービスの利用のため 21 4.1% 212,282 0.0%
政府共通PFにおいて必要な機能が提供されていないため 17 3.3% 801,054 0.2%
外部機関のシステムとの相互連携のため 9 1.7% 211,854 0.0%
統合等による廃止のため 4 0.7% 2,727 0.0%
構築・運用主体が国以外のため 3 0.5% 755,880 0.2%
臨時・期間限定のシステムのため 1 0.1% 1,954 0.0%
システムの一部を政府共通PFに移行させるため 18 3.5% 5,269,938 1.5%
その他(政府共通PF及び政府共通ネットワークを含む。) 93 18.1% 22,709,342 6.6%
    (91) (17.8%) (17,158,861) (5.0%)
  ①、②、③、④(4類型)の小計 185 36.2% 208,357,423 61.3%
  ⑤~⑯(4類型以外)の小計 326 63.7% 131,510,486 38.6%
    (324) (63.4%) (125,960,005) (37.0%)
  511 100% 339,867,909 100%
    (509) (99.6%) (334,317,428) (98.3%)
(注)
括弧書きは政府共通PF及び政府共通ネットワークを除いた数、割合及び額である。

これらのことから、33年度末においても、509システム(511システムから政府共通PF及び政府共通ネットワークを除いている。)が移行対象外となり、61.4%のシステムが政府共通PF以外で運用される予定となっている。したがって、原則として全ての政府情報システムが移行する予定であるとはいえない状況となっていて、政府共通PFへの移行による政府全体の政府情報システムの統合・集約化は限られたものとなることが予想される。

(2)政府情報システムの運用等経費等の状況

ア 政府情報システムの運用等経費の予算額の状況

ロードマップ記載1,312システムの運用等経費の26年度における予算額の総額は、表5のとおり、計3794億余円となっていた。このうち、移行対象外の511システムの運用等経費は計3398億余円(政府共通PF及び政府共通ネットワークを除いたものは3343億余円)となっていて、運用等経費の総額の89.5%(同88.1%)を占めている状況であった。さらに、このうち、運用等経費が10億円以上の50システムで3050億余円(同2994億余円)となっていて、運用等経費の総額の80.3%(同78.9%)を占めている状況となっていた。そして、移行対象の317システムの運用等経費は計182億余円(政府共通PF及び政府共通ネットワークを含めたものは238億余円)となっていて、運用等経費の総額の4.8%(同6.2%)を占めている状況となっていた。また、廃止される予定の484システムの運用等経費は計213億余円となっていて、運用等経費の総額の5.6%を占めている状況となっていた。

表5 政府情報システムの移行予定と運用等経費

(単位:システム、千円)
平成26年度運用等経費 移行対象システム 移行対象外のシステム 廃止される予定のシステム
システム数 運用等経費 システム数 運用等経費 システム数 運用等経費 システム数 運用等経費
  割合   割合   割合   割合
10億円以上 1 2,128,815 0.5% 50 305,046,835 80.3% 2 6,592,333 1.7% 53 313,767,983 82.6%
(3) (7,679,296) (2.0%) (48) (299,496,354) (78.9%)            
  100億円以上 0 7 192,495,996 50.7% 0 7 192,495,996 50.7%
10億円以上100億円未満 1 2,128,815 0.5% 43 112,550,839 29.6% 2 6,592,333 1.7% 46 121,271,987 31.9%
(3) (7,679,296) (2.0%) (41) (107,000,358) (28.1%)            
10億円未満 316 16,127,487 4.2% 461 34,821,074 9.1% 482 14,752,936 3.8% 1,259 65,701,497 17.3%
  1億円以上10億円未満 38 11,634,287 3.0% 83 27,887,711 7.3% 36 10,216,068 2.6% 157 49,738,066 13.1%
1000万円以上1億円未満 112 3,990,926 1.0% 168 6,330,585 1.6% 115 3,951,552 1.0% 395 14,273,063 3.7%
1000万円未満 166 502,274 0.1% 210 602,778 0.1% 331 585,316 0.1% 707 1,690,368 0.4%
317 18,256,302 4.8% 511 339,867,909 89.5% 484 21,345,269 5.6% 1,312 379,469,480 100.0%
  (319) (23,806,783) (6.2%) (509) (334,317,428) (88.1%)            
(注)
括弧書きは政府共通PF及び政府共通ネットワークの運用等経費を移行対象システムに含めた場合の数、額及び割合である。

