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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成27年12月|

「独立行政法人及び国立大学法人等の自己収入の確保等に向けた取組の状況について」


検査対象
独立行政法人98法人、国立大学法人等90法人
独立行政法人及び国立大学法人等の自己収入の概要
授業料収入、病院収入等の各種事業収入や国、民間企業等からの研究の受託等による受託収入、寄附金の受入れによる収入等の外部資金等
独立行政法人における自己収入の額
188兆9884億円(平成21年度~25年度)
国立大学法人等における自己収入の額
7兆9408億円(平成21年度~25年度)

1 検査の背景

(1)独立行政法人及び国立大学法人等の概要

ア 独立行政法人及び国立大学法人等の制度等

独立行政法人は、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせるために設立される法人であり、平成27年3月末現在における独立行政法人の数は98法人となっている。

また、国立大学法人及び大学共同利用機関法人(以下、これらを合わせて「国立大学法人等」という。)は、大学の教育研究に対する国民の要請に応えるとともに我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図ることを目的として設立される法人であり、27年3月末現在における国立大学法人等の数は、国立大学法人86法人、大学共同利用機関法人4法人の計90法人となっている。

そして、独立行政法人の運営の基本、監督、職員の身分その他制度の基本となる共通事項については独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)に規定され、各独立行政法人の目的及び業務の範囲については、各独立行政法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定める法律(以下「個別法」という。)等に規定されている。また、国立大学法人等の目的及び業務の範囲については、国立大学法人法(平成15年法律第112号)に規定されている。

イ 独立行政法人及び国立大学法人等の業務運営の財源等

(ア)独立行政法人及び国立大学法人等の業務運営の財源

独立行政法人及び国立大学法人等は、業務運営の財源として、各法人の自己収入のほか、運営費交付金を充てており、また、特定の業務については、補助金、借入金等を充てている。

自己収入には、授業料収入、病院収入等の各種事業収入や国、民間企業等からの研究の受託等による受託収入、寄附金の受入れによる収入等の外部資金等があり、25事業年度(以下、事業年度を「年度」という。)の決算報告書では、独立行政法人全98法人及び国立大学法人等全90法人において自己収入が計上されている。

また、自己収入で賄えない部分の金額については、原則として、国が財源措置を行うこととされており、独立行政法人については、通則法第46条において、政府は、予算の範囲内において、独立行政法人に対し、その業務の財源に充てるために必要な金額の全部又は一部に相当する金額を交付することができるとされている。そして、国立大学法人等については、国立大学法人法第35条により通則法第46条が準用されている。この規定に基づき、25年度に運営費交付金の交付を受けている法人は、独立行政法人で84法人、国立大学法人等で全90法人となっている。

(イ)自己収入と運営費交付金の関係

独立行政法人及び国立大学法人等に交付される運営費交付金の額の算定については、各法人が、中期計画において、算定ルールを定めている。

そして、独立行政法人に交付される運営費交付金の額の算定は、毎年度、自己収入が想定される場合は、必要と見込まれる経費から自己収入の見込額を控除して行うことになっており、控除する自己収入については、独立行政法人ごとに異なっているが、原則として、利息収入等の恒常的に獲得が想定される自己収入を控除対象とすることになっている。

一方、国立大学法人等に交付される運営費交付金のうち、例えば、学生数等の客観的な指標に基づいて各大学共通の方式により算出される一般運営費交付金の額の算定は、毎年度、必要と見込まれる経費から、大学の入学定員等に基づく入学料及び授業料の自己収入の見込額(基準学生納付金収入)を控除するなどして行うことになっているが、受託収入、寄附金収入等の外部資金については、運営費交付金の額の算定に当たり、控除対象としない取扱いとなっている。

(2)独立行政法人及び国立大学法人等の改革等における自己収入の位置付け

独立行政法人の自己収入については、「独立行政法人整理合理化計画」(平成19年12月閣議決定)において、国から独立行政法人への財政支出に関して、寄附金募集の拡大に向けた取組の強化等自己収入の増大に向けた取組を推進し、国への財政依存度を下げることを目指すとされた。また、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定。以下「見直しの基本方針」という。)において、特定の者が検査料、授業料、利用料等を負担して実施する事業について、受益者の負担を適正なものとする観点から検査料等を見直すこと、協賛、寄附等が見込める事業の拡大に努め国費の削減を図ること、特許権等の知的財産権の活用等により自己収入の拡大を図ることとされた。

さらに、政府は、組織・運営における自主性・自律性やインセンティブを最大限機能させることなどの必要性から、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月閣議決定。以下「改革基本方針」という。)を策定し、その中で、法人の増収意欲を増加させるために、自己収入の増加が見込まれる場合には、運営費交付金の要求時に、自己収入の増加見込額を充てて行う新規業務の経費を見込んで要求できるものとし、その際、当該経費に充てる額を運営費交付金の額の算定に当たり減額しないことや、法人の事務・事業や収入の状況に応じて、臨時に発生する寄附金や受託収入等の自己収入であってその額が予見できない性質のものについては、運営費交付金の額の算定において控除対象外とすることなどの方針を示している。

一方、国立大学法人等については、16年の法人化後、国の行政機関としての国立大学の業務等を定めていた諸法令が適用されなくなり、自主的・自律的な業務運営を図ることとされた。そして、法人が獲得した自己収入については、前記のとおり、運営費交付金の額の算定に当たって、受託収入、寄附金収入等の外部資金を控除しないなど、法人の経営努力に一定の配慮がなされる形で運用されている。また、文部科学省は、「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しについて」(平成21年6月文部科学大臣決定)等において、外部資金の獲得を含め自己収入の増加に努めることなどの方針を示しているほか、「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」(平成27年6月文部科学大臣決定)においても、財源の多様化等による自己収入の増加を図ることとしている。