総合交付金は、国土交通省所管の地方公共団体等向けの補助金を一括する形で22年度に創設されたもので、地方公共団体等自らが目標を設定した整備計画を作成して、これに基づき総合交付金の交付を受けて交付対象事業を実施し、自らが整備計画の目標の実現状況、今後の方針等について評価を実施する制度となっている。
また、基幹事業の効果を一層高めるソフト事業等として効果促進事業が実施できることになっているが、その内容は地方公共団体等の創意工夫に委ねられている。
国土交通本省及び17都道府県において、2,828計画について、整備計画の作成に当たり、評価指標が適切に設定されているか、効果促進事業は、基幹事業の効果を一層高めるために、基幹事業と一体的に実施されているか、事後評価は適切に実施されているかなどについて検査したところ、次のような状況が見受けられた。
(ア)334計画については、整備計画の作成に当たり、地域住民等の意向の把握や民間等の活動との連携等を検討して、これらを整備計画に反映しているか不明な事態となっていた。
(イ)532計画については、基幹事業の要素事業が評価指標の変化量に及ぼす影響を考慮していないものがあった。また、635計画については、アウトプット指標のみを設定していた。そして、アウトプットとアウトカムとの因果関係を説明できる場合は、アウトプットに着目した指標の設定も認められているが、従来の個々の事業に着目したアウトプット指標のみを設定していた事態も見受けられた。さらに、アウトカム指標となっていても、地方単独事業等が評価指標の変化量に与える影響を当初から想定していたのに整備計画にその記載がないなど交付対象事業と評価指標の変化量との因果関係が明確となっていない事態も見受けられた。
(ウ)187計画については、事前評価を実施しておらず、108計画については、事前評価書を国土交通大臣へ提出していなかった。そして、国土交通省において、整備計画に事前評価書が添付されていないにもかかわらずそのまま確認せずに受領している事態が見受けられた。また、491計画については、事前評価書に国土交通省が例示した検証項目の一部を設定せず検証していなかった。さらに、647計画については、重点計画を上位計画と位置付けているのに、重点計画との整合性を確認していなかった。
(エ)整備計画及び事前評価の結果は、地域住民等のチェック及び評価を受けるために公表することとされているのに、324計画については、整備計画を公表しておらず、1,164計画については、事前評価の結果を公表していなかった。また、公表方法を閲覧請求等としている整備計画の中には、閲覧請求先等を明示していない事態が見受けられた。
基幹事業の要素事業との一体性が確保されていなかった効果促進事業が104計画計605事業、整備計画の開始前から実施していたなどの事業を効果促進事業として実施していて、経常的な経費に交付金を充当していると思料されたものが35計画計71事業見受けられた。また、国の負担割合の低い基幹事業として実施可能な事業等を国の負担割合が高い効果促進事業として実施していたものが34計画34事業、提案事業が交付対象外とされている事業において提案事業に該当する事業を効果促進事業として実施していたものが21計画計70事業見受けられた。
(ア)1,299計画については、必要に応じて中間評価を実施することから、中間評価を実施していなかったが、中間評価を実施したことによるメリットについては、進捗状況の確認を行ったことにより事業の課題が抽出され、その後の事業の実施に資することとなったとの意見が多かった。このうち、計画期間を6年以上に延長していた16計画については、全ての整備計画について計画期間を延長する際に中間評価等を実施していなかった。
(イ)574計画については、事後評価を実施しておらず、758計画については、事後評価を実施していた。そして、758計画の中には、要綱等に定める評価項目の一部を評価していなかったり、事後評価書に実績額を記載していなかったり、最終目標値の変更状況等を記載していなかったりしたものがあった。そして、214計画については、学識経験者等の第三者の意見を求めるための評価委員会を開催していなかった。また、514計画については、地域住民等から広く意見を収集し、それらの意見を反映して評価結果をまとめるための事後評価原案の公表を行っていなかった。さらに、実績値が最終目標値と大きくかい離する可能性があることに十分留意して、評価指標を設定する際の当初現況値や実績値の把握等を適切に行う必要がある評価指標があったり、実績値の算定に当たり正確性に疑義が生じていて、実績値の算定方法について正確性等に十分留意する必要がある評価指標があったり、最終目標値の達成要因において、未達成要因等を分析していなかったりしている事態が見受けられた。
(ウ)中間評価及び事後評価の結果は、地域住民等のチェック及び評価を受けるために公表することとされているのに、5計画については、中間評価の結果を公表しておらず、51計画については、事後評価の結果を公表していなかった。また、公表方法を閲覧請求等としている整備計画の中には、閲覧請求先等を明示していない事態が見受けられた。
以上の状況を踏まえて、地方公共団体等が社会資本整備総合交付金事業等を適切に実施することができるよう、国土交通省において、次のア及びイの点について、地方公共団体等に対して支援、助言等を行う必要があり、また、ウの点について実施する必要がある。
(ア)整備計画の作成に当たっては、必要に応じて、ニーズ調査による地域住民等の意向を把握したり、民間等の活動との連携等を検討したりして、これらを反映するための方策を講ずること
(イ)基幹事業の各要素事業が評価指標に及ぼす影響を考慮して、総合交付金の目的に適した評価指標を設定し、交付対象事業と評価指標の変化量との因果関係を明確にすること
(ウ)整備計画を作成する際に事前評価を実施し、整備計画を国土交通大臣へ提出する際に、事前評価書を添付すること。また、地方公共団体等が事前評価の検証項目を作成するに当たっては、国土交通省が例示した事項を十分勘案して設定したり、重点計画を上位計画と位置付けている整備計画については、重点計画との整合性を確認したりすること
(エ)整備計画及び事前評価の結果をホームページ等を活用して地域住民等の目に触れやすい方法で遅滞なく公表すること
(ア)事業の進捗に応じて適時適切に中間評価等を行い、その後の事業の実施に評価結果を反映すること
(イ)交付期間の終了後には速やかに事後評価を行い、同種事業等に評価結果を反映すること。また、当初現況値及び実績値の算定に当たり、正確性に十分留意すること
(ウ)中間評価及び事後評価の結果をホームページ等を活用して地域住民等の目に触れやすい方法で遅滞なく公表すること
適切に効果促進事業を実施できるよう、基幹事業との一体性の確保、対象となる事業の取扱いなどを検討すること
会計検査院としては、今後とも、社会資本整備総合交付金等による事業等の実施状況について引き続き注視していくこととする。