整備方針及び整備計画においては、政府共通PFについて、政府情報システムの全体最適をより一層推進し、政府のITガバナンスを確立・強化する観点から、原則として全ての政府情報システムを対象に統合・集約化を図るとされている。また、創造宣言においても、原則全ての政府情報システムをクラウド化すること及び政府情報システムの運用コストの3割減といった具体的な政策目標を掲げている。

しかし、前記のとおり、4類型の政府情報システムを移行対象外として認めていることや4類型以外にも各府省が移行を行わないとしている政府情報システムがあることなどから、政府共通PFへの移行を予定している政府情報システムの数は限られたものとなることが見込まれる。また、移行対象システムの運用等経費が政府情報システム全体の運用等経費に占める割合も4.8%(政府共通PF及び政府共通ネットワークを含めたものは6.2%)と低いものとなっている。したがって、政府が掲げる政府情報システムの全体最適のより一層の推進、ITガバナンスの確立・強化、政府情報システムの数及び運用コストの削減等の政策目標に対して政府共通PFが果たす役割は、当面は限定的なものとなることが見込まれる。

イ 政府共通PFに係る費用及び利用開始50システムに係る費用

総務省は、政府共通PFに係るサーバ等の機器や施設等の調達を行っており、各移行対象システムによって、担当府省が政府共通PFの利用を開始する年度が異なることから、これに合わせて毎年度調達を行っている。

政府共通PFの23年度から27年度までの間のPF整備経費及びPF運用等経費に係る支払額の総額は、表6のとおり、170億余円となっており、そのうちPF整備経費に係る支払額は22億余円、PF運用等経費に係る支払額は147億余円となっている。そして、支払額の推移をみると、政府情報システムの政府共通PFへの移行に応じて支払額が増加している。

また、利用開始50システムの各府省における23年度から27年度までの間の移行等経費及び府省運用等経費の支払額の総額は182億余円となっており、そのうち、移行等経費に係る支払額は86億余円、府省運用等経費に係る支払額は95億余円となっている。

これを、前記の投資計画と対比すると、PF整備経費については、23年度から27年度までの間の総投資額約38億円に対して、支払額が22億余円となっている。移行等経費については、投資計画における投資額が新規に整備したシステムを対象から除いたものであることから、23年度から27年度までの間の総投資額約89億円のうち、利用開始50システムから新規に整備した8システムを除く42システムに係る総投資額をみると51億余円となっており、これに対する支払額は48億余円となっている。

表6 政府共通PFに係る費用及び利用開始50システムに係る費用

(単位:件、千円)
区分 平成23年度 24年度 25年度 26年度 27年度
契約件数 支払額 契約件数 支払額 契約件数 支払額 契約件数 支払額 契約件数 支払額 契約件数 支払額
政府共通PFに係る費用 3 9 246,090 25 2,690,031 43 6,386,646 39 7,733,695 119 17,056,462
  PF整備経費 1 0 10,500 4 23,232 9 1,506,895 3 737,027 17 2,277,655
PF運用等経費 2 9 235,590 21 2,666,798 34 4,879,750 36 6,996,667 102 14,778,806
利用開始50システムに係る費用 3 11 1,188,485 29 3,987,308 50 6,364,611 73 6,682,679 166 18,223,084
  移行等経費 3 6 824,802 18 2,534,045 22 2,850,216 33 2,488,466 82 8,697,531
(0) (-) (2) (29,442) (12) (1,640,641) (18) (1,401,654) (23) (1,822,171) (55) (4,893,909)
府省運用等経費 0 5 363,683 14 1,453,262 33 3,514,394 41 4,194,213 93 9,525,553
6 20 1,434,575 54 6,677,340 93 12,751,257 112 14,416,374 285 35,279,547
注(1)
括弧書きは、利用開始50システムから新規に整備した8システムを除く42システムに係る移行等経費の契約件数及び支払額である。
注(2)
利用開始50システムに係る費用の契約件数は、移行等経費及び府省運用等経費に重複している契約があるため、移行等経費と府省運用等経費の契約件数を合計したものとは一致しない。

ウ 政府共通PFへの移行前後における運用等経費の比較

運用開始36システムから、新規に整備した6システム及び政府共通PFへの移行後6か月以上の運用実績が確認できない9システムを除く21システムについて、27年度のPF運用等分担経費及び府省運用等経費をこれに相当する移行前の運用等経費と比較したところ、表7のとおり、移行後に各府省の負担が低減していたものは14システム、低減額計9億4859万余円、増加していたものは7システム、増加額計4981万余円となっていて、差引き8億9877万余円が低減されていた。なお、業務アプリケーションの変更等により、移行前後における運用等経費の条件は異なるため、単純には比較はできない面もある。

しかし、これに対して、移行後の政府情報システムに係るPF運用等共通経費の合計額は、27年度には44億1510万余円となっていた。このPF運用等共通経費は、上記21システムのうちPF運用等共通経費を各府省が負担していない19システムを含む53システムに係るものであることから、上記の低減額と単純な比較はできないものの、このPF運用等共通経費を考慮すると、PF府省運用等経費の低減が図られているとは判断できない状況となっている。

表7 政府共通PFへの移行前後における運用等経費の状況

(単位:千円)
番号 府省名 システム名 移行年度 移行前(平成24年度、25年度又は26年度)の年間の運用等経費
(A)
移行後(27年度)の年間の運用等経費
(B)
増(△)減額
(B)-(A)
1 人事院 人事・給与業務関係情報システム 26年度 2,101,781 2,070,901 △30,880
2 総務省 一元的な文書管理システム 25年度 1,064,559 624,116 △440,443
3 総務省 電子政府の総合窓口システム 25年度 868,996 602,446 △266,550
4 総務省 電子政府利用支援センター 26年度 203,589 123,323 △80,266
5 総務省 電子掲示板システム 26年度 59,904 76,438 16,534
6 総務省 電子文書交換システム 26年度 88,928 107,556 18,628
7 総務省 共通情報検索システム 25年度 115,023 70,804 △44,219
8 総務省 国家公務員ICカード身分証府省間データ交換サーバシステム 26年度 19,596 13,468 △6,128
9 総務省 オンライン研修システム 24年度 79,987 61,384 △18,603
10 総務省 情報公開・個人情報保護関係答申・判決データベース 25年度 4,987 5,870 883
11 総務省 行政相談総合システム 25年度 17,377 18,346 969
12 総務省 政治資金・政党助成関係申請・届出オンラインシステム 26年度 102,222 93,555 △8,667
13 総務省 電気通信行政情報システム 26年度 114,604 72,556 △42,048
14 総務省 苦情・相談受付システム 26年度 5,912 6,359 447
15 総務省 地域防災計画・国民保護計画データベース 26年度 7,765 9,828 2,063
16 厚生労働省 所外向けWebサーバ 26年度 7,616 6,961 △655
17 厚生労働省 毒物劇物営業者登録等システム 26年度 15,208 14,846 △362
18 厚生労働省 生活保護業務データシステム 25年度 35,045 33,865 △1,180
19 厚生労働省 援護システム 26年度 22,044 32,334 10,290
20 農林水産省 生鮮食料品流通情報システム 26年度 95,655 89,910 △5,745
21 防衛省 工数集計システム 25年度 4,017 1,171 △2,846
低減額(14システム)の計 △948,592
増加額(7システム)の計 49,814
差引き額(21システム) △898,778
注(1)
27年度の総務省が負担するPF運用等共通経費の合計額は、表7の21システムのうちPF運用等共通経費を各府省が負担していない19システムを含む、53システムに係る44億1510万余円となっている。
注(2)
PF運用等共通経費を担当府省が負担する2システムは、人事院の人事・給与業務関係情報システム及び総務省の一元的な文書管理システムである。
注(3)
総務省の情報公開・個人情報保護関係答申・判決データベースについては、府省データセンター等の共同利用に係る費用の負担額を把握していないため、移行前の運用等経費にそれらの負担額が含まれていない。
注(4)
上記の21システムについて、ITダッシュボードにおいて公表されている27年度末の削減額の実績の内訳を確認したところ、これらは、システムの全てを政府共通PFへ移行する政府情報システムであったことなどから、削減額の実績は把握されていなかった。

また、利用開始50システムのうち、28年度のPF運用等分担経費及びこれに相当する移行前の運用等経費を把握することができた31システムについて、移行後の負担額の増減の状況をみたところ、表8及び表9のとおり、総額で10.0%増(システムごとの増減割合の平均で108.8%増)となっていた。これをITリソースの提供環境別にみると、標準環境では、総額で10.4%増(同138.5%増)となっていて、削減効果が認められなかった一方で、ライト環境では総額で23.9%減(同14.9%減)となっていて、削減効果が認められた。これは、前記のとおり、ライト環境のPF運用等分担経費が標準環境に比べて低く設定されていることによると考えられる。

表8 PF運用等分担経費の総額における増減の状況

(単位:システム、千円)
提供環境 システム数 移行前の費用の総額
(A)
PF運用等分担経費の総額
(B)
総額の増(△)減割合(%)
(C)
標準環境 25 904,964 999,443 10.4
ライト環境 6 9,075 6,900 △23.9
31 914,039 1,006,343 10.0
(注)
総額の増(△)減割合(C)は、PF運用等分担経費の総額(B)から、これに相当する移行前の費用の総額(A)を減じ、移行前の費用の総額(A)で除した数を表している。
C%=((B-A)/A)×100

表9 PF運用等分担経費のシステムごとの増減割合の状況

(単位:システム)
提供環境 システムごとの増(△)減割合の分布状況 システムごとの増(△)減割合の平均(%)
△60%未満 △60%以上
△30%未満
△30%以上
0%未満
0%以上
30%未満
30%以上
60%未満
60%以上
標準環境 6 4 3 1 3 8 25 138.5
ライト環境 1 1 2 2 0 0 6 △14.9
7 5 5 3 3 8 31 108.8
(注)
システムごとの増(△)減割合(Z)は、PF運用等分担経費(Y)から、これに相当する移行前の費用(X)を減じ、移行前の費用(X)で除した数を表している。システムごとの増(△)減割合の平均(%)は、これを単純平均したものである。
Z%=((Y-X)/X)×100

(3)ITリソースの効率的配分による政府情報システムの整備及び運用の効率化等

整備計画では、表2のとおり、ITリソースの効率的配分による政府情報システムの整備及び運用の効率化といった効果が見込まれるとされている。

ア CPUの仮想化技術によるサーバ台数の削減効果

在り方研究会の最終報告書では、統合・集約化による効果として、サーバ台数の削減が挙げられている。これは、仮想化技術を活用して、複数の情報システム間で、柔軟かつ効率的にCPU等を共有することにより、実際のITリソースの容量を超える仮想的なITリソースを各情報システムに割り当てることで可能となるものである。

そこで、利用開始50システムのうち、新規に整備した8システム及び政府共通PFから提供されるサーバを利用せず、移行前から使用しているサーバの持込みを行った4システムを除いた38システムについて、移行前後のサーバ台数の増減の状況をみたところ、表10のとおり、移行後のサーバ台数は349台となっていて、移行前の301台と比べて48台増加しており、削減効果が認められなかった。なお、サーバの性能等が移行前後で異なるため、単純には比較できない面もあるが、サーバ台数の削減は統合・集約化による効果の一つとして、重要であると考えられる。

そして、仮想化提供サーバの導入状況をみたところ、上記移行後のサーバ台数349台のうち、仮想化提供サーバは139台で、全体の39.8%にすぎなかった。なお、全てのサーバを仮想化技術を採用した仮想化提供サーバとすることは困難な面もあるが、政府情報システムの効率的な運用等のためには仮想化提供サーバの導入は重要であると考えられる。

表10 サーバ台数の増減

(単位:台)
提供環境 移行前のサーバ台数
(A)
移行後のサーバ台数(B)
増(△)減台数
(B)-(A)
  仮想化提供サーバ 左記以外のサーバ
  割合(%)   割合(%)
標準環境 294 340 135 39.7 205 60.2 46
ライト環境 7 9 4 44.4 5 55.5 2
301 349 139 39.8 210 60.1 48
(注)
移行後のサーバ台数には、政府共通PF上で新規に整備したシステムのサーバ台数は含めていない。

また、上記の仮想化提供サーバ139台について、各政府情報システムへのCPUコア(注10)数の割当ての状況をみたところ、表11のとおり、各政府情報システムに仮想的に割り当てたCPUコア数の合計数が、実際のCPUコア数の合計数を超えないように設定されていたサーバが、58台(139台に占める割合41.7%)見受けられた。したがって、これらのサーバにおいては、仮想化技術によるCPUの共用が行われておらず、仮想化技術が活用されていない状況であった。

表11 サーバごとのCPUコア数の割当て状況

(単位:台)
CPUコア数の割当て比率 標準環境 ライト環境
サーバ台数 構成比率(%) サーバ台数 構成比率(%) サーバ台数 構成比率(%)
200%以上 16 11.8 0 0.0 16 11.5
100%以上200%未満 63 46.6 2 50.0 65 46.7
100%未満 56 41.4 2 50.0 58 41.7
135 100.0 4 100.0 139 100.0
(注)
CPUコア数の割当て比率は、1台のサーバにおいて各政府情報システムへ仮想的に割り当てたCPUコア数の合計数を、実際のCPUコア数の合計数で除したものを表している。

総務省は、26年度に利用を開始した政府情報システムから、一部において仮想化技術によるCPUの共用を行っている。しかし、それ以外のシステムについても、今後ITリソースを更に有効活用するためには、ITリソースの使用状況を踏まえた上で、仮想化技術によるCPUの共用を行うかどうか検討する必要があると考えられる。

(注10)
CPUコア  CPUを構成し、実際に演算処理を行う部分のこと。コアの数により性能に差が生ずることになる。

さらに、ライト環境においては、設計上割当てが可能なCPUコア数のうち、約半数のCPUコア数が、各政府情報システムに割り当てられていない状況も見受けられた。この状況について、総務省は、ライト環境については27年10月から提供を開始したばかりであり、信頼性の観点から仮想化提供サーバは最低4台が必要であることに対して、ライト環境を要望するシステムが9システムと少なかったことが要因であるとしている。

イ ITリソースの使用状況

政府共通PFが採用している仮想化技術は、複数の政府情報システム間で柔軟かつ効率的にITリソースを共有することによりITリソース全体の使用率を向上させることが可能となるものである。そして、在り方研究会の最終報告書によると、現状の各政府情報システムのサーバにおけるピーク時のCPU使用率を約80%、平均CPU使用率を10%から30%までとそれぞれ仮定すると、政府共通PFにおいては、平均CPU使用率を50%から60%まで引き上げることができるとしている。

しかし、前記のとおり、政府共通PFにおいては、移行後のサーバに占める仮想化提供サーバの割合が低い状況となっていたり、仮想化提供サーバにおいて仮想的に割り当てたCPUコア数の合計数が実際のCPUコア数を超えないように設定されていたりなどしていた。

そこで、運用開始36システムのうち、政府共通PFへの移行後1か月以上運用実績が確認できた26システムについて、27年2月から28年1月までの間におけるサーバのCPU等のITリソースの使用率をみたところ、表12のとおり、全てのシステムにおいて平均CPU使用率は40%未満となっており、このうち21システム(26システム全体に占める割合80.7%)では、10%未満となっていた。また、13システム(同50.0%)では、CPU使用率がピーク時でも80%未満となっており、18システム(同69.2%)では、ストレージの使用率がピーク時でも50%未満となっていた。

表12 ITリソースの使用率

(単位:システム、%)
使用率 平均使用率 ピーク時の使用率
CPU CPU メモリ ストレージ
システム数 構成比率 システム数 構成比率 システム数 構成比率 システム数 構成比率
90%以上100%以下 0 0.0 10 38.4 7 26.9 1 3.8
80%以上90%未満 0 0.0 3 11.5 5 19.2 1 3.8
70%以上80%未満 0 0.0 1 3.8 3 11.5 3 11.5
60%以上70%未満 0 0.0 3 11.5 2 7.6 2 7.6
50%以上60%未満 0 0.0 1 3.8 2 7.6 1 3.8
40%以上50%未満 0 0.0 1 3.8 2 7.6 3 11.5
30%以上40%未満 1 3.8 2 7.6 0 0.0 3 11.5
20%以上30%未満 1 3.8 1 3.8 1 3.8 7 26.9
10%以上20%未満 3 11.5 2 7.6 4 15.3 4 15.3
0%以上10%未満 21 80.7 2 7.6 0 0.0 1 3.8
26 100.0 26 100.0 26 100.0 26 100.0
  0%以上80%未満 26 100.0 13 50.0 14 53.8 24 92.3
0%以上50%未満 26 100.0 8 30.7 7 26.9 18 69.2
注(1)
政府共通PFの運用管理上、各使用率の収集間隔は5分である。
注(2)
平均使用率は、27年2月から28年1月までの使用率を平均したものを、ピーク時の使用率は、同期間の使用率のうち、最大のものを用いている。

ウ ITリソースの使用状況と各府省が要求するITリソースの規模との関連

前記のとおり、政府情報システムを政府共通PFへ移行させるに当たって必要とするITリソースの規模については、各府省が主体的に判断することとなっている。

そこで、上記26システムのうち、新規に整備した5システムを除く21システムについて、移行前後のITリソースの規模の増減と移行後のITリソースのピーク時の使用率との関連をみたところ、表13のとおり、移行に当たって移行前と比べてITリソースの規模を増やしたシステムは、CPU及びメモリについては5システム、ストレージについては8システムとなっていた。そして、これらのITリソースの規模を移行前と比べて増やしたシステムについて、移行後の27年2月から28年1月までの間におけるITリソースのピーク時の使用率の平均をみると、ITリソースの規模を移行前と比べて減らしたシステム及び移行前と同じシステムに比べて、低くなっている傾向が見受けられた。

表13 移行前後のITリソースの規模の増減と移行後のITリソースのピーク時の使用率

(単位:システム、%)
区分 ITリソースの規模の増減
移行前と比べて増やしたもの 移行前と比べて減らしたもの 移行前と同じもの
システム数 ピーク時の使用率の平均 システム数 ピーク時の使用率の平均 システム数 ピーク時の使用率の平均 システム数 ピーク時の使用率の平均
CPU 5 52.2 3 98.6 13 67.6 21 68.3
メモリ 5 66.8 3 74.0 13 78.4 21 75.0
ストレージ 8 40.5 3 58.3 10 44.8 21 45.1

上記のことから、移行対象システムに必要と想定したITリソースの規模と移行後に実際に必要となるITリソースの規模との間にかい離が生じているおそれがあると考えられる。

また、利用開始50システムのうち、新規に整備した8システムを除く42システムについて、ITリソースの規模の検討の状況をみたところ、各府省がITリソースの規模を決定する際に、過去のITリソースの使用状況を踏まえた精緻な推計を行わずに、単純に移行前の政府情報システムのITリソースの規模のみを根拠にしていたものが23システム見受けられた。

一方で、総務省は、28年3月に各府省に対して通知を発して、政府情報システムを政府共通PFへ移行させる際に、適正な規模のITリソースを要求することなどを求めている。

したがって、今後、各府省は、上記総務省の通知を踏まえるなどして、利用するITリソースの適正な規模について、移行前のITリソースの規模だけでなく、その使用状況や移行後の業務量の増減の見込みなどを踏まえて十分に精査を行う必要があると認められる。また、総務省は、移行検討支援に当たって、引き続き、各府省に対して、上記のような、より詳細なITリソースの規模の精査を求める必要があると認められる。

エ ITリソースの規模の機動的な変更

仮想化技術を採用した情報システムでは、一般的に、業務量の増減の見込みやITリソースの使用状況を踏まえた利用者の需要に応じて機動的にITリソースの規模を増減させることが可能であるとされている。そして、総務省は、仮想化技術を採用している政府共通PFにおいても、ITリソースの規模を機動的に増減させることは可能であるとしている。

そこで、表12に示したピーク時のCPU使用率が80%未満となっていた13の政府情報システムについて、ITリソースの規模を減少させることを検討したかどうか確認したところ、11システム(13システムに占める割合84.6%)では検討を行っておらず、2システム(同15.3%)では検討を行っていたものの、ITリソースの規模を減少させていなかった。

ITリソースの規模の減少を検討していたものの、検討結果に基づきITリソースの規模を減少させていなかった事例を示すと、次のとおりである。

<事例> ITリソースの規模の減少を検討していたものの、検討結果に基づきITリソースの規模を減少させていなかったもの

総務省が平成26年3月に政府共通PF上で運用を開始した電子調達システムが利用するサーバのうち、業務データベースのサーバは、27年2月から28年1月までの間の平均CPU使用率が0.05%、ピーク時のCPU使用率が1%となっている。

総務省は、同システムを新規に整備する際、そのITリソースの規模について、想定業務量、ピーク処理件数等の要件定義を行い、類似システムのCPU使用実績を踏まえて決定したとしている。そして、運用後、ITリソースの使用状況を把握し、ITリソースの規模の減少を検討したとしているが、結果的にITリソースの規模を減少させていなかった。その理由として、同システムが、毎年度、利用機関・官署等の利用範囲や政府方針に基づいた利用業務の拡大を見込んでいることを挙げている。そして、同システムを運用するサーバについてITリソースの規模を減少させることにした場合でも、30年度以降に予定されているサーバの更改に合わせて行うことになるとしている。

また、総務省は、政府共通PFでの運用を開始したシステムについて、ITリソースの規模を減少させた場合には、当該システムのPF運用等分担経費を減額するとしている。しかし、各府省が使用するITリソースの規模を減少させたとしても、総務省がリース料としてITリソースの調達費用を支払い続ける必要があることから、政府全体としては、負担する費用が直ちに低減されない仕組みになっていた。

オ 政府共通PFの整備により見込まれる効果

整備計画では、表2のとおり、政府共通PFの整備により、23年度から28年度までの対象期間に見込まれる様々な効果を挙げている。

このうち、各府省による迅速なシステムの立ち上げや期間限定のシステム等のシステム構築ニーズへの柔軟な対応は、そのために必要なITリソースを政府共通PFで提供することにより実現するものである。

しかし、総務省は、各府省が迅速なシステムの立ち上げや期間限定のシステム等の構築をできるようにするためのITリソースの提供を行っていなかった。

これについて総務省は、無駄な投資とならないよう各府省からの要望等を十分把握の上、検討・調整することが必要であり、当初の検討過程において特段の要望等がなかったため政府共通PFではITリソースを提供していないとしている。

また、総務省は、整備計画で効果の一つとして挙げられている政府共通PFの整備及び運用によって得られる知識・経験の蓄積及び政府内における共有について、従来はシステム運用保守業者等任せとなりがちであった各府省における各政府情報システムのインシデント(注11)対応等の管理運用に関する知識・経験の蓄積等であるとしている。そして、総務省は、政府共通PFの利用を開始したシステムの障害及び対策をインシデント管理し、知識・経験を蓄積し、インシデントの管理状況をポータルサイトを通して政府情報システムごとに情報共有を図っているとしている。

そこで、利用開始50システムについて、上記の知識・経験を蓄積するための仕組みの有無をみたところ、仕組みを有していないものは33システム(利用開始50システムに占める割合66.0%)となっていた。また、17システム(同34.0%)では仕組みを有しているものの、その内容は、総務省とのやりとりをファイル等に納め整理しているものや、システム運用保守業者等からの運用報告書によりシステム運用保守に係る知識の蓄積を行っているものなど、運用業務においては従前から当然行われるべきもので、知識・経験を蓄積する仕組みとして必ずしも十分ではないと認められるものも見受けられた(内訳は別表2参照)。

このように、整備計画において、政府共通PFの整備により見込まれるとされていた効果が発現していないなどの状況が見受けられた。

(注11)
インシデント  システムの稼働において発生する不測の事態

(4)政府共通PFの情報セキュリティ対策等の状況

ア 移行対象システムの情報セキュリティ要件の検討状況

利用開始50システムについて、情報セキュリティ要件を定義する際の担当府省におけるリスク評価の実施状況をみたところ、表14のとおり、リスク評価を実施していたものは15システムにとどまっており、残りの35システムについては、リスク評価を実施していなかった。

そして、担当府省においてリスク評価を実施していない35システムについて、SBDワークシートの使用状況をみたところ、SBDワークシートを使用していたものは3システムにとどまっており、残りの32システムについては、SBDワークシートも使用していなかった。

表14 リスク評価等の実施状況

(単位:システム)
リスク評価を実施したシステム数 15
リスク評価を実施していなかったシステム数 35
  SBDワークシートを使用していたシステム数 3
SBDワークシートを使用していなかったシステム数 32
50

このように、移行対象システムの担当府省において、リスク評価を実施せず、また、SBDワークシートを使用した簡易な手法も用いずに、情報セキュリティ要件を定義した政府情報システムが多数存在する状況となっていた。

総務省は、28年1月から、担当府省が政府共通PFへの移行対象システムにおける情報セキュリティ要件を定義する際に、SBDワークシートを使用することを求めているが、当該SBDワークシート等による評価の内容を総務省が確認する時期を、当該システムの移行に係る調達を終えた後の設計・開発段階としている。このため、当該システムと政府共通PFとの間で情報セキュリティ対策が整合性の取れたものとなっているかどうか、総務省が移行対象システムの企画・要件定義段階で確認できる仕組みとはなっていなかった。

したがって、移行対象システムと政府共通PFとの間で情報セキュリティ対策が重複していたり、不足していたりした場合には、その状況の把握と対応が遅れることになるおそれがあると考えられる。

イ 政府共通PFでの運用を開始した政府情報システムにおける各府省の情報セキュリティ対策の実施状況

政府共通プラットフォーム運用・保守要領には、担当府省が行う必要がある各種の情報セキュリティ対策が示されている。そして、このうち、証跡(ログ)の解析による情報セキュリティリスクの評価は、様々な対策を実施していても起こりうる不正なアクセスの早期発見及び早期対応に役立つ重要な情報セキュリティ対策である。

そこで、利用開始50システムのうち、27年12月末までに運用を開始した28システムについて、証跡(ログ)の解析による情報セキュリティリスクの評価の実施状況をみたところ、表15のとおり、20システム(28システム全体に占める割合71.4%)で、実施されていなかった。この20システムのうちには、インターネットを利用しないシステム等、外部からの攻撃に対するリスクが低いものも含まれているが、各府省が個人情報等の漏えい・流出・改ざんなどが発生した場合に影響が大きいと判断しているものが11システム含まれており、さらに、このうち、高度サイバー攻撃の標的とされる蓋然性が高いと判断しているものが1システム含まれていた。

このように、政府共通PFへ移行した政府情報システムの担当府省が行う必要がある情報セキュリティ対策について、その一部が実施されていない状況が見受けられた。

表15 各府省の証跡(ログ)解析による情報セキュリティ対策の実施状況

(単位:システム)
証跡(ログ)解析による情報セキュリティリスクの評価を実施したシステム 8
証跡(ログ)解析による情報セキュリティリスクの評価を実施していないシステム 20
  各府省が個人情報等の漏えい・流出・改ざんなどが発生した場合に影響が大きいと判断しているシステム 11
  高度サイバー攻撃の標的とされる蓋然性が高いと判断しているシステム 1
上記に該当しないシステム 9
28

ウ 利用府省と総務省との間におけるシステム監査の結果の共有の状況

「政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン」(平成26年12月CIO連絡会議決定)によれば、政府情報システムについて、3か年計画を作成して第三者によるシステム監査を実施することとされている。これに基づき、総務省は、総務省がセキュリティ対策を設計、実装及び実施する部分を対象としたシステム監査を実施し、その結果を担当府省に開示している。

そこで、利用開始50システムについて、システム監査の実施状況をみたところ、10システムについては、28年3月末までにシステム監査が実施されており、その結果、2件の情報セキュリティに関する指摘事項があり、その内容は不要なサービスの停止等のサーバ管理に関するものなどとなっていた。

また、各府省がシステム監査を実施すべき対象範囲は、担当府省が情報セキュリティ対策を設計、実装及び実施する部分に加えて、総務省が設計した情報セキュリティ対策を担当府省が実装及び実施する部分であるリソース提供パターンaのOS及びミドルウェア、リソース提供パターンbのOSとされている(図3参照)。

そこで、上記10システムについてみたところ、7システム(10システム全体に占める割合70.0%)では当該システム監査の結果が総務省と共有されておらず、残りの3システムでは共有されていた。そして、政府共通PFの担当府省である総務省への報告の要否は特に定められておらず、総務省は、政府共通PFの提供部分に原因があったり総務省の対応が必要であったりする場合は各府省から総務省に連絡があることもあるが、各府省が実施した監査の結果が漏れなく総務省に報告されているかどうかは不明であるとしている。

このように、各府省が実施したシステム監査の結果について、必要な報告を求めることとはなっておらず、政府共通PFの情報セキュリティリスクが関係者の間で十分に共有されていない状況が見受けられた。

システム監査の結果が共有されていた事例を示すと、次のとおりである。

<参考事例> システム監査の結果が共有されていたもの

平成27年7月に政府共通PF上で運用を開始した総務省自治行政局の政治資金・政党助成関係申請・届出オンラインシステムは、同年9月に実施されたシステム監査において情報セキュリティに関する指摘を受け、その対応のために、政府共通PFから提供を受けている通信環境の設定変更を行う必要が生じた。そして、同局は、対策の実施を求めるため、政府共通PFの担当府省である総務省に対して監査結果を報告していた。

(5)政府共通PFにおけるデータ連携の状況

前記のとおり、在り方研究会の最終報告書によると、政府情報システムの更なる全体最適を推進するための技術的な解決策として政府共通PFの構築が提言されている。そして、政府共通PFの役割として、政府情報システムの統合・集約化の基盤と各政府情報システムが保有するデータの連携の基盤の二つが挙げられている。

このうち、データ連携の基盤とは、政府共通PFを利用する政府情報システムに限定することなく、各システムが保有するデータの連携機能を政府共通PFにおいて整備することにより、政府内部における情報の利活用・共用を促進し、業務の更なる効率化・高度化を行うこと、国民等の利用者の利便性及びサービスの向上に資することなどとされている。

しかし、内閣官房及び総務省は、28年5月時点で、政府情報システムの統合・集約を最優先に取組を進めており、各政府情報システムが保有するデータの連携については今後の課題であるとしていて、政府共通PFをデータ連携の基盤として構築していない状況となっていた。

また、利用開始50システムについて、担当府省に今後のデータ連携の希望の有無を確認したところ、今後の政府共通PFの機能拡張により他のシステムのデータ利用が可能になった場合に、効率性及び利便性を高めるための他のシステムのデータ利用を希望していないものが13府省の39システム(利用開始50システムに占める割合78.0%)となっており、一方で希望しているものは5府省の11システム(同22.0%)となっていた(内訳は別表2参照)。

このように、データ連携を希望するシステムも見受けられることから、内閣官房において、政府共通PFに移行する政府情報システムのみならず、政府共通PFに統合・集約化しないシステムも対象に含めたデータ連携の必要性について、今後、検討する必要があると考えられる。また、現状において他のシステムとのデータ連携を希望しないとするシステムについても、業務の更なる効率化や国民等の利用者に対する利便性やサービスの向上等に資するよう、各府省において、今後、データ連携の必要性について検討することが重要であると考えられる